人間の安全保障の概念は、あくまでも現実の要請に応じて求められている概念であり、理論的な論争のために国家安全保障概念と対立させるのは生産的ではない。人間の安全保障は曖昧だとも批判されるが、それは複雑化した現代世界が、そのような包括的な視点を必要としていることの裏返しの問題でしかない。本書の研究によって、相互の関係性が必ずしも明確ではなかった様々な領域の問題が、武力紛争における人間の安全保障という問題意識にそって、体系的に描き出されていくことになる。
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