◇◆ 卒業論文を書くために  A読む、書く ◆◇

 

「@これから始める」では、テーマを決めて文献リストを作るところまでいきました。

ここからは、リストアップした文献を読みすすめ、

自分の議論を組み立てて卒論の執筆に着手し始めるまでの流れについて、お話します。

 

【3】 リサーチ

多くの文献をリストアップできたところで、次は、どの文献から読んでいくかを決めます。

重要(のように思われる)文献から優先的に読むのはもちろんなのですが、勉強する手順としては、

一般書専門書、単行本論文、日本語(or 自分がいちばん楽に読める言語)外国語 の順に読むのが最も効率的なので、お勧めです。

自分のテーマに関係する日本語(or自分がいちばん楽に読める言語)の文献には、全て目を通すことを目標にしましょう。

そうすることで、そのテーマに関する研究史を把握できるようになります。外国語文献は、さしあたり主要なものから読むようにします。あとは余力次第。

 

1. 文献の入手

読もうと思った本や論文が外語大附属図書館にない場合、以下の4つの手段でお取り寄せをします。

@相互貸借 …大学等の図書館同士で本を貸し借りします。郵送料は実費になります。図書館を入ってすぐの階段下の机の引き出しに、申込用紙があります。
時期にもよりますが、手元に届くまでほぼ2週間程度かかります。貸出期間は、外語大図書館の資料に準じます(学部生=2週間)。

A文献複写 …大学図書館を通じて、論文や本の一部などのコピーを依頼できます。(著作権法上、全部はできません)
郵送料+コピー代(1枚当たりの額=相手方の図書館により異なる…30円前後が相場)を支払います。
これも、手元に届くまでほぼ2週間です。
以上、@Aについて詳しくは こちら(←大学附属図書館のページ「サービス概要」)

B紹介状 …自分で直接よその大学図書館などに行って、本を見るなりコピーするなりしたいときには、図書館に紹介状を書いてもらいます。
これがないと、学部生の方は、よその大学図書館へ自由に入館できません。
ただし、ICU図書館を除く2004年秋から、ICU図書館への入館は自由にできるようになりました。(貸出不可、コピー可:ただしコピーカードの使用は不可)。

Cそれでも国内にない場合 …海外からお取り寄せ
・フランス語の本…日仏会館図書室(恵比寿)で、フランスの図書館と連絡をつけて貸出や複写を依頼していただけます。輸送料等実費。
ただし、日仏会館会員or図書室利用証が必要。
・英語の本…ブリティッシュカウンシル(飯田橋)で、同様にしていただけます。
・スペイン語の本…残念ながら、そういったサービスはありません。それでも、イスパニアセンター(上智大学内)で面倒をみてもらえるようです。
・あるいは…絶版になっていない本なら、ネット等を通して自分で買うことができます。

+注意事項+++

どの手段をとっても、手続きに時間がかかりますので、時間的に余裕をみたほうがよいでしょう。

とくに、海外の機関を相手にする場合、こちらの想像以上に時間がかかります。

国にもよるでしょうが、夏休みの間ほとんど機能しなくなるようなので、

<どうしても必要な文献なのに国内になくて海外の図書館等に頼らざるを得ない>という場合、

できるだけ7月前に、手続きだけでも済ませてしまうことをおすすめします。

 

2. ノートの取り方

どこに何が書いてあるかを記したり、全体の要旨を書いておいたり、後々引用することを見越して原文を書き写しておいたり、等々

ノートを取りたい場面にたびたび遭遇するでしょう。

@      ノートやルーズリーフ Aカード(生協売店でも売っている、B6サイズで横長の小さなカード) Bパソコン C本に直接書き込み

といった方法が考えられます。一番自分の使いやすい方法を、工夫してください。

ただ、@〜Bの場合は、後で見返したときにどの文献から取った情報なのかが分かるように、出典(著者名、文献のタイトル、ページ)必ず記しておきましょう。

 

ノートに取るときに、元の文をそのまま書き写すときは、必ず「 」に入れるなどして、はっきり示しておきましょう。

他人の文章の引用であることが、一目見て分かるようにするためです。

そうでないと、文献から丸写しした文章を、自分の卒論にうっかり書いてしまうことになってしまうかもしれません。

 

こうしたノートとは別に、研究の進行状況を記した日誌のようなものつけるのもおすすめです。

疑問点・考えたこと・判ったことなど、何でも記しておく日誌です。

後に行き詰ったとき、助けてくれるかもしれません。

毎日少しずつでも書いておけば、少しずつでも進んでいるという実感が湧いてきます。それに、

気持ちが萎えてきたとき、自分が何を書こうとしているのかわからなくなってきたとき、残り時間がわずかになり焦ってきたときなど

こうした日誌を見ると、「一応自分も何かしらやってきたではないか」「初めのころはこんなことを知りたかったのか」などと、活路を見出すことができるかもしれません。

 

3.文献を読む際の心掛け

@註に注目する (参考文献の情報を得るため)

A「わからない」が大事

その文献を読んでみて、何がわからなかったのか。それがわからなかったのは、文献のどこに問題点があるからなのか。

…こうした疑問点を見つけるよう、文献を批判的に読みましょう。

このようにして先行研究の問題点を見つけだすことは、自分が明らかにしたい疑問点(未だ誰によっても解明されていない<わたしの問い>)の照準を

はっきりさせることにつながってきます。

B著者の立場に注意

その文献が学界の中で占めている位置を掴みましょう。

著者はどのような反対意見を想定しているのか?その著者の立場を私達はどう批判できるのか?などと考えてみます。

手がかりは、多くの場合「はじめに」や「あとがき」にあります。

C<わたしの問い>をいつも頭の片隅に

文献を読み進めるほどに、テーマそのものや<問い>は徐々に変わってくるもの。

自分の抱く疑問が変われば、その文献から見えてくることも変わってきます。

自分が重要だと思う文献は、しばらく時をおいてから見直してみると、新たな点に気づくことがあるかもしれません。

 

【4】執筆

1. まずは全体の構成から

@<わたしの問い>をはっきりさせる 卒論で何を主張したいのか、簡潔な一文にまとめてみましょう。

A章別編成作り …卒論の目次を作ります。

いきなり文章を書いていっても、論理的なつながりのあるものをバーンと書けるものではありません。

家の建築に例えるなら、まずは家全体の設計図を描いてから工事を始めるのと同じです。

卒論も建築物のように、しっかりとした骨組みが必要です。

それには、全体が有機的なつながりをもっていて、スムーズに論が進んでいくものが理想的です。

わかったことを全て押し込もうとすると、どこかで無理が出てきます。

<わたしの問い>の解明のために必要な情報だけを用いて、必要な議論だけをするように心がけましょう。

調べたことはどれも書いておきたいのが人情というものですが、枝葉の情報は泣く泣く切る。とにかくスマートにいきます。

 章別編成のサンプル

                はじめに(序文)

                【本文】第1章 第1

                         第2

                         第3

                    第2章 第1

                         第2

                         第3

                   ・・・・・(略)・・・・

                おわりに(結論)

                参考文献

 

※本文に設ける章および節の数は問われません。好きなだけ区切って好きなだけ章や節を設けても構わないのですが、あまり細かすぎないほうが読みやすいでしょう。

ちなみに、1章あたりの節の数は、各章でできるだけ同じになるよう揃えたほうがよいと見る人もいます(そのほうが、見栄えよくキレイに見えますし)。

※冒頭のintroductionを「はじめに」としたら、末尾は「おわりに」あるいは「むすびに」にします。「序文」としたら、「結論」とします。

ひらがなはひらがなで締め、漢字は漢字で締める。揃えることが大切です。

B章別編成ができたら、書けるところから書いていきましょう。本文からでも、「はじめに」からでも構いません。

 

2. 「はじめに」で書かなくてはならないこと

「はじめに」(または「序文」)では、以下の4点を必ず書くようにします。

@問い問題の所在を示します。さきほどの<わたしの問い>の一文を書けばOKです。
この卒論を通して、わたしはこれこれの問いへの答えを明らかにしようとしている、と明らかにするというわけです。

A視点と方法@で示した問題点に対し、どのような視点からアプローチするのかを示します。
どのような方法で論証していくのか、その方法が適していると判断したのはなぜか、できる限り明確に書いておきます。読者を説得できるように。

B研究史これまでの研究では、この卒論で扱う問いはどのように論じられてきたのか。それを踏まえて、
「自分の問いはどこが新しいのか」「自分の問いを解明することで、どのような貢献ができるか」などと、射程まで書ければなおよいでしょう。

C論文全体の構成これからの各章・各節で、何を具体的には論じていくのかを、おおまかに予告しておくと、たいへん親切です。
これにより、読者が論の展開を前もってイメージすることができます。読者にとっては、スムーズに議論にフォローできる良さがあります。

 

3. 「おわりに」で書かなくてはならないこと

「はじめに」(または「序文」)と同じように、「おわりに」(または「むすびに」「結論」)でも書かなくてはならないことがあります。次の2点。

@要約本文で明らかになったことを今一度おさらい。しつこい、今さら必要ないだろうなどとも思われるかもしれませんが、絶対に必要です。

A今後の展望…この論文では明らかにできなかった点、あるいは、
この論文で明らかになったことを通じて、さらに見えてきた新たな疑問点を書きます。
このようにして、自らの成果と限界とを確認してはじめて、論文を閉じることができます。

 

4.参考文献

参考文献は、本文中(その文献を使用した箇所)で脚注として示すほかに、卒論の末尾に、一覧表をつけなくてはなりません。

この卒論で引用した文献を、リストアップするわけです。ただし、「読んだけれども、卒論では直接使わなかった」という文献は載せてはいけません。

参考文献表の書き方には、事細かにルールが存在します。

次の「卒業論文を書くために B最後の仕上げ」では、そのルールの一部をご紹介していきます。

 

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