第4回 10月28日(火)
「フィリピンの言葉は繰り返す」

   講師:長屋 尚典 東京外国語大学 講師

 フィリピン共和国には200近くの言語が話されているとされ、そのほとんどはオーストロネシア語族というグループに属しています。このグループの言語は1200言語を超え、北は台湾、南はニュージーランド、西はマダガスカル島、東はイースター島まで幅広い地域で話されています。

 公開講座の第4回では、このオーストロネシア語族の言語のうち、フィリピンで話される諸言語をとりあげ、フィリピンの言語状況や文化などを概観した後に、タガログ語を中心に文法的特徴を紹介します。

 そのうえで、フィリピンの言語に特徴的に見られる「重複」(reduplication) と呼ばれる文法現象に注目します。重複とは語の全部または一部を繰り返すことで新しい意味や機能を語に加えることです。日本語でも「山」から「山々」ができるように重複は使われますが、フィリピンの言語の重複はもっと体系的で文法的な機能を持っています。たとえば、タガログ語では、baba「下がる」からba〜baba「下がるだろう」、baba〜baba「ちょっと下がる」などのような語形が派生できます。繰り返すといっても、語のどの部分を繰り返すか、そして、どのような意味を持つか、さまざまです。その重複のめくるめく世界を一緒に考えていきたいと思います。
 

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