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小中高校生向け国際交流イベントを開催 ~ボランティアサークル「くりふ」「くらふと」へインタビュー

外大生インタビュー

2024年3月17日(日)、本学の学生ボランティアサークルである「くりふ」と「くらふと」の共催で小中高校生を対象に、イベント「英語がいらないワクワク異文化体験! 東京外大留学生と難破船ゲームをしよう!」を開催しました。本イベントを企画した「くりふ」代表の山本芽依(やまもとめい)さんと、「くらふと」代表の古田ひより(ふるたひより)さん(ともに国際日本学部新3年生)にインタビューしました。

―――本日は3月17日に小中高校生向けに開催した留学生との交流イベントについてお伺いできたらと思いますが、本題に入る前に、お二人が本学国際日本学部への進学しようと思ったきっかけを教えてください。

山本 高校生のころ、ニュージーランドに留学したのですが、その際、言語や文化の違いによって現地の人たちとのコミュニケーションに苦しんだという経験があります。この経験から、同じ立場にいる在日外国人の苦悩に気づきました。そして、日本語が苦手なことで不利益を被っている在日外国人の手助けを日本語教育の面で支援したいと考えるようになりました。 特に、日本語が不自由な外国籍の子どもたち向けの日本語教材を作りたいという思いがあったため、日本語教育を専門的に学べる東京外国語大学国際日本学部を選びました。東京外大に志望校を決定した後の高校3年生の時に外語祭を訪れ、東京外大生の来場者への対応や、醸し出す空気感に居心地の良さを感じました。そして、東京外大生と一緒に大学生活を過ごしたいとより強く思うようになり、より東京外大への憧れが高まりました。

古田 高校の時に2年間、ドイツのインターナショナルスクールに通っていました。ドイツでの学校生活の中で、さまざまな言語に触れる機会があり、いろんな慣用表現に触れ、その表現に表れる文化や思想に興味を持ちました。そして、日本語の慣用句にはどんな日本文化があらわれているのか、どのように外国における慣用表現やその言語の考え方と違いがあるのかを学びたいと思うようになりました。自分の学びたいことに合う大学を探していく中で、日本語学を学びながら他の言語についても深く学ぶには、東京外大が最適だと感じ、また、国際日本学部の先生方のご専門が自分の勉強したいテーマと合っていたことから、東京外大への進学を決めました。

―――山本さんは「くりふ」の代表として、古田さんは「くらふと」の代表をされていますが、くりふとくらふとはどのような活動をされているのでしょうか。まずは、山本さん、くりふについて教えていただけますか。

山本 外国にルーツを持ち、日本語に不慣れな子どもたちに日本語を教える活動をしています。2024年3月時点で、約35人の学生が所属しています。府中、調布、紅葉丘(多磨駅近く)の3つの支部を拠点としていて、約25人の小学生や中学生が通ってくれています。子どもたちが楽しんでくりふに来てくれること、そして、彼ら彼女らの居場所となるように心がけて活動をしています。私たちは日本語指導のプロではないため、日本語の先生になるのではなく、子どもたちにとっての精神的な支えになることを目指して活動しています。

―――地域の外国ルーツの子どもたちに日本語学習支援をしているのですね。古田さん、くらふとについて教えていただけますか。

古田 くらふとでは、小中高生を対象に、国際理解や異文化についてゲームを通じて学んでもらうためのワークショップを実施しています。くらふとの活動で大事にしているモットーは、一方的になにかを教えるのではなく、参加してくれた生徒自身が考え、その中で気づき学んでもらうこと、そして、ときには活動の中で小中高生と一緒に私たちメンバーも国際理解についてさらに学びを深めていくということです。日常的な活動としては、ワークショップの実施に向けた学校や地域の文化センターなどの職員の方との連絡や打合せ、それぞれの要望に合わせたワークショップの改善や調整、ワークショップで使うものの準備などを行っています。最近では、ワークショップ先を増やすために、くらふとの活動をより多くの方に知ってもらえるように宣伝活動なども行っています。

―――今回の企画をやろうと思ったのはどういったことからなのでしょうか。

山本 くりふとしての目的は二つありました。一つは、くりふに通っている小中学生の日本語学習者の方々に東京外大の留学生と交流してもらうことです。外国にルーツを持つ人が東京外大で活躍する様子を見て、日本での生活に自信を持ってほしいという思いがありました。二つ目の目的は、東京外大に来てもらうことで、参加者に将来のことを考えるきっかけを持ってもらいたいと思いました。特に、くりふに通ってくれている子どもたちには、東京外大のようなさまざまな言語使用者や多文化に寛容な大学に来て、将来の進路の一つとして大学進学も考えてもらえたらとの狙いがありました。これは、くりふに通う子どもたちが高校を卒業するとき、将来の選択肢に4年制大学への進学がない傾向にあったためです。また、日頃からくりふやくらふとの活動のために私たちを快く受け入れてくださっている地域の皆様に、このイベントを通して恩返しができたらと考えました。

古田 より幅広い子どもたちに、国際理解を学んでもらえると思ったからです。くらふとの活動は興味を持ってくださった学校や地域の文化センターの方などから依頼をいただき、ワークショップを実施しています。そのため、より広くくらふとの活動を知ってもらう機会が少なく、さらにコロナ禍の影響もあってワークショップ先は減少傾向にありました。一方で、活動を通じてさまざまなワークショップのゲームを知っていくうちに、くらふとの活動をよりたくさんの子どもたちに届けたいという思いが強くなりました。代表になってから、異文化や外国について触れる機会があまりない子どもたちにこそ、それらを学び、多文化共生について考えてもらう機会が用意できないか、ということを意識しながら宣伝活動などに取り組んでいました。そんなとき、くりふから、一緒に地域の子どもたちを集めてイベントを行わないか、と誘ってもらい、「より多くの子供たちに届く国際理解教育」が実現できる絶好の機会だと感じ、企画に参加することにしました。

―――ところで、今回のイベントで行った「難破船ゲーム」って何ですか。

山本 2011年に当時の東京外大生が考案し、 くらふとで受け継いだゲームです。海外旅行へ船で出かけたところ、 船が難破してしまい、知らない島にたどり着きます。ここがどこか、現地人が何語を話しているのかもわかりません。日本に帰るためには、コンパス、地図、食糧が必要です。 現地の人にそれらを分けてもらうためにコミュニケーションをとっていくゲームです。

―――ゲームを通じてどのようなことを体験していくのでしょうか。狙いは?

山本 現在、日本では小学3年生から英語教育が行われています。 しかし、いざという時、英語で思いを伝えられるのか? さらに言えば、外国人がみな英語が話せるわけではありません。 そんな時、言語以外にどんな方法で話したらよいのか。身振り手振りや表情を工夫してなんとか目の前の相手と伝え合うことの大切さに、ゲームを通じて気づいてもらいます。コミュニケーションの本質とは何か、その本質に触れてほしいという狙いがありました。

―――企画ではどんなことに工夫しましたか。

山本 参加者全員が、誰一人取り残されずに学べ、楽しめるように工夫しました。特に本イベントは対象層が小学校3年生から高校3年生と幅広いため、グループ分けの際は、同じグループに同年代の子どもたちが集まるように調整しました。また、ゲーム中、あまり活動に参加できていない子に私たちの方から話かけたり、活動の機会が得られるような声かけができるよう意識していました。

古田 今回のワークショップではグループ内の協力やコミュニケーションが重要ですが、参加者同士のほとんどが初対面だったので、場の空気が和み、円滑なコミュニケーションやワークショップ内の動きができるよう気をつけました。準備の面では、主催者である山本さんがとっても責任感が強く働き者なので、仕事量が偏りすぎないようなるべく仕事を割り振ってもらうようみんなで声掛けをするようにしていました。それでも、ワークショップ後の振り返りで、彼女が実は地道な宣伝活動をしていたことを知り、「もっと仕事を振ってくれ」と大ブーイングが起き…(苦笑)、山本さん、どうかたくさん休んでくださいね。

―――くりふと協働する貴重な機会にもなりましたね。

古田 日本で暮らす子どもたちへのアプローチで多文化共生への貢献を行うくらふとと、外国にルーツを持つ子どもたちへのアプローチで多文化共生に貢献するくりふという二つのサークルが協働し、イベントを実施することは、それぞれに所属する東京外大生にとっても新たな影響や学びが得られる良い機会になりました。今回は私たちのワークショップをくりふの部員のみなさんに体験していただいたので、次はくりふの活動に私たちが参加する、というような形でさらに交流が深められたら良いなと思います。こんな貴重な機会をもらえて、くらふとの部員であり、くりふの代表でもある山本さんには、頭が上がりません!

企画に参加した学生たち

―――今回、「留学生と交流しよう」ということで、たくさんの留学生にも参加してもらっていますが、どのように参加留学生を集めたのでしょうか。

山本 当日参加してくれた留学生は、私がキャンパス内で見かけた留学生にいきなり話しかけて参加をお願いしました。そのため、私たちの活動への不信感を払拭できるように、少なくとも一人につき一度は、一対一でオンラインや対面で話す機会を設けました。その後も週に1度はSNS上でやり取りをしました。その結果、今回初対面だった7人を含む12人の留学生が参加してくれました。リハーサルはイベント当日に一度しかできませんでしたが、大きなトラブルなく、無事楽しんで終われたと言ってもらえ、とても嬉しかったです。

―――ここにも地道な努力が・・・。イベントを終えていかがですか。

山本 一緒に活動する仲間と事前にコミュニケーションをとることの重要性を改めて認識しました。留学生とのコミュニケーションを大切にした一方で、ゲームの進行や参加者のサポート役を担う日本人学生たちとのコミュニケーションを怠り、情報共有が十分にできていませんでした。そのため、イベント開始直前まで修正や加筆が入り、混乱させてしまいました。トラブルや想定外の事態に陥っても、その度に豊富な経験や知識から臨機応変な対応をしてくれました。本当に感謝しています。

古田 こんなに大規模でイベントを行えたこと自体がとても貴重でありがたいことで、忘れられないとても大きな経験になりました。その中でも印象的だったのが、子どもたちが留学生との交流を心から楽しんでくれていたことです。難破船ゲームでは、どの留学生も、日本語も英語もどちらも話せないということにしていたので、コミュニケーションを取るのにとても苦労するはずなのですが、どのグループも子どもたちと留学生が大変打ち解け合っている様子で、ゲームが終わった後も留学生たちに話しかけにいく子や、とても名残惜しそうに帰っていく子どもたちがたくさんいました。

―――苦労もあったのではないでしょうか。

山本 イベントを一緒に運営する日本人学生や留学生、参加してくれる地域の子どもたちをどのように募ったら良いのかが分からず苦戦したのですが、VOLAS(ボランティア活動スペース)に後援していただき、また、学生課や入試課、広報・社会連携課の職員の皆さん、過去に同様の企画を開催したサッカー部部長からのアイデアの提供により、25人の学生、そして80人以上の参加者とともにイベントを作り上げることができました。これまで日本人だけで開催していたゲームだったため、留学生への英語での情報共有につまずくことがありましたが、ジェスチャーや顔の表情を使ってコミュニケーションをとり、難破船ゲームのメッセージの一つである、「コミュニケーションの本質は言語使用だけではない」ことを再認識しました。

古田 初めての地域の子どもたち向けイベントということもあり、どれほどの人数が集められるか、学年ごとの人数比はどれほどになるか、どれほど言語について子どもたちが興味を持ってくれるかなど、未知数なことが多い中での実施となり、始まる直前まで非常にドキドキしていました。実際、受付に手間取ってしまったり、会場内の保護者観覧席の配置がうまくいかなかったりなど、人数に関してのトラブルはかなり多くなってしまったと感じています。イベントの実践を経て、大人数のイベントではどんな準備が特別に必要になるのかを学ぶことができたと思います。

―――この経験をどう活かしていきたいですか。

山本 今後、このような初の試みをするときは、情報収集と情報共有を徹底させたいと思いました。古田さんが言っていたように、当日、受付に手間取ってしまい、開始時刻を15分ほど遅らせることになってしまいました。これは、事前に地域イベント開催経験のあるサークルなどにアドバイスを求めていれば、ある程度防げた事態だったと思います。また、情報共有不足で運営スタッフの学生たちに不安な思いをさせてしまいました。情報共有は、仲間たちから改善点を募る上でも有効な手段だったため、今後は徹底させたいと思いました。

古田 初めて地域の子どもたち向けのイベントを実施し、国際理解教育を広めるというくらふとの重要な目標に大きく貢献することができました。そろそろ代表を次期代表へと引き継ぐ予定の身としては勝手なことは言えませんが、地域向けのイベントを主催する方法を今回学ぶことができたので、こうしたイベントを今後も継続してもらえたらなと思っています。

企画に参加した学生からの感想

Pen Sreypichさん (カンボジア出身)

For this event, I am interested in the way we can communicate with foreigners. It is very helpful for me to know the type of Japanese communication. Especially I hope this game is a message for children to bravely speak with foreigners because it can help them when they come to their country.
(和訳)私は、日本の子どもたちが外国人とどのようにコミュニケーションを取るのか興味があったのですが、今回のイベントはとても参考になりました。このイベントに参加したことで、子どもたちが外国人と勇気をもって話すきっかけになることを願っています。

有馬倖さん(国際社会学部イベリア・ラテンアメリカ地域/ポルトガル語 新3年)

当日は、子供たち自身に言語以外のコミュニケーション方法を考えてもらうために、できるだけヒントを出さずにゲームの補助をするように工夫しました。小学生は特に集中力が切れてしまいやすく、話を聞いてもらうために注目を集めるのが大変でしたが、子供たちが覚えたての外国語を使ってゲーム後も楽しそうに留学生と交流している様子を見て嬉しく感じました。ゲーム後の言語以外のコミュニケーション方法として、身振り手振りだけではなく笑顔も非常に重要であるということを学んだという感想を子どもたちから聞けました。より多くの子どもたちに難破船ゲームを経験してもらい、実際に日本語の分からない外国人が困っている時には積極的に話しかけられるようになってもらえたらと願います。

Rodrigues Laurynさん(フランス出身)

My impressions on the event is that I really liked meeting with the students but didn't have quite the opportunity to really talk and exchange with them. They had a hard time figuring what to do and I didn't know how to help them because I was supposed to not talk a word so maybe if there
would have been more help for them it would allow them to enjoy the game better :) overall thank you for all your preparations, I saw that you were trying really to make that everything would go smoothly so thank for all your efforts and letting us participate!
(和訳)地域の子どもたちと会えたのはとてもよかったけれど、話したり交流したりする機会はあまりなかったのは残念でした。子どもたちがゲーム中、何をすればいいのか分からず困っていたのですが、私は日本語も英語も話しては行けなかったので、どう手助けしていいのかわからなかったです。だから、もっとヒントを出す機会があれば、子どもたちももっと楽しめたと思います!でも、外大生の皆んながイベント成功のためにたくさん準備しているのがわかりました!誘ってくれてありがとう!

RATANAPHAITHUN NADASIREEさん(タイ出身)

子供と接することが好きで、このイベントがとても面白かったと思います。子供たちは違う言語を話す人とコミュニケーション取れるようにいろいろなアイデアを使って面白かったです。自分の文化を紹介する機会もあってこのイベントがいい経験になりました。

参加者からの感想

  • 自分たちの言葉だけがこの世界に存在していると思わず、多文化社会を互いに認め合い、尊重することが大切だと気づきました。
  • 身振り、手振りだけでもコミュニケーションをとることが大切だとわかりました。
  • 言葉が通じない人とコミュニケーションをとるときは、分かろうとする心と分かるようにジェスチャーをすることが大切だと思いました。

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