Home出版物>談話のポライトネス


「談話のポライトネス−ポライトネスの談話理論構想−」
『談話のポライトネス』(第7回国立国語研究所国際シンポジウム報告書)、
9-58.50頁.国立国語研究所. 2001年3月30日.

本稿では、主に、これまでの筆者の一連の実証的研究の結果に基づいた上で、Brown & Levinsonのポライトネス理論を大幅に展開させる「ポライトネスの談話理論構想」をまとめた。
以下の四つが主要な論点である。
@ これからのポライトネスの普遍理論の研究は、「絶対的ポライトネス」から「相対的ポライトネス」へと研究対象を拡大する必要がある。
A「守られていて当たり前であると期待されている言語行動が現れないときに、初めてそれがないことが意識され、ポライトではないと認知される」という現象における「守られていて当たり前の言語行動の状態」を、「基本状態(discourse default)、ポライトネスの観点からは、「無標ポライトネス(unmarked politeness)」と定義し、ポライトネスの研究対象に含める必要がある。
B 話し手と聞き手の「フェイス侵害度の見積もり」のギャップが、「マイナス・ポライトネス効果」を生むという捉え方をすることによって、「マイナス・ポライトネス」、つまり、「インポライトネス」も、ポライトネス理論の枠組みで包括的に説明できるという捉え方を提示した。
C 従来の言語学、社会言語学、敬語論などにおいて、言語使用に影響を与える社会的要因として「固定的」、「非連続的」に捉えられてきた「年齢」「社会的地位」「性」などのような社会的属性や、「上下」「親疎」などの人間関係の捉え方を、より「動的」、「連続的」、さらには、「相対的」な捉え方に転換することの重要性を強調した。これらの諸社会的要因を、非連続的に捉えるのではなく、これらの要因が各個人によって「総合的に」判断されて、「フェイス侵害度の見積もり」の高低に集約されると捉えることによって、複数の社会的要因の影響を、一つの連続体上に表すことが可能になる。この捉え方が、インポライトネスも含む、人間の「対人関係調節行動」の普遍原理としてのポライトネスの談話理論においては、非常に重要な役割を果たすという捉え方を提示した。
また、本稿では、Usami(2002) の中の実証的研究の結果の一部の概略を、ディスコース・ポライトネス理論の構想へと導いたデータ・結果の一部として示している。

注)本理論の構想は、当初、「ポライトネスの談話理論(構想)」と呼んだが、後に、「ディスコース・ポライトネス理論」として引用されることが多くなったため、現在では、後者を用いている。




当サイトに関するお問い合わせは、「宇佐美まゆみ研究室」へ。

Copyright (C) 2005 Prof. Usami’s Laboratory, All rights reserved.
当サイトにおける全ての画像および文章の著作権は「宇佐美まゆみ研究室」に帰属します.
全てあるいはその一部の無断転載、無断引用は、使用・再生・複製・複写・
販売・再販売など形態のいかんを問わず、禁止いたします.

リンクは、ご自由にどうぞ。できれば、その旨、メールでご連絡いただけると幸いです。