アメリカの単独行動主義と呼ばれるものを、安全保障への関心を他の価値との関係で主要なものとする国際社会の構造の中で特徴づけた上で、なぜアメリカが国際刑事裁判所(International Criminal Court: ICC)を拒絶するのかを、ICCの推進者であるヨーロッパ諸国との対比の上で論じる。そこで見えてくるのは、アメリカの単独行動主義が標榜する特殊な普遍主義とヨーロッパ諸国が標榜する多国間主義の二つのグローバリゼーションの姿であり、力が国際社会の仕組みを決するという大国主義としての現実主義と、国家の独立性・平等性を尊重する国家中心主義的な現実主義という二つの現実主義である。
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