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ことば8題

1. 「ふか°ふか°」

老人の喋り方が、だんだん明瞭でなくなっていく様を
「ふか°ふか°してきた」と言いますけど、
そのオノマトペは、有声軟口蓋鼻音(一般に言う鼻濁音)で
[ɸɯŋaɸɯŋa]と発音してもらわないと変な感じがします。

というか、若い世代だと、有声軟口蓋鼻音は練習しないと
使わないかも知れないから、[ɸɯɣaɸɯɣa]って発音する人も
いるんでしょうかね。

秋に非常勤の授業で確かめてみよう。


2. breakfastとlunchから、brunchっていうblendができますが、
同様に、magazineとbookから、mookっていうのはできているん
ですよね。でも、今の日本語内では解られにくいのか、
ムック本って呼ばれていたりします。

ところで、厳格なveganとは方向性の違う、ゆるいvegetarianで、
たまーには、魚などを食べちゃう人たちをフランス語で、flexitarien
って呼ぶんだそうな。flexibleと、végétarienのblendでしょうかね。


3. マトリッツォ

マトリっツォっていうかなりカロリー高めなスイーツが
流行っているのだそうな。

https://bit.ly/2Ud2ctT (Google検索のURLを短縮しています)

ダイエットしている人は、近寄らない方がいいですね。

また、もうちょっと小ぶりですが、韓国発のトゥンカロン
っていうのも流行っているとか。

https://bit.ly/3wAVkEO(Google検索のURLを短縮しています)

トゥン(デブ)なマカロンってことらしいです。

なお、トゥンは、濃音だとデブで、激音だとがっちりみたいな
違いがあるみたいです。韓国語学習者の人は気をつけてくださいね。


4. ティザー

最初に、英語などから外来語として取り入れた人の発音からは、
日本語話者コミュニティーの中で使われているうちに
独自の発音になってしまったものは、最近では、

パーテーション
フューチャリング
サスティナブル
スーサイド(これは、取り入れた人の段階で間違っていたかも)

などがありますが、その中の変わり種に

ティザー

があります。

teaserですから、当初はティーザーだったんでしょうけどね。
でも、最初の母音が短くなっちゃって、それで定着
しちゃいましたね。

ティー、テイ、テー、ティ辺りに、相互の入れ替わりやすさが
あるんでしょうかね。


5. ありがたいでございます

つい最近、ラジオの在京局で、出演者が、

「ありがたいでございます」

って言っていました。

形容詞プラス「ございます」は、以前はウ音便形を
使ったもので、それは関西方言からの借用だと
故田中利光先生がおっしゃっていました。

でも、今の若い大阪っこは、もうそのウ音便形
ほとんど使ってなさそうですね。

大阪の某アイドルさんが、

「嬉しいでございます」

って言っていました。

「嬉しゅうございます」

なんていうのは、東京でも大阪でも、ずっと年齢の
高い層に限られるんでしょうか。

ところで、

「ありがとうございます」

っていう慣用表現は、

/LH]LLL LLLLL/ (Lは低、Hは高、]はアクセント核の位置)

あたりにになると思うけど、

リアルな意味で「有難い」に「ございます」を付けたら

「ありがとうございます」
/LHHH]L LLLLL/ 

ぐらいになるかな。でも、そこは、そのウ音便を避けて

「ありがたいでございます」
/LHHH]LL LLLLL/ 

って言う場合が増えているんでしょうか。


6. green ideas

チョムスキーによる有名な

Colorless green ideas sleep furiously
色の無い 緑の 考えが 眠っている 猛々しく
「色の無い緑の考えが猛々しく眠っている」

という例文は、隣り合う語がことごとく
「意味的に一緒に使えない」と言うことだったけど、

最近は、greenっていうのが
ちょっと前までの言い方だと「エコな」
だったり、最近の言い方だと「サステイナブルな」
「SDGsな」っていう意味にまで拡張してきているので、

green ideas

というのは、最早おかしくないですね。

そのついでに言うと、

Colorless green

もおかしくないかも。
ただ、こっちは、わざわざ何を言いたいのかを
さらに考えさせられてしまいそうですが。
Colorlessに更なる比喩的拡張が必要かも知れません。

まああとの2語

sleep furiously

と続けたら、やっぱりダメですが。


7. generation Z

っと言うのがある年齢層の若者を指すのに
使われているようです。

英語で、それを短縮すると

gen Z

だし、韓国語でも、

젠지 (jenji チェンジー)

になっています。

ところで、それを番組名にしている
ラジオ局が、知る限り2つあって、

中京のZip FMでは、

GENZ(ジェネジー)
https://zip-fm.co.jp/program/genz/

と書いています。

千葉のBay FMの方では、

ジェネZ(ジェネゼ)
https://www.bayfm.co.jp/program/genez/

となっています。

Zip FMで、英綴りだとGENとなっているのが
カナだとジェネとなっているのが示唆的ですね。

日本語としては、ジェネレーションを縮約するときに、
ジェンとするのは、なんか違う感じがして、
2拍のジェネとした方が安定するんでしょうか。


8. 2拍+2拍の刈り込み複合

日本語史的には新しいものじゃないんでしょうけど、
最近目立つのは、「従来と違う2拍の切り取り方」を
する場合が結構あることですかね。

以前から、航空業界で

エールフランス --> エアフラ

なんていうのはあったんですね。
フランス語のエールから、英語のエアに
ずらしてしまっています。

最近だと企業等がわざと変則的な2拍+2拍を
最初っから使って、定着させようとするものがありますね。

恋はもっとDeepに --> 恋ぷに

だそうです。ちょっと前だと、

30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい --> チェリまほ

って言うのもありました。

他にも、

アフターシックスジャンクション --> あとロク
King & PrinceのRadio Garden --> 庭ラジ

とか、結構攻めていますね。

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2021年6月17日 18:31に投稿されたエントリーのページです。

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