表記上に現れないアリフ

アラビア語には、発音されるにもかかわらず、表記上は現れないアリフがあります。母音記号がふっていない場合、これらの単語を間違えて読んだり、逆に、聞き取りのテストで間違えてアリフを書き足したりしないように気をつけてください。

アッラー

 
اَللهُ / اَللَّهُ
「アッラー(神)」という単語では、2番目のラームの後に長母音のアリフが表記されません。「短剣のアリフ」もしくは「ミニチュア・アリフ」が書かれる場合もありますが、クルアーン写本などではそれを書かず、単に「ファトハ」だけを書いている場合もあります。 アラビア語学習テキストなどでは、フォントなどの都合がありファトハだけで書かれていることも多いようです。


イラーフ

 
إِلٰهُ
「イラーフ(神)」という単語では、ラームの後に長母音のアリフが表記されません。「短剣のアリフ」もしくは「ミニチュア・アリフ」が書かれますが、この記号をつけない場合は、あたかも「イラフ」と読むかのように表記されます。


アッ=サマーワート

 
اَلسَّمٰوٰت
クルアーンでは「サマー(天)」の複数形に含まれる長母音のアリフが書かれません。


ラーキン、ラーキンナ

 
لٰكِنْ / لٰكِنَّ
「ラーキン」と「ラーキンナ」はいずれも「しかしながら」という意味を持ちます。いずれにおいても、語頭に来るラームの後に長母音のアリフが表記されません。「短剣のアリフ」もしくは「ミニチュア・アリフ」が書かれますが、この記号をつけない場合は、あたかも「ラキン」、「ラキンナ」と読むかのように表記されます。


ターハー

 
طٰه
「ターハー」はクルアーンに登場する神秘文字のひとつです。それぞれの文字の後には、発音上加えられる長母音のアリフが表記されません。「短剣のアリフ」もしくは「ミニチュア・アリフ」が 記号として上に付け足されますが、この記号をつけない場合は、あたかも「タハ」と読むかのように表記されます。


アッ=ラフマーン

 
اَلرَّحْمٰنُ
アッラーの属性の一つ「アッ=ラフマーン(慈悲深き者)」に含まれるミームの後には長母音のアリフが表記されません。そのため、表記上は「アッ=ラフマン」と読むかのようになります。ただし、定冠詞「أل」が取れたり、後に人称代名詞が接続している場合は、アリフが書かれるので、間違えないようにし てください。

【定冠詞がついていない場合】

 
رَحْمَانُ

【人称代名詞が接続する場合の例】

 
رَحْمَانِي / رَحْمَانكَِ


注意喚起のためのハー

注意喚起のためのハー(ها التنبيه)は、「هذا(ハーザー)」、「هذه(ハーズィヒ)」などのように、長母音のアリフが表記上では現れない場合と、 読みの通りに現れる場合とに分かれます。

【長母音のアリフが読みの通り表記に現れる場合】

1)一部の指示代名詞の前に接頭した場合

 
هَاتَانِ ، هَاتَيْنِ

2)その他の例

 
هَاهُنَا

【長母音のアリフが表記には現れない語】

1)大半の指示代名詞の前に接頭した場合

通常、あたかも一語であるかのように記憶されがちな「هذا(ハーザー)」、「هذه(ハーズィヒ)」などは、いずれも指示代名詞「ذا(ザー)」、「ذه(ズィヒ)」などの前に注意を喚起するための「ها(ハー)」がついて出来ている単語です。

指示代名詞について文法書で学んで、「ハー」の部分に含まれる長母音のアリフが書かれているものとそうでないものがあることに気づいた方も多いと思います。それらの違いは、ここで示す表記上のルールによるものです。

 
هٰذَا / هٰذِهِ / هٰذَانِ ، هٰذَيْنِ / هٰؤُلاَءِ / هٰكَذَا


【長母音のアリフが表記には現れないこともある語】

1)ハムザで始まる人称代名詞の前に接頭した場合

この用法の場合、長母音のアリフを書くほうが一般的なのですが、そうでない表記も存在します。覚えておけば、後から戸惑うこともなくなるのでは。

 
هٰأَنَا / هٰأَنْتَ / هٰأَنْتُمْ / هٰأَنْتُنَّ / هٰأَنَذَا


2)クルアーンの中に登場する人名など

クルアーンでは、長母音のアリフが様々な表記で表されています。預言者の人名にはたいていの場合長母音のアリフが含まれていますが、それらは表記上表れておらず、かわりに短剣のアリフ(=ミニチュア・アリフ)で示されています。

[ クルアーンにおける表記 ]

 
سُلَيْمٰن / إَسْمٰعِيل / هٰرُون / إِسْحٰق / إِبْرٰهِيم
 右から:スライマーン、イスマーイール、ハールーン、イスハーク、イブラーヒーム


[ 通常の表記 ]

 
سُلَيْمَان / إَسْمَاعِيل / هَارُون / إِسْحَاق / إِبْرَاهِيم
 右から:スライマーン、イスマーイール、ハールーン、イスハーク、イブラーヒーム

クルアーンの中にある神秘文字の「يس(ヤースィーン)」の場合は少し特別で、別の神秘文字「طه(ターハー)」とは違い1文字目の「ي(ヤー)」の上にマッダ記号が付け足されます。また、ターハーとは違い通常の人名として利用する場合には、読みの通り「ياسين」と書かれます。

[ クルアーンにおける表記 ]

 
يۤۤس
 ヤースィーン【クルアーンの章名、神秘文字として】

[ 通常の人名としての表記 ]

 
يَاسِين
 ヤースィーン【人名として】

 

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