この章では、人間の安全保障に関する諸々の措置が、紛争地の現場でどのように実施されているのかを探求する。そこで中心的な論点となるのは、人道支援活動と平和構築活動の結びつきである。ともに武力紛争中・後の状況で必要となる二つの活動は、明白に区別される役割を持つが、相互に影響しあう場合も多い。ある場合には相互促進的だが、別の場合には阻害的になることもある。包括的視点としての人間の安全保障は、そのような人道援助と平和構築の関係を建設的に考える際の手がかりとなる。本章では、両者が武力紛争中・後においてどのような関係を持ってくるのかを、武力紛争中、移行期間中、安定化期間中に分けて、確認した後、両者の間に生まれるジレンマについて論じる。そして人間の安全保障という包括的視点が、紛争(後)地域における実務的な問題を戦略的に分析していく際に持つ有効性を示すことを試みる。
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