フランス語通時研究参考文献
BIBLIOGRAPHY OF DIACHRONIC STUDIES OF FRENCH (2002年 第二版)
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―フランス語の通時的研究のために―
2002年9月現在
内容
はじめに
Ⅰ.文献案内
Ⅱ.フランス語学の概説書
Ⅲ.フランス語史研究
Ⅳ.古フランス語学
Ⅳ.1.歴史音声学 Ⅳ.2.形態論・語彙論 Ⅳ.3.統辞論
Ⅴ.フランス語方言学
Ⅴ.1.入門書・文献案内 Ⅴ.2.社会言語学 Ⅴ.3.方言学会議報告集
Ⅴ.4.雑誌特集 Ⅴ.5.言語地図集
Ⅵ.辞典
Ⅶ.学術雑誌
「何かの研究を行なおうとする者は,まず最初にその分野の研究に関する参考文献を自分なりに作ってみなければならない。」これは筆者の持論である。参考文献を作成する最大のメリットは,「最初に山を見るか,花を見るか」という視座の違いにつながる点にある。最初に出会う対象から,人はしばしば大きな影響を受けてしまう。だがその時に,山に咲く花の美しさだけに見とれるか,その背景の山にまで思いが及ぶか,筆者はこの違いがその人にとって些細なことのようには思えない。最初に出会う対象の選択肢は,多ければ多いほど良いのではないかと考えるのである。
とはいえ,たとえ色々なところから参考文献なるものを選んだにせよ,一般に初学者は,たくさんの文献を前にして,「さてはどこから読むべきなのか・・・」と思案するのが常である。我々の読書量には限界があり,生きている時間も短い。望むらくは,最短にして最上の結果に至りたいものである。ではどうすればよいのか?
「参考文献の解題を利用すればよいのではないだろうか」と筆者は考える。以下に挙げる参考文献には,全て筆者なりの(つまり全く個人的な)コメントを添えた。フランスのホテルではないが,参考文献に恣意的に白星印をつけた。五つ星(☆☆☆☆☆=強く推薦)から一つ星(☆=参考程度)までである。実際のところ,一つの著作が最初から最後まで等質的に優良であるということは稀である。小説でも感動する場面は限られているではないか。従って白星印は,あくまで著作のある部分について筆者が感じとった印象にすぎない。また学習者の中には,自らがフランス語の通時的研究を行おうとするのではなく,単にフランス語の通時的研究の概略を知りたいという人もいるであろう。そういう目的を持った方には黒星印(★)を推薦する。
最後に,これは筆者自ら反省の念をこめて言うのであるが,日本語で書かれた古フランス語学,フランス語史,フランス方言学に関する解説書や単なる解説文は,筆者自身がそれらに目を通していないため全て省略した。また,著書や単行本の形式を取っていない論文(論集のたぐいは著書と考えた)については,優れた論文も多々あるのだが,紙面の都合上,全て割愛せざるを得なかった。また特に断りのない限り,全て年代の新しい順に並べた。フランス語を専門としない人のために書名と著者名には全て邦訳をつけたが,適切な訳語かどうか,正しい人名の読み方かどうか疑問が残った場合もあることを付記しておく。
はじめに(第二版 2002年9月)
第一版から四年が経過した。そろそろ第二版を作成しようと調べ始めたところ,この間に筆者の不勉強も手伝って,たくさんの素晴らしい本がこの分野で出版されたようである。しかしその中で筆者が少しでも目を通すことができたものは数少ない。第二版ではできる限り新しい文献と第一版から漏れていた文献を追加した。また学生や外部の研究者の利便性に配慮し,各文献の所在を明らかにした。( )内の記号は東京外国語大学附属図書館の分類番号であり,(川口蔵書)とあるのは個人の蔵書である。 (2002年8月 第二版 2002年9月)
実のところ,筆者の拙いこの文献解題を待つまでもなく,以下の文献案内を利用すれば,学習者が自らの手で参考文献一覧を作ることが可能だったのである。紙面の都合と筆者の知識不足もあって,この文献解題には伝統的著作や古典的著作が盛り込まれていない。それらの著作については以下の文献案内を調べていただきたい。
4.バル,ジェルマン,クライン,スウィッガース W. Bal, J. Germain, J. Klein, P. Swiggers (1991) 『ロマンス語学とフランス語学の選択的文献案内』 Bibliographie selective de linguistique romane et française, Duculot, Paris.〔ロマンス語学の文献案内としても手ごろな著作である。123頁から199頁までがフランス語学関係。特色としては方言学の文献案内が詳しい点が挙げられよう。〕☆☆☆☆ ★ (N/a03/10a 禁帯出)
3.マルタン, マルタン R. Martin, E. Martin (1973) 『フランス語学の文献案内』Guide bibliographique de linguistique française, Klincksieck, Paris.〔主要著作(論文も若干含まれる)に関する文献案内。寸評と難易度がつけられている点が特色。また時代別の文献案内(pp.93-144)も充実している。以前はこの文献案内をまず推薦する研究者が多かった。〕☆☆☆☆ (N/831/1)
2.ワグネ-ル R.-L. Wagner (1965 第3刷) 『フランス語学入門』Introduction à la linguistique française, Droz, Genève.〔1953年以前のフランス語学の主要著作(論文も多く含まれる)を寸評いりで紹介。〕☆☆
1.『言語学書誌』 Bibliographie linguistique (1976-) Kluwer Academic, Dordrecht. 〔言語学の著作,論文,書評に関する最も網羅的な文献案内。毎年1巻出版されている。ロマンス諸語のフランス語の章を参照。年ごとの研究動向を知る上で最重要参考図書。〕☆☆☆☆☆ (1/F03/B41/1976-1991 書庫2層, N/831/91-96 2F閲覧室 禁帯出)
通時的な研究書ではないが,フランス語学を研究する場合のガイド・ラインが提示されていると考えられるようなフランス語学の概説書を若干掲げておく。これらの著作を読むことで,読者はフランス語学において,どのような研究主題が,どのような手続きを踏みながら分析・研究されているのかが分かるであろう。そうした研究のための手続きと方法論的な考察は,通時的研究を行う場合においても決定的に重要である。
7.東京外国語大学グル-プ<<セメイオン>> (1998) 『フランス語を考える―フランス語学の諸問題Ⅱ―』 三修社, 東京.〔本学大学院(フランス語専攻)の修了者グループによる論集。様々な学派,様々な分野の言語学的問題が扱われている点に特色がある。巻末の基本文献 pp.300-343 も有益。〕☆☆☆ (N/a04/37/2 副本4冊あり)
6.大橋保夫他著 (1993) 『フランス語とはどういう言語か』 駿河台出版社, 東京.〔関西のフランス語学者を中心とする論集。困難な言語学的問題が比較的易しく説明されており,初学者にも理解できるように工夫がなされている。〕☆☆☆ (N/a04/498119 風間研究室に副本)
5.バッティ,ヒンツ A. Battye, M.-A. Hintze (1992)『今日のフランス語』 The French Language Today, Routledge, London/New York.〔フランス語学入門書の典型とも言うべき著作。通常はあまりページを割かれることのないフランス語の歴史と現代語の方言に関する記述も含まれている点でバランスのよい概説書と言える。〕☆☆☆☆☆ ★ (N/a0/30 副本あり)
4.フックス,ル・ゴフィック C. Fuchs, P. Le Goffic (1992, 新版) 『現代言語学 理論的指標』 Les linguistiques contemporaines. Repères théorique, Hachette, Paris. 〔フランス語学の中にはどのような理論があるのかをごく簡単に知りたい人は,この本を一読すればよい。田島宏,渡瀬嘉朗監修『現代言語学の諸問題』 (1983) 三修社は旧版の邦訳。〕☆☆☆☆ ★ (N/810/312)
3.ホルトゥス,メツェルティン,シュミット G. Holtus, M. Metzeltin, Ch. Schmitt (1990) 『ロマンス語学事典 第五巻 フランス語,オック語,カタラン語』 Lexikon der Romanistischen Linguistik (LRL), Band V, Französisch, Okzitanisch, Katalanisch, Max Niemeyer, Tübingen.〔多数の著者が執筆しているため,内容的に不均衡な点があり,質のばらつきが見られるものの,極めて多くの分野を網羅した記念碑的な概説書と言える。個々の解説は主にフランス語とドイツ語で書かれており,全ての解説の後に基本文献が添えられている。〕☆☆☆ (N/a0/27/5-2 副本あり)
2.ガルド=タミヌ J. Gardes-Tamine (1990, 1992) 『文法 1/音韻論,形態論,語彙論,2/統辞論』 La Grammaire. 1/Phonologie, morphologie, lexicologie, 2/Syntaxe, Armand Colin, Paris.〔フランス語学の諸問題がまず解説され,後に読者に練習問題が課される。いかにも教科書的な概説書である。〕☆☆ (N/a/354)
1.東京外国語大学グル-プ<<セメイオン>> (1985) 『フランス語学の諸問題』 三修社, 東京.〔フランス語学の様々な分野の問題を扱った論文集。文献1の前身でもある。〕☆☆☆ (N/a04/37/1 副本2冊あり)。2001年に第二版が出された。
フランス語学における通時的研究
筆者の考えるフランス語学における通時的研究は大きく三つの領域に分類することができる。ここではその三つの分野をそれぞれ独立した参考文献の項目とした。
1.時間の流れに沿ったフランス語研究 (→Ⅲ.フランス語史研究)
2.中世フランス語の共時的研究 (→Ⅳ.古フランス語学)
3.現代語に残る過去の言語状態の研究 (→Ⅴ.フランス方言学)
ロマンス諸語の歴史的研究が,中世のロマンス諸語研究と現代語の方言研究とともに始まったことを思い出すならば,上記の三つの分類には歴史的な裏づけがあるとも言える。
19.ショーラン編 Ed. Jacques Chaurand (1999) Nouvelle histoire de la langue française, Editions du Seuil, Paris. 〔従来の音韻・形態・統語というような構成ではなく,むしろ時代背景と言語の関連性に特色がある。また方言についての一章があることも異色である。〕 ☆☆☆ (N/a2/80)
18.マルケロ・ニズィア Christiane Marchello-Nizia (1999) Le français en diachronie: douze siècles d’évolution, Ophrys, Gap. 〔語順,名詞句,動詞句,語彙,音声と綴り字という順序で解説されている。〕 ☆☆☆(N/a2/489374, N/a2/506247 富盛研究室)
17.ペレ Michèle Perret (1998 2e éd. revue) 『フランス語史入門』 Introduction à l’histoire de la langue française, SEDES. 〔最近の研究成果を踏まえた新しい語史の入門書で,とても読みやすい。〕 ☆☆☆ ★ (N/a2/69)
16.ポズナー Rebecca Posner (1997) 『フランス語における言語変化』 Linguistic Change in French, Clarendon Press, Oxford. 〔フランス語史の概説書というよりは,ポズナー教授の学識の集大成ともいうべき研究書。フランス語のあらゆる面の変化が扱われているが,読破するのは苦しみを伴う。〕 ☆☆ (N/a2/70)
15.バニアール M. Banniard (1997) 『ラテン語からロマンス諸語へ』 Du latin aux langues romanes, Nathan, Paris.〔ラテン語学者によるフランス語成立過程に関する論考。現代言語学の一つの潮流である社会言語学的なアプローチを通時態に適用した点が注目される。〕☆☆☆ (N/a2/72)
14.エイレス・ベネット Wendy Ayres-Bennett (1996) 『テクストを通してのフランス語史』 A History of the French Language through texts, Routledge, London and New York. 〔各時代の重要なテクストを抜粋し,その時代背景や言語特徴を解説しながらフランス語の歴史を学ぶ。〕 ☆☆☆ ★ (N/a2/60)
13.ピコシュ, マルケロ・ニズィア Jacqueline Picoche, Christiane Marchello-Nizia (1994) Histoire de la langue française, Nathan. 〔言語外の歴史がp.11-177までとほぼ半分を占める〕 ☆☆☆ (N/a2/61, N/a2/440365)
12.ロッジ R. A. Lodge (1993) 『フランス語,方言から標準語へ』 French. From dialect to standard, Routledge, London.〔イル・ド・フランス地方(Ile-de-France)の一方言がどのような社会言語学的,歴史的な変遷を経てフランスの標準語になったのかを広い視野から推論した好著。〕☆☆☆☆☆ ★ (N/a8/422371) 仏訳あり。Le français: histoire d’un dialecte devenu langue, trad. par Cyril Veken, Fayard, 1997. (N/a8/140 富盛研究室に副本)
11.ヴォルフ Heinz Jürgen Wolf (1991) 『フランス語史』 Französische Sprachgeschichte, Quelle & Meyer Verlag, Heidelberg – Wiesbaden. 〔コンパクトだがよくまとめられた入門書〕 ☆☆☆ (川口蔵書)
10.リカード Peter Rickard (1989 2nd Ed.) 『フランス語の歴史』 Unwin Hyman, London. 〔明快な語り口でフランス語の歴史を通観することができる名著。〕 ☆☆☆☆☆ ★(N/a2/18a) 最近は日本語で読むこともできる。邦訳 『フランス語史を学ぶ人のために』 伊藤・高橋訳,世界思想社,1995 (N/a2/58)
9.ワルテ-ル H. Walter (1988) 『全方向へのフランス語』 Le français dans tous les sens, Robert Laffont, Paris.〔肩の凝らないフランス語通時論の概説書。理論的な考察はあまり行われない。〕☆☆☆ ★ (N/a2/41 副本あり)。好評を博したためか文庫版まで出された。同タイトル,(1988) R. Laffont, Paris. (N/a2/41a 富盛研究室)
8.ベルシン,フェリクスバーガー,ゴブル H. Berschin, J. Felixberger, H. Goebl (1978) 『フランス語史,ラテン語の基盤,内的と外的歴史,フランスの言語分化』 Französische Sprachgeschichte, Lateinische Basis, Interne und externe Geschichte, Sprachliche Gliederung Frankreichs, Max Hueber.〔一冊の本としては筆者が知る限り最も充実したフランス語史の概説書である。ドイツ語ではあるが一読を勧めたい。努力は必ずや報われる著作である。〕☆☆☆☆☆ (川口蔵書)
7.ケセルリンク W. Kesselring (1973) 『中世におけるフランス語 ―始まりから1300年まで―』 Die französische Sprache im Mittelalter -von den Anfängen bis 1300-, Tübinger Beiträge zur Linguistik, Tübingen.〔本文301頁のうち176頁がフランス語の成立までの前史を詳しく解説している。古フランス語の方言特徴が付録の中で解説されており有益である。〕☆☆☆ (川口蔵書)
6.カピュ Jean-Pol Caput (1972, 1975) 『フランス語 制度の歴史』 Langue française Histoire d’une institution, 2 vols., Larousse, Paris. 〔制度としてのフランス語を歴史学的に概観した本。〕 ☆☆☆ (N/a2/22/1-2)
5.プライス Glanville Price (1971) 『フランス語:現在と過去』 The French Language: present and past, Edward Arnold, London. 〔特に筆者の専門領域である動詞形態論と否定・疑問 (pp.252-270)が詳しい。〕 ☆☆ (N/a2/19)
4.ロルフス G. Rohlfs (1970) 『俗ラテン語から古フランス語へ』 An Introduction to the Study of the Old French Language(原典は独語), V. Almazan and L. McCarthy, Wayne State University Press.〔俗ラテン語はp.22-37でさらりと解説されているが,古フランス語については,Marie de FranceのBisclavretを読みながら詳しい説明がなされる。特に註の中に詳細な通時的考察が見られる。〕☆☆ (川口蔵書)
3.フォックス, ウッド J. Fox and R. Wood (1968, 3rd 1971) 『簡略フランス語史』 A Concise History of the French Language 〔おそらく英語で読むことができる最も簡潔なフランス語史であろう。〕 ☆☆ (川口蔵書)
2.エヴァ-ト A. Ewert (1953) 『フランス語』 The French Language, Faber & Faber. 〔音論,綴り字,形態・統辞論,語彙という伝統的な章分けをとり,それぞれの領域におけるフランス語の通時的進化を体系的に提示している。p.352以降には古文献の選集も添えられており有益。〕☆☆☆ (川口蔵書)
1.ヴァルトブルク W. v. Wartburg (1950) 『フランス語の進化と構造』 Evolution et structure de la langue française, A.Francke, Berne. 邦訳も同じ題,田島・高塚他訳,白水社 (1976).〔伝統的なフランス語史の概説書。日本語で読むことができる唯一の研究書。〕☆☆☆ ★ 邦訳 (N/a2/20)
12.ビュリダン Claude Buridant (2000) 『新古フランス語文法』 Grammaire nouvelle de l’ancien français, SEDES. 〔古フランス語の新しい文法という名に値する,並外れた分量と現代言語学的考察を踏まえた素晴らしい内容の参考書が登場した。〕☆☆☆☆☆ ★ (備付/496677 敦賀研究室)
11.ルヴォル Thierry Revol (2000) 『古フランス語入門』 Introduction à l’ancien français, Nathan, Paris. 〔標準的な古フランス語文法の入門書〕 ☆☆ (N/a2/500569)
10.バリル Agnès Baril (1998) 『古フランス語入門』 Manuel d’initiation à l’ancien français, Ellipses, Paris. 〔各レッスンは練習問題から始まり,その解説を読みながら文法を学ぶ,まさに大学教科書的な著作。〕 ☆☆☆☆ (N/a2/77)
9.ジョリ Geneviève Joly (1998) 『古フランス語概説』 Précis d’ancien français, Armand Colin, Paris. 〔例文に現代語訳がつけられた伝統的な入門書であるが,最近の言語学的研究成果も踏まえられている。〕 ☆☆☆ (N/a2/489366)
8.マルケロ・ニズィア Christiane Marchello-Nizia (1997) 『14・15世紀のフランス語』 La langue française aux XIVe et XVe siècles, Nathan, Paris. 〔タイトルからして中仏語期を扱うものであるが,古仏語からの連関性がよく書かれていて出来栄えはすばらしい。〕 ☆☆☆☆ (N/a2/74)
7.クフェレック,ベロン A. Queffélec, R. Bellon (1995) 『中世言語学 選抜試験での古フランス語試験』 Linguistique médiévale. L'épreuve d'ancien français aux concours, Armand Colin, Paris.〔中等教育と高等教育の資格試験用の対策問題集という形式をとっているが,内容的には現代言語学的視点からの解釈が随所に見られ,古フランス語学の入門書としても十分に利用可能である。〕☆☆☆☆ (N/a7/149 富盛研究室に副本)
6.トマセ, ウルチ Cl. Thomasset, K. Ueltschi (1994) 『古フランス語を読むために』 Pour lire l'ancien français, Nathan, Paris.〔様々な種類の構文,名詞,代名詞,動詞に関して平易な説明が例文とともに解説される。全ての例文に現代フランス語訳が添えられており初学者向けである。〕☆☆☆☆
5.レイノー=ドゥ=ラージュ G. Raynaud de Lage (1993 第2版) 『古フランス語入門』 Introduction à l'ancien français, SEDES, Paris.〔初学者向きの普及版であった初版が第二版で G. Hasenohrの手により,さらに詳細かつ読みやすくなった。ただし文法的解説が主である。〕☆☆☆ (N/a2/66 第二版 N/a2/66a は川口研究室)
4.ロンカリア A. Roncaglia (1993) 『オイル語,古フランス語研究入門』 La lingua d'oïl. Avviamento allo studio del francese antico, Gruppo editoriale internazionale, Roma.〔伝統的な古フランス語の入門書。記述は極めて穏当である。〕☆☆ (川口蔵書)
3.ボナール, レニエ H. Bonnard et Cl. Régnier (1991) 『古フランス語の小文法』 Petite grammaire de l'ancien français, Magnard, Paris.〔詳しい索引とラテン語からの変遷についても簡単な説明が付されている。小さい本ではあるが内容は充実している。〕☆☆☆
2.ザンク G. Zink (1990 第2版) 『古仏語 [11-13世紀]』 L'Ancien français (XIe-XIIIe siècle), PUF, Paris.〔簡潔な入門書。岡田真知夫訳, 白水社 (1994)には引用作品リストと詳細な訳註があり有益。記述が穏当であるため,まず最初に読む本として適当であろう。理論的考察はほとんど行われない。〕☆☆☆☆ ★ (N/a2/37) (邦訳 N/a2/63 風間研究室に副本)
1.ヴォルフ, フプカ L. Wolf, W. Hupka (1981) 『古フランス語の成立と特徴』Altfranzösisch, Entstehung und Charakteristik, Wissenschaftlich Buchgesell-schaft, Darmstadt.〔ドイツ語で書かれた明解かつ要領よく整理された概説書。特に方言特徴の分類が詳しく説明されている。それに比べ文法的解説は簡素である。〕☆☆☆ (川口蔵書)
次に古フランス語の特定分野を研究したい初学者のための概説書を挙げておく。
13.レオナール Monique Léonard (1999) 『歴史音声学練習問題』 Exercices de phonétique historique, Nathan, Paris. 〔CAPESやagrégation用の練習問題である。記述は概ね穏当。講義の中で学ぶには少し退屈である。〕☆☆☆ (川口蔵書)
12.ジョリ Geneviève Joly (1995) 『フランス語歴史音声学概説』 Précis de phonétique historique du français, Armand Colin, Paris. 〔CAPES,agrégation受験教本。とはいえよくできている。〕 (N/a1/107)
11.ラボルドリ N. Laborderie (1994) 『フランス語歴史音声学』 Phonétique historique du français, Nathan, Paris.〔教科書的な入門書。記述は概ね穏当かつ明解。何よりも100頁強で歴史音声学の基礎を学べる点が嬉しい。〕☆☆☆ ★ (N/a1/108)
10.ピエレ J.-M. Pierret (1994) 『フランス語歴史音声学と一般音声学の概念』 Phonétique historique du français et notions de phonétique générale, Peeters, Louvain-La-Neuve.〔フランス語の歴史的進化と現代の状況を一般音声学の基本概念を通して解説。現代フランス語の音声学の入門書としても利用可能。〕☆☆☆ (N/a1/117, 旧版 N/a1/41)
9.アンドリュー=レ Nelly Andrieux-Reix (1993) 『古仏語と中仏語,音声学練習』 Ancien et moyen français -Exercices de phonétique, PUF, Paris.〔練習問題形式で歴史音声学の基礎を学ぶことができる。文献学的証拠も随所に提示されており有益。特に綴り字の変遷に配慮している点が注目される。〕☆☆☆☆ (川口蔵書)
8.ザンク Gaston Zink (1991 第3版) 『フランス語歴史音声学』 Phonétique historique du français, PUF, Paris.〔記述が穏当であり,現時点での標準的な歴史音声学の入門書と言える。何度も再版されているため,新版を使うことが望まれる。〕☆☆☆☆☆ (N/a1/82)
7.ボナ-ル Hneri Bonnard (1982 第3版) 『歴史音声学概要』 Synopsis de phonétique historique, SEDES, Paris.〔理論的な考察はほとんどないが,フランス語の音声変化を年代的に概観しようとする時に便利。〕☆☆☆ ★ (N/a1/42 副本あり)
6.ドゥ=ラ=ショセ François de La Chaussée (1982 第2版) 『古フランス語の歴史音声学入門』 Initiation à la phonétique historique de l'ancien français, Klincksieck, Paris.〔音声変化の中間段階まで余すことなく精密に再構されているが,その文献学的裏づけがほとんど示されていない。歴史音声学において音声学理論を優先させた一つの結果と解釈する場合,興味深い。〕☆ (N/a1/60)
5.ヴュースト Jakob Wüest (1979) 『ガロ・ロマニアの方言分化』 La dialectalisation de la Gallo-Romania, Francke, Berne.〔70年代以降の通時音声学における優れた理論的研究。しかしながら初学者向きではない。通時音韻論的研究として注目すべき点が多い。〕☆☆ (N/a8/43)
4.ストラカ Georges Straka (1979) 『音声と単語』 Les sons et les mots, Klincksieck, Paris.〔音声学者にして方言学者であるストラカの重要な論文を集めたもの。彼の持論である音声変化の相対年代と音声生理学的解釈が随所に見られる。その理論は様々な形で批判の対象となってきた(勿論,信奉者もいる)。ストラカの著作の魅力はむしろ現代語の方言まで射程に入れて,音声変化を歴史的に解釈しようとする態度にあると筆者は考える。〕☆ (N/811/30)
3.ポウプ Mildred K. Pope (1972) 『ラテン語から現代フランス語へ』 From Latin to Modern French, Reprint, Manchester University Press.〔伝統的な入門書の中で,この本くらい音声変化の推論と文献学的実証のバランスがとれた著作は他にない。その意味でこの書に信頼を寄せる研究者は少なくない。〕☆☆☆ (川口蔵書)
専門性の高い著作であるが,以下の二冊も無視できないように思える。
2.ヴァルトブルク Walter von Wartburg (1967) 『ロマニアの言語分裂』 La fragmentation linguistique de la Romania, Klincksieck, Paris.ドイツ語原典(1950)の仏訳。〔ロマニア全体を扱っているが,フランス語に関連する重要な仮説が随所に見られる。特にゲルマン上層の影響,母音の長短消失と二重母音化の問題に関するヴァルトブルクの仮説は,現在でも引用されることがある。〕☆ (N/a2/8)
1.フシェ Pierre Fouché (1961,1969) 『フランス語歴史音声学』 Phonétique historique du français, vol.II, vol.III, Klincksieck, Paris.〔この記念碑的研究は,記述が若干散発的で,ある頁で披瀝された推論がはたして他の頁に見られる記述と整合性があるのかどうか不明瞭な場合がある。従ってこの書は,後に多くの批判的解釈を生み出すことになった。とはいえ扱われている問題の圧倒的な分量は,「記念碑的」と呼ばれるにふさわしい。〕☆ (N/a1/9/2-3)
5.ザンク Gaston Zink (1992 第2版)『中世フランス語の形態論』 Morphologie du français médiéval, PUF, Paris.〔標準的な古フランス語の形態論。方言形態を知る場合も有益。〕☆☆☆☆ (N/a5/269 副本あり)
4.アンドリュー=レ Nelly Andrieux-Reix (1990)『古フランス語. 語彙分類カード』 Ancien français. Fiches de vocabulaire, PUF, Paris.〔古フランス語における重要な単語や幾つかの類義語を解説。〕☆☆☆ (N/a4/77)
3.マトレ G. Matoré (1986) 『語彙と中世社会』 Le vocabulaire et la société médiévale, PUF, Paris.〔中世の社会と関連づけながら基礎的な語彙を平易に説明している。理論的な本ではないが一読を勧めたい。〕☆☆☆☆☆ (N/a4/58)
2.ランリ André Lanly (1977) 『フランス語動詞の歴史形態論』 Morphologie historique des verbes français, Bordas.〔フランス語の基本的な動詞がラテン語からどのように形態変化したのかを解説。目的によっては有効利用できる。〕☆☆ (N/a5/117)
ここでもまたフシェが重要な参照文献を出版している。
1.フシェ Pierre Fouché (1967) 『フランス語動詞 形態論的研究』 Le verbe français Étude morphologique, Éditions Klincksieck, Paris. (N/a5/28 副本2冊)
7.マルケロ=ニズィア Ch. Marchello-Nizia (1995) 『フランス語の進化,語順,指示詞,強さアクセント』 L'évolution du français, Ordre des mots, démonstratifs, accent tonique, Armand Colin, Paris.〔近年,フランス語学の中で関心が高まっているテーマを扱い,その問題点を比較的平易に解説した好著。特に語順進化の問題では著者の力量が遺憾なく発揮されている。〕☆☆☆☆ (N/a2/64 敦賀研究室に副本)
6.イェンセン F. Jensen (1990) 『古フランス語とガロ・ロマンス比較統辞論』 Old French and comparative Gallo-Romance syntax, Max Niemeyer, Tübingen.〔様々な問題が,多数の資料体をもとに解釈されている点は評価できるが,記述が羅列的になっており体系的な解釈が見えてこない。〕☆☆ (N/a5/306)
5.メナール Ph. Ménard (1988 第3版) 『古フランス語の統辞論』 Syntaxe de l'ancien français, Bière, Bordeaux.〔理論的考察はほとんどない。個々の現象の説明に力点が置かれているが,豊富な例が提示されており,恐らく現時点で最良の入門書と考えられる。〕☆☆☆☆ (N/a5/78)
4.マルタン, ウィルメ R. Martin, M. Wilmet (1980)『中仏語の統辞論』 Syntaxe du moyen frnçais, SOBODI, Bordeaux.〔中仏語期は古フランス語から現代フランス語へと橋渡しをする重要な時期である。この時期に起きた統辞変化には目を見張るものがある。この本は著者たちが地道に続けてきた研究成果の一つである。今後,この重要な時期に関する成果が続々と現れ,そしてそれが現代フランス語研究にとっても決定的に重要であろうことを推察すれば,本書の重要性が理解できる。〕☆☆☆ (N/a5/401/2 富盛研究室)
3.モワニェ G. Moignet (1979 第2版) 『古フランス語の文法 形態論―統辞論』Grammaire de l'ancien français. Morphologie - Syntaxe, Klincksieck, Paris.〔巻末に注記のある専門用語を用いて文法が詳細に説明される。索引も非常に詳しい。理論的な点から引用されることもある著作。〕☆☆☆
2.ハリス M. Harris (1978) 『フランス語統辞法の進化,比較的アプロ-チ』The Evolution of French Syntax. A Comparative Approach, Longman, London and New York.〔文構成上の主要要素である名詞,動詞,補語の歴史的進化を記述した理論的著作。〕☆☆ (N/a5/122)
1.ガミルシェーク E. Gamillscheg (1957) 『フランス語歴史統辞論』 Historische französische Syntax, Max Niemeyer, Tübingen.〔対象は古フランス語期に限定されていない。歴史的統辞変化を扱う際には今も有益と思われる古典的名著。参考書として関連項目だけを読んでみるのもよい。〕☆☆ (川口蔵書)
方言はそれぞれが独立した一つの言語と考えられる。すなわち方言の数だけ「~語学」が存在すると言っても過言ではないが,不幸にして自国のフランスでさえ,方言研究者は方言の数より圧倒的に少ない。消え行く少数言語たる方言を記述する地道な作業は細々と続けられているが,余命いくばくもない方言を前にして,研究者はあたかも遺言を口述筆記するかの如き行為を余儀なくされ,理論的考察は大幅に立ち遅れているというのが現状に近い。この文献案内では筆者の無知も手伝い,北フランスの方言研究に関する参考文献のみを掲げることになってしまった。
13.ビュロ,ツェコシュ編 Eds. Thierry Bulot, Nicolas Tsekos (1999) 『都会の言語とアイデンティティー』 Langues urbaines et identité, L’Harmattan, Paris. 〔都市の社会言語学的研究報告。対象はルーアン,ヴェニス,ベルリン,アテネ,モンスの5都市。〕 (N/810/507389)
12.クレリス他編 Eds. Ch. Clairis, D. Costaouec, J.-B. Coyos (1999) 『フランスの地域言語と文化 現状,教育,政策』 Langues et cultures régionales de France. État des lieux, enseignement, politiques, L’Harmattan, Paris. 〔教育と地域言語文化の関わりについての様々な考察。〕 (N/a8/507390)
11.ラフォン Robert Lafont (1997) 『周辺部での社会言語学の40年』 Quarante ans de sociolinguistique à la périphérie, L’Harmattan, Paris. 〔南仏語研究者ラフォン教授の論文からいくつかを抜粋した選集。〕
10.エロワ Jean-Michel Eloy (1997) 『ピカルディー方言の構成:言語の概念へのアプローチ』 La constitution du picard : une approche de la notion de langue, Petters, Louvain-la-Neuve. 〔対象となるのはピカルディー方言であるが,言語と方言の問題を考えさせてくれる。〕 ☆☆ (N/a8/109 川口研究室)
9.エイガー Dennis Ager (1996) 『1990年代の‘フランス語圏’ 問題と可能性』 ‘Francophonie’ in the 1990s Problems and opportunities, Multilingual Matters LTD. (N/810/367)
8.マルテル,モーレ編 Eds. Pierre Martel, Jacques Maurais 『接触する言語と社会 コルベイユ記念論集』 Langues et sociétés en contact. Mélanges offerts à Jean-Claude Corbeil, Max Niemeyer Verlag, Tübingen. 〔いくつかのフランス語に関する論文がある。〕 (N/810/440341)
7.ショダンソン編 Ed. Robert Chaudenson (1990) 『言語と町』 Didier Erudition. 〔主な研究対象地域はアフリカとヨーロッパである。〕 (N/810/324)
6.ヴァ-ティ, ディヴィス K. Varty, P.V. Davies (1987) 『フランス語の地域変種.教育における問題点と解決策』 Regional varieties of French. Problems and solutions in teaching, Glasgow University Language Centre.〔文献案内が詳しく最近の研究も含まれており,文献を探すときに有益である。付属のビデオ教材により方言形成の歴史,北フランス方言(ノルマンディー,ピカルディー,アルザス等)の実例に触れることもできる。〕 ☆☆☆☆
5.フランシス W.N. Francis (1983) 『方言学入門』 Dialectology An Introduction, Longman, London and New York.〔方言学の一般的な入門書であるがフランス方言学の例も多く引用されている。記述が穏当であり,初学者向け。〕☆☆☆☆ ★ (K/818/4 副本あり)
4.テュアイヨン G. Tuaillon (1976) 『フランス語方言学における研究動向』 Comportement de recherche en dialectologie française, Editions du CNRS, Paris. 〔地域別言語地図や個別方言の研究,方言語彙集,音声研究等の様々な分野における研究の概要が示されており参考書として利用可能である。現時点で最良のフランス語方言学の入門書と言えよう。〕☆☆☆☆☆ ★
3.ショーラン J. Chaurand (1972) 『フランス語方言学入門』Introduction à la dialectologie française, Bordas, Paris.〔伝統的な方言学の研究と方法を概説した著作。歴史的方言研究にも言及している点に特色がある。ただし読みにくい点が惜しまれる。〕☆☆ (N/a8/11)
2.ヴァルトブルク他 W. Von Wartburg et H-E. Keller et R. Geuljans (1969 補遺あり)『ガロ・ロマン俚言辞典目録(1550年-1967年)』 Bibliographie des dictionnaires patois galloromans (1550-1967), Librairie Droz, Genève.〔1967年以前のフランス方言学に関する網羅的な文献案内。寸評もあり有益。〕☆☆☆ (N/a8/127)
1.ギロ- P. Guiraud (1968 第3版) 『フランスの俚言と方言』 Patois et dialectes français, PUF, Paris.〔フランス語の方言に関する簡潔な入門書。ただし最近の研究成果は取り入れられていない。〕☆☆ (川口蔵書)
フランスの場合,上述のような地道な方言記述作業が続けられる中,社会言語学が移入され,若い世代の研究者の関心がそちらへ移行することで,方言研究はいわば分裂しつつあり,瀕死の方言を記述する作業は,さらに危機的な状況に追い込まれているようにも思える。しかし新しい社会言語学がそれまでにない仮説や推論を提示してくれたことは言うまでもない。(第一版 1998年)
この数年間に社会言語学をテーマとする実に多くの概説書・報告集が出版されていたことを知り,自らの浅学を思い知ると同時に,この分野全体をフォローすることの困難さを改めて痛感した。(第二版 2002年)
18.アームストロング Nigel Armstrong (2001) 『話ことばフランス語における社会・文体的変異』 Social and stylistic variation in spoken French. A comparative approach, John Benjamins, Amsterdam/Philadelphia. 〔音韻,文法,語彙における社会言語学的変異の研究。とくにリエゾンでは先行研究がまとめられており有益。〕 ☆☆☆☆ ★ (N/a04/507382)
17.ブランシェ Philippe Blanchet (2000) 『フィールド言語学:方法と理論』 Linguistique de terrain: méthode et théorie, Presses Universitaires de Rennes, Rennes. ☆☆ (N/818/507388)
16.エイガー Dennis Ager (1999) 『アイデンティティー,不安とイメージ:フランスと言語』 Identity, insecurity and image: France and language, Multilingual Matters LTD, Clevedon. ☆☆ (N/a04/489364)
15.ブランシェ他編 Eds. Ph. Blanchet, R. Breton, H. Schiffman (1999) 『フランスの地域語:二一世紀前夜の状況』 Les langues régionales de France: un état des lieux à la veille du XXIe siècle, Peeters, Louvain-La-Neuve. 〔方言学と社会言語学がうまくかみ合った会議報告集と言える〕☆☆ (N/a8/507387)
14.タブレ・ケラー Andrée Tabouret-Keller (1997) 『言語の館:社会言語学と言語心理学の諸問題』 La maison du langage: questions de sociolinguistique et de psychologie du langage, Université Paul Valéry, Montpellier. 〔タブレ・ケラー教授の論文選集。〕☆☆ (N/810/358)
13.ロッジ他編 R.A. Lodge, N. Armstrong, Y.M.L. Ellis, J.F. Shelton (1997) 『フランス語の探求』 Exploring the French language, Arnold, London. 〔興味深いのは最初にフランス語の変異を解説し,次に語彙や語源を説明している点であろう。一風変わった趣の入門書である。〕 ☆☆☆ (N/a0/36)
12.ボワイエ編 Henri Boyer (1996) 『社会言語学:領域と目的』 Sociolinguistique: territoire et objets, Delachaux et Niestlé, Paris. 〔社会言語学の領域紹介と実例。〕 ☆☆☆ (N/810/507164)
11.ガカン Audrey Gaquin (1996) 『フランスの民族と言語』 Peuples et langues de France, University Press of America Inc., Lanham/New York/London. (アルザス,ブルターニュ,カタルーニャ,コルシカ,バスク,フランドル,南仏の人々の言語文化を多くの引用をまじえながら概説する。) ☆☆ (N/a04/77)
10.オッフォード編 M. Offord (1996) 『フランス社会言語学読本』 A Reader in French Sociolinguistics, Multilingual Matters LTD, Clevendon.〔言語の地位に関する法律資料,地域フランス語や女性語などの社会言語学的変種に関する概説を抜粋した教材集。〕☆☆☆☆ (N/a04/73)
9.ボノ編 Ed. J.F. Bonnot (1995) 『地域のことば 規範,言語変異と社会的文脈』 Paroles régionales, normes, variétés linguistiques et contexte social, Presses universitaires de Strasbourg. 〔とくにアルザス地方の言語状況が詳しい。〕 ☆☆ (N/a8/105)
8.エロワ編 Jean-Michel Eloy (1995) 『言語の質?フランス語の場合』 La qualité de la langue? Le cas du français, Honoré Champion Editeur, Paris. 〔言語における質とは何かという興味深い問いかけを行った会議報告集。〕 ☆☆☆ (N/a04/72)
7.ロビヤール,ベニアミーノ編 Didier de Robillard et Michel Beniamino (1993-1996) 『フランス語圏におけるフランス語』 Le Français dans l’espace francophone: description linguistique et sociolinguistique de la francophonie, Champion, Paris. 〔アメリカ,インド洋,アフリカ,地中海,太平洋のフランス語圏の概説と概念を知るのに便利であろう。〕 ☆☆ (N/a8/111/1 富盛研究室に副本)
6.サンダーズ編 Carol Sanders (1993) 『今日のフランス語 社会的文脈における言語』 French today. Language in its social context, Cambridge University Press, Cambridge. 〔移民,テクノロジー関連語彙など,最近の話題について知ることができる。〕 ☆☆☆ (N/a04/70, N/a04/422364)
5.ボワイエ Henri Boyer (1991) 『抗争する言語:社会言語学的研究』 Langages en conflit: études sociolinguistiques, L’Harmattan, Paris. ☆☆(N/810/329 富盛研究室)
4.エイガー編 D. Ager (1990) 『社会言語学と現代フランス語』 Sociolinguistics and Contemporary French, Cambridge University Press, Cambridge.〔フランス語研究の範囲内で社会言語学の視点による重要な論考を含む論文集。〕☆☆☆ (N/a04/64)
3.ヴェルム編 G. Vermes (ed.) (1988)『フランスにおける25の共同体』 Vingt-cinq communautés de la France, 2 vols, L'Harmattan, Paris.〔他言語を抱えるフランス社会を浮き彫りにする論文集。幾つかの重要な社会言語学的研究を含む。〕☆☆ (N/810/263/1-2)
2.ヴェルム, ブテ編 G. Vermes, J. Boutet(eds.) (1987)『他言語国,フランス』 France, pays multilingue, 2 vols, L'Harmattan, Paris.〔上記の文献3と同じような理念で編まれた論文集。幾つかの優れた研究が掲載されている。〕☆☆ (N/810/328/1-2)
1.ガルダン他編 Eds. B. Gardin, J-B. Marcellesi, G.R.E.C.O. Rouen (1980) 『社会言語学 アプローチ,理論,実践』 Sociolinguistique, approches, théories, pratiques, 2 vols., Publication de l’Université de Rouen, PUF, Paris. 〔フランスにおける初期の社会言語学の分野における会議報告集。〕 ☆☆ (N/810/217/1-2)
既に述べたように少数の研究者集団によって形成される方言学者の結束は比較的固い。彼らは様々なテーマを自らに課して,定期的に場所を変えながら方言学会議を開催している。以下に挙げたのはそうした会議の一部である。
16.フォワヤール他編 Jean Foyard, Ph. Monneret (2001) 『ジェラール・タヴェルデ記念方言学・地名学・固有名詞学論集』 Mélanges de dialectologie, toponymie, onomastique, offerts à Gérard Taverdet, A.B.E.L.L. Université de Dijon. 〔ディジョン大学のタヴェルデ教授の退官記念論集。実に36の論文が集められ2巻本600ページに及ぶ〕☆☆ (川口蔵書)
15.タヴェルデ編 Gérard Taverdet (1998) 『オレロンの固有名詞学会議報告集』 Colloque d’Onomastique d’Oléron 1997, A.B.D.O. Dijon. 〔主に地名に関する発表が載せられている〕☆☆ (川口蔵書)
14.エロワ編 Jean-Michel Eloy (1998) 『生命力を評価する オイル語変異と他の言語』 Évaluer la vitalité Variétés d’oïl et autres langues, Actes du Colloque international 1996, Amiens, Université de Picardie-Jules Vernes, Amiens. 〔方言の生命力をどのように評価するかという興味深い問題について多くの事例研究が集められている〕☆☆ (川口蔵書)
13.マンザーノ編 Francis Manzano (1997) 『二十世紀末における西部およびフランス語圏カナダの口話の生命力』 Vitalité des parlers de l’Ouest et du Canada francophone à la fin du XXème siècle: actes du VIème colloque international de dialectologie et de littérature du domaine d’oïl occidental, Presses Universitaires de Rennes, Rennes. (N/a8/153)
12.タミヌ編 Michel Tamine (1995) 『そのことばは私たちのことば ジャック・ショーラン教授記念フランス語史・方言学・固有名詞学論集』 Parlure 7-8-9-10, Institut Charles-Bruneau, Charleville-Mézières. 〔パリ十三大学のショーラン教授の退官記念論集。世界中からショーラン教授の友人・生徒たちが寄稿している。〕☆☆ (川口蔵書)
11.シモ-ニ=オランブ編 M.-R. Simoni-Aurembou (1995) 『西部オイル語地域の方言学と文学 植物の語彙,形態統辞論』Dialectologie et littérature du domaine d'oïl occidental. Lexique des plantes. Morphosyntaxe, ABDO, Dijon.〔植物の方言呼称や動詞・名詞の形態等に関する報告が収録されている。〕☆☆ (川口蔵書)
10.エロワ他編 Eds. J.-M.Eloy, M. Crampon, P. Pauchet (1992) 『ピカルディーの源 ルネ・ドゥブリ記念論集』 Sources picarde. Hommage à Renée Debrie, Eklitra Association Culturelle Picarde, 70, Amiens. 〔アミアン大学のドゥブリ教授を記念する論集。ピカルディー方言の研究者たちのパノラマを楽しむことができる〕☆☆ (N/a8/103)
9.ショーラン,タヴェルデ編 J. Chaurand, G. Taverdet (1992) 『固有名詞学と言語接触』 Onomastique et langues en contact, Actes du colloque de Strasbourg 1991, A.B.D.O. Dijon. 〔アルザス,ベルギーと北仏,南仏,ピレネー,ブルターニュなど様々な地域における地名と言語接触に関する発表が載せられている。〕☆☆ (川口蔵書)
8.サルモン編 G.-L. Salmon, (1991) 『諸都市のフランス語の変種と変異 フランス東部の状況』 Variété et variantes du français des villes. Etats de l'Est de la France, Champion-Slatkine, Paris-Genève.〔東部の都市ミュールーズに集まり,フランス東部の都市における方言変異をテーマにした。この論集には幾つかの社会言語学的考察が含まれている。〕 ☆☆ (N/a8/44)
7.ショヴォ,ドゥエ,ギヨ-ム編 J.-P. Chauveau, A.-T. Douet, G. Guillaume (1989) 『大地』 La Terre, RICHER, Angers.〔開催地はアンジュ地方の中心地アンジェであった。自然や土壌に関する方言語彙がテーマとなった。〕☆☆ (川口蔵書)
6.シモ-ニ=オランブ編 M.-R. Simoni-Aurembou (1987) 『農業用語 ピエレット・デュビュィソン記念地名学・方言学論集』 Agronymes, A.B.D.O., Dijon. 〔中央地域言語地図ALCeの著者デュビュィソン教授を記念する論集。珍しいテーマの論集と言える。〕☆☆ (川口蔵書)
5.タヴェルデ編 Gérard Taverdet (1985) 『固有名詞学 人間活動の証拠』 L’Onomastique, témoin de l’activité humaine, Colloque du Creusot 1984, A.B.D.O. Dijon. 〔地名と人名に関する会議報告集。〕☆☆ (川口蔵書)
4.ルペレ編 R. Lepelley (1983) 『西部オイル語地域の方言学と文学』 Dialectologie et littérature du domaine d'oïl occidental, Caen.〔舞台はノルマンディー地方のカン市であった。方言学と方言によって書かれた文学作品がテーマであった。西部地域の方言研究について重要な論文が幾つか収録されている。〕☆☆
3.タヴェルデ,ストラカ編 G. Taverdet, G. Straka (1977)『地域フランス語』 Les français régionaux, Klincksieck, Paris.〔俚言(patois)の衰退とともにフランス全土で注目されるようになった地域フランス語を扱った会議。ブルゴーニュ地方のディジョン市で開催され,ブドウ栽培に関する語彙をテーマとした。詳細な地域フランス語の定義がなされた会議でもある。〕☆☆☆
2.ストラカ編 G. Straka (1973)『地域言語地図に照らしてみたフランスのロマンス語諸方言』 Les dialectes romans de France à la lumière des atlas régionaux (1973) Editions du CNRS, Paris.〔下に述べる地域別言語地図を用いて多様な問題が扱われている。地域別言語地図を使用した後の研究のあり方を模索した点で,この会議の意味は大きい。〕☆☆☆
1.ストラカ編 G. Straka (1972) 『中世と今日のフランスの方言:オイル語地域とフランコ・プロヴァンス語地域』 Les dialectes de France au moyen âge et aujourd'hui : domaines d'Oil et domaine franco-provençal : Colloque organisé par le Centre de philologie et de littérature romanes de l'Université des sciences humaines de Strasbourg du 22 au 25 mai, 1967,Éditions Klincksieck , Paris. (N/a8/19 敦賀研究室に副本)
この他,カナダ・フランス語に関する国際会議の報告書にも多くのヨーロッパにおけるフランス語の報告があります。
5.シモーニ=オランブ編 éd. Marie-Rose Simoni-Aurembou (2000) 『カナダのフランス語-フランスのフランス語 V』 Français du Canada - Français de France V, Actes du 5ème Colloque de Belleme (1997), Max Niemeyer Verlag, Tübingen.
4.ラヴォワ編 éd. Thomas Lavoie (1996) 『カナダのフランス語-フランスのフランス語 Ⅳ』 Français du Canada - Français de France IV, Actes du 4ème Colloque de Chicoutimi (1994), Max Niemeyer Verlag, Tübingen. (N/a8/22/4)
3.ニーデレヘ,ヴォルフ編 (1993) éds. Hans-Josef Niederehe et Lothar Wolf L. 『カナダのフランス語-フランスのフランス語 Ⅲ』 Français du Canada - Français de France III, Actes du 3e Colloque d'Augsbourg (1991), Max Niemeyer Verlag, Tübingen. (N/a8/422368, N/a8/22ア 敦賀研究室)
2.オリオ編 éd. Brigitte Horiot (1991) 『カナダのフランス語-フランスのフランス語 Ⅱ』 Français du Canada - Français de France II, Actes du Colloque de Cognac (1988), Tübingen, Niemeyer, Tübingen. (N/a8/90 富盛研究室)
1.ニーデレヘ,ヴォルフ編 (1987) éds. Hans-Josef Niederehe et Lothar Wolf L. 『カナダのフランス語-フランスのフランス語 Ⅲ』 Français du Canada - Français de France I, Actes du Colloque de Trève(1985), Max Niemeyer Verlage, Tübingen. (N/a8/22 富盛研究室)
小集団の研究者が様々な研究を発表しているのが方言学の現状であるため,雑誌の特集として方言が扱われ,そこに幾つか重要な論考が載せられている場合もある。その意味で方言学はアンテナを常に広く張っておく必要のある研究分野だと言える。
4.『現代フランス語』Le Français Moderne, 65/1 (1997) 〔方言学の最近の動向を知ることができる。特にJean-Claude Bouvierによる ethnotexte研究とJean Le Dûの方言地図プロジェクトに関する報告は今後の研究方向を知る上で重要であると思われる。〕☆☆
3.『言語社会学誌』Journal of the Sociology of Language, 29 (1981)「フランスにおける地域語」 Regional Language in France.〔幾つかの重要な社会言語学的論考が含まれる。〕☆☆☆
2.『フランス語』Langue française, 25 (1975)「地域語の教育」 l'Enseignement des langues régionales.〔オック語等の地域語による教育がどのようになされてきたか,その教育の歴史,教育方法などに関心がある人は一読を勧める。〕☆☆
1.『フランス語』 Langue française, 18 (1973)「地域口話」 les Parlers régionaux.〔Ⅴ.4.の文献2と同じ題がついているが,内容的には地域別言語地図を用いた方言研究が多い。〕☆☆
ジリエロン, エドモン J. Gilliéron et E. Edmont (1902-1910) 『フランス言語地図集』 Atlas Linguistique de la France (ALF), Champion, Paris.〔実地調査に基づきフランス本土のロマンス語系方言を大部の地図集にまとめたもの。言語地理学の方法論が成立するための基礎資料になった重要な研究成果である。この言語地図は本学の語学研究所に全巻所蔵されている。〕
『地域別フランス言語民族地図集』Atlas linguistique et ethnographique de la France par régions, Editions du CNRS, Paris.〔1960年代から刊行され続けており,現時点で最も重要な方言の基礎資料になっている。この地域別言語地図も本学図書館,川口研究室と語学研究所に分散して所蔵されており,ほぼ全巻に目を通すことができる。〕 (第一版 1998年)
府中への移転を機に,地域別言語地図は新図書館2F中央の地図閲覧コーナーで見られるようになった。(第二版 2002年)
以下に,フランス国内で観察されるフランス語方言(残念ながらベルギーとカナダの言語地図はまだ配備されていない)を記録した地域別言語地図集を挙げておく.
1. ピカルディ- I (1989), II (1998)
2. ノルマンディ- I (1980), II (1983), III (1997)
3. ロマンス語圏ブルタ-ニュ I (1976), II (1983);
4. イル・ド・フランス,オルレアネ I (1974), II (1978);
5. シャンパ-ニュ・ブリ I (1966), II (1969), III (1978);
6. ロマンス語圏ロレ-ヌ I (1980), II (1981), III (1985), IV (1989);
7. フランシュ・コンテ I (1973), II (1978), III (1984);
8. ブルゴ-ニュ I (1975), II (1977), III (1980), Index (1984);
9. 中央 I (1971), II (1976), III (1982);
10. 西部 I (1971), II (1974), III (1983);
11. オ-ヴェルニュ,リム-ザン I (1975), II (1987);
12. リヨネ I (1967 第2版), II (1970 第2版), III, IV (1969), V (1976);
13. ジュラ,北部アルプス I (1971), II (1975), III (1978), Index (1982);
14. プロヴァンス I (1975), II (1979);
15.中央山塊 I (1972 第2版), II (1976 第2版), III (1977 第2版), IV Index (1963);
16. 西部ラングドック I (1979), II (1982), III (1987);
17.ガスコ-ニュ I (1965 第2版), II (1967 第2版), III (1968 第2版), IV (1966), V (1972), VI(1974);
18. 東部ラングドック I (1977), II (1984), III (1987);
さらに Editions Bonneton からは『地域フランス語辞典』Dictionnaire du français régional も刊行中である。
また最近,重要なフランスの地域語彙に関する辞典が出版された。
レゾー編 Pierre Rézeau (2001) 『フランスの地域語法辞典』 Dictionnaire des régionalismes de France, De Boeck, Duculot, Bruxelles.
ここではフランス語史,古フランス語学,フランス方言学の研究を行なう上で,特に重要と思われる辞書だけを紹介しておく。ただし,現時点で,まだ一部分しか刊行されていない辞書は除いた。
11.『グラン・ロベールフランス語辞典』 Le Grand Robert de la langue française (2001) 6 vols., Le Robert, Paris.〔現代語の意義分析に有効。〕 ☆☆☆ (N/a3/508105/1-6) 2F奥辞書閲覧コーナー
10.レ監修 A. Rey (sous la direction de) (1992) 『フランス語の歴史辞典』Dictionnaire historique de la langue française, Le Robert, Paris.〔二巻本にまとまった単語の歴史辞典。フランス語の単語の歴史をちょっと調べてみたいときに便利である。〕☆☆☆ (N/a3/161/1-2) 2F奥辞書閲覧コーナー
9.モルレ M-Th. Morlet (1991) 『姓名語源辞典』 Dictionnaire étymologique des noms de famille, Perrin, Paris.〔最近の研究成果が取り入れられ,姓名の使用地域に関する情報が以前の姓名語源辞典よりも豊富である点が注目される。〕☆☆☆ (川口蔵書)
8.ネーグル E. Nègre (1991)『フランス全般の地名,35000の地名の語源』 Toponymie générale de la France, Etymologie de 35,000 noms de lieux, Droz, Genève.〔数量の点で明らかに文献5の地名語源辞典を凌駕した感がある。最近の研究成果の一つ。〕☆☆☆ (川口蔵書)
7.ドーザ, ロスタン A. Dauzat, Ch. Rostaing (1983 第2版) 『フランスの地名語源辞典』 Dictionnaire étymologique des noms de lieux en France, Guénégaud, Paris.〔地名の語源を調べる場合にまず引いてみるとよい。〕☆☆☆ (N/293/2)
6.ゴドフロワ F. Godefroy (1982) 『9世紀から15世紀までの古フランス語とその全ての方言辞典』Dictionnaire de l'ancienne langue française et de tous ses dialectes, du IXe au XVe siècle, 10 vols., Slatkine Reprints, Genève.〔優れた古フランス語の辞典。特に語形の変異を調べる場合に有効。〕☆☆☆ 744室フランス語教育準備室
5.ブロック, ヴァルトブルク O. Bloch, W. von Wartburg (1975 第6版) 『フランス語語源辞典』 Dictionnaire étymologique de la langue française, PUF, Paris.〔コンパクトな語源辞典。ちょっと語源を調べようというときに有効かもしれない。〕☆☆☆ (N/a3/130)
4.『フランス語宝典』 Trésor de la langue française (1971-1994) 16 tomes, Editions du CNRS, Paris.〔単語の意義分析,単語の歴史,文献学的な証拠,簡単な語源検索を行なう時など,共時・通時を問わず,まず最初に参照すべき辞書と言える。〕☆☆☆☆☆ ★ (N/a3/57/1-16) 2F奥辞書閲覧コーナー
3.『大ラルースフランス語辞典』 Grand Larousse de la langue française (1971) 7 vols., Larousse, Paris.〔標準フランス語の意義分析などに有効。現代語の研究者も参照すべき辞典。〕☆☆☆ (N/a3/52/1-7) 2F奥辞書閲覧コーナー
2.トブラー, ロマッチ A. Tobler, E. Lommatzsch (1955- 新版) 『古フランス語辞典』Altfranzösisches Wörterbuch, Franz Steiner, Wiesbaden.〔古フランス語研究者にとっての必携辞典。現在も継続刊行中である。最近CD-ROM PC版が出された。〕☆☆☆☆☆ (N/a3/176)
1.ヴァルトブルク W. von Wartburg (1922-) 『フランス語語源辞典』Französisches Etymologisches Wörterbuch, Tübingen.〔現時点で最も優れた語源辞典。語源を調べる者は必ず参照すべき辞書。現在も補遺が継続刊行中である。〕☆☆☆☆☆ (N/a3/126)
筆者は「東京外国語大学大学院ロマンス系言語専攻」の修了者であるが,本学は日本で極めて異例の「ロマンス系言語専攻」なる名称を以前用いていた大学であった。不幸にも(?),現在その素晴らしい名は「欧米第二課程」に変わってしまったのだが・・・とにかく昔の外語大は,教官も学生諸君も「ロマンス語学」という領域の存在を意識して当然の環境にあったと言える。ところが,不幸なことに(今度は本当の意味で),肩書きはそうであったが中身が全くなかった。なぜならば,以前の本学図書館には「ロマンス語学」関係の学術誌が,文字通り,ほぼ皆無であったからだ。皮肉なことに,「ロマンス系言語」という外見を「欧米第二」に変えた途端,事態は加速度的に好転したのだった。現在,本学図書館が所蔵する「ロマンス語学」関係の雑誌の量と質は飛躍的に向上し,他大学に退けをとらない状況に近づきつつある。筆者は,六年間静岡で勤務した後に外語大に着任したのだが,10年ぶりに西ヶ原の小さな図書館の書庫に潜り込んで調べるうちに,所蔵する学術誌の質と量が大幅に改善したことに驚嘆すると同時に,大学における学問的研究の重要性を再認識し,そのための基盤固めとして,このような地道な学術雑誌の配備に尽力された先輩教官には,正直なところ,深い敬意の念を禁じ得ない。実際には,この所蔵雑誌の改善の背景には公費予算配分の是正があったと漏れ聞いている。いずれにせよ図書館の蔵書が,部分的ではあるにせよ,その大学の学問レベルを反映していることを筆者は信じて疑わない。さらなる改善策が期待されるところだ。
とはいえ,それ以上に大切なことは,今後,本学の教官と学生諸君がこのロマンス語学の宝庫をどのように利用するかなのである。宝の持ち腐れだけにはしたくないものだ。
フランス語の通時的研究に関する論文を収録した国際的学術誌のうち,本学の図書館が現在所蔵している雑誌には次のようなものがある。以下の参考文献はアルファベット順に並べ,この欄に関しては星印を省略した。尚,雑誌の所蔵に関しては本学図書館の平川光敬氏にご尽力いただいた。この場をお借りしてお礼申し上げたい。
1.『パリ言語学会誌』Bulletin de la société de linguistique de Paris.〔一般言語学の雑誌であるが,登竜門的な役割を果たしているため,時折,重要な通時論的研究が発表される。55(1960)-62(1967), 64(1969)-84(1989), 86(1991)以降を所蔵。〕
2.『歴史言語学誌』Folia linguistica historica.〔ヨーロッパ言語学会の学会誌。ヨーロッパの著名な言語学者が執筆することもある。歴史言語学の専門誌であり,フランス語に関する論考も時々見られる。語学研究所 1(1980)-14(1993),図書館は13(1992)以降を所蔵。〕
3.『現代フランス語』Le Français Moderne.〔共時・通時の全体をカバーしたフランスでも有数の古い学術誌である。一時期は方言研究に貢献したこともあった。所蔵状況は,1, fasc.2 (1933)-10(1942),11-13号が欠巻,14(1946)-以後は全て配備。〕
4.『文法情報』Information grammaticale.〔現代語の文法研究が主ではあるが,かなり頻繁に古フランス語に関する記事が掲載される。ただし紙面が限られているためか,この雑誌の題名通り「情報」提供に終わっているものが多い。44(jan.1990)-54(juin 1992), 56(jan. 93)以降を敦賀研究室が所蔵。〕
5.『言語』Langages.〔毎号特集が組まれる雑誌。通時的研究自体の特集はなくても通時的な研究論文が時々見られる。所蔵状況は良好で欠巻のみを挙げる。13-24, 27, 30-31, 38, 42以外は全て配備。〕
6.『フランス語』Langue française.〔この雑誌も毎回特集が組まれている。本学図書館が以前から購読している雑誌の一つ。6(1970)以前は欠巻,7号も無く,8(1970)以後は全て配備されている。〕
7.『言語研究』Lingvisticae Investigationes.〔本学図書館が最近所蔵するようになった比較的新しい(1998年現在21号)言語学雑誌。1(1977)-10(1986),11と12号,17,fasc.2が欠巻,上記以外は全て配備。〕
8.『言語学』La Linguistique.〔A.Martinetに代表される国際機能言語学会の学会誌。共時研究が一般的であるが,通時研究が発表されることもある。最初の数巻がなく,6,fasc.2(1970)から所蔵。〕
9.『プロブス.ラテン語・ロマンス語学国際誌』Probus. International Journal of Latin and Romance Linguistics. 〔新しい言語理論による論文が多く掲載される。1993年から富盛研究室が購読開始。ただし配架先は図書館。〕
10.『ロマンス語学誌』Revue de Linguistique Romane.〔ロマンス語学の揺籃期に発展の母体となった重要な学術誌。ロマンス語学者にとっての登竜門と言えるかもしれない。質の高い論文だけでなく,書評も質量ともに第一級。驚くべきことに昭和62年度に39号(1975)を除きほぼ全巻所蔵された。〕
11.『ロマンス語誌』Revue des langues romanes.〔最近はあまり活発な学問的貢献をしなくなったが,南フランスを中心とする伝統ある学術誌の一つ。1(1870)-76(1964), 91(1987)-97(1993), 99(1995)以降を所蔵。最近の号は敦賀研究室にある。〕
12.『ケベック言語学誌』Revue québécoise de linguistique.〔カナダには中世語研究者と方言学者が少なくない。敦賀研究室が最近購読を開始。〕
13.『ロマンス学誌』Revue Romane.〔北欧にも中世語の研究者が多くいるが,彼らがしばしば活躍する雑誌。本学図書館は25(1990)以降購読し始めた。〕
14.『ロマンス文献学』Romance Philology.〔アメリカを中心とするロマンス語学誌。この雑誌に目を通すと,変形文法や認知言語学とは異なる,アメリカが世代を通して守ってきた別の意味での学問伝統が感じられる。この雑誌の書評にも優れたものが多い。1号(1947)から全巻が図書館に所蔵されている。〕
15.『ロマニア』Romania.〔ロマンス文献学はこの雑誌から始まったと言っても過言ではない。本学教官の尽力によってバックナンバーの多くが書庫に配備された。19(1890)-60(1934),66(1940)-71(1950),74(1953)-86(1965),以後は108(1987)までない。途中の67(1942-43)-68(1944-45)は旧分類(フランス語の棚)に配備されているため注意。〕
16. 『ロマンス語研究』Romanische Forschungen.〔一時期は言語学の論文が中心であったが,最近では文献学や文学の論文が目立つ。書評の数は多い。1991年より購読開始。〕
17.『ロマンス語学年報』Romanistisches Jahrbuch.〔本学図書館は1990年から購読開始。〕
18.『言語学・文献学誌』Travaux de linguistique et de philologie.〔ストラスブール大学の言語学誌。以前はTravaux de linguistique et de littérature(TraLiLi)という題であり,3(1965), 5(1967), 14(1976)-25(1987)を図書館が所蔵。新しいタイトルになってからも図書館が全巻所蔵している。〕
19.『ロマンス語』Vox Romanica.〔スイスの代表的なロマンス語学誌。この雑誌も教官の努力の甲斐あって全巻が購入され,書庫に配架された。〕
20.『フランス語学・文学誌』Zeitschrift für französische Sprach und Literatur.〔最近は言語学よりも文献学と文学の論考が多いように思える。本学図書館は1991年から所蔵。〕
21.『ロマンス文献学誌』Zeitschrift für romanische Philologie.〔romanische Philologieの生みの親とも言うべき専門誌。編集委員が素晴らしいこともあるが,この雑誌に寄せる学界の信頼は極めて高い。書評は文献9と双璧を成す。この学術誌が本学図書館に全巻配備されたことにより,本学に本当の意味でのロマンス語学が芽吹いて欲しいと望むのは筆者だけなのであろうか?〕
日本におけるロマンス語学は,いまだ過渡期の感を否めないが,それでも日本ロマンス語学会の学会誌である『ロマンス語研究』は1998年で既に31号を数える。山本研究室が所蔵する。ただし5号(1970-71)のみ欠巻。
最後に,学術雑誌に掲載されるフランス語学関係の論文を知る上での裏技を紹介しておく。1998年の春に整理が終り,本学図書館に全巻配備された日本フランス語学会の学会誌,『フランス語学研究』(2002年は36号)の巻末には,毎号,編集委員が中心になって作成した世界中のフランス語学に関する研究論文の書誌が添えられている。この「海外雑誌論文目録」を調べるだけでも立派な参考文献を作成できるであろう。この書誌は共時・通時いずれも網羅した素晴らしい文献目録である。
この参考文献は1998年度東京外国語大学欧米第二課程のリレー講義,「ロマンス諸語比較研究」の受講者に対する参考文献として当初作成された。
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