本稿は、紛争後の平和構築と国家建設の問題を、普遍的国際社会の拡大・深化の過程の中で捉えることを試みる論考である。そこで本稿は、近代の欧州などで確立された主権国家の形成過程と、現代世界の紛争(後)社会における国家建設活動の比較を行う。
 紛争後の国家建設を考える場合には、紛争が国家を崩壊させた後に国家再建が始まる、というよりも、長い国家建設過程の不安定期に紛争が発生する、という見方が重要になる。これによって、建国以来紛争に喘ぐアフリカ諸国の国家建設から、独立後に樹立された独裁体制の脆弱性を露呈した「アラブの春」経験諸国における国家建設までを、連動した現象として捉えることができる。
 国家建設の試みが多数なされている現代世界の東南アジアからアフリカ大陸に至る紛争多発地帯には、脱植民地化後の主権国家普遍化現象によって生まれた新興独立諸国が集積している。これらの諸国の国家基盤の脆弱性は、植民地化による地理的拡大の後、主権国民国家を構成要素とする国際社会が急激に普遍化した事情によって説明される。武力紛争とは、完成した国際システムが見せるほころびというよりは、「普遍的国際社会」が隠し持っている課題が表出したものだと言える。
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