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レジスターを変えるために使われるオネエ言葉

「普段オネエ言葉を使ってないゲイでも、
 ラジオ・テレビの取材が入ったりすると
 オネエ言葉になってしまうのは、
 コードスイッチングなんじゃないかと。
 オネエ言葉は、ある人にとっては、
 よそ行き/ハレ/アゲ系レジスターでもあるのかも。」

と呟きました。

そう考えた背景はこういうことです:

2012年3月30日金曜日。
FMのJ-Wave、Circus Circusの特集は新宿御苑。
その中では、新宿二丁目のお店がいくつか
紹介されていました。

その一つ、24時間営業のゲイバー
シンバに、呟き王子こと土屋礼央氏が
取材に入ったとき、
お店の人だけでなく、お客さんも
皆、オネエ言葉を喋っていました。

僕の周りのゲイを見ていても、
確かに、四六時中オネエ言葉を
話している人は、まあいるものの
大多数は、いわゆるオネエ言葉を
普段使いしてはいないので、
「変だなぁ」という感想を持った
次第なのです。

そこで考えついたのが、
普段はオネエ言葉を使っていない人でも、
テレビやラジオの取材が入ったときなどは、
オネエ言葉で喋ってしまう場合があるのでは
ないかという説です。

「よそ行き/ハレ/アゲ系レジスターとしての
オネエ言葉」説です。

当人達は、無意識にレジスターの移行を
行っており、これは、ごくごく自然な
言語使用の一環です。

でも、当人達、そしてゲイ・コミュニティーが
望む・望まないに関わらず、
現実からは乖離した、誤ったイメージを
世間一般に広めるのに寄与しています。

詰まり、「同性愛者はオネエ言葉を喋る」
というイメージです。

そして、また、当事者のカテゴライゼーションとは
大きなズレを孕みつつ、世間一般に形成されている
「オネエ」というカテゴリーと、それは
非常に密接な関係を持っています。

世間一般の「オネエ」というカテゴリーには
相異なる以下の人々が入っています。

・MTF TS(男性から女性に性転換した人、また希望者)
・フルタイムの女装者
・パートタイムの女装者(パーティー、イベントのときだけ)
・上記のいずれでもない女装をしていない男性同性愛者でオネエ言葉を使う人

これらを貫いているのは、奇しくも「オネエ言葉を使用する」
という点です。

(そういう意味では、上記の下位区分に属さない人々、
 即ち、オネエ言葉を使用する男性異性愛者も
 同カテゴリーに含められる場合が多いかと思われます。)

このカテゴライゼーションからは、
女装をせず、オネエ言葉を使わない同性愛者は
すっぽりと抜け落ちています。

そして、「よそ行き/ハレ/アゲ系レジスターとしての
オネエ言葉」を使う男性同性愛者は、
オネエ言葉を使っているときだけ臨時に
その「オネエ」というカテゴリーに
含められ、オネエ言葉を使っていないときには
「オネエ」という範疇に入れられないことになります。

これらのことは、ぐるぐると循環して、
男性同性愛者はオネエであり、オネエ言葉を使うという
事実と異なるイメージを、世間一般に拡げることに
寄与しています。

そしてまた、そこから外れる、オネエに含まれない
オネエ言葉を使わない男性同性愛者は
あたかもこの世に存在しないかのような
錯覚を覚えさせる働きまでしています。

Ricky Martinのように、「オネエ性」を微塵も
見せずに世間一般からゲイと認識されている
例が、外国にはあちらこちらに見られますが、
日本では、まだまだ充分可視化されているとは
言い難いです。

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2012年4月 2日 22:08に投稿されたエントリーのページです。

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