2008年度卒業論文・卒業研究の要旨

亀川真吾「インドネシアにおける宗教教育とポンドック・プサントレン教育の特徴―ポンドック・ゴントルを例に―」

種別:卒業論文

2001年9月11日の世界貿易センターを主要標的とした同時多発テロ以降、イスラームは報道を通じて凶暴な宗教であるというイメージが世論に広まった。インドネシアに関しても、2002年10月12日に起こったバリ島での爆破テロ以降の観光客の減少に見られるように、報道の中に見られるイスラームと同様の危険性を帯びているというのではないかという認識が広まったことも確かである。そこで、インドネシアのイスラームはどのようにして形成されたのか、その社会を担うムスリムはどのような教育を受けてきたのかという点に着目した。学校教育を取り上げ、一般学校と宗教学校、及びポンドック・プサントレン(Pondok Pesantren)と呼ばれるイスラーム教育機関について考察する。

本稿ではイスラーム教育に特化したポンドック・プサントレンが生徒らを引き付ける要因を明らかにすることを目的とする。第1章ではイスラームを概観し、現代のインドネシアにおけるイスラームの諸相を明らかにする。第2章ではインドネシアにおけるイスラーム教育を一般学校、宗教学校、ポンドック・プサントレンの学校制度の相互の関係を考察する。第3章では、東ジャワ州にあるポンドック・モデルン・ダルッサラーム・ゴントル(Pondok Modern Darussalam Gontor)を例に、実際のポンドック・プサントレン内部の様子や教育内容を紹介し、第4章では学校制度の比較とポンドック・プサントレンの生徒への質問を通し、ポンドック・プサントレンが生徒を引き付ける要因を明らかにする。

斎藤 司「東アジアの羽衣説話」

種別:卒業論文

 

藤野 峰「『パシコムおじさん』を通して見るインドネシアの中間層の人びと」

種別:卒業論文

風刺とは、対象を客観的に観察し、リアルかつシニカルに表現することで、受け手に対しより有効的にインパクトを与えて、注意や喚起をうながすものである。

インドネシアでは、人びとの日常生活を風刺的・教訓的に描いた文学作品が多く残されてきた。その内容は主に、オランダ・日本統治時代を通して経験したこと(村の古いしきたりと新しい時代の価値観との間で悩む若者の葛藤、キリスト教・ヒンドゥー教・イスラム教の道徳観の比較、反植民地・反西洋主義など)が中心で、1900年代の民族覚醒の潮流にあわせて徐々に作品が生まれた。

近現代に入ってから、風刺的精神は文学作品の枠を超えて庶民の間で「言葉遊び」という形でも親しまれるようになった。たとえば、有名なのは「KKN」という略語を用いた皮肉で、本来これは「Kuliah Kerja Nyata」(大学の職業実習の科目)という意味だが、「Korupsi Kolusi Nepotism」(汚職・癒着・縁故主義)や「Kecil-Kecil Nekat」(無謀なちっちゃい奴=ハビビ大統領)とよく表現されることがある。

筆者はこのようなインドネシアの風刺文化に興味があったので、本稿では、「Kompas」というインドネシアの大手日刊紙に掲載されている風刺漫画「Oom Pasikom」(パシコムおじさん)を題材にした。

第1章では出版メディアをとりまく環境、第2章では開発体制期の中間層の特徴を概観し、第3章では「パシコムおじさん」の分析を通して、私たちは開発体制期の中間層をどのように解釈できるのか、そしてそのキャラクターがどのような性質を帯びているかを検証する。