第2回 10月14日(火)
「「中国語好み」の表現―名詞的表現と動詞的表現」

   講師:加藤 晴子 東京外国語大学 教授

 ひとつの事柄を表すのにいくつかの表現方法が可能な場合でも、言語によってより好まれる表現があるようです。例えば、次の(1)と(2)では、どちらがより好まれるか、という問題です。

   (1) 富士登山を記念して、私たちは何枚か写真を撮った。
   (2) 富士山に登ったのを記念して、私たちは何枚か写真を撮った。
 日本語では(1)が選ばれることが多いのではないでしょうか。中国語では(2)のほうが選ばれます。「富士登山」と名詞的表現にするか、「富士山に登った」と動詞的表現にするかの違いですね。

 この他にも中国語では動詞、動詞的表現を日本語よりも好んで用いる例が見られますが、それらは単に「好み」で選ばれているのではなく、SVOを基本語順とし、格助詞を持たない、明示的に時制を示す形式を持たないなどの、中国語の言語的性格からくる理由によって選ばれている可能性があります。

 本講座では、このような、表現面での日中対照およびそれと関連する文法上の性質といった話題を展開していきたいと思います。
 

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