LUNCHEON LINGUISTICS
要旨
2017(平成29)年
2016(平成28)年
2015(平成27)年
2014(平成26)年
2013(平成25)年
2013年12月18日
「第11回ソウル国際アルタイ学会(The 11th Seoul International Altaistic Conference)大会報告」
  発表者 蔡熙鏡(チェ ヒギョン) (東京外国語大学大学院博士後期課程)
 2013年12月5日~7日に韓国のソウル大学・アジア研究所で開催された第11回ソウル国際アルタイ学会について報告した。まず、大会の概要について紹介したのち、個人の研究発表から白尚燁氏(北海道大学大学院博士後期課程)の“Verbal derivational suffix -du in Udihe”と江畑冬生氏(新潟大学)の“Quoted imperative statements in Sakha: Between direct and indirect speeches”を取り上げ、発表の概略を報告した。

2013年12月11日
「日本語文法学会第14回大会報告」
  発表者 川村大(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
 早稲田大学において11月30日・12月1日の両日行われた日本語文法学会第14回大会について報告した。概況を報告した後、1日目のシンポジウム「動詞基本形を考える」(パネリスト:須田義治、仁科明、土岐留美江、コメンテーター:野田尚史、司会:井島正博)を取り上げ、やや詳しく紹介した。

2013年12月4日
「日本言語学会第147回大会報告」
  発表者 吉岡乾(日本学術振興会特別研究員(PD), 東京外国語大学非常勤講師)
 神戸市外国語大学で11月23・24日に行われた147回大会について報告した。1日目の研究発表から「シンハラ語における授受補助動詞と結び付く前項動詞について」(デヒピティヤ・スランジ・ディルージャ氏)・「オリヤ語における二重目的格制約」(山部順治氏)に関して、報告者が概略を紹介した。

2013年11月13日
「日本中国語学会第63回全国大会報告」
  発表者 三宅登之(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
 2013年10月26日(土)・27日(日)の2日間にわたり東京外国語大学で開催された、日本中国語学会第63回全国大会について報告した。その中でも特に、中国社会科学院語言研究所の沈家[火+宣]氏による講演「双音化在漢語語法中的地位和作用」(2音節化の中国語文法における位置づけと働き)と、ワークショップ「指称の範疇化と「存在」の問題をめぐる考察―歴史文法の観点から―」の中で行われた、東京大学の木村英樹氏による発表「‘referentiality’と’reality’―モノ・サマ・コトの現実性と有標化をめぐる問題―」について、その骨子を紹介し、それらの中国語学の研究の潮流の中における位置づけなどについても解説した。

2013年11月6日
「日本語学会2013年度秋季大会報告」
  発表者 早津恵美子(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
 静岡大学静岡キャンパスにおいて10月26・27日に行われた秋季大会について報告した。両日のプログラムの概要を紹介し、シンポジウム「日本語史はいかに叙述されるべきか」について司会の大木一夫氏による「趣旨説明」にもとづいて概略を紹介した(パネリストは、肥爪周二氏(音韻史)、青木博史氏(文法史)、矢田勉氏(文字・表記史)、指定討論者は、小野正弘氏(語彙史))。そして、研究発表のうち「テクストにおける空間的配置動詞のアスペクト・テンス形式の意味と機能」(呉揚氏)をやや詳しく紹介した。

2013年10月30日
「中期朝鮮語における補文節」
  発表者 小山内優子(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 中期朝鮮語では「連体形+形式名詞dA (こと)」による補文節(dA補文節)と名詞形語尾-om~-umによる補文節(-om補文節)が相互に置き換え可能だと言われているが、如何なる環境においても置き換えが可能なのではない。本発表の目的はこれら2つの補文節の棲み分けを明らかにすることである。本発表の主な観察は以下の2つである。まず、dA補文節は主に知覚や知識に関する動詞の補語として現れるが、-om補文節にこのような制限はない。特にar- (知る)の補語になる場合はdA補文節が用いられる傾向が顕著である。第2に、-om補文節は格助詞・副助詞やコピュラを伴って比較的自由に文の成分になり得るが、dA補文節につく格助詞や副助詞は限られている。これは、通時的には形式名詞のdAに助詞やコピュラがついた形であっても共時的には補文節ではなく、「連体形+dA+助詞/コピュラ」の形が既に語尾の一部として文法化している(或いは文法化の過程にある)ためであると考えられる。

2013年10月23日
「ウズベク語の動名詞-(i)shによる連体修飾」
  発表者 日高晋介(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 本発表では、次の二点を明らかにした。すなわち、①非定形動詞による連体修飾構造は形動詞(形容詞的動詞)のみならず動名詞によっても可能である、②なおかつ動名詞による連体修飾構造は「外の関係」(寺村1975)を示す傾向にある、という二点である。
 従来のウズベク語の参照文法書(Kononov 1960, Bodrogligeti 2003)では、非定形動詞による連体修飾構造として、形動詞+主要部名詞という構造のみが記述されてきた。ところが、ウズベク語の新聞記事では、動名詞を用いた連体修飾構造も見られる。さらに、テキスト内ではその連体修飾構造は外の関係のみ表す(母語話者の内省によると、内の関係も表すことが可能である)。
 上記に加えて、その連体修飾構造がComrie (1998)が提示したチュルク諸語(トルコ語-(y)An, -DIKとカラチャイ・バルカル語-GAn)の連体修飾構造と異なっていることも示す。

2013年10月9日
「タガログ語の動詞接辞 ma-: 自発、意図成就、可能、そして受身」
  発表者 長屋尚典(大学院総合国際学研究院講師)
 タガログ語にはma-という接辞がいくつか存在する。本発表では、このうち、非行為者焦点他動詞に規則的につくma-について統語論的・意味論的分析を行う。本発表の主な発見・分析は以下の通りである。第一に、このタイプのma-動詞は、自発、意図成就、可能、そして受身の4つの用法を持つ。自発は「行為者の意図にかかわらず行為が実現すること」、意図成就は「行為者の意図通りに行為が実現すること」、可能は「行為者が意図した行為が実現する能力や状況が存在すること」を表現する。これらのma-動詞において行為者項が削除されたのが受身である。第二に、以上で記述したma-動詞の用法には、他動詞的事態の成立局面のみをプロファイルし、行為者の意志決定行為は後景化するという共通点がある (cf. DeLancey 1985)。第三に、無標の非行為者焦点動詞は、他動詞的事態の成立のみならず行為者の意志決定行為までもプロファイルする点で、ma-動詞と対立する。

2013年7月17日
「2研究会 合同報告:研究会「アフリカ諸語の情報構造と言語形式の類型論的研究」
研究会「アフリカ諸語のイベントの統合のパターンに関する研究」」
  発表者 松尾愛(東京外国語大学大学院博士前期課程)
 本学AA研で7月6日・7日に行われた研究会「アフリカ諸語の情報構造と言語形式の類型論的研究」、研究会「アフリカ諸語のイベントの統合のパターンに関する研究」および中野教授追悼セム語研究集会について報告した。「サーミア語におけるイベント統合と時制」(稗田乃氏)、“Transitivity and Information Structure (especially Focus) in West African Benue-Congo languages - Igbo, Kana, Yukuben, Kuteb, Hone”( Anyanwu, Rose-Juliet氏)などの研究発表に関して概略を発表者が報告した。ならびに「コーパス分析に基づく古典アラビア語7形と8形の使い分け- 8形の機能分析を中心に-」に関して発表者の調査結果の概要について報告した。

2013年7月10日
「カム・チベット語ティンドゥ方言の証拠性を表す助動詞/ʈhɔ23/について」
  発表者 ツェジワンモ(東京外国語大学大学院博士前期課程)
 本発表では、カム・チベット語ティンドゥ方言の動詞述部の構造について概要を述べた上で、助動詞 ʈhɔ23の意味と機能について、=dɯと比較しつつ、証拠性の観点から考察を行った。特に、状態動詞述語文については、動詞の種類や人称との関係も踏まえ、詳細な分析を示した。その結果、以下のことを明らかにした。今現在の非視覚に基づく評価を述べる場合にはʈhɔ23が、視覚に基づく評価を述べる場合には=dɯが用いられる。前者を「内的評価」、後者を「外的評価」とする。過去の知覚に基づく評価を述べる場合には、ʈhɔ23を用いることはできず、内的評価か外的評価かにかかわらず=dɯが用いられる。

2013年6月26日
「日本語学会2013年度春季大会報告」
  発表者 川村大(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
 大阪大学において6月1日・2日の両日行われた日本語学会2013年度春季大会について報告した。概況を報告した後、2日目の口頭発表から動詞否定形のアスペクト的意味に関する発表2件、すなわち、井上正哉氏「意味の上でアスペクト対立を示す肯否対立―現代日本語の動詞文を例に―」と松田真希子氏・庵功雄氏「限界性を有する事態に対する否定の応答形式をめぐって」とを取り上げて、やや詳しく紹介した。

2013年6月19日
「日本言語学会第146回大会報告」
  発表者 吉岡乾(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・日本学術振興会特別研究員)
 茨城大学水戸キャンパスで6月15・16日に行われた146回大会について報告した。1日目の研究発表から「「父は並ぶもののない長者だった」-アイヌ語における関係節を用いた最上級表現-」(ブガエワ・アンナ氏)・「モンゴル語におけるpreverbと動詞との間の結合度」(梅谷博之氏)に関して、報告者が概略を紹介した。

2013年6月12日
「日本語とマレー語の短縮語形成と韻律構造」
  発表者 橋本大樹(東京大学大学院修士課程)
 本発表では、主に以下の2点を明らかにした。まず1つは英語や独語などの短縮語形成で主張されてきたテンプレートに基づいた短縮語形成(templatic truncation)の他に、基体の韻律構造に基づいた短縮語形成(structure-dependent truncation)が存在することである。前者の短縮語形成の場合常に短縮語の出力は同じ長さになるが、後者の場合基体の韻律構造によって短縮語の長さは変わる。例えば英語の短縮語形成の場合常に2モーラ音節(e.g. Mortimer → Mort, Angela → Ange)の出力形式が派生されるが、日本語やマレー語の短縮語形成の場合基体の韻律構造によって長さが変わるのである。(e.g. ビルディング → ビル (2モーラ)、コスメティック → コスメ (3モーラ)、イントロダクション → イントロ(4モーラ))
 もう1つは、基体の韻律構造に基づいた短縮語形成(structure-dependent truncation)は、基体の韻律構造のうち最も上位の主要部・依存子関係に基づいて長さを決定しているということを明らかにした。このタイプの短縮語形成として、日本語の他にマレー語が挙げられる。

2013年6月5日
「日本ロマンス語学会第51回大会報告」
  発表者 山田怜央(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 2013年5月18日(土)と19(日)の2日間に渡って名古屋大学東山キャンパスにて開催された日本ロマンス語学会第51回大会の報告を行った。その内、初日の統一テーマについての発表より、京都大学大学院の坂口友弥氏による「ロマンシュ語スルシルヴァン方言の助動詞の選択性」、北海道大学大学院のCespa Marianna氏による「イタリア語における過去を表す時制について ―近過去・遠過去・現在形―」の2発表を、2日目の自由テーマ発表より、滋賀短期大学金澤雄介氏による「古サルデーニャ語におけるクリティックの出現位置についての基礎的考察」を紹介した。

2013年5月22日
「愛知県豊田市旧小原村方言の証拠性を表す形式 -(i)jor について」
  発表者 髙見あずさ(東京外国語大学大学院博士前期課程)
 愛知県豊田市旧小原村の方言(以下、小原方言)の-(i)jorについて、現地調査で得たテキストデータから用例を観察し、以下の2点を明らかにした。
  ①後接するテンス形式(-(r)u / -(i)ta)によって文の主語人称制限に差が生じる
  ②後接するテンス形式によって証拠性の意味的制限が異なる
 この-(i)jorは、西日本諸方言に見られる「ヨル」に相当する形式であり、これまで「ヨル」は「トル」との対立によってアスペクトの範疇で論じられる傾向にあった。しかし、「ヨル/トル」がアスペクトという一つの文法範疇を構成しない方言もある。その事例として、小原方言の-(i)jorの例を提示した。
 -(i)jorの用例を観察したところ、非過去テンス-(r)uが後接する場合には、その文の主語には3人称しか用いることができないとわかった。1、2人称が使えないという事実から、joruが目撃(visual)を必要とすることが示唆され、面接調査でも「目撃した行為の現場描写」が必須であることを確認した。一方、過去テンス-(i)taが後接する場合には、人称制限はなく目撃が情報源である必要もない。jottaの人称・情報源の制限がなくなることを説明するには、さらに調査を必要とする。

2013年5月15日
「中期朝鮮語の「名詞化」にかんする予備的考察」
  発表者 小山内優子(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 本発表では、同一の原典をもつ3つの中期朝鮮語資料、『釈譜詳節』(1447年)、『月印釈譜』(1459年)、『法華経諺解』(1463年)を用いて、中期朝鮮語の「名詞化」(補文化)の手段について予備的な考察を行った。調査範囲内の用例を見る限りでは、文体が漢文直訳体であれば名詞形語尾{-om/-um}が多く現れ、口語的であれば「用言連体形+依存名詞dA(こと)」を取りやすいという可能性が考えられることを示した。

2013年4月17日
「北琉球奄美湯湾方言の複数を表す形態素と名詞句階層」
  発表者 新永悠人(東京外国語大学大学院博士後期課程, 日本学術振興会特別研究員(PD))
 本発表の対象方言は、奄美大島の島内南西部の宇検村湯湾集落で話されている方言(以下、湯湾方言)である。湯湾方言には複数を表す文法的形態素が3つ存在する。即ち、-kja、-taa、nkjaの3つである(初めの2つは接辞、最後の1つは接語である)。本発表では、以下の2点を考察した。
  (1)湯湾方言の複数を表す形態素と名詞句階層との関連
  (2)湯湾方言の複数を表す形態素の意味的特徴
 1点目に関し、上記3形態素のいずれを選ぶかは、先行する名詞の種類によって決まることを示した。この時、その名詞の種類が、言語類型論において名詞句階層と呼ばれるものと対応することを示した。
 2点目に関し、上記3形態素の表す意味が、通言語的に「複数」(特に、associatives = associativeplural = group plural)と呼ばれる意味(日本では、「近似複数」と訳されることがある)とは異なる特徴を持つことを述べた。この湯湾方言に観察される用法は、通言語的にはまだ少数の言語にしか観察されていない特別な複数の用法(Corbett. 2010. Numbers. CUP: 234-242の“special uses”)の一つであると考えられる。

2013年2月13日
「スペイン語の習慣・総称表現について」
  発表者 蔦原亮(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 本発表ではスペイン語における習慣・総称表現のバリエーションを概観し、習慣・総称性を表す副詞が未来形と基本的に共起が不可である理由、ならびに共起が可能となる条件を考察することで、そうした副詞の性質を記述することを試みた。
具体的には、まず、スペイン語の習慣・総称表現としては、動詞単体によるもの、動詞と副詞の組み合わせによるもの、そして迂言法によるものの計3パターンがあるとし、この分類の根拠となる統語・意味論上の根拠を紹介した。
次に、スペイン語において未来形と習慣の副詞の共起が不可能である理由は、意味・論理上のものであるとし、仮定・話者の主観性を強く表す句を付け加えることで共起が可能になることを示した。

2013年2月6日
「上海語の変調体系に見られる多層性」
  発表者 髙橋康徳(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 本研究では、上海語で観察される2種類の変調(広用式変調・窄用式変調)がどのような体系を構成しているのかを考察した。考察の際には、特に音韻レベル以外の要因(形態統語的要因・音声的要因)がもたらす影響に注目した。
上海語では、第1音節の声調が(複数音節からなる)語全体のピッチを決定する広用式変調と限定された句構造のみで適用される窄用式変調という2種類の変種が存在する。1980年前後から生成音韻論の枠組みを利用した上海語変調の分析は広く行われてきたが、音韻レベル以外の要因が上記の2種類の変調とどのように関わるのかはこれまでほとんど考察されてこなかった。
本研究では【1】形態統語的要因が広用式変調の変種の出現分布に与える影響、および【2】窄用式変調が持つ音声的な特性を考察した。まず、従来の研究が自由変異と解釈していた広用式変調の変種の出現分布が形態統語構造によって大きく偏ることを指摘した。次に、音韻的な解釈(水平声調化および声調中和現象)と音声的な解釈(発話速度に応じたピッチの連続的な変化)が提案されている窄用式変調の音声実現を音響音声学的に記述し、後者の解釈が妥当であることを示した。以上の2つの考察を総合した上で、上海語の変調体系は形態統語・音韻・音声レベルにまたがっていることを明らかにした。

2013年1月30日
「スペイン語の使役交替:自動詞構文における再帰代名詞seについて」
  発表者 発表者:熊倉英己(東京外国語大学大学院博士後期課程)
 本発表ではスペイン語において使役交替を示す動詞グループを対象とし、その自動詞構文における再帰代名詞のseの有無に関する研究報告を行った。自動詞構文でseを必須要素とする使役交替動詞(abrirse:英open, romperse:英break, etc.)の事象構造は「活動」、「到達点」、「結果状態」の3局面を備えているのに対し、自他同型の使役交替動詞(aumentar:英increase, hervir:英boil, etc.)の事象構造は上記の3局面を満たしていない。この言語事実を踏まえ、事象構造の違いこそが、自動詞構文におけるseの出現の有無に関与すると主張した。

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