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以前の記事でも実例を紹介しました、当推進室においてレンタルしているハイラブル社の会議分析ツールについて、記事や使用感だけでは「結局どういう機能なの?」となると思いますので、今回はこのツールを使うことで何がわかるのかを中心に書いていこうと思います。

※後日、機器の使い方についても記事にまとめる予定です。

1.分析内容について

【Web会議分析ツールを使用した場合】

参加者の名前にて、それぞれのマイクから発生された声をもとに分析します。

【たまご型レコーダーを使用した場合】

レコーダーで指定した角度に座っているものの声を拾って分析します。

拾った音声データにより、

・各々の発話量

・ディスカッション中の会話順

・各々の盛り上げ量(場を盛り上げた度合い)

・各々の重なり量(傾聴した度合い)

について分析が行われます。

なお、分析はリアルタイムで行われるものと、ディスカッション終了後にレポートで出されるものに分かれます。

2.リアルタイム分析の内容

1)座席位置

ハイラブル座席.png

【Web会議分析ツール使用の場合】

180°より、時計回りに30°の間隔で表示されます。

【たまご型レコーダーを使用した場合(上図)】

分析の際に人を配置した角度および、実際にレコーダーが録音した方向の波形が表示されます。

※波形を分析しながら、リアルタイムで人の配置位置を変更することができます。

2)発話量の時間変化

ハイラブル発話量.png

参加者に応じ、ディスカッションの時間経過の中での発話量の変化がグラフとして表示されます。

※ディスカッションの訓練として、リアルタイム変化を見ながら会話を回していく、などの方法が考えられます。

3)ターンテイク

ハイラブルターンテイク.png

誰から誰に向けて、どの程度の発話があったかが表示されます。

丸の大きさが発話量、矢印の方向が会話の方向、矢印の太さが会話の量です。

※こちらも、変化を見ながらのディスカッション訓練が考えられます。

4)総発話時間

ハイラブル発話総時間.png

メンバーそれぞれの総発話時間が表示されます。

色が濃くなっているところにカーソルを合わせると、「自分が中心となって話した時間」が表示されます。

5)メンバーの分析結果

ハイラブルメンバー分析結果.png

「発話量の多さ」「発言後の議論の活発さ(盛り上げ度)」「他メンバーとの会話の重なり量(傾聴度)」が三角形のレーダーチャートで表示されます。

※重なり度については、発言に重ねて「なるほど」などの発言リアクションをした度合いになります。

※こちらは、ディスカッション後のフィードバック用しての利用が考えられます。

3.ディスカッション後の分析結果について

ディスカッション後、ディスカッションの録音データを元に、レポートが発行されます。

【グラフレポート】

上述のリアルタイム分析と同じ項目・内容で、PDF形式にて発行されます。

【標準レポート】

以下の内容にて、分析結果のレポートがPDF形式にて発行されます。

1.サマリー

ハイラブルサマリー.png

ディスカッションが進行する中で中心となった人、盛り上がった区間、全員がディスカッションに参加した区間の結果が表示されます。

録音データはWeb上に保存されるため、その区間を改めて聞くことも可能です。

2.ディスカッションのようす

ハイラブルディスカッションの様子.png

ディスカッションを序盤、中盤、終盤の3区間に分け、その中での議論の移り変わりについて、分析結果が表示されます。

3.メンバーのようす

ハイラブルメンバーの様子.png

ディスカッションに参加したメンバーそれぞれの「発話量」「話題の中心になったか」「活発に話した区間」について、分析結果が表示されます。

4.どのようなディスカッションをすべきか

ディスカッションは、ディベートや討論とは全くことなり、勝ち負けや、何か即効性のある有用な解決策を見つける、という概念ではなく、「色んな意見を抽出し、まとめる」ことが重要です。

よいディスカッションは、メンバーそれぞれが発言する機会を与えられ、会話が発生することはもちろんのこと、「聞いていますよ」というリアクションを出すことにより、話しやすい空間を作り、意見を引き出すことも重要です。

会話を回す、会話に参加するために・・・

ディスカッションのみならず、普段の会話の際においても、「自分がどのくらい話をしているか」「ちゃんと相手に話を振れているか」については、意識していても自分の感覚と大きくことなることがあります。(大人の人でも、よく見かけます。)

当ツールを使用したディスカッションの練習の際は、以下の点に気をつけながら会話を進めるとよいでしょう。

◯発話量の移り変わり(ファシリテーター役)

ディスカッションを行うにあたり、ファシリテーター役が必要となりますが、一番注意すべきは、「自分だけが話をしていないか」という点です。

リアルタイム分析のターンテイクを確認しつつ、発話量を示す◯の小さいメンバーや、会話が発生していないメンバー同士の会話が発生するように誘導するよう心がけて練習をするとよいでしょう。

★「リーダー」と「リーダーシップを取れる人」は、似ているようで大きく異なります。この練習でリーダーシップを取れる人になりましょう!

◯会話への参加

ディスカッション中に発話をしないことは、「ただその場にいるだけ」になることを意味し、何の役割も果たせないことと同義です。

リアルタイム分析の総発話時間を確認しながら、発話時間が少ない場合は積極的に議論に食い込むよう発言することを心がけましょう。

※議題について知識がない場合は、思い切って「よく知らないので、概要を教えて欲しい」と言ってみましょう。発言できないよりは、まず情報を得てそこから自身の意見をぶつけてみると、ディスカッションも良い方向に進むはずです。

◯意見を引き出す相槌

ディスカッションが行われる場では、現時点で明確な答えが出ていないテーマを扱うことが多いため、「色んな意見がある」ことが前提であり、また、「正解」や「間違い」がありません。

そのような場の中で、各メンバーから意見を出しやすい雰囲気とする際に有効的なのが「相槌」です。

自分の中で相手の意見を認めていようが、それがわかるように相手に見せなければ、話をしている人は「不快にさせちゃっているかな?」と思い、100%の意見が言えなくなってしまいます。

{場を作る}という意味でも、相手の発言の際は「へー」「なるほどー」などの相槌を打つように心がけると、良い議論になるでしょう。その際は、リアルタイム分析のメンバーの分析結果で自身の「重なり度」を見ながら練習するとよいでしょう。

5.まとめ

MIRAI事業において当ツールに着目した理由としては、

・トランスファラブルスキルのうち、コミュニケーション能力の訓練への適用が可能

・分野によっては、研究調査に使用が可能

という点がありますが、使い方は様々かと思います。

本学教職員の方々で興味のある方は、MIRAI推進室にてWeb版1ルーム、レコーダー1台をレンタルしていますので、お気軽にお声がけください。

AI導入による技術革新は、アカデミア・民間共に今後加速していくものと思われます。

携帯電話からスマートフォンへと移り変わった時と同じような、そもそもの概念を覆す社会的変化が予想される中で、「次の一手」を打つには、まず新技術を実際に触れてみることが肝要でしょう。

(スマートフォンに切り替えた際に、3日ほど使用したら慣れたのと同じように・・・)

今回ご紹介した当ツールが、当事業のみならず多くの現場でのイノベーションの一助となれば幸いです。