フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪    2018年台湾統一地方選挙コメント(簡略版)

自滅した蔡政権
東京外国語大学
小笠原 欣幸

 台湾地方選挙は与党民進党の大敗に終わった。民進党は22県市のうち現有の13から6に半減した。国民党は6から15に倍以上増やし,無所属は3から1に減った。全県市を合わせた得票率で見ると,民進党39.2%,国民党48.8%,無所属その他12.0%であった。民進党は国民党に実に10ポイント近い(9.6ポイント)差をつけられた。民進党の苦戦は予想されていたがそれをはるかに上回る大敗となり,国民党は地方における以前の勢力を一気に回復した。
 2016年の歴史的選挙からわずか2年半で台湾政治は大きな転機を迎えた。国民党は2016年の敗北からたいして変わっていない。これは国民党の勝利というより蔡英文政権の自滅というべきである。民進党はいま台湾社会の潮流から取り残され茫然としている。 民進党の敗因は,(1)選挙戦略の失敗,(2)蔡政権の失政,(3)台湾政治における民進党の位置づけおよび中台関係要因という短期,中期,長期の問題の複合にある。本文でこれらを論じていくが,最初に概要を示しておきたい。

 蔡政権は多数の改革を同時に実行したため個別の反対勢力が合流・拡大した。改革を過度に強調したため,政治課題に熱中していると受け止められ,経済活性化を期待していた多くの選挙民が不満を抱いた。そこにつけいるかたちで「中台関係の悪化で景気が停滞」という言説が広がった。
 また,民進党は反体制の政党であったが,いまやエスタブリッシュメント化している。しかし,民進党自身にそうした自覚は薄い。そこを突いたのが韓国瑜氏だった。
 選挙戦略の失敗は,まず,柯文哲と決裂し台北市で独自候補立てたことである。次に,地方選挙では個々の候補の評価が争点であるのに,蔡政権は「改革を支持するか否かの選挙」と位置づけた。これで中間派を一気に反対側に押しやり,蔡政権は自滅した。
 中国に近づくか,距離を取るか,台湾は「(経済的)繁栄と自立のジレンマ」にあるが,選挙民は「繁栄も自立も」要求する。4年前は「自立」を求める面が強く出たが、今回は「繁栄」に振れた。どの政党が政権についてもその両方に応えるのは難しい。
 台湾の選挙民の主権者意識は非常に強い。そして思い切りがよいので,自分たちの期待に沿わなければすぐに変えようと動く。それで台湾政治はいつもダイナミックであるが,政策を長期的にじっくり監督していくというのは苦手だ。これでは政治はなかなか安定しない。台湾の民主主義の試行錯誤はこの先も続くだろう。(続く)


フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ これは簡略版コメントです。各選挙区の分析を含む綜合版は準備中です。この1か月半で台湾に3回出張したので分析・執筆が遅れております。しばらくお待ちください。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 同趣旨の談話が「共同通信」から配信され,また,11月25日の『朝日新聞』朝刊に掲載されました。

フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ 11月27日NHKラジオ第一「Nらじ」の特集「台湾で何が起きているのか~中台関係の行方」にゲスト出演しました。2か月間ネット配信で視聴できます。
    http://www4.nhk.or.jp/nradi/24/
フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪ この番組を聴いたリスナーの方が記録を作成してくれました。 NHKラジオ Nらじ<特集 一本勝負> 台湾で何が起きているのか

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