本稿では、日本の近代「国家建設」の過程において「東北」に与えられた位置づけを確認することによって、今後の復興の過程で前提とすべきではないものを明らかにすることを眼目指す 。日本が近代国家建設の過程を歩み始めた時、「東北」は「敗戦地」であった。軍国主義的拡張そして高度経済成長を遂げる時代において、「後背地」から「供給地」へと転換し、東北は日本の国民国家建設の歴史の中で不可欠な地位を得るようになった。だが実はそれは、日本の特殊な近代国家建設の過程を前提とした「東北」の発展であった。今や日本という国全体の社会が迷走している状態にあって、「東北」をはじめとした地域社会も迷走している。拡大する所得格差によって、総中流社会の維持が困難になり、拡大する地域格差によって、均質な国土総合開発の目標も後退した。しかしもはやかつてのように中央集権化による軍事国家化や、高度経済成長による利益再分配による地域社会の長期な発展を期待することはできない。3・11後の復興は、大きな時代の流れを見据えた国民国家と地域社会との関係の問い直しの機会であるとも言える。
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