2012年度卒業論文・卒業研究の要旨

佐藤仁紀 中国の海洋進出と軍事戦略について

種別:卒業論文

2012年に日本で最も注目された話題の一つは尖閣諸島問題である。これに関連して、中国の活発な海洋活動について、一部報道では覇権の拡大であるという論調を筆者からすると曖昧で短絡的な根拠から展開している。このため中国が海洋進出を推し進める納得できる理由を知りたいと思い、本論文を執筆することにした。

本論文は、近年活発化しつつある中国の海洋進出について、軍事・非軍事両要因の歴史を概観することによってその意図と時間的理由を明らかにして、周辺諸国に与える影響と課題について考察している。以下が具体的な展開である。

第2章で中国の重化学工業化とエネルギー政策の歴史を、第3章で軍事戦略と海洋進出の歴史を概観して、海洋進出の意図にはエネルギー・資源・台湾問題などの要因が絡み合っていることが確認できた。第4章では米国が軍事戦略の転換を迫られていること等、中国が他国の安全保障政策に与える影響が少なくないことを述べ、続く第5章では軍事・非軍事両面から大国として周辺諸国に不信感を与えない姿勢をとる責任を果たすべきと結論づけた。

鈴木彩華 インドネシアにおける日本のロックバンドL'Arc〜en〜Ciel受容―インドネシアにおけるL'Arc〜en〜Cielファンコミュニティから考える―

種別:卒業論文

インドネシアにおいて日本のアニメや音楽など日本の文化は非常に人気がある。2012年日本のロックバンドL'Arc〜en〜Ciel(ラルクアンシエル)がインドネシアのジャカルタで初めて行ったライブは1万人以上を動員し大成功をおさめた。私は動画投稿サイトYoutubeにアップされていたL'Arc〜en〜Cielのジャカルタライブの様子を見て、日本でのL'Arc〜en〜Cielのライブと比べ男性ファンが多いこと、観客が終始インドネシア語でも英語でもなくほぼ日本語の歌詞であるL'Arc〜en〜Cielの歌を熱唱し大盛り上がりであるのに驚いた。そうした中インドネシアの地方紙の1つJakarta Postのオンラインの記事によって、インドネシアにはface book上のページを通して生まれたL'Arc〜en〜Ciel IndonesiaというL'Arc〜en〜Cielのファンコミュニティーがあるということを知った。L'Arc〜en〜Ciel IndonesiaのサブコミュニティーであるL'Arc〜en〜Ciel Yogjakarta、Cielers Depok主催のオフ会に実際に参加することなどを通してインドネシアにおけるL'Arc〜en〜Cielの文化的な受容について考えていくことにした。

第1章では本論文の研究概要を述べている。続いて、第2章ではまずL'Arc〜en〜Cielに関する情報をまとめた。L'Arc〜en〜Cielとは何か、バンド結成からこれまでの活動内容、作品について説明している。第3章では海外との関わり、第4章ではインドネシアとの関わりに焦点を当てL'Arc〜en〜Cielのこれまでの活動や国外での人気などについて述べている。第5章ではインドネシアにおけるL'Arc〜en〜Cielのファンコミュニティーについて言及している。実際にインドネシアに赴き、ジョグジャカルタとデポックにあるL'Arc〜en〜CielのファンコミュニティーL'Arc〜en〜Ciel Yogjakarta、Cielers Depokのオフ会に参加した際の様子をまとめた。第6章ではL'Arc〜en〜Ciel Yogjakarta、Cielers Depokのメンバーに実施したL'Arc〜en〜Cielや所属するファンコミュニティーに関するアンケート結果をまとめた。最後第7章ではインドネシアにおける日本のロックバンドL'Arc〜en〜Cielの文化的な受容について考察している。

村松靖史 インドネシア開発の未来―希望ある開発に向けて―

種別:卒業論文

なぜODAについて卒業論文で取り上げようしたのかというと、元々、国際支援に深い関心があったからである。過去には国際支援に携わる仕事がしたいと考えていた時期もあった。もう一つの理由としては、現在のように、日本も大変な問題を抱えている状況であると、国外に構う余裕はないという世論が自然になってくる。こんなときこそ国際支援について考えるべきなのではないかと感じたからだ。

私は大学で、東南アジア、特にインドネシアのことを学んできた。インドネシアという国は日本のODAの最大の受益国であり、ODAを活用することで経済を豊かにしてきた。現在、インドネシアは目覚ましい経済発展をしているが、日本のODAはこの発展に大きく貢献していると思う。卒業論文を執筆するために文献を読み込むうち、特にそのように考えるようになった。日本とインドネシアはすでに密接に関わり合い、良い関係を築いている。この論文には、それをもっと生かして欲しいという思いを詰め込んだと思っている。

今回の卒業論文は、「インドネシア開発の未来~希望ある開発に向けて~」と題し、ODAを利用したインドネシア開発の将来の可能性について探っていく。インドネシアは非常に文化的に多様であり、人口の多い国である。この国が発展すれば、日本にとって、また世界の国々とって、より魅力的な市場が出来上がる。

この卒業論文では、第1章では、日本のODAについて広く触れていく。まず、基礎的なODAの知識を確認する。そして、日本のODAの地域別政策について触れ、日本のODAの諸課題について記述する。第2章では、東南アジアおよびインドネシアに対する日本のODA政策の特徴を明らかにする。そして、第3章が中心テーマである。第1章、第2章を踏まえた上で、インドネシアにはどういった分野で、どういう援助をするべきかを提案する。日本がインドネシアで行う未来の開発として、具体的に、新幹線と地熱発電を取り上げている。新幹線については、インドネシアにおける高速鉄道の分野の開発可能性について検討している他国がいくつか存在するので、日本は他国の高速鉄道との競争に勝たなければならない。他国との競争に勝つためには、日本の新幹線の「安全性」を強くアピールするべきであるという提案がされている。地熱発電については、日本とインドネシアが共に地熱発電の大きな可能性を持っているということに触れ、共に協力して発展する地熱発電開発を提案している。地熱発電事業で優秀な技術を持った企業を抱えている日本は、現在、日本よりも地熱発電開発に対して積極的であるインドネシアに対して、日本の企業、政府が一体となって、積極的にインドネシアで地熱発電の開発と研究を進めていく。それを活かして、将来、日本でもより効率的な地熱発電事業ができるようにするというものである。