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「ボサノヴァの詩学」  福嶋 伸洋
"Poetics of Bossa Nova"  FUKUSHIMA Nobuhiro

和文要旨

  1958年7月にジョアン・ジルベルトが行った「Chega de Saudade」の録音のなかでは、同年4月にエリゼッチ・カルドーゾが行った同じ曲の録音と、二つの点で決定的に異なっていた。すなわち、エリゼッチがベルカント風に歌っていたのに対してジョアンはささやくように歌ったことと、Rをエリゼッチが巻き舌音で発音していたのに対してジョアンは喉にかすれされる発音をしていたことである。このようなジョアンのスタイルは、ブラジルのポピュラー音楽に強い影響を与えた。

  ボサノヴァの詩人として知られるヴィニシウス・ヂ・モライスは、のちにマルセル・カミュ監督の映画『黒いオルフェ』の原作となる戯曲『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』について、それがブラジルの黒人文化にインスピレーションを得て書かれたものであると語っていた。それゆえ、ボサノヴァを中流階級の「白人たちの」音楽であるとする通説は誤っていると言うことができる。

  ボサノヴァのもっとも偉大な作曲家であるトム・ジョビンは、ボサノヴァ以前には、伝統的な色合いの濃い、もの悲しいサンバ・カンサォンを書いていた。また、そこに付けられた歌詞も、のちにヴィニシウスが作ったものとは異なり、希望のないものが多かった。しかしジョアン・ジルベルトは、のちにこの時期のトムの曲も取り上げ、きわめて「ボサノヴァ」的な楽曲に仕立てた。このように、ボサノヴァの成立にとってジョアンの存在はもっとも大きなものだった。

  詳しくは英語本文(PDF)、日本語本文(PDF)をご覧ください。


 
英語本文(PDF 日本語本文(PDF 和文要旨(PDF  


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