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2013年2月 アーカイブ

2013年2月 4日

『チェーホフの短編小説はいかに読まれてきたか』

チェーホフの短編作品が各国でどのように読まれてきたかを考察するというコンセプトで編まれた本が出た。イギリスではどうだったか。アメリカでは? そして本国ロシアや日本ではどう読まれてきたのか? 以前比較文学会でおこなったワークショップをもとに再構成した論文集だ。

井桁貞義・井上健編 『チェーホフの短編小説はいかに読まれてきたか』(世界思想社、2013年)。
この第5章 「チェーホフとの対話―ロシアの作家たちによるチェーホフ受容」を書かせていただいた。ベールイ、ナボコフ、ソルジェニーツィン、トーカレワの4人の作家に絞って彼らのチェーホフ観を紹介した。


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2013年2月 7日

亀山学長特別講義

この2012年度、本学には中央アジア地域専攻が新設された。目下、中央アジア地域の1年生がロシア地域の学生たちとともにロシア語を学んでいるが、来年度からはウズベク語学習が加わりいよいよ本格的な中央アジア地域研究が始まる。この機を捉え、ウズベキスタンのヌクス美術館に残された膨大な量の「知られざるアヴャンギャルド作品」について、亀山学長が自らパワーポイントを駆使しながらご紹介くださることになった。

日時:2月13日(水) 17:40-19:10
場所:東京外国語大学研究講義棟1階 115教室
講師:亀山郁夫学長
特別講演:「ウズベク・アヴャンギャルドの消長―イーゴリ・サヴィツキーの『遺産』を検証する」
参加無料
お問い合わせ:中央アジア地域研究室 shimada@tufs.ac.jp


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例えば、これは Михаил Курзин ミハイル・クールジン (1888-1957)の作品。
革命後の1919年にタシケントに現れたクールジンは、一時マヤコフスキーと「ロスタの窓」でプロパガンダ運動に参加していたこともある画家だ。東と西の融合を模索していたという。

ちょっとやそっとでは目にすることのできない貴重な絵画の数々を堪能し、驚異のコレクションを創りあげた人と暗黒の時代にそれを守り抜いた人たちの運命をぜひ追体験しに来てください。

2013年2月16日

粒ぞろいの修士論文

今回、同僚の前田和泉先生と私が指導教員ならびに副指導教員を務めた院生3人の提出した修士論文は、どれもレベルが高く粒ぞろいだったのでとても嬉しい。

① 笹山啓 「2つの『虹の奔流』― ヴィクトル・ペレーヴィン作品における仏教思想と一元論的思考」
② 原真咲 「М.А.ブルガーコフ『白衛軍』の色彩論」
③ 山田有佐子 「テフィのユーモア」

①は、現代ロシアの作家ペレーヴィンの作品をチベット密教との関連から読み直し、ペレーヴィンを「ポスとモダニスト」と見なす固定観念を相対化しようとしたもの。『チャパーエフと空虚』(1996)に登場する「虹の奔流」というモチーフが『妖怪の聖典』(2004)にふたたび現れることに着目し、この2つの「奔流」の間に何が起こったのか、スリリングに叙述している。

②は、ブルガーコフの「歴史小説」である『白衛軍』を、色彩のシンボリズムを切り口としてフォークロア分析の手法で考察したもの。ロシア革命直後の複雑な情勢をきちんと整理するとともに、ロシア語、ウクライナ語、ポーランド語の多言語状況を丁寧に読み解いたところは、多言語・多文化の共生をめざす本学ならではの研究と言える。

③は、亡命作家ナジェージダ・テフィの短編群のユーモアを分類し、その変遷を考察し彼女のユーモアの本質に迫ったもの。現状把握、仮説、分類作業、結論とすべてが論理的に構築されているため、読んでいて知的に小気味よい。後半に付された資料集も迫力があり、今後日本でテフィ研究をする際の重要な文献となるだろう。

Надежда Тэффи ナジェージダ・テフィ(1872-1952)
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2013年2月17日

ロシア語リアルフレーズ

超一流ロシア語通訳の吉岡ゆきさんがモスクワ国際関係大学のチローノフ先生と共著で「生きた」ロシア語のフレーズを500近く集めた本を出した。

セルゲイ・チローノフ+吉岡ゆき 『気持ちが伝わる ロシア語リアルフレーズ BOOK』(研究社、2013)。

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日常会話で知っておくと便利な一言、ロシア人がよく使う表現、ロシア・ビジネスに必要な言い回し、どれも役に立ちそうなものばかりで、親切な解説が施されているのもありがたい。
ロシア文学から生まれた次のような慣用表現も日常的によく使われるとのこと。
"Утром деньги - вечером стулья"(朝払って夕方椅子を受け取る)
これは、イリフ&ペトロフの風刺ユーモア小説 『12の椅子』由来のフレーズで「代金先払い」という意味。
"Краткость - сестра таланта"(簡潔さは才能の妹)
これは、チェーホフが言ったとされるフレーズ。

ロシア人と友達付き合いをするなら、この本は必携であろう。

2013年2月22日

朝日カルチャーセンター講演

だいぶ先の話だが、朝日カルチャーセンターでロシアのファッションについて講演をする。
以下パンフレットより。

日時: 2013年6月29日(土)13:30-15:00
場所: 朝日カルチャーセンター横浜教室(ルミネ横浜8階)
講師: 東京外国語大学教授 沼野恭子
題目: 「ロシア革命前後のファッション」
受講料: 会員 3,150円、一般 3,780円
お問い合わせ: TEL:045-453-1122


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リュボーフィ・ポポーワ
「ショーウィンドーのための衣服デザイン」

衣服は「記号」です。ロシアでは革命前、衣服は着る人の階級をあらわす記号としての役割を果たしていました。ところが、階級差をなくして平等な社会を実現しようという革命が起きたことにより、衣服に対する規範は大きく変化しました。新しい世界にふさわしい新しい衣服を作る―それが社会の要請になったのです。
時あたかもロシア・アヴャンギャルドの隆盛期。革命の理想に共鳴したリュボーフィ・ポポーワやワルワーラ・ステパーノワらが、未来の衣服のあり方をさまざまに模索し始めます。また宮廷御用達のクチュリエだったナジェージダ・ラーマノワも、新しいロシアのファッションを創設するにあたり特筆すべき活躍をしました。「近代ファッションの父」といわれるポール・ポワレとも親しくしていたラーマノワは、革命後、演劇や映画の衣装という新しいジャンルに活路を見出します。
こうしたロシア革命前後のファッションの変化をご紹介いたします。(講師記)
 


2013年2月23日

高橋淸治先生最終講義

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長年にわたり東京外国語大学で教鞭をとってこられた高橋淸治先生が今年度末をもって退職されます。それにともない、先生の最終講義と懇親会を下記のとおり開催いたします。

<最終講義>
題目:「映画『懺悔』をめぐって」
日時:2013年3月2日(土)15:00-16:30
場所:東京外国語大学府中キャンパス研究講義棟115教室

<高橋淸治先生を囲む会>
日時:最終講義終了後17:00より
会場:東京外国語大学府中キャンパス大学会館1階食堂ホール
会費:一般5,000円(学生2,000円)

お問い合わせ: lecture20130302@tufs.ac.jp

先生に教えを受けた皆様を始め、各方面で先生とご交流のあった多くの方々のご出席をお待ちしています。

2013年2月28日

『クリトゥーラ』 第2号刊行

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ロシア文化情報発信誌 『クリトゥーラ』 第2号が刊行の運びとなった。
内容は以下のとおり(興味のある方は沼野研究室までいらしてください。差し上げます)。

【文化の紹介】
「ルボークの世界」 吉田絢音 
「エリザヴェータ―洗練と優雅の女帝」 秋保友美   
「翼ひろげて―ミハイル・クズミーン」 本間尚 
「ロシア文学がバレエになると」 武良薫 
「ロシア・アニメーションとアヴャンギャルド」 鯉沼なつ希
「ズィーロフという主人公」 渡部壮太
「グルジアの夢」 五月女颯
「フィンランドのぬくもり」 内田三早希
「サリンジャー 『フラニーとゾーイー』 フラニーの思想の中にみるトルストイ」 鶴田さおり
「カーシャのススメ」 石崎麻衣

【ロシアと日本】
「聖ニコライとニコライ堂」 伊藤由紀
「ロシア・北の地サハリンと宮澤賢治の心象世界」 千葉元
「稚内で」 大場千樹

【各地からの報告】
「極東ロシアで見つけた音楽愛」 福島里咲子 
「ロシアに行った時のこと」 林亮佑 
「バイカルとブリヤートバレエ」 太田祥子
「芸術の都 サンクトペテルブルク」 長瀬智充 

【ゼミ企画イベント報告】
「奥の細道 合宿記」 大口みのり 
「ロシア音楽の夕べ―沼野ゼミ企画レクチャーコンサート見聞記」 市川愛実 

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