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中国語は極めて明確な音節構造を有し,音節は中国語の基幹を成しているといって過言ではない。その構造は一般に
「IMVE/T」
と定式化することができる。この意味するところは,1音節を「音節頭子音(Initial)+介音(Medial)+主要母音(primary Vowel)+尾音(Ending)」と分析することができ,さらにかぶせ音素として全体に声調(Tone)が加わっているということである。この内,I,M,E,Tはゼロでありうる。伝統的に「I」は「声母」,「MVE (/T)」は「韻母」と呼ばれる。
日本語や英語等と比較すると,中国語の子音には有声音と無声音の対立を持たない代わりに帯気音(「有気音」)と非帯気音(「無気音」)の対立を有するのが特徴的である。複子音は持たない。以下の21の子音がある。
b [p] | p [ph] | f [f] | m [m] | |
d [t] | t [th] | n [n] | l [l] | |
g [k] | k [kh] | h [x] | ||
j [tc] | q [tch] | x [sh] | ||
zh [ts] | ch [tsh] | sh [sh] | r [z] | |
z [ts] | c [tsh] | s [s] |
0.2.1.3.1 介音
主要母音の前に付き,日本語の「拗音」的な作用を持つが,それよりも独立性が強く,かなりはっきり発音される。以下の3つの介音がある。
/i/[i] /u/[y] /u/[u]
介音のない音節もある。またこれら3つの介音が,主要母音や尾音なしにそれだけで韻母を成す場合もある。
0.2.1.3.2 主要母音
主要母音としては低母音/a/と中母音/e/の対立が最も重要である。この他に高母音/?/,及び/er/がある。
/a/[a] /e/(e~o)[??] /?/(i)[?~??] /er/[?]
(()内は実際のローマ字表記)
これらの実際の音価は共起する介音や尾音等の環境によって異なる。とりわけ/e/は異音が多い。/?/は尾音と共起することがなく,また共起する子音も/zh/,/ch/,/sh/,/r/,/z/,/c/,/s/に限られる。ただ,介音の/i/,/u/,/u/が単独で韻母を成す場合,それらをそれぞれ形式的に/i?/,/u?/,/u?/と分析することがある。/er/は常に単独で現れ,子音と共起することもない。
0.2.1.3.3 尾音
音節末の半母音的要素または子音(鼻音)要素で,主要母音の後に付随して発音される。介音より独立性が低い。次の4つがある。
/i/[?] /u/(u~o)[?] /n/[?] /ng/[?] (()内は実際のローマ字表記)
/i/と/u/の実質は下り二重母音の後半の母音なので,介音とは異なり[i]や[u]の典型的な調音点まで達することはない。/n/と/ng/の対立は中国語では極めて重要であるが,日本人の学習者には困難(特に聞き取り)なので注意すべきである。
0.2.1.3.4 介音,主要母音,尾音の組み合わせ
以上の介音,主要母音,尾音を組み合わせて韻母が構成されるのであるが,実際には全ての組み合わせが現れるのではなく,一定の規則に従った組み合わせしか可能でない。
a [a] | ai [ae] | au [ao] | an [an] | ang [a?] |
ia [ia] | iau [iao] | ian [ien] | iang [ia?] | |
ua [ua] | uai [uae] | uan/[ua?] | uang [ua?] | |
uan [yan] | ||||
e [??] | ei [ei] | eu [ou] | en [?n] | eng [??] |
ie [ie] | ieu [iu] | ien [in] | ieng [i?] | |
ue [uo] | uei [ui] | uen [un] | ueng [o?] | |
ue [ye] | un [yn] | ueng [y?] | ||
i? [i] | u? [u] | u? [y] | er/[?] |