フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪   フリー素材柚莉湖♪風と樹と空と♪  2014年台湾地方選挙
―選挙結果についてコメント―
東京外国語大学
小笠原 欣幸








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 驚くべき結果が出た。予想をはるかに超える国民党の全面的敗北であった。国民党は台北市,台中市,桃園市,基隆市などの地盤を一気に失い,選挙前に執政していた県市が15から6へと激減,民進党は6から13へ倍増,無党籍が1から3に増えた。得票率で見ると,国民党が40.7%,民進党47.55%,無党籍11.74%であった。これだけでも民進党の圧勝であるが,民進党が支援した台北市の無党籍候補柯文哲氏の得票の8割ほどを民進党票にカウントすれば民進党のリードはさらに大きくなる。台湾の有権者は6年間の馬英九政権へNOの審判を下したと言える。
 今回の地方選挙では候補者の資質がより重視されると語られてきた。この観点から台北市,台中市で国民党が敗北することは十分予想されたが,候補の比較で優勢が伝えられていた桃園市,新竹市,嘉義市などで国民党が敗北し,勝った新北市,新竹県,南投県もぎりぎりであったことから,今回は国民党の公認候補であることが票を減らす決定的要因になったと言える。国民党がもともと弱かった台南市,高雄市では「底が抜けた」状態になった。
 国民党の票が大きく落ち込んだのは,馬政権の不人気で中間票が離れただけでなく,支持者からもそっぽを向かれたのが要因である。公務員・教員・軍関係者などを中心とする国民党の北部の支持層基盤は総崩れになった。同時に,各県市の地方派閥の組織力低下という構造的変化も見ておく必要がある。雲林県,彰化県,台中市での国民党の敗北は,地方派閥が国民党の支持基盤を構成してきた一時代に終わりを告げる合図となるのであろう。
 馬政権は1年半の任期を残し「レームダック」どころか「死に体」となって身動きができなくなり,国民党内はポスト馬をめぐって混乱していくであろう。ポスト馬の一番手と見られていた新北市の朱立倫市長は,圧倒的な票差で再選を勝ち取り弾みをつけるつもりでいたが,強力とは言えない民進党候補を相手に勝つのがやっとであった。これで,総統選挙の出馬は難しくなった。大勝した民進党は蔡英文主席の指導力が大幅に強化され勢いを増していく。2016年総統選挙での政権交代の可能性が現実味を帯びてきた。
 台北市での連氏敗北の要因には,今年3月の「ヒマワリ学生運動」が対中警戒感をかきたてた影響を指摘できる。連氏の家族が中台の経済的利益に深くかかわっていることが選挙中繰り返し批判された。また,選挙戦で中国ビジネスを展開する大企業家が露骨な利益供与を材料に国民党の応援に入ったが効果はなかった。
 中国にとってはおもしろくない選挙結果である。民進党の勝利によって馬政権の対中政策は大きな制約を受ける。中台関係は迷走していくのではないか。習近平政権が台湾政局の変化をどのように見極めていくのか注目したい。 (2014.11.29記)

本コメントの短縮版が共同通信から配信されました。

   

 
                        
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