中国語

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中国語の音

0.2.1.1 音節構造

 中国語は極めて明確な音節構造を有し,音節は中国語の基幹を成しているといって過言ではない。その構造は一般に

「IMVE/T」

と定式化することができる。この意味するところは,1音節を「音節頭子音(Initial)+介音(Medial)+主要母音(primary Vowel)+尾音(Ending)」と分析することができ,さらにかぶせ音素として全体に声調(Tone)が加わっているということである。この内,I,M,E,Tはゼロでありうる。伝統的に「I」は「声母」,「MVE (/T)」は「韻母」と呼ばれる。

0.2.1.2 声母(音節頭子音)

 日本語や英語等と比較すると,中国語の子音には有声音と無声音の対立を持たない代わりに帯気音(「有気音」)と非帯気音(「無気音」)の対立を有するのが特徴的である。複子音は持たない。以下の21の子音がある。

b [p] p [ph] f [f] m [m]
d [t] t [th] n [n] l [l]
g [k] k [kh] h [x]
j [tc] q [tch] x [sh]
zh [ts] ch [tsh] sh [sh] r [z]
z [ts] c [tsh] s [s]

(上記の内,j,q,xはそれぞれ、gあるいはz,kあるいはc,hあるいはsと相補分布を成す。)
声母のない音節もあるが,実際には声門閉鎖音[?]が現れることが多い。

0.2.1.3 韻母

0.2.1.3.1 介音

 主要母音の前に付き,日本語の「拗音」的な作用を持つが,それよりも独立性が強く,かなりはっきり発音される。以下の3つの介音がある。

/i/[i] /u/[y] /u/[u]

介音のない音節もある。またこれら3つの介音が,主要母音や尾音なしにそれだけで韻母を成す場合もある。

0.2.1.3.2 主要母音

主要母音としては低母音/a/と中母音/e/の対立が最も重要である。この他に高母音/?/,及び/er/がある。

/a/[a] /e/(e~o)[??] /?/(i)[?~??] /er/[?]
(()内は実際のローマ字表記)

これらの実際の音価は共起する介音や尾音等の環境によって異なる。とりわけ/e/は異音が多い。/?/は尾音と共起することがなく,また共起する子音も/zh/,/ch/,/sh/,/r/,/z/,/c/,/s/に限られる。ただ,介音の/i/,/u/,/u/が単独で韻母を成す場合,それらをそれぞれ形式的に/i?/,/u?/,/u?/と分析することがある。/er/は常に単独で現れ,子音と共起することもない。

0.2.1.3.3 尾音

 音節末の半母音的要素または子音(鼻音)要素で,主要母音の後に付随して発音される。介音より独立性が低い。次の4つがある。

/i/[?] /u/(u~o)[?] /n/[?] /ng/[?] (()内は実際のローマ字表記)

/i/と/u/の実質は下り二重母音の後半の母音なので,介音とは異なり[i]や[u]の典型的な調音点まで達することはない。/n/と/ng/の対立は中国語では極めて重要であるが,日本人の学習者には困難(特に聞き取り)なので注意すべきである。

0.2.1.3.4 介音,主要母音,尾音の組み合わせ

以上の介音,主要母音,尾音を組み合わせて韻母が構成されるのであるが,実際には全ての組み合わせが現れるのではなく,一定の規則に従った組み合わせしか可能でない。

a [a] ai [ae] au [ao] an [an] ang [a?]
ia [ia] iau [iao] ian [ien] iang [ia?]
ua [ua] uai [uae] uan/[ua?] uang [ua?]
uan [yan]
e [??] ei [ei] eu [ou] en [?n] eng [??]
ie [ie] ieu [iu] ien [in] ieng [i?]
ue [uo] uei [ui] uen [un] ueng [o?]
ue [ye] un [yn] ueng [y?]
i? [i] u? [u] u? [y] er/[?]
(()内は実際のローマ字表記) なお,以上の韻母の体系は極めて形式的な分析に基づくものであり,分析手法が異なれば,これとは異なった体系を想定することも可能である。また間投詞等のみに現れる周辺的な音声は除いてある。 0.2.1.3.5 児化韻  ほぼ全ての韻母が別に末尾に/r/[?]を伴いうる。このような韻母を“儿化韵”(児化韻)と呼ぶ。児化韻においては主要母音や尾音の発音が変化するものがある。また本来は異なる韻母が合流して同じ発音になることがあるので,児化韻の総数は非児化韻母と比べると少ない。 0.2.1.4 声調  それぞれの音節は常に「声調」と呼ばれる高低アクセントをかぶせて発音される。声調が異なれば語彙的意味も異なる。中国語の声調には,第一声(?)[55]<高平調>,第二声(?)[35]<上昇調>,第三声(?)[214~21]<降昇調~低平調>,第4声(?)[51]<下降調>の4つがある。(()内はローマ字表記に用いられる声調符号。[]内の数字は調値(高低の変化)を表し,5が最高音程,1を最低音程とする。)この他に軽声とよばれる「ゼロ声調」に相当するものがある。軽声は固有の調値を持たず,常に前の音節に付随して弱く短く発音される。