国際日本学

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教員インタビュー

ファビオ・ギギ Fabio Gygi

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 元特別招へい教授
研究分野/
Field
文化人類学

【English Page】

●ご自身の研究内容について簡単にお教えください。

私が現在進めているプロジェクトは2つあります。一つは、人形供養の民俗学的研究で、この季節(秋)になると、全国各地のお寺や神社で毎週のように行われています。この研究は、以前東京で行った、ゴミの溜め込みと処分(ゴミ屋敷)に関する研究の延長にあたります。とりわけ私が興味を持っているのは、いらない物を処分することが、喪失や別離、不安といった感情に儀式的な形を与えることで可能になるという逆説的な手法です。
2つ目のテーマについては調査を始めたばかりですが、夢と夢を見ることに対する人類学的アプローチです。夢は通常、きわめて主観的で個人的な経験であることから、心理学の領域に「属する」と考えられています。しかし、私たちが夢に見ていることとは常に、夢を見ている主体が、共同体の一員として抱く恐れや願い、望みといったものの反映です。私の目的は、夢の語りを共有する方法を展開し、夢の個人間相互作用的な意味を前面に押し出すことです。

●東京外大では学生に対してどのような講義をされていますか。

私は比較医療人類学のクラスを教えています。これは様々な医療システムや考え方を異文化間で研究するものです。社会科学の学部を持たないTUFSにとっては少し場違いかもしれませんが、土着的治癒法から最先端の生殖技術まで、さまざまな文化的背景の中で病気や医療がどのように理解されているかを理解することはますます重要になっていると思います。講義では、日本のうつ病や、臓器移植や脳死などの倫理的問題、社会的問題の医療化、なども取り上げます。 2月に行われる、夢と夢を見ることについての私の冬の集中講義はより実験的な講義となる予定で、学生にとっても創造的になれる場となるでしょう。夢について、また、新しいアイデアや創造的な考え方に興味のある学生は、是非とってみてください。

●国際日本専攻は、日本発信力の強化に力を入れる方針をだしています。このためには、何が必要と思われますか。

日本は世界に提供するものがたくさんありますが、そのメッセージが十分に伝わっていないことがよくあります。コミュニケーション能力は日本語でも外国語でも非常に重要なのですが、日本人の間では、外国語を流暢に話すことは 「非日本人」 であるという偏見がいまだに根強く残っています。これは非常に有害な考え方だと思います。

●東京外大および学生に対してどのような印象をお持ちですか。

私は日本の他の大学でも教えたことがありますが、ここで教え始めたときは、とてもうれしい驚きでした。学生たちは皆英語が流暢で、授業中や授業外で話すのも全然恥ずかしがりません。複雑な医療的問題でさえ討論できるのは本当に楽しいです! 私はここでリサーチをするのもとても楽しいです。素晴らしいオフィス、素晴らしいサポート、そして最も重要なことに、実際に考えたり書いたりする時間があることです。TUFSは全体として非常に優れた教育と研究がなされていますが、意外とそのことが知られていないように思います。

●海外からみて、日本のいいところ、足りないところ

ロンドンはすでに冬のどんよりとした霧雨に見舞われている頃ですが、ここにはパリッとした素晴らしい秋の日があります。食べ物と飲み物も、推しておきたいです。特に日本酒の種類! 乗り気にならなかったことと言えば、先月の台風くらいですね。

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