2001.10.1 浜 邦彦
(11. 11 改定)
9.11事件を考えるための文献リスト+
■どこから・いかに見ているのか,誰が・誰のために語っているのか
- エドワード・サイード,『イスラム報道――ニュースはいかに作られるか』,みすず書房,1986[1981]年.
- 岡真理,『彼女の「正しい」名前とは何か――第三世界フェミニズムの思想』,青土社,2000年.
■パレスチナ
- 広河隆一,『パレスチナ』,岩波新書,1987年.
- エドワード・サイード,『パレスチナへ帰る』,作品社,1999[1992-1999]年.
- イブラーヒーム・スース,『ユダヤ人の友への手紙』,岩波書店,1989[原著1988]年.
■イスラーム
- 小杉泰,『イスラームとは何か』,講談社現代新書,1994年.
- 井筒俊彦,『イスラーム文化』,岩波文庫,1981年.
- ナワル・エル・サーダウィー,『イブの隠れた顔――アラブ世界の女たち』,未來社,1988[1980]年.
- V.S.ナイポール,『イスラーム再訪』(上・下),岩波書店,2001[1998]年.
■アフガーニスターン
- モフセン・マフマルバフ,『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない.恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』,現代企画室,近刊(11月26日発売).
- 佐々木徹,『アフガンの四季』,中公新書,1981年.(絶版)
- スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ,『アフガン帰還兵の証言――封印された真実』,日本経済新聞社,1995[1991]年.(絶版)
- 長倉洋海写真集,『獅子の大地――Jihad of MASSOUD』,平凡社,2000年.
- 中村哲,『ダラエ・ヌールへの道――アフガン難民とともに』,石風社,1993年.
■原理主義
- 臼杵陽,『原理主義』(思考のフロンティア),岩波書店.
- 鵜飼哲・港千尋・西谷修,『原理主義とは何か』,河出書房,1995年.
- フェティ・ベンスラマ,『物騒なフィクション――起源の分有をめぐって』,筑摩書房,1994[1994]年.
注意: 授業でも強調したことですが,10月1日現在では,9.11「テロ」事件と「パレスチナ」なり「イスラーム」なり「原理主義」なりとのつながりは,何ら法的にも立証されていません(だから「報復」というのはばかげたレトリック以外の何物でもなく,こんなレトリックにもとづいて戦争行為をしかけるなら,それは侵略戦争と変わりありません).それでもこれらのテーマを選んだのは,それらがあたかも当然であるかのように「テロ」と結びつけられてしまった,その土壌となっている無知と無関心,想像力の欠如を,この機会に少しでも克服する努力が必要だと痛感するからです.
ここに挙げた本は,いずれもその道案内になってくれると浜が考えるものです.とはいえ,いずれも専門外の個人がさしあたり手近にあった本から選んだもので,これが最良の入門だと言うつもりはありません.
10月2日追記: さっそくですが,順番を変えて手直ししました.
10月4日追記: 『アフガンの四季』を追加しました.
10月9日追記: サイード/モアの『パレスチナとは何か』に替えて,『パレスチナへ帰る』を挙げました.理由は推測してください.パレスチナ警官隊の発砲で死傷者が出ているというニュースを聞きながらのことです.
10月12日追記: イランのモフセン・マフマルバフ監督が,カンヌを呆然とさせた『カンダハール』のあとで綴ったレポートにリンクしました.『朝日新聞』の「天声人語」でも紹介されていましたが,ひとりの表現者としての限界の地点をめぐって書かれているこれらの言葉には,おそろしく喚起力があります.日本の入管の仕打ちを知ったら,監督は何と言うでしょう? さらに何体の大仏が,恥のために崩れ落ちなければならないのでしょう? なお映画『カンダハール』は11月19日に東京映画祭(FILMeX)で上映されます.この文章もそれに合わせて現代企画室から日本語訳が刊行されます.
10月18日追記: マフマルバフ監督のテクスト,刊行予定がわかったのでリンクを修正しました.その他オンラインで読める(読んでほしい)アフガン関係の記事は,ここにまとめました.こちらも徐々につけ加えていく予定です.
10月26日追記: 長倉洋海さんの写真集を追加しました.「北部同盟」を率いていたマスード司令官と行動をともにし,撮りつづけたフォト・ジャーナリストによる,あまりにも人間的な写真記録.
11月8日追記: 中村哲医師の『ダラエ・ヌールへの道』を追加しました.巨費を投じた諸外国の「援助のオリンピック」に目もくれず,ひたすら現地の「山の民」への信頼を貫いた独自の活動の記録は深く衝撃的であるとともに,まちがいなくアフガニスタンの峡谷に生きる人々の姿を伝えてくれるものだと思います.中村医師の原点といえるでしょう.
11月11日追記: 復刊ドットコムにリンクしました.どれだけ力になるのかはわかりませんが,ただ良書を守りたい一念です.
なお,授業で配ったサーダウィーやサイードの文章の翻訳は,パレスチナ・オリーブのページをご覧ください.