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図解 アラビア語文法

【現在用いられている母音記号の元になった文字】


母音記号

アラビア語では、単語末の格(主格・属格・対格)を示すための「母音記号(علامة الإعراب)(複数形はعلامات الإعراب)」が用いられます。アラビア語の母音記号は全部で4種類ありますが、それらはいずれも、アルファベットの上下に小さく書かれます。

現在用いられている形の母音記号は、アラビア語学の祖であるとされるアブー・アル=アスワド・アッ=ドゥアリーではなく、アラブ詩韻律学を打ち立てたことで知られるアラビア語学者アル=ハリール・イブン・アフマド・アル=ファラーヒーディー(西暦718年−791年頃)が定めたものを原型としています。

これらの母音記号は、いずれもアラビア語にあるアルファベットを元にして作られました。どの記号も、関連を持つアルファベットのミニチュアとして考案されたものです。

ここで、各記号の元になった文字を紹介したいと思います。
 

母音記号

元になった文字

説明

ـَ ا ファトハ[ الفتحة ]
母音「a(ア)」を示す記号。元になったアルファベットは「アリフ(ا)」。
ـِ ي カスラ[ الكسرة ]
母音「i(イ)」を示す記号。元になったアルファベットは「ヤー(ي)」。
ـُ و ダンマ[ الضمة ]
母音「u(ウ)」を示す記号。元になったアルファベットは「ワーウ(و)」。
ـْ ج スクーン[ السكون ]
無母音を示す記号。「جزم」の「ジーム(ج)」もしくは「ミーム(م)」の一部などから作られた言われています。「ハー(ح)」が元になったとの説明も。


その他の記号とその由来

その他の記号も、同様の仕組みで発明されました。

記号の元になった文字

ـّ シャッダ[ الشدة ]
名称に含まれる「シーン(ش)」の点を取り、その頭部分を記号にしたもの。 ただし、マッダのように「شـد」という単語を切り取ったものである可能性も。
ワスラ記号 ワスラ[ علامة الصلة ]
ハムザトルワスルを示すための記号。名称に含まれる「サード(ص)」から作られた記号です。
マッダ記号 マッダ[ المد ]
記号の名称に含まれる「ミーム(م)」と「ダール(د)」が接合した「مـد」の一部を切り取ったものです。
ء ハムザ[ الهمزة ]
声門閉鎖音を示す記号は、当初しなかったため、後代になって考案されました。この記号は、調音点の近い「アイン(ع)」の頭部分を切り取って作られたものです。
ـً ـٍ ـٌ タンウィーン[ علامة التنوين ]
この記号によって示される音を持つアルファベット「ヌーン(ن)」の一部もしくはその弁別点から作られたとされます。


上に示した記号は、アル=ハリール・イブン・アフマド・アル=ファラーヒーディーの考案したものとことなる形状を持つなどしますが、同じ基本的コンセプトから生まれたものです。

いずれにせよ上のような仕組みで作られたことを知ることは、アラビア語学習者にとっても有益であると思われます。ダンマ、カスラ、ファトハがそれぞれワーウ、ヤー、アリフと近しいと考えられていることにも、親近感が持てるようになるのではないでしょうか。

 

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