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ラブ・ストーリー

大学院の授業では毎週、現代ロシアの短篇をひとつずつ読んでいる。
担当者がレジュメを作り、作者について、物語の梗概や作品の特徴について、顕著なモチーフや文体について、現代ロシアの文壇における位置づけについてプレゼンをおこない、みなでコメントし合う。

先週は、ユーリイ・マムレーエフの短篇 「ラブ・ストーリー」 を取りあげた。
『愛のアンソロジー』 (ザハロフ社、2008年)という短篇集に収められている作品。
こちらがアンソロジーの表紙。
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マムレーエフの短篇は、ふつうに想像する「ラブ・ストーリー」とはかけ離れていて、かなりグロテスクだ。
さほど好きでもなかった女が自殺したら彼女のことをものすごく愛すようになって結婚する(つまり死者と!)。しばらくすると彼女への愛は冷めるが、彼女の弟が自殺すると今度は彼への愛に目覚めて姉とは離婚する(つまり死者と!)。またしばらくすると彼への愛が冷め、今度はその妹が自殺して彼女への愛を感じる...。

死者への愛、いわゆるネクロフィリアだが、エロティシズムがあまり感じられないし、怖いというより全体的に奇妙な作品だった。この奇妙さ、どことなくペトルシェフスカヤの短篇にも通じるものがありたいへん面白かった。

今週は、同じアンソロジーから取ったスヴェトラーナ・ワシレンコの 「パトリアルシェ池のルサールカ(水の精)」 を読む予定。
これまた面白い作品で、イワン・クルィロフの動物寓話とフォークロアを合わせて現代風にアレンジしたようなものだ。

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2014年4月23日 00:08に投稿されたエントリーのページです。

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