国際日本学

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教員インタビュー

佐藤 正広 SATO Masahiro

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 特任教授
研究分野/
Field
社会経済史、統計史

「日本の近代史を通じて私たちの暮らしを考える」

 私は研究者として駆け出しの頃から、明治以降の農村史、鉄道史(中央線はどうしていまの路線を取ったかなど)、アーカイブ学など、いろいろなことを研究してきましたが、現在は日本および日本が植民地化した地域の統計の歴史を研究しています。どの研究テーマにも共通した問題意識は、日本にとって近代化とはどういう意味を持つか、それが私たちの今日の生活にどういう影響を及ぼしているかということです。

 東京外国語大学に着任したときの印象になりますが、大学としてはこじんまりした規模だけれども、それぞれの専門領域に力のある研究者・教育者が集まってしのぎを削っていると思いました。学生は、しっかりした目的意識を持った人が多く、授業にも積極的に取り組んでくれます。その意味で、私にとってはとても仕事のやりがいがある大学です。また、国際日本専攻は「日本発信力」の強化に力を入れる方針を出しているのですが、「日本発信力」と言ったとき、発信のツールとしての外国語能力と、発信の内容としての日本社会、日本語、日本文学等に関する先端的な研究との両方が必要だと思います。国際日本学専攻はその両方をバランスよく兼ね備えていると思います。

 学部の授業として、1年生向けでは「クリティカル・リーディング」、2年生向けでは「日本社会研究概論」、3年生向けでは「日本社会演習」などを担当しています。これらはそれぞれ切り口が違いますが、いずれの講義も、日本にとって近代社会とは何かということを頭に置いておこなっています。

 日本社会をどう見るかと言うことについて述べたいと思います。言い古されたことになりますが、欧米社会では「個の論理」が優勢であるのに対し、日本社会は「場の論理」が優勢であると思います。このことから、例えば東日本大震災で「帰宅難民」が生まれたようなときには人々は整然と行動し、それを乱すような行動が非常に少なかった。これは大いに評価されてよいと思います。反面、人と違ったことをして場の雰囲気を崩す行為が嫌われる(「空気読まない」などと言って)傾向が強いので、独創的な発想をする人にとっては居心地の悪い面があると思います。異質性の強い人やものごとに対して、社会全体としてもう少し寛容な空気がほしいと思っています。

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