2015年度卒業論文・卒業研究の要旨

一丸夕花 インドネシアにおける環境教育の現状と若年層の環境意識の変化―ジャカルタ首都圏におけるゴミ問題の事例から―

種別:卒業論文

本論文ではインドネシアのジャカルタ首都圏に生活する都市住民によるゴミのポイ捨ての習慣をなくすべく、その解決策としての「環境教育」に焦点を当て、教育の現状・効果と今後の課題を考察した。

筆者はインドネシアのジャカルタ首都圏において年々深刻さと多様さを増すゴミ問題は都市住民による日常的なゴミのポイ捨て行為に根を持つものであるとの問題意識をもち、人々によるゴミのポイ捨ての習慣は幼い頃からの「環境教育」の実施によって改善できるのではないか、との仮説を立て検証した。

第1章では、はじめに開発の時代から現在に至るまでのインドネシアの環境問題が社会的・経済的要因を伴って多様さを極めていることを説明した。次にジャカルタ首都圏における環境問題について述べ、中でも都市における廃棄物処理問題について言及し、人々によるゴミのポイ捨ての習慣の問題について述べた。また、そうした習慣を根本的に解決するためには環境教育の実施が有効であるとの仮説を立てた。第2章では環境教育の世界的なはじまりと展開、日本における環境教育の現状について述べた。第3章では、文献や統計資料をもとにインドネシアの学校・家庭・地域それぞれの場で行われている環境教育の内容および実施状況を述べた。また、筆者がジャカルタ首都圏内ブカシ市の高校生を対象に行ったゴミ問題に関する意識調査アンケートをもとに若年層の環境意識や参加態度について示した。最後に、学校・家庭・地域において実施されている環境教育の現状を概観し、環境教育が若年層の環境意識の向上に寄与した点や今後改善すべき点などを考察した。

木村花菜子 インドネシアにおける日系外食産業の現状と今後

種別:卒業論文

本論文では、インドネシアにおける日系外食産業に注目し、その現状と今後について論じた。インドネシアに進出し、事業を展開している日系外食チェーン店に焦点を当てて調査を行うことで、その事業展開の現状を明らかにし、現在のインドネシアにおいて事業展開が進んでいる理由と今後のインドネシアにおける日系、また日本風の外食産業の可能性についてまとめることを試みた。

序章では、動機と目的、問いや、現在のインドネシアの概況、論文内で用いる言葉の定義について述べ、本論文の意義を示す章とした。第1章においては「外食・外食産業」自体について把握した。外食とは何か、その起源はどこにあるのかといったところから、日本における外食・外食産業の発展を捉えたのち、日本での外食産業の発展の歴史と比較する形でインドネシアにおける外食・外食産業について述べた。第2章は、「インドネシアにおける日系外食産業の現状」とし、日系外食産業の実際の進出例を見ていった。具体的には、ラーメンの一風堂、カレーのCoCo壱番屋、牛丼の吉野家の3社を取り上げ、各企業の事業例について把握したのち、その進出理由を主体側のものと客体側のものに分けて説明した。同時にインドネシアで展開が進む日本的外食産業についても、筆者が実際にインドネシアを訪れた際に目にした様子を交えながら紹介した。第3章では、「インドネシアにおける日系外食産業の今後」について考えることとし、3社の進出状況や聞き取り調査を参考に進出にあたっての文化的・経済的問題について具体的に述べている。それらの問題について触れていく中で、今後の日系、また日本的外食産業の今後の展開について考察を行った。

茶納麻友子 外国人技能実習制度について―インドネシア人実習生の場合―

種別:卒業論文

本稿では、外国人技能実習制度についての現状について論じ、インドネシアと日本がwin-winになる外国人技能実習制度の在り方とはどのようなものかを考察した。研究方法は、2年生夏季休暇の実習生送り出し機関でのインターンシップの体験や、対インドネシアの外国人技能実習制度の関係者の方、インドネシア人実習生の方たちへのインタビューやアンケートの結果を中心に、文献やインターネットからの情報で執筆した。

第1章では外国人技能実習制度について、第2章ではインドネシアに対しての制度の在り方についてを、実習が行われる流れ、そして送り出し機関と監理団体の存在について、具体的な組織を挙げながら明らかにし、現状の課題等について論じた。第3章では対インドネシアの制度の在り方の今後について述べ、実際にインドネシア人の実習生、実習生候補、帰国者らに行ったアンケート結果をまとめた。終章では第3章までの内容を踏まえ、外国人技能実習制度はどうあるべきか、そしてどのように実施することでインドネシアと日本の両国がwin-winとなる制度となり得るのかについて自分の考えをまとめた。

筆者は「国の制度として曖昧な点があることが、実習生側と企業側の両方で意識のギャップが生まれる原因ではないか」という仮説を立て、調査し論文を執筆した。

実習中は企業と雇用関係を結ぶため、上下関係が生まれる可能性は否定できない。そこで重要な役割を担うのが、監理団体である。監理団体は企業と実習生の双方をサポートする。しかしアンケート調査や監理団体へのインタビューを通して、企業からの費用でビジネスが成り立つ監理団体が本当に中立の立場となることは難しいことが分かった。このことから技能実習制度がより両国に対等なものとするには、金銭・法制度等の面で今以上の国の介入が必要不可欠であると結論づけた。

寺岡奈々 Tere Liye著「落ち葉は風を恨まない」翻訳

種別:卒業研究

本研究は『落ち葉は風を恨まない』(インドネシア語原題『Daun yang Jatuh Tak Pernah Membenci angin』の全訳を行ったものである。本著は2010年にGramedia Pustaka Utama社から出版されたTere Liyeによる小説である。2015年11月には英語訳が出版された。

作者Tere Liyeはまさに現在活躍中の新進気鋭の作家であり、これまでに多くの著書を発表し、そのいくつかは映画化されている。本研究を通し、インドネシアの文化、社会、価値観等を作品から学び、また現代インドネシアの作品を日本語で紹介することを目的とした。

八木高鋭 インドネシア工業化に見る直接投資の現状と課題―日本企業による直接投資の傾向分析を中心に―

種別:卒業論文

本論文では、インドネシアの経済開発に外国資本の果たした役割を概観し、外国資本の代表的存在でもある日本がどのような直接投資の傾向を有しているのか探る目的のもと、近年の日本企業からアジア11カ国への直接投資の傾向を分析した。 

近年目覚しい経済発展を遂げつつあるインドネシアだが、その工業化の歴史を辿れば外国資本の果たした役割の大きさは無視できない。だが過去を振り返れば、74年にはマラリ事件として知られる反外資・反華人運動が起こり、外資・華人に対する規制策の強化に乗り出すなど、必ずしもインドネシアと外国資本は協調関係を維持してきた訳ではない。このことから、外国資本による利潤追求活動は、受入国の望む経済発展の姿と必ずしも一致してこなかったと言える。では、時として受入国の思惑と相反する外国資本による投資の意思決定は、何を基準にして行われているのだろうか。本論文の問題意識はこのような点に端を発している。

第1章では、先行研究および文献を参照し、インドネシア工業化と外国資本との関係性を時代ごとに実施された政策や産業構造、経済統計といった側面からそれぞれ述べた。第2章では直接投資の傾向について、2010年に財団法人国際東アジア研究センター(ラムステッターら)により発表された先行研究を用いて分析を行った。まず、日本の対アジア直接投資額の総額を、上記研究により把握された各国の魅力度に対応させる形で按分し、標準となる各国に対する直接投資額を算定する。これと実際に各国に対して行われた直接投資額を比較することで、現実に行われた投資と当該標準とにどれ程のギャップが存在するかを金額的に把握し、その投資傾向を検討した。最後に分析結果から明らかになった特徴として国家規模に対する過剰反応を挙げ、本論文の締めくくりとした。

柳谷光咲 インドネシアにおける水問題についての考察

種別:卒業論文

筆者はインドネシア留学中に断水を経験したことからインドネシアの水道事情に興味を持ち、卒業論文ではインドネシアにはどのような水問題があるのか、そしてインドネシアの水問題を解決する為に必要な事は何かを考察することを目的とした。

論文においては、はじめに水問題とは何かを説明し、世界の水問題やそれらに対する現在の国連の取り組みなどについて紹介することで序章とした。次にインドネシアにおける水資源の特徴を国連のデータや文献を参考にしながら分析した。その結果、同国には水資源の減少、水資源の偏在という特徴があることが分かったため、さらにそれらの原因について言及した。これらの特徴を踏まえたうえで、次にインドネシアの水資源の需要と供給の現状について調査した。その結果人口増加や生活向上による水資源の需要の増加、及び水道水、地下水両方における供給源の脆弱性というインドネシアの水道事業の実態が明らかとなった。以上のことから、インドネシアには大きく分けて水資源の減少と供給体制の不足という水問題があると結論付けることができた。そのうえで、それらの水問題解決に向けて現在行われている政府や民間団体による取り組みを評価することで、インドネシアの水道事業を健全化するにはどのような対策が本当に必要なのか考察した。そして最終的に、インドネシアは水道事業公社の運営を健全化させることを第一優先とし、その為には国内における努力のみならず、国外からの資金、技術、人材面における支援を積極的に受け入れていくべきだという持論に至った。

山添美優 Permainan-anak-anak: Lima belas permainan Jepang

種別:卒業研究

 卒業研究として、インドネシアの保育・幼児教育の改善を目的とした絵本を制作しました。絵本の中身は、インドネシア語で日本の遊びを紹介する、というものです。このテーマを選んだきっかけは、インドネシアを訪れた際子どもたちと交流し、インドネシアの子どもに興味を持ったことです。しかしインドネシアの保育・幼児教育では、就園率増加に力を注いできたために、教育の「質」が伴わず、遊びに対する理解のない教育が行われているということを知りました。その原因は、非正規施設の保育者が必要な教育を受けていなかったり、親が遊びよりも勉強が大切だと認識しているからでもあります。このような課題を解決するため、親や保育者の幼児教育に対する認識に着目し、幼児期における遊びの重要性を伝える目的で本を制作しました。

絵本の内容は、1.はじめに、2.日本の遊びの紹介、の大きく2つに分けられます。まず、1.はじめに、の部分では、幼児期における遊びの重要性、本書の使い方、日本の遊びの中で用いられる専門用語、を伝えています。

次に、2.日本の遊びの紹介、の部分では、15個の日本の遊びを紹介しています。外遊びはだるまさんが転んだ、宿おに、缶けり、地蔵おに、目隠しおに、渦巻きじゃんけん、陣取り合戦、王様ドッジボール、Sケン、高おにの10個、室内遊びははんかち落とし、何でもバスケット、ごっこ遊び、遊びを創造しよう1!、遊びを創造しよう2!の5つを紹介しています。

本書は大人に読んでもらい幼児期の遊びの重要性を伝えたいという目的ではありますが、親子で共に本を読みながら、遊びの楽しさを共感してほしいという思いから、子どもが内容を理解しやすいように、遊び紹介の部分では手書きの絵を載せています。