監督 G.ジグジドスレン
脚本 Ch.ゴンボ
撮影 L.シャラブドルジ
美術 Ch.ヒシグダライ
音楽 L.ムルドルジ
ミャダグ B.ツェツェグバルジド
バザル S.ツェレンダシ
バルダン N.ツェグメド
ドルジ D.ドンドグ
ボルド Ch.フルレー
プレブ Ts.ガントゥムル
ジュグデル Yo.シャラブドー
ラブダン S.バルダンプレブ
[あらすじ]
農業技師の実習のため、地方の協同組合の草刈り場にやってきた大学生ミャダグ。突然やってきた都会育ちの彼女に、根っからの牧民である老人たちの対応は冷たい。草はらの中に見つけたひばりの卵に、自分の姿を重ね合わせ、彼女は無事雛が孵り巣から飛び立つことを祈る。
ミャダグの苛立ちをよそに、老人たちはなかなか仕事を始めようとしない。草刈りを始める時はとっくに来ているのだ。だが、彼女にも彼らの仕事ぶりが分かってくる。バルダン老人を見習い、自分も草地の植生の分布を調べはじめる。
老人たちの仕事は順調に見えたが、あいにくの雨。作業の遅れを取り戻すため、ミャダグの提案したアイディアを彼らは採用することにする。そこへやって来た組合の農業技師プレブは、ミャダグの考案した草集めの装置を見てケチをつける。新しい装置の使用には組合の承認がいるというのだ。老人たちは彼の官僚主義的な態度に腹を立てる。
雨で増水した川を泳ぎ渡り、馬群を連れ戻すミャダグ。草刈り馬車から落ちても手綱を放そうとしないミャダグ。老人たちは彼女のそんな気丈さ、ひたむきさに次第に彼女を評価して行く。
ミャダグの帰る日、ひばりの雛たちは無事巣立っていた。別れを惜しむささやかな宴で、彼女は老人たちに自分の作った草刈り場の植生分布図を渡す。
ミャダグを乗せた馬車が草原を行く。秋はすっかり深まり、白鳥たちもまた南の国へと旅立とうとしていた。
[解説]
監督G.ジグジドスレンの第一作であり代表作でもある作品。脚本はドキュメンタリー映画の監督としても有名なCh.ゴンボ。彼は『モーターの音』『伴侶』でも脚本を担当しているが、この映画が脚本第一作である。また主演のツェツェグバルジドも初めての映画出演と、まさにスタッフたちにとっても『最初の一歩』の作品であった。それを老練の俳優たちがよく支えている。さらに付け加えると、この映画はモンゴル映画史の中で抒情的な作品第一号と位置づけられている。
モンゴルでは「ナーダムを過ぎれば秋」という。7月の半ばから、冬への準備の草を刈る作業が始まるのだ。その現場でミャダグと老人たちの考え方や感情がぶつかり合う。目を引くのは、彼らがそれぞれ信念を持ちながらも、相手の意見を取り入れる点だ。老人たちは、頑迷な人間ではなく、進取の気性も持つ人間として描かれている。それに対して、プレブに代表される牧畜協同組合幹部は、ことなかれ主義で人の創意を押し殺す存在として描かれる。ミャダグと老人たちとの対立の構図は、都市の若いインテリと現場の牧民との連帯、マンネリ化した地方幹部への批判という構図に置き換えられていくのである。
もちろん、こうした描き方が出来るようになったのは、社会主義と協同組合制度がすでに成熟期を迎えていたからであろう。同時に、制度は変わっても牧畜を支えていたのは昔ながらの牧民たちであったことも想像させる。