国際日本学

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教員インタビュー

花薗 悟 HANAZONO Satoru

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 准教授
研究分野/
Field
日本語学

【English Page】

国際日本専攻は諸言語と日本語の"個別性"と"普遍性"を

 私が大学を受験する頃、「留学生受け入れ10万人計画」を受けて国立大学に日本語教育関連の学科が新設され、日本語教育ブームが起こっていました。そんな流れの中、外国語大学で日本人が日本語を学ぶのも面白そうだと本学の「日本語学科」(現・日本語専攻)に入学したのですが、入ってみたら、専攻の時間の中で「対照言語学演習」としてタイ語と朝鮮語(それぞれ1年次と2年次、当時)を週2コマずつ学ばなければならないことを知ってびっくりしました。今ではそれぞれ簡単な会話とタイ文字とハングルが書けるくらいしか覚えていないのですが、その後ドイツ語、ロシア語、インドネシア語、中国語などさまざまな言語を学習する機会がありました。もちろん、ポリグロットであった高名な言語学者(井筒俊彦、木村彰一、河野六郎など)とは全く次元が異なるのですが、それでも他のさまざまな言語を知ることによって日本語の個別性と普遍性を理解することができるのではないかと思っています。本学ではさまざまな言語科目が開講されていますし、それぞれの言語を専門に勉強する大学院生や各自の言語をバック・グラウンドに持つ留学生と触れ合うこともでき、国際日本専攻は日本語を相対化する環境に恵まれた大学院だと思います。
私の専門は現代日本語の文法、特にモダリティ(文の「のべかた」)です。例えば「行く」という動詞なら、「行くだろう・かもしれない・にちがいない」「行きそうだ・行くようだ・行くらしい・行くそうだ」など、話し手の確信度や何を根拠として判断したかによって形式が異なります。疑問文の作り方も疑問の「か」のような助辞に専ら頼る言語(タイ語やビルマ語)もあれば、イントネーションに中心をおく言語(ロシア語・インドネシア語等)など言語によってさまざまです。博士論文の執筆中に沖縄語の文タイプの文法形式が日本語(東京方言)と大きく異なることを知って(実は「東北方言」や「西日本方言」でも同様だったのですが)沖縄語に興味を持ったのですが、数年前からようやくその学習も始めることができ、科研費などの援助も得て「初級沖縄語教科書」の作成にも取り組みました。
 国際日本専攻の大学院では、これまでの研究や教育の経験に基づいて「対照言語学研究」として「沖縄語入門」の授業を担当する予定です。これは「沖縄語学概論」ではなく、初級日本語教育に近い"外国語"の授業として行うもので、日本語学を専門とする学生には日本語を相対化する機会になるのはもちろん、"文型積み上げ式"で行う予定ですので日本語教育を志望する学生にも日本語学習者がどのように学ぶかを「疑似体験」する機会になるはずです。同じ系統の言語でありながら、日本語とは違う部分がある沖縄語に触れることで、学生が日本語を相対化する機会になればと思っています。

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