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トルコの音楽


このページは、渡邊いずみによって作成されました。

トルコの音楽とは?

トルコ音楽といって私たちが思い浮かべるのは、太鼓や笛を持ち、連隊を組んで街を練り歩く軍隊の行進曲か、60年代に日本で歌謡曲として流行った『ウスキュダラ』ぐらいではないだろうか。今日のトルコ音楽界は、日本のそれと同様、西洋的なもの、伝統的なもの、民俗的なものなどが、さまざまにまざりあって、多種多様な音楽がつくりだされ、演奏されている。

我々が日頃親しんでいる西洋音楽との大きな相違は、

  1. 西洋音楽における1音をさらに9つに分けた微分音を使用していること、
  2. 短調、長調の2種類しかない旋法が、何十種類もあること、
  3. 西洋の記譜法を取り入れる前は、演奏家は、全て記憶を口承によって、弟子から弟子へとつたえ、演奏は即興が多いこと、
  4. リズムが付加的で、複雑で多様な拍子の種類があること、などである。

彼らの祖先は中央アジアから、東西文明の十字路とよばれる小アジアへ西進し王朝をたてた。11世紀のセルジューク・トルコ、13世紀に東ローマ帝国を打ち倒し、イスタンブールを首都としたオスマン帝国で、とくに後者の最盛期には、北アフリカ、バルカン半島、イランを除く中東、黒海北岸などを支配する大帝国をうちたて、コスモポリタンな多民族国家として発展した。その過程で、周囲のペルシャ、アラブの音楽文化を吸収し、さらに発達させた。

ペルシャ音楽や、アラブ音楽との違いは、音楽理論のうえで非常に細かく体系化され、演奏者の記憶のみに頼っていた作品や理論が、現在は楽譜にあらわされ、実用化されている点である。

トルコの音楽は、大きく4種類に分けられ、

  1. 古典(芸術)音楽
  2. 軍隊音楽
  3. 宗教音楽
  4. 民謡と民俗音楽

とくに、1と4では、使われる楽器の種類が全く異なる。


古典(芸術)音楽

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軍隊音楽

1529年に始まるウィーン包囲で、ヨーロッパ人を震え上がらせ、尊敬と驚異の目をみはらせたのは、精強で規律の整ったイェニチェリの軍楽隊(メヘテル mehter)であった。戦士の士気を鼓舞するこの大編成の楽団は、セルジューク朝(1037〜1157)に基礎を固めた。メヘテルとは、ペルシャ語の「新月」に由来し、三日月状に弧を描いて並んだ隊形で演奏することによってつけられた。

トルコ風の音楽やトルコ行進曲、そして後に西洋のブラスバンドを生んだ。2種類の管楽器(ズルナとトランペットのボル)、4種類の打楽器(ケス、ダウル、1対の小型鍋形太鼓ナッカラ、シンバルのジル)にくわえて歌がつく。歌手は手に鈴つきの錫杖(錫杖)を持ち、上下に振りながら調子をとって歌う。1対の太鼓ケスは、馬の背で運ぶほど大型で、オーケストラのティンパニーのもとである。


宗教音楽

トルコは政教分離の国であるが、国民の99%がイスラーム教徒であり、聖典(クルアーン)や、1日5回の祈りの時刻を知らせるための声(アザーン)の朗唱はたぶんに音楽的な要素を含んでいる。しかし、信者はこれらを歌や音楽とは考えておらず、モスクのなかで宗教音楽を行うことはない。

しかし、クルアーンの朗唱法は口承で7世紀からの伝統を持つとされ、研究はいまでも続いている。9世紀以降の理論家(音楽学者、数学者、物理学者)として有名なのは

現代の音楽学者アーメリド・カメル・アルコーライまで受け継がれている。クルアーンに関する韻律、リズム、音階・旋法、旋律、音程、調や物理学の宗教的応用などの彼等の研究は、今も大学、宗教専門学校で教えられている。

現在のクルアーン朗唱の旋律は、アラブ古典音楽のマカーム現在のクルアーン朗唱の旋律は、アラブ古典音楽のマカームと関係が深く、韻律、休止のとり方などからも宗教音楽性が高いと考えられている。

アザーンは(ミナレット)から僧によって、両手を耳(頭上)にかざし、メッカに向かって一日5回(日没、宵、夜明け、正午、午後)となえられる。クルアーン朗唱より旋律的で歌に近く、地域によって違いがある。マカームとの関係が深く、毎回決まったマカームでとなえられる。

儀式における宗教音楽は上の2つであるが、イスラム教各派のなかには音楽を媒体としているものもある。それらはイランに多いシーア派のなかの神秘主義者たち、(スーフィー(行者)、デルヴィシュ(托鉢僧))は激しい身体の動きと歌を儀式にとりいれ、恍惚状態になって神と対話する。トルコでのデルヴィッシュであるメヴラーナ教団での礼拝は、複雑で細かいリズムをもつ器楽(ネイ、タンブール、クディムなど)の伴奏と合唱と激しい旋回舞踊で有名である。


民謡と民俗音楽

歌の内容は愛、恋、とくに失恋をうたったものが多い。トルコ民謡は大きく形式的にウズン・ハワとクルク・ハワの2つのカテゴリーに分けられる。

ウズン・ハワ(uzun hava) (長い旋律、または長い歌)

拍子にとらわれず、自由なリズムでひとりで歌われる歌。長く引き伸ばされた音、ユリやこぶしのある旋律で、高い音から低い音までの広い音域を持つ。地域によって呼び方が変化する。

マヤ(maya)、ホイラット(hoyrat)、ケスック(kesik)、ヤヌック(yanik)、アーウート(agit)があり、ボズラック(bozlak)は小アジアの中央部から東部、南部に住みかつては伝統的遊牧生活を送っていた人々が伝承するものの代表的なものである。歌のはじめで高い声を張り上げ歌詞を一本調子にとなえ、感嘆詞で、こぶしをつけながら下降旋律を歌う。民族音楽学者であるクルト・ザックスは『高原の羊飼いが互いの合図にした叫び声に源を発する』と言っている。

クルク・ハワ(kirik hava) (割りくだかれた旋律、歌)

拍子のある短律を繰り返し、音域は狭く、装飾音も少ない。大勢で歌い、そのほとんどはオユン・ハワと呼ばれる踊り歌である。トルコ民俗音楽においてそのバラエティーを広くする拍子が多種ある。どの地域にも2拍子と4拍子は共通して見られるが、各地域によって踊りと深く結び付き、5、7、8、9、10拍子などの付加的リズムがみられる。これらの付加的リズムは、2の単位とその1.5倍である3の単位の組み合わせで、
例えば、9拍子(2+2+2+3)
    8拍子(3+2+3)

これらは、ちょっとつまづくような不均衡なリズムを楽しむもので、バルカン半島一帯にひろがっている。身体の動きや足のステップと関連が深い。

西アジアの音楽に共通の半音より狭い音程(微分音程)は全音の1/8、3/8、1/4音程がある。しかし、古典音楽とは違い、はっきりとした理論は確立しておらず、個人、地方によって幅がある。

民謡の伴奏でもっとも良く使われるのは、弦楽器サズ(saz)である。アーシュク(asik)やオザン(ozan)とよばれる吟遊詩人が、叙事詩や愛の歌の弾き語りにもちいた。サズは大きさで名がかわり、大型がディワン、中型がバーラマ、小型がジュラと呼ばれる。踊りの伴奏には太鼓ダウル(davul)とオーボエ属のズルナ(zurna)が、大きな音のため野外で結婚式や割礼などの祭に雇われたジプシー音楽家によって演奏される。ほかには、羊飼いの笛カヴァルや花杯形太鼓ダルブッカ(darbukka)などがある。


楽器

トルコ音楽における楽器は、中東の多くの国々で見られるが、何世紀にもわたって今日まで使われている楽器は以下のようである。

ウード

アラブ世界で代表的な楽器のひとつ。トルコ、イラン、カフカス、、ギリシャなど広く使われる楽器で、『楽器の女王』と呼ばれる。表面には美しい装飾がほどこされている。洋ナシ型の胴と後ろに直角におれ曲がったさおをもつ撥弦楽器。日本の楽琵琶や平家琵琶のもとに当たるもので、サーサーン朝ペルシャの弦楽器バルバトbarbatを共通の祖先とする。ヨーロッパでは、リュートと呼ばれ親しまれた。弦は現在5コースの複弦が張ってあるが、元来4弦であった。(日本の琵琶は4弦)素材も、現在はナイロンが使われているが、中世では絹弦が用いられていた。

タンブール

伝統音楽での主要な楽器。ばちか弓でひく。長さ135cm。りんごのような丸い球状の胴体とさおには48このフレットがある。弦は8本で2本ずつ同じ音。1番線はレ、2番線ラ、3番線レ、4番線ラとならんでいる。

ネイ

ペルシャ語で葦の意味。アラブ諸国、イラン、トルコの古典音楽で使われる気鳴楽器。葦の茎で作られた縦笛のフルート属で、歌口を斜めにカットしたもの。発音は尺八と同じだが、斜めに構えて吹く。指孔は表に6孔、裏に1孔ある。

サントュール

くるみの木で出来た浅い箱状(底辺80〜100cm、上辺30〜40cm、縦25〜30cm、深さ5.5〜7cm)の上面に約80本の金属弦を平行にはった楽器。4本1組で1つの音に調弦する。先がしなって櫂状になっている2本のばち(クルミ製)でたたく。ジプシーのツィンバロンのもとで、ツィターもこの仲間。

カーヌーン

トルコなどアラブ諸国で古典音楽に使われる撥弦楽器。箱ツィターに属する。不等辺四角形の平たい箱上に72〜81本のガット(ナイロン)弦を張り、指、またはプレクトラムではじいてならす。右手で旋律、左手で伴奏を弾く。箱の上面は5分の1ほど獣皮がはってあり、その上に駒がのっているのでよく響くさえた音がする。

ナッカラ

ティンパニーの祖先にで、鍋ないし釜の開口部に皮膜を張った片面太鼓で、音色や音高の違う2つの釜太鼓を対で用いる。2本のスティックでたたいて発音させる。

ズィル

直径48ミリから50ミリほどの小さな真鋳製のシンバルで、両手にもって交互に親指と人さし指でうちならす。ベリーダンサー(西アジアや北アフリカ特有の踊り)の踊り手がもって踊る。キーンという澄んだ美しい音がする。

ズルナ

西アジア中心に広く分布する。ダブルリードの管楽器で、円錐形管にステープル、ピルエットがある。指孔は表7孔、裏1孔で長さは30〜45cm。インドでは、シャナーイー、中国ではスオナー、エジプトではmizmarと呼ばれる。

ダルブッカ

ゴブレット(脚付杯)形ドラム。胴は普通木製、まれにねんど、金属製であることもある。西アジアと北アフリカでは最も一般的な太鼓の一つ。演奏者の左股の上に水平におかれ、素手で奏される。両手の十指と掌とをつかって、1枚の膜面から高音、低音、乾いた音、ロル、スナップなどをつくりだせる。

チョウガン

オスマン・トルコの軍楽隊で用いられる錫杖で、てっぺんに『トルコの三日月』その下に『あずまや』の屋根をかたどった金属の枠と、また別の三日月の枠をつけた1m20・ほどの杖である。行進しながら垂直に立て上下に振って鳴らす体鳴楽器である。イスタンブールの軍事博物館では、観光客のための軍楽の実演コンサートがある。伝統的な衣装になんともよくあう楽器である。

サズ

レバーブ

ケマンチェ

 


参考文献


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