■『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない,恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』「天声人語」が紹介して話題になっているモフセン・マフマルバフ監督の「アフガン・レポート」の日本語訳が,現代企画室から緊急出版されることになりました.表題のテクスト以外にも,ユネスコ《フェデリコ・フェリーニ賞》受賞記念スピーチや,イランのアフガン難民追放の法案(今年6月)に抗議するハータミー大統領宛ての公開書簡も,併せて本になります.
モフセン・マフマルバフなお原文(ペルシャ語)と英訳,仏訳は,マフマルバフ・フィルムハウスのホームページ
『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない,恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』
武井みゆき・渡部良子訳
現代企画室 11月30日発行,1,300円(本体)+税. (第6刷発売中)
◆■現代企画室ホームページ: http://www.shohyo.co.jp/gendai/index.html (授業でお話した太田昌国さんの9.11事件インタビューその他も,ここで読めます)http://www.makhmalbaf.com/books.asp?b=b14で読めます.単行本になったら,ぜひ買ってくださいね.現代企画室は,いまの日本では数少ない,良識ある独立系の出版社です.こうした小出版に対して私たちにできるもっとも直接的なサポートは,要するに「いい本は自分で買う」(つまらない本は,借りて読む)ということです.これは出版物にかぎらず,「豊かな国」の消費者ができる,ごく身近で日常的な選択です.(01.10.18)
追記: なお,このテクストの抄訳(英訳版からの重訳)は,いま発売中の『現代思想』臨時増刊号で読むことができます.(01.10.26)
■映画『カンダハール』マフマルバフ監督の映画『カンダハール』が,東京映画祭(FILMeX)で特別上映されます.アフガン難民を主人公に据えた『サイクリスト』でイラン映画の「民衆のヒーロー」となった監督が,13年の間をおいて撮ったアフガニスタンの映像は,言葉のあらゆる意味で「ライフ・ワーク」と呼ぶにふさわしいものに違いないと想像します.
11月19日(月),16:00開映. (終了しました)詳しくは,東京FILMeX
有楽町朝日ホール.
http://www.filmex.net/を見てください.(01.10.18)追記: 行ってきました.いろんな意味で予想を裏切られた(超えた)映画でした.『サイクリスト』で予想を裏切られた(超えていた)のと,たぶんよく似た意味で.今回はかなり限られたチャンスだったので,見たくても見られなかった人も多かったと思います.来年1月に新宿武蔵野館3(新宿三越裏,旧シネマ・カリテ)で公開されますので,お楽しみに.ぼく自身のレビューは,『インパクション』に書く予定です.(01.11.20,訂正12.17)
●上映予定 (公開中)
東京・新宿武蔵野館(1/12-),大阪・心斎橋パラダイスシネマ(2/2-22),沖縄・那覇スカラ座(2/2-),神戸・三宮アサヒシネマ(2月16-),松本CINEMAセレクト(2/20-24),名古屋シネマテーク(2/28-),福岡シネサロン・パヴェリア(3/2-),静岡サールナート・ホール(4/27-),京都朝日シネマ(3月),岡山シネマ・クレール(3月),金沢シネ・モンド,札幌シアターキノ,ほかで全国ロードショーが決まっています.(02.01.09,訂正01.24)
■「何より希望がなかった」――日本人女性が見たアフガン難民「アフガン女性と子どもを支援する会」 の田丸瑞穂(みほ)さんが語った,パキスタンのアフガン難民キャンプの様子.胸にせまります.11月5日の『東京新聞』が掲載しました.(01.10.18) →東京新聞
■アフガニスタン女性と子どもの写真展今日から24日まで,飯田橋セントラルプラザ1階,区境ホールです.無料. (終了しました)
詳しくは,
http://watan-jp.hoops.ne.jp/Special/Shasin_ten.html (「アフガン女性と子どもを支援する会」)
(01.10.18)追記: 今日行ってきました.たいへんすばらしい内容でした.この写真展の内容を含んだ川崎けい子さんの写真絵本,『この子たちのアフガン』は,オーロラ自由アトリエ から11月下旬に発売されます.(01.10.25)
追記: 引きつづき,11月28日から 北九州市立女性センター“ムーブ”,12月5日から クレヨンハウス 東京店(表参道駅A1出口3分),12月8日,9日に さいたま市民会館うらわ(JR浦和駅7分),12月20日から 中野区勤労福祉会館(JR中野駅南口3分),12月22日から 名古屋市東別院会館,で写真展が開かれます.詳しくは上記サイト内の 記者会見資料 を見てください.(01.11.21)
■中村哲氏講演「孤立のアフガン」お詫び: 中村哲医師が福岡河合塾で9月30日に行った講演の抄録を転載していましたが,ペシャワール会に問い合わせたところ,ホームページのほうを見てほしいというご希望をいただきました.そのため,これまで掲載していた「孤立のアフガン」は取り下げます.ご了承ください.
中村哲医師については,今回たいへん重要なはたらきをされている方なので,ご存知だと思います.ペシャワール会の活動や中村医師の著書,レポート,講演会の日程等は,ぜひこちらをご覧ください.
ペシャワール会(01.10.26)
追記: 17日の社会文化会館での講演会,行ってきました.それほど宣伝していたとも思えないのに,盛況どころか,680人の定員は開場前に全て埋まり,「一人でも多くの人に」という主催者側の苦肉の策で,通路,さらにはステージ上にまで聴衆を座らせて,最終的には1,200人以上が入っていたと思います.(それでもなお,入りきれず諦めて帰った人々が多数いました) すごい熱気でした.確実に消防法違反でしょうね(笑).これもまた,ペシャワール会流というか…….
17日の講演のビデオも販売されます.
中村哲医師東京講演実行委員会宛てに申し込んでください(1本2,000円,収益はもちろんペシャワール会).中村医師とペシャワール会のこれまでの活動,主著4冊(いずれも石風社)のハイライトやその後の状況も,まとめて知ることができるでしょう.今後の講演日程は,ペシャワール会のホームページ を見てください.(01.10.18)
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-10-1Zビル5階 労住医連 気付 (FAX03-3636-2372)追記: すでにこの講演の抄録がいちはやくMLやWeb上で流れている様子です.それもまた,上に書いた「熱気」を表わすものだと思いますが,ぼくとしては,まず中村さんの主著を読まれることをお薦めします.『ペシャワールにて』(1989年),『ダラエ・ヌールへの道』(1993年),『医は国境を越えて』(1999年),『医者 井戸を掘る』(2001年,以上石風社)はいずれも書店で入手可能です.(01.11.20)
追記: なお ACT新聞 が掲載した講演記録 「アフガンで起きている本当のこと」 は,かなり正確に中村医師の講演内容を伝えていると思います. (念のため断っておきますが,ぼく自身が,中村医師の考えのすべてに賛同しているという意味ではありません.それは当然のことでしょうが) (01.11.21)
■よみがえれカレーズ (終了しました)実は日本でも,アフガニスタンを撮っていた映画監督がいます.ソ連軍撤退期に撮影された,土本典昭ほか監督の『よみがえれカレーズ』(1989)がその作品です.土本監督は水俣を撮りつづけた映画監督として有名ですが,それだけでなく,日本のドキュメンタリー映画の歴史はこの人抜きにはありえない,というぐらいに大きな存在です(そして日本映画そのものが,実はドキュメンタリー映画抜きにはありえないのですが).『SHOAH』のクロード・ランズマン監督が来日した時にも,それぞれの作品を上映して対話する相手となりました.今度はマフマルバフ監督と対話ができる機会になるのでしょうか.楽しみです.
BOX東中野 にて,11/3〜11/30詳しくは土本典昭のホームページ
モーニングショー 毎朝10:15 開映 (12:15 終映)
料金:前売り券1200円 当日一般 大高1400円/中シニア1000
http://www2.ocn.ne.jp/~tutimoto/index.htmlを見てください.ちなみに撮影には,『教えられなかった戦争』3部作の高岩仁監督が加わっています.(01.10.18)追記: 今回,残念ながらマフマルバフ監督は来日できなくなりました.急遽アフガン難民のドキュメンタリーを撮ることになったためだそうなので,その成功を祈ることにしましょう.(01.11.20)
■報復しないのが真の勇気「アフガン関連」の趣旨からはやや逸れそうですが,一表現者のメッセージとして読まれるべき内容をもっているのが,9月の『朝日新聞』に寄せられた 坂本龍一 さんのコメントです.ご覧になった人も多いでしょうが,今回読み返してみて,いいものだと思ったので紹介しておきます.坂本さんのサイトも見てください.「祈りの瓦礫」は,名前をクリックするとメッセージを読むことができます.(01.10.19) →asahi.com
■知識人の発言その他これも「アフガン関連」にかぎりませんが,エドワード・サイード,ノアム・チョムスキー,スーザン・ソンタグ,スラヴォイ・ジジェクほか,著名な知識人の9・11以後の発言は,あちこちのサイトやMLでとりあげられています. 中山元さんの 哲学クロニクル では,中山さんの翻訳・紹介でまとめて読むことができます.こちらは哲学・思想向け.
なお授業で配ったサイードやサーダウィーのテクストは,パレスチナ・オリーブのホームページで早尾貴紀さん,皆川万葉(まよ)さんが翻訳してくれたものです.このページのパレスチナ緊急情報は必見です.パレスチナではいま,別の「報復戦争」がはじまっているのです. (01.10.19)
■「アフガニスタンではハザラ人というだけで身柄を拘束され,
日本ではアフガニスタン人というだけで収容された」この「アフガン関連テクスト・情報」ページをつくろうと思ったそもそものきっかけは,難民認定申請中の在日アフガン人9人が,東京入管に強制収容される(10月3日)というニュースにショックを受けたことでした.その紹介が後回しになってしまいましたが,このあまりの不条理をどう言葉にしたらいいのか,本当にわからなかったのです.難民支援のためと称して,わざわざ「日の丸」のついた自衛隊輸送機をパキスタンまで飛ばしたその国が,パキスタンから助けを求めてきた難民を強制収容し,戦地のアフガニスタンに送り返そうとしている…….
その国には「客人歓待」の精神のひとかけらもないのでしょうか? 共同通信(19日)によれば,米国の報復攻撃後,警察庁と法務省がアフガニスタン人の「チェック」を指示した,とあります.ターリバーンに命を狙われて難民となったハザーラ人を,「テロリスト」ではないかと疑っているのがその国の警察であり,その国のお役所なのです.その国が認めた難民の数は,10年間でわずか49人だといいます.この愕然とするような事実の経緯は,どうか以下のサイトでご自分で確かめてください.
在日アフガン難民問題の現在この緊急ページをつくってくれたのは,日本で難民認定を求めているイラン人のゲイ男性シェイダさんの救援活動をしている チームS・シェイダさん支援グループ の稲場雅紀さんです.なぜイラン人ゲイ男性が難民認定を申請しているのかわからない人は,東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 で上映された,ネストル・アルメンドロス監督の『猥褻行為〜キューバ同性愛者強制収容所』(1984年)という映画の話を思い出してください.それは「ホモ」(maricón / faggot)の疑いだけで逮捕・収容される国の話でした.そしてまた別の,国民のほとんどが「この国には同性愛者はいない」と思っている国のひとつ,イランには,同性愛者を死刑にできる刑法があるのです.(01.10.24)
■ソクーロフの精神(こころ)の声 (終了しました)驚きました.これも観ていなかったのですが,アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画『精神(こころ)の声』(1995)もまた,アフガニスタン・タジキスタン国境で撮られていました.戦地でのロシア軍駐屯兵たちの日常をビデオ・カメラで静かに凝視した,全5話,5時間半にわたる大作です.アレクシエーヴィチの『アフガン帰還兵の証言』を読んでしまったあとでは,ソクーロフが魂の眼でとらえた兵士たちはどんな姿をしているでしょう? 現在 BOX東中野 にてオールナイト上映中です.11月10日(土),17日(土),23日(金),12月1日(土)の23:30より.
なお,ソクーロフ監督は島尾ミホさんを訪ねて,奄美にも渡っています(A.ソクーロフ・島尾ミホ・吉増剛造,『ドルチェ―優しく』,岩波書店,2001年).そのときの様子は,ソクーロフのすばらしい翻訳者である 児島宏子さんの奄美日記 で読むことができます.こちらもおすすめです.(01.11.06)
■その他のリンク集ほかにも,ここではとても紹介しきれないぐらい,たくさんのテクストや情報がオンラインで読めます.その入り口になりそうなところを,ひとつだけ.加藤哲郎 さんによるリンク集.圧倒的です.
イマジンこれだけ世界中でさまざまな人たちが考え,祈り,声をあげ,行動しているというのに,なぜ殺戮と破壊を続けられるのか,とすら思いたくなります.(01.10.19)
IMAGINE GALLERY
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写真について: モフセン・マフマルバフ監督の映画『カンダハール』のスチール写真から,転載です.この人たちは全員女性で,ブルカと呼ばれる,顔まで隠してしまうヘジャーブに身を包んでいます.「イメージなき国」のイメージとして鮮烈だったので,使わせてもらいました.写真の女性たちは本を囲んで,おそらく左手前の人が読み聞かせているのでしょう,知識を共有しようとしている場面であることがうかがえます.それともこれは,女性たちにとって何が許され,何が禁じられているのかを必死で確かめようとしている場面なのでしょうか? (ターリバーンは,女性の教育も読み書きも禁じています) 追記: 実はそのいずれでもありませんでした.これまた,思い至らなかったことを自分に責めたくなるような場面だったわけですが…….もっともネタバレではつまらないので,ここには書かないことにします. (01.11.20)