国際日本学

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教員インタビュー

デイビッド・ヒューズ David W. Hughes

役職/
Position
大学院国際日本学研究院 元特別招へい教授
研究分野/
Field
ジャワ島の伝統音楽、日本の伝統音楽

【English Page】

民謡を通して日本を知る

 私の研究分野は、ジャワ島の伝統音楽と日本の伝統音楽です。特に日本の民謡については、イギリスのロンドン大学アジア・アフリカ研究学院(SOAS)で30年近く研究をしてきました。これまでにもフィールドワークなどで何度も来日しています。今回はアジア・アフリカ研究教育コンソーシアム(CAAS)のプログラムで東京外大に招かれ、学生向けの授業を受け持っています。
 研究の一環として、私自身、民謡の演奏もします。三味線はかれこれ30年のキャリアになりますし、篠笛や太鼓も嗜みます。もちろん唄のほうも。以前NHKで放映していた番組「民謡をあなたに」で喉を披露したこともあるんですよ。授業では、国立音大から三味線の先生を招いて、実際に民謡の演奏を聴きながら、その歌詞に込められた意味や背景にある日本の伝統や風習などを学べるようにしています。また、授業内で沖縄の三線を学生に教えることもあります。
 「民謡は心のふるさと」と言われるように、民謡には昔からの日本人の生活や習慣、さらにはその思考までもが表れています。その種類は、お祭りの唄、盆踊りの唄、旅芸人の唄などさまざまですが、特に注目したいのが作業唄です。例えば北海道のソーラン節の一部はニシン漁での網引き唄ですし、鳥取の貝殻節はホタテ貝漁の唄です。作業を効率的に進めるために、あるいは仕事の苦しさを紛らわせるために、当初は無伴奏で声を揃えて唄っていたのでしょう。それが、三味線や笛、太鼓などの伴奏が付き、さらには舞台で演奏されるまでに洗練されていったという経緯があります。
 大学生をはじめ、現代の日本の若者の多くが民謡についてあまり知らないのはとても残念なことです。国際化で目を海外に向けるのも大切ですが、一方で自分の国の文化や風習について知ることも他の文化を理解する上でとても大切です。私が在籍していたSOASでは、学生の半分以上が非英国人であり、教授陣も3分の1がイギリス国外から来た人たちでした。そこまでいかなくても、東京外大はおそらく日本では最もダイバーシティーが進んだ大学ではないかと思います。そうした環境に身を置いて、多様な視点から、日本のこと、世界のことを深く学んでほしいですね。(2016年1月末までの任期).

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