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2019年7月 アーカイブ

2019年7月 8日

素性[± X]とは何か

Юさんのご発表。 

素性(そせい)が、[+ X][- X]で対立する音素(その他)は、
プラスの方に特徴があって、マイナスの方に特徴が消極的な感じで
「無い」のではなく、マイナスの方は積極的にその素性が無いという
対立であるという話でした。

(Trubetzkoyなんかが、細かいところでどう議論していたかは
よくわからないけれど、)Saussureによれば、そうなると。

ご発表からだと、例えば、タイ語の4声と5声は、同じ
「下降上昇」という特徴を持ちながら、
5声は、最低F0域に到達する、(F0は基本周波数)
4声は、最低F0域に(積極的に)到達しない
という対立になっていると。

(生前の藤村先生が、F0を藤村曲線より下げるのは、
 cricoid cartilageか、thyroid cartilageのどっちかだと
 おっしゃってた覚えがあるのですが、どっちでしたっけ。)

C氏は、「上昇下降」「下降上昇」「緩やかな下降」
っていうのも、Trubetzkoy的というか、現代の「音韻論」の
主流の考え方における、2分法、2分法の組み合わせで
書けないかと言っていたけれど、そこは軽々に
抽象化すればいいってモノじゃあ無いんでしょうね。

会場では、数年前(20年前位ですね)に流行った、
underspecification theoryが使えるんじゃないか?
(+, -の他に0を立てるようなヤツ)って言っている
人がいたけど、どうでしょうねぇ。

--

そう言えば、池上二良先生が、御著書
講座言語 第2巻 言語の変化 池上 二良 https://www.amazon.co.jp/dp/4469110523/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_oAIiDbP8DQY44
の中で、±と-の不完全な対立のことを書いてらっしゃいます。

(当時、あるいはその前の時期の)長野県の方言では、

「鯉だ [koida]」と「漕いだ [koida]あるいは[koĩda]」という
不完全な対立があると。
これは、東京共通語からの同調圧力もあっただろうけど、
「無くなりつつある対立」という不安定な段階だったのではないかなあと
今の僕は考えます。

--

また、ご発表の内容ではないけれど、規範的韓国語の
/u/と/ɯ/の対立は、まさに、[+ rounded]が前者では積極的にあって、
後者では、積極的に無いということで、円唇と張唇に
離れた感じになって対立してますよね。

現代諸方言では、その対立が中和しつつあるところも
あるらしいですが。

--

翻って手話諸言語などで、
通常、音素と言われている
手形、位置、動き(その他)、NMM(非手指標識)は、
よく、対立が必ずしも無くても「かくかくしかじかの特徴がある」
って言われちゃうけれど、そこは、再吟味の必要が
あるかも。

というか、対立が無いのに、特徴があるっていうのは、
シニフィアンとシニフィエの間の、オノマトペ的な
iconicityが発揮されているかも知れないっていうことは、
今思い付きました。

それから、手話言語学外にいて、手話を良くご存知無い方々が、
「その音素(手形、位置、動き、その他)っての、
ホントは素性じゃないの?」って
言ってくることがまだあります。
欧米では、もうそんなこと話題になってなさそうですが。
でも、これは、即時に却下していいものかどうか、
僕にはまだ躊躇いがあります。

2019年7月19日

Berkeley goes gender-neutral.

Berkeley, CA is going gender-neutral and they are serious this time around.

https://edition.cnn.com/2019/07/18/us/berkeley-gendered-language-ban-trnd/index.html

The words "manpower" and "manhole" will be replaced by gender-neutral "human effort" and "maintenance hole." The pronouns "she" and "he" will be replaced by "they."

カリフォルニア州バークレー市は、性別が特定される表現を性別的に中立的な用語で置き換えようとしています。今回、バークレーはかなりマジなようです。

https://www.afpbb.com/articles/-/3235870

"man"の含まれる、"manpower"、"manhole"は、性別的に中立的な"human effort"、"maintenance hole"で置き換えられます。代名詞"she"や"he"は、"they"で置き換えられます。

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At the end of the 20th century, it was still a joke.

20世紀末には、それはまだジョークでした。

_The Official Politically Correct Dictionary and Handbook_
『公式政治的妥当性辞典及びハンドブック』
https://www.amazon.co.jp/dp/0679749446/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_WGCmDbS8W0J0Y

used to be in the "humor" section in bookstores.

は、書店の「ユーモア」コーナーに置かれていました。

People jocularly used "horizontally-challenged," "waitron," etc.

人は、ジョークとして、「太っている」の代わりに「水平方向にチャレンジを受けている」と言い換えたり、「ウエイトレス、ウエイター」の代わりに、「ウエイトロン」と言い換えたりしていました。

--

But this time around, they look very serious.

今回は、この人たちはかなり真剣なようです。

It reminds of the "news" a while ago that "han (he)" and "hon (she)" would be replaced by gender-neutral "hen" in Sweden.

思い出されるのは、スウェーデンで、代名詞 "han(彼)"、"hon(彼女)"が、性別的に中立な"hen"で置き換えられるというちょっと前のニュースです。

But Berkeley's decision seems a lot more serious and thorough about gender equality.

だけど今回のバークレーの決定は、ジェンダーの平等に関して、もっと真剣で徹底しているように見受けられます。

2019年7月20日

参院選に関して

TBSラジオ、荻上チキSession-22では、
https://www.tbsradio.jp/ss954/

来る日曜日の参議院選挙に向けて、
ここ2週間、政党要件を満たす7党の議員を呼んで、
約30分ずつインタビューをしました。

音声も、上記リンクで、ずうっと聞けるように
なっています。

細かいことに踏み込むことはしませんが、
こと「選択的夫婦別姓」や、「同性婚」に関しては、
与党(とそれに近い野党)と、
中央から左寄りの野党との間でくっきりと
態度が分かれました。

与党は、人権、人権って言われても、
大多数の国民の理解が得られるまでは、
軽々に法制化することはできないという立場であることが
言葉の端々に滲み出ていました。

(行為者を無駄に「大きく」したり、
受け身形を使って、行為者をぼかすのは
こずるいです。)

他方、中央から左寄りの野党は、
人権施策は、優先的にどんどん法制化すべきだという
姿勢が聞き取れました。

--

大雑把に言って、先進諸国でも、新しい人権政策の導入の
プロセスは、経路が違うように見受けられます。

日本人にとって一番身近な国の1つである米国では、
基本、どんな政策も、国民の間で議論をしつくしてから
実現することが多い感があります。

でもそれは、普段から、政治的議論をする、
政治的ディベートをする土壌があるからできることです。

日本では、政治的な議論をしようとすると、
話が噛み合わないで終始したり、

自由な発言を野放しにすると、
ヘイトスピーチばかりが出てくるように
なるように思えます。

他方、オランダなどでは、議会主導で、
同性婚、安楽死、マリファナの合法化などが
法制化されてきました。

--

私の持論ですが、少数者の人権政策は、
多数決が至上の民主主義だと考えていては、
なかなか実現しないと考えています。

「選択的夫婦別姓」などは、それを選ばないで結婚する人にとっては、
何も失うものが無い案件だと思います。

それでも、右寄りの「多数派」は、いろいろと難癖を付けることに
終始しています。

「同性婚」に関しても、実際に同性婚を導入した国々の状況を調べることをせずに、
「こんなことが起こるかもしれない」、「あんなことが起こるかもしれない」
という想像の仮定で反対しています。

導入されたところで、「同性婚」を選ばない人にとって、
失うものは何も無いのに関わらず、です。

--

つい数日前、

老人はテレビを点けっぱなしにしている。

他方、ネットに慣れ親しんだ人々のある部分は、

ツイッターのタイムラインを、「点けっぱなしのテレビのように」
見ている、というツイートがありました。

それらの、2つの典型的な行動から得られる「情報」は
かなり違います。

それぞれに偏ってもいるのでしょう。

ツイッターも、利用者の「カスタマイズ」によって、
右寄りにも、左寄りにもなるでしょう。

テレビはと言うと、政府の批判をするような
ニュースキャスターが、次々と降板させられたりして、
与党政府に忖度した情報に偏った「ニュース」しか
流せないようになっているように思えます。

あるいは、もしかしたら「わざと」芸能ニュースが
流れるようにして、選挙のニュースを流さずに、
有権者が選挙に行くことをためらって、
与党に有利になるように仕向けているようにも
見受けられます。

投票行動も、(投票しないと決めることも、)
そういう普段から入ってくる情報に
左右されることが多いように思えます。

--

特に少数者と、その連帯者(アライ)は、
政治が「もっと悪くなる」ことを止めるためには、

参院選は、政権交代を起こす選挙ではありませんから、
少なくとも、与党・野党の間のバランスがもっと
取れるように投票行動をしないと、
世の中住みやすくはなりません。

いかがでしょうか。

駆け巡った土曜日 #わがままいわせて #ハナイトナデシコ

今日午後イチでは、

須藤飛鳥さんの
https://twitter.com/fs1229suu
AM4:27-SELFISH 0seconds
#わがままいわせて

という旗揚げ公演を見に上井草へ。

飛鳥さんは、ものすごい二枚目から、
テンション高いオキャマから、
ものすごく振り幅広いキャラを
演じ分ける俳優さんなのですが、

今回は、ご自身で書いた本のもよう。

こういうのが演りたかったのか!

みたいな。

男女の情愛ものかと思いきや、
あの世を「こっち側」と呼ぶ
あの世とこの世が逆になった世界。

向こう側(こっち側と言う)のお話でした。

男からのナンパにカウンターで返す
カウンターナンパが面白かったです。

それから、小さなハコだからこそできる、
割とテンション低めで(大声も出していない)
女優さんの演技も好感持てました。

飛鳥さんも、ハイテンションからローテンションまでの
使い分けが面白かったです。

次に自由が丘に行かなければならないので、
挨拶もおざなりに、車で自由が丘へ。

--

ハナイトナデシコ vol. 9
https://twitter.com/hanaito_dorama

堤 聡一朗さんを
https://twitter.com/Saw1Low_223
追っかけていきました。

※ネタバレありです!日曜日に見る人は、
見てから読みましょうね!


でも、10分到着が遅れました。

まあ、2つのお話の内容は大体わかったかな。

すれ違い、勘違いがものすごく
入り組んでて凄いことになっていました。

あと、近い未来に、「ウソを言ったら、
AIに分かられてしまう世界」っていうのが
来てしまいそうで、戦慄を覚えました。

新興宗教の信者の描写が面白かったです。

既成の宗教だって、見る人が見れば
そう変わらないのかなとも思いました。

堤さんとは、ゆっくり話せました。

--

それから、まほろ座の8月のパンフの
表紙が伊藤俊吾さんなので、
https://www.mahoroza.jp/190803
町田まで取りに行ってきました。<爆>

東名を走れて、楽しかったです。

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