文字サイズ小 文字サイズ中 文字サイズ大

「アルジェリア戦争をめぐる暴力論の研究」  太田悠介

研 究

  報告者は、アルジェリア戦争をめぐってかつて交わされた、そして今も交わされつつある様々な言説、議論を考察するという課題に取り組んでいる。

  アルジェリア戦争をできるだけ一般的に共有しうるようなかたちで簡潔に定義しようとすれば、それは1954年から1962年にかけて起こったフランスとそのフランスからの独立を求めるアルジェリアの間の戦争と暫定的には定義することができるだろう。しかし、ここで留意すべきなのは、アルジェリア戦争以前に現在のアルジェリアに直接つながるような何らかの実体としてのアルジェリアが存在していたとは言い切れないという点である。もちろん、現在のアルジェリアという国家が自らの正統性を確保すべく、アルジェリア戦争以前の民族、文化、宗教などの様々な要素を動員し、戦争以前のそれらの諸要素と政権との連続性を見出そうとしているように、アルジェリア戦争以前と以後の連続性に着目することも可能であるが、むしろ重要なのは、アルジェリア戦争を経て今の主権国家アルジェリアが形成されたこと、アルジェリア戦争こそ今のアルジェリアを生んだ決定的な要因と見ることであるように思われる。

  フランスの現代史において、特にこのアルジェリア戦争に着目して取り上げることに意義があるとすれば、まさにこの意味においてである。この戦争は、戦争に関与する主権国家の双方が交戦権を有する通常の戦争とは異なり、戦争の一方の主体(フランス)だけが主権国家としての体裁を備えているのに対し、他方(アルジェリア)がそうではないという絶対的な非対称関係に特徴づけられた戦争であった。こうした特殊な戦争形態を理解することなしには、そこから生まれたアルジェリアという現在の国家についてもまたおそらく理解できないであろう。

  詳しくは学術調査報告書(PDF)をご覧ください。


報告者

  1. 名前:  太田悠介
  2. 研究テーマ:  アルジェリア戦争をめぐる暴力論の研究
  3. 渡航先:  フランス(パリ)
  4. 旅行期間:  平成20年3月11日~3月31日(20日間)
  5. 調査旅行の概要:  パリ第8大学において、アラン・ブロッサおよびダニエル・ベンサイード両教授が学部生、修士課程の学生、博士課程の学生向けに開講している授業、セミナーに出席し、研究に関する指導を受けた。
  6. 学術調査報告書(PDF


↑このページのトップへ