国際日本学

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教員インタビュー

木部 暢子 KIBE Nobuko

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 元教授(NINJAL)
研究分野/
Field
日本方言学, 音韻論, 音声学

フィールド調査を通じて,日本の言語と文化の多様性を探る

 私は,日本語のバリエーションについて研究しています。特に,日本各地の音声やアクセントのバリエーションがどのようにして形成されたのかに興味があり,九州,琉球を中心にフィールド調査に出かけています。
 私は現在,国立国語研究所に所属していますが、2016年からクロスアポイントメントの教員として週1日、東京外国語大学に来ています。2010年3月までは鹿児島大学に在籍していました。鹿児島方言は音声やアクセントに大きな特徴を持っています。例えば,「口」「首」「釘」はすべて「ク-ッ」(少し長めで下降調),「靴」「屑」「茎」「来る」はすべて「クッ」(短く平ら)と発音されます。これだけ同音異義語が多くなると,コミュニケーションがうまくいくのか,心配になりますが,地元の人にとっては何も問題がありません。そこには,鹿児島方言なりのコミュニケーション・ルールが働いているわけです。また,鹿児島方言のアクセントは共通語のアクセントとシステムが大きく異なり,まるで波がうねっているように聞こえます。このような特徴がどのようにして形成されたのか,それを考えるために離島も含め,九州各地を回りました。
 国立国語研究所に勤務するようになってからは,日本の消滅危機言語・方言の調査と記録に関するプロジェクトを企画・運営しています。このプロジェクトは,ユネスコが2009年に発表したAtlas of the World's Languages in Dangerを意識したもので,2010年から2015年までは奄美・沖縄,八丈を主なフィールドとして調査研究を進めてきました。2016年からはアイヌ語や本土の方言も視野に入れ,各地の言語の記述とデータベース公開を目標として調査研究を行っています。
 日本は本当に,言語や文化のバリエーションが豊富です。これらが衰退しつつあるのは大変,残念なことで,これらを記録するだけでなく,できれば生活の中で残したいと思っています。また,各地の方言や文化を世界に発信していくことが大切です。そのことが地域の人たちの誇りと自信につながるからです。プロジェクトでは地域の人と協力して,方言辞典や方言絵本の作成,方言の普及活動を行っています。
 授業では,春学期に「日本語諸方言のアクセント」を,秋学期に「日本の方言」を取り上げます。これまでのフィールド調査の経験と現在行っているフィールド調査の成果をみなさんにお伝えできればと思います。
※国立国語研究所(NINJAL)とのクロスアポイントメント

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