国際日本学

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教員インタビュー

早津 惠美子 HAYATSU Emiko

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 研究院長/教授
研究分野/
Field
日本語学(現代語文法、語彙論)

【English Page】

日本と日本語の研究・教育における長い歴史と豊富な実績

〝世界の視点で日本を学ぶ 日本を起点に世界を学ぶ〞
 2016年4月、東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士前期課程は、大規模な改組を行った。
そこで掲げられたのがこの目標だ。

 これまで4つに分かれていた専攻は、「世界言語社会専攻」と「国際日本専攻」の2つに改組される(図)。特 に、グローバル化の進展の中で必要とされる「日本発信力強化」を目的に設置されるのが、国際日本専攻である。

 なぜ外国語大学で日本・日本語の研究・教育を?と意外に思われるかもしれない。実は東京外大には、海外からの留学生への日本語教育をはじめとして、広く日本・日本語の研究・教育における長い歴史と豊富な実績がある。

 大学院国際日本学研究院長を務める早津惠美子教授は「その成果を学外からも見えるようにして、ここで学びたいという学生を招き入れ、育成していきたいと考えています」と語る。
「例えば言語に関して言えば、日本語は世界中にある6000を超える言語の1つにすぎません。英語とだけ比べて、日本語には冠詞がない、敬語が複雑だと言うのではなく、できるだけたくさんの言語を見わたして日本語の特徴(個別性)と、他の言語との思わぬ共通性(普遍性)を見つけ出すほうが楽しそうです。そういう視点から世界の諸言語と日本語を対等に捉えた研究・教育を行ってきたのが東京外大です」(早津教授)

 また、外国語やそれが話される地域の社会・文化を学ぼうと思えば、母語である日本語や日本についての教養は、理解の基盤として必須のものになる。「〝比較〞と〝対照〞というのは、東京外大における研究・教育のキーワードではないかと思います。日本を知り、海外を知り、比較・対照していく。多様性に目を向けることで、直面する問題に性急に結論を出さず、落ち着いた分析ができるようになる。それは東京外大の最大の強みでもあります」と早津教授は話す。

近接する4領域で全体として日本を深く学ぶ

国際日本コースの研究領域としては、「日本語学研究」「日本語教育学研究」「日本語文学・文化研究」「日本社会研究」の4つで構成。しかしそれぞれが分立するのではなく、近接する形で研究・教育を行っていく。
「例えば、日本語の文法や文学を専攻したとしても、それが生まれた背景、それを育んできた環境としての日本の歴史や社会、またこれまでどういう教育法を実践してきたかなどを知ることで、理解の幅が広がります。4つの領域をまたがる形で研究することで、全体として日本への理解を深めることができます」(早津教授)

 さらに、他の言語と日本語、他の文化と日本文化の比較研究をしたいという場合には、同時に設置される世界言語社会専攻の教授陣に指導を仰ぐこともできるようにし、単位の修得の面で柔軟に対応していく予定だ。

 もう1つ、国際日本専攻でユニークなのが、「日本語教育リカレントコース」を設けていること。
海外で日本語教育に従事してきた経験者を対象にしたもので、1年で修了できるコースとなっている。「単なる教員養成プログラムではありません。これまで研究という視点で日本語に接する機会が少なかった方々に、あらためて日本と日本語について学んでもらい、スキルアップとともに、さらなる〝日本発信力〞強化につなげていただければと考えています」(早津教授)

日本と日本語についての良質な教養を

 指導にあたる教員は、これまで総合国際学研究院に属していた日本関係の教員と、留学生日本語教育センターなどの教員を結集して国際日本学研究院に再編。特に留学生日本語教育センターは、海外からの留学生への日本語教育に、半世紀近く携わってきた実績があり、その高度な研究・教育成果が国際日本専攻に大きく貢献すると期待される。

 これらの専任教員に加えて、アジア・アフリカ研究教育コンソーシアム(CAAS)加盟機関や国立国語研究所の研究者も国際日本専攻での教育に参加する。CAASは、フランス、オランダ、韓国、シンガポール、イギリス、アメリカにある大学の日本・日本語研究機関と東京外大で構成。これまでは研究交流がメインだったが、今後は教員として半年〜1年間来日し、講義や論文指導などにあたる。

 さらに学生に対しては、日本語教育実践プログラム、多文化コーディネーター養成プログラムといった実践力をつけるための新たなキャリアプログラムも用意。また、東京外大が世界の協定校に設置する日本・日本語教育の拠点「G l o b a lJapan Office」での教育実習もカリキュラムに組み込んでいる。
「国際日本専攻では、海外からの留学生と日本人学生が相互に刺激し合いながら学べる環境にできたら一番望ましいと考えています。学部時代に他言語・他文化を学んでいた学生でも、日本について改めて学ぶことで研究の幅がさらに広がるはずです。日本と日本語についての良質な教養をぜひ身につけて、〝日本発信力〞を強化してほしいと思います」(早津教授)

日本語教育の老舗にしてトップランナー

今回開設が決まった国際日本専攻では、留学生日本語教育センターの教員全員が教壇に立つ。この留学生日本語教育センターは、東京外大の1部局であり、これまで日本語教育を中心に多様な留学生教育を行ってきた。

 前身である外国語学部附属日本語学校が設置されたのは1970年。それから実に半世紀近くにわたって実績を積んできており、日本語教育研究の世界的な拠点となっている。

 教員はそれぞれ、文法、音声、意味論などの専門を持ちながら実際の日本語教育にあたっており、理論に裏付けられた高度な日本語教育の場となっている。2012年には、国内に3校しかない文部科学省の教育関係共同利用拠点(日本語教育)にも認定された。

 メインとなる国費学部進学留学生予備教育プログラムでは、日本の国立大学に入学予定の国費留学生に対して集中予備教育を行っている。日本語の知識が全くない状態からわずか1年で、日本語による大学の授業に参加できる日本語および専門能力を身につけさせる。最先端の教授法・教材開発も行われており、そうしたノウハウが国際日本専攻でも発揮されることが期待されている。

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