連載ノンフィクションエッセイ 第2回

あのお弁当屋「三吉」との出会いから早数ヶ月がたっていた。その頃の私はといえば、普段昼ごはんには学食を使い、夜はコンビニや近くのファミレスで食べることが多かった。なかなか自炊する時間もなく、家ではシリアルなどを食べることが多かった時期のことだ。

お弁当屋「三吉」との再会を果たしたのは、そう、とある研究室に私がお世話になっていた頃の話だ。その研究室では、何人かが一緒に夕食としてお弁当を注文する習慣があった。「三吉」では、あらかじめ電話で注文しておけば、後で待たずに取りに行くことができた。特に昼や夕方の混雑時には、店頭で注文して脇に置いてある雑誌類を読みながら待つこともできるが、なんせ日々の研究で忙しいことこの上ないゼミ生たちは、できるだけ合理的に時間を使いたいと思ったのだ。混雑時、場合によっては店頭で20〜30分待つこともある。それだけ三吉にお客がおしかけてきているというのは喜ぶべきことであろうけれども、さすがに長い間店頭で待つのはしんどいところがある。

ゼミ室の入り口となる扉には様々な掲示物があるが、その中でも異彩を放っているのが、「三吉」のメニュー一覧である。実際に行くとわかるが、店頭でも所狭しと張られた数々のメニューに、始めて来る人は目を奪われる。「三吉」の底知れないパワーを象徴するかのようなメニューの多さは、三吉が持つ特徴のひとつとなっている。さらに、店頭のメニューにかかれたマスターのコメントは、おもわずクスッと笑ってしまうようなものから、「これやばいんじゃないの?」というようなものまで多岐にわたっている。

(第3回に続く)


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