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2022年11月 アーカイブ

2022年11月 2日

タコさん定食

Twitterに、ほぼ毎日、タコさん定食を食べて、その画像を上げている人がいる。

https://twitter.com/yukio_negi

ここまで毎日、それも画像は微妙に違うから、本当に毎日、同じ内容の食事をして、それを上げているのは...20世紀前半の用語を使えば、「異化」していますね。

文学理論では、1910年代シュクロフスキーが異化(露ostranenie)と、その効力が無くなる自動化(露avtomatizm)を唱え、

言語学理論では、1932年にハブラーネックが異化(チェコ aktualizace)、とその効果が無くなる自動化(チェコ automatizace)を唱えていて、後者は千野榮一によって「元祖ゴキブリラーメン考」で日本に紹介されている。

最近のコピーライティング業界では、その異化をフックとか、USP (unique selling point)とか言うんですね。日本では、フックの方が広く知られているようです。

https://1st-copywriting.com/what-is-hook-copywriting/

https://filthyrichwriter.com/copywriting-qa-how-to-set-yourself-apart-from-your-competition/ (英語です)

タコさん定食に戻ると、「毎日同じ質素な夕食」と言うのが、異化であるし、フックである。結構長い間続けられているので、そろそろ自動化が起きても良さそうだが、まだイイねは結構付くし、真似をしてタコさん定食の画像を上げる他の人や、それをアレンジしたものも出てきている。

ご本人はと言えば、時々カップ麺をぶち込んだり、いただいた果物を載せたりもしている。

それは、千野が言っていた、スライム(ツクダオリジナルの方 https://bit.ly/3U8pfzI)の異化が薄れてきた時に、カエルなどの小動物のプラスチック模型がスライムの中に入れられて、自動化に抗おうとしたのに似ているとも言えるが、でも、タコさん定食は、おそらくはまだ、当時のスライムほどには飽きられていないように思える。

ところで、同投稿者のインスタグラムも、タコさん定食かと思いきや、全然違うので、そちらは異化していて、フックが効いており、おじさん一本取られたな!という感じでした。

ことば3題

1.
英国のインド系新首相の名前は、リシ・スナクだそうだ。

sunakって、タイ語で犬じゃなかったでしたっけ?リシもなんか意味がありそうだし。と思っていたら、タイ語ウィキペディアでは、

https://bit.ly/3DV1aHs

risii suunɛkにしていて、どちらの意味も出ないようにしていますね。(タイ語の他の綴りも見かけました。)

日本語はと言えば、スナックにしちゃうと意味が出ちゃうので避けてますよね。

「バラク・オバマだって、バラックじゃないじゃん?」って思った方いらっしゃいます?それも、バラックだと終戦後用語の意味が出てきちゃうので避けられたんじゃないでしょうかね。

こういうのを見ると、以前の『地球の歩き方 マダガスカル編』で、南部のバラ族と書かれていたのが、後の版でバーラ族に直されていたことを思い出します。(笑)

外国の固有名詞が、自分の言語で何か意味を持ちそうな時、音形を変えて、それを避けるってことがされるんじゃないでしょうかね。

逆に、わざと残す場合もありますかね。ダレノガレさんとか。

2.
ぜったくんとか、
https://www.universal-music.co.jp/zettakun/

サンプラザ中野くんとか、
https://www.spnakanokun.com

なかやまきんに君とか、
https://bit.ly/3DPsDtT

「くん/君」までが固有名の一部である名前ありますよね。それって、マダガスカル語で、名前の前に付くRaに似ているかなとか思いました。Rasoaとか、Rakotoとか、Raで始まる名前がやたら多いんですよ。

マダガスカルの歌で、Mandihiza Rahitsikitsika(チョウゲンボウさん、踊ってよ)に似ているかなとちょっと思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=5s1h8Velc8s

チョウゲンボウという鳥の名前は、hitsikitsikaで、それにRaが付いています。

ちゃんみなみたいに「業界用語」式にひっくり返しちゃったのは、もはや、さん、くん、ちゃんのちゃんがそこにある感じが、僕はしないですけど。

3.
五味一体という食用油の製品名があります。
https://www.abura-ya.jp/SHOP/KB_b001.html

5種の油をブレンドしたものだとか。

これは、キリスト教の三位一体をもじった名前でしょうかね。

ところで、今話題の宗教団体の「天の父母様聖会」は、Heavenly Parent's Holy Communityで、parent'sが単数所有格ですから、二位(にみ)一体でしょうか。御半身が天にいて、残りの御半身が地上にいらっしゃる状態ですが。

『宗教二世』当事者1,131人への実態調査

社会調査支援機構による「『宗教二世』当事者1,131人への実態調査」が公表されました。

https://www.sra-chiki-lab.com/reaserch-result/

荻上チキさんによる記者会見

https://www.youtube.com/watch?v=7wF8mtSFENc

こちらは、ポリタスでの、津田大介さんと荻上チキさんの対談

https://www.youtube.com/watch?v=UOczJoHUlq0&t=2s

(後半は、上の記者会見です。)

一番大問題なのは、やっぱりカルトと呼ばれる宗教団体なのだけれど、カルトだとは普通呼ばれない伝統的宗教でも、もうちょっとマイルドめな程度に似たような問題を抱えている場合があるように、上記では報告していましたし、私にもそう思えました。

・献金問題
・抜けないようにする働きかけ
・恋愛・性愛に関する締め付け
・女らしさ、男らしさに関する締め付け
・教育を受けないようにする働きかけ
・政治参加しないようにする働きかけ
・教育上の体罰
その他

カルトと呼ばれるところでは、それらが常軌を逸している場合がありますが、旧来のキリスト教でも、(収入の)十分の一を献金しなさい、と言っている教派は結構あると思いますし、恋愛・性愛に関しては、温度差は色々あれど、制限している教派が多いでしょう。統一協会ほどの極端さでなくても、やっぱり、セックスを「結婚した異性の夫婦」だけに限定しているところは多いでしょう。

今回挙げられた一般社会とのズレが、「うちのところには無いな」という場合には他山の石とすればいいし、「ちょっと関係あるな」と思われる点に関しては、一般社会との擦り合わせをするなり、「いや、教義上今のままで行かざるを得ないと納得する」なりしないといけないでしょう。

枠はめと枠壊し

政治右派及び、宗教右派がしていることは、

「正しい生き方・やり方はこう、こう、こうである」

という正しさを狭く規定して、それ以外の異論を認めないという風に、単純化して見ると見える。

(カルトは、それをまたもっと狭く規定する。合同結婚しか認めない統一教会は、その方面で先鋭化している。)

n十年前のLGBTですらないLG運動の初期には、「正しいレズビアン、正しいゲイ」は、1対1で、異性愛夫婦のように付き合うことであると規定していたように思えるし、

画期的に昨日、東京都で始まった同性パートナーシップ登録も、色々工夫は盛り込まれていることは理解できるものの、やっぱり「そこまで」である。1対1でお付き合いすることが前提である。最初の突破口としては大いに意義があるとは思いますが。

やっぱりまだ「正しいレズビアン、正しいゲイ」を念頭に置いている。

先週のアシタノカレッジで、Aceや、Aroの話をしている人がいて、次の段階は、もはや新たな「枠」を設定し続けることではなくて、枠からはみ出しても、それが社会から糾弾されない、後ろ指を指されない社会を目指しているように思えました。

Aro/Aceを知ろう① 恋愛感情を抱かないアロマンティックとは?
https://lgbter.jp/noise/0149/

Aro/Aceを知ろう② 他者に性的に惹かれないアセクシュアルとは?
https://lgbter.jp/noise/0150/

他に、Xジェンダー
https://jobrainbow.jp/magazine/xgender

もう「既存の枠や、新たに設定された枠」にこだわらずに、ありのままの多様性を認めるというのが究極の反右派的な態度じゃないでしょうか。

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