本稿は旧ユーゴスラヴィア国際刑事法廷(ICTY)とルワンダ国際刑事法廷(ICTR)を、新設される予定の国際刑事裁判所(ICC)も考慮しつつ、平和構築の観点から検討したものである。国際法学の分野での研究を前提にしつつ、本稿ではあえて政治学的あるいは平和学的観点から、国際刑事法廷を考察する。まず平和と正義というしばしば対立するものとして認識される二つの価値を基準にして、国際刑事法廷の役割についての三つの理解を整理する。その上で、「司法介入」として特徴づけられる国際刑事法廷が持つ戦略的含意を平和構築の観点から論じる。また国際刑事法廷が目指す平和を「個人化」されたものとして、その問題点についての指摘も行う。
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