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要旨
2011(平成23)年
1月26日
「2011年アメリカ言語学会(LSA)・アメリカ先住民諸語学会(SSILA)大会報告」
渡辺 己(アジア・アフリカ言語文化研究所准教授/セイリッシュ語)
2011年1月6日から1月9日の4日間に,ペンシルベニア州ピッツバーグでアメリカ言語学会(Linguistic Society of America)大会が開催された.例年通り,本大会と同時に5つの学会の大会が開催された.それらは,アメリカ先住民諸語学会(The Society for the Study of the Indigenous Languages of the Americas),アメリカ方言学会(American Dialect Society),アメリカ名前学会(American Name Society),北アメリカ言語学史学会(North American Association for the History of the Language Sciences),ピジン・クレオール言語学会(Society for Pidgin and Creole Linguistics)である.これら6学会の大会は,朝9時あるいは朝8時から夜遅くまで18会場で同時におこなわれた.およそ400件のレギュラーセッション(発表20分・質疑10分)のほか,79件のポスター発表,9件のシンポジウム(発表件数53件),5件のワークショップ/チュートリアル(発表件数25件)があり,その他,学会長の講演や招待講演などがあった.
本報告では,大会の様子や雰囲気を伝えるとともに,Paul Kroeber(インディアナ大学)によるクース語族(北アメリカ北西海岸,現オレゴン州)にみられる「反転」(inverse)の現象に関する発表についての報告をおこなった.
2010(平成22)年
12月8日
「日本言語学会 第141回大会報告」
風間 伸次郎(総合国際学研究院教授/ツングース諸語・言語学)
東北大学で11月27・28日に行われた141回大会について報告した.公開シンポジウム「脳科学と言語学の対話」(司会 小野尚之)や,「北琉球奄美湯湾方言における準体助詞siの形態統語論的振る舞いについて」(新永悠人氏・下地理則氏),「モンゴル語の後置詞の特徴」(梅谷博之氏),「南琉球八重山波照間方言の「形容詞」認定に関する問題」(麻生玲子氏),「アミ語における書き言葉の影響」(今西一太氏)などの研究発表に関して,報告者が概略を紹介した.
12月1日
「日本語文法学会 第11回大会報告(於:就実大学)」
佐藤 雄亮(大学院博士後期課程)
就実大学にて2010年11月6日,7日に開催された大会内容を報告した.まず,初日のシンポジウム「日本語の記述文法の未来を考える」における,角田太作氏,野田春美,かりまたしげひさ氏,定延利之氏による討論内容を紹介し,続いて二日目のパネルセッション(B)「自動詞・他動詞の対照研究の新地平 −理論的研究と実証的研究の融合を目指して−」について,パルデシプラシャント氏,吉成祐子氏による「他動性と意図性の相関関係」を中心に紹介した.
11月17日
「Theoretical Issues in Sign Language Research 第10回大会報告(米国Purdue大学 9/30-10/1)」
箕浦 信勝(総合国際学研究院准教授/一般言語学・手話言語学)
Carol Paddenの取り扱い類別子(handling classifier)・道具類別子(instrument classifier)による視覚身振りモード特定言語類型論,Josep Querの一致動詞に関する議論,Marlon Kuntzeの「類別子」に関するバークレー転記システム(Berkeley Transcription System),コーダ児のバイモーダル・バイリンガリズムにおけるコード・ブレンディング,Tangの主要部内在型関係節について報告した.
11月10日
「西夏語の遠称指示代名詞の使い分けについて」
荒川 慎太郎(アジア・アフリカ言語文化研究所准教授/西夏語学、西夏語文献学)
西夏語の遠称の指示代名詞は,3種(登場頻度の高い順にA, B, Cとする)が存在するものの,その使い分けについては判然としなかった.本考察では西夏語仏典を資料としA〜Cがどのような環境で現れるかを検証した.Aはほぼ名詞を修飾し,格標識が後続する場合も随伴・付帯を含意するものに限られる.一方Bはほぼ全て格標識(多くは場所を示す)が後続していた.A, Bの使い分けは後続する要素の語彙的な違いによると推測した.Cは例が少なく後続要素にも特定の傾向が見られなかったが,先行研究にない用法を指摘した.
10月27日
「認知言語学の最新の動向 −日本認知言語学会 第11回全国大会報告」
三宅 登之(総合国際学研究院教授/中国語学)
2010年9月11日(土)・12日(日)の2日間にわたり立教大学で開催された,日本認知言語学会第11回全国大会について報告した.まず全体のプログラムを紹介し,日本認知言語学会の全体的な動向について簡単に紹介した.次に個別の研究発表の中で,報告者が聞きに行ったものの中から日英対照研究と日中対照研究の発表につき,報告者の意見とともに詳しく解説し,その後質疑応答を行った.
10月13日
「第61回朝鮮学会大会の報告」
韓 必南(大学院博士後期課程)
本発表では,平成22年度朝鮮学会にて行われた口頭発表のうち,補助動詞と名詞述語文に関する日韓対照研究について再考察を行う.補助動詞については,日本語の「〜てしまう」と韓国語の「-'e berida」とともに,日本語の「〜てやる/くれる」と韓国語の「‐'e juda」を対照的な観点から考察している研究を取り上げる.さらに,日本語の「だ」の用法に照らしつつ,韓国語の「'ida」のコピュラ性について考察している研究を概観する.
7月14日
「日本ウラル学会 第37回研究大会報告」
坂田 晴奈(大学院博士後期課程)
本発表は,2010年7月3日に新宿の麗澤大学東京研究センターで行われた,日本ウラル学会第37回研究大会の報告である.この学会では4つの研究発表および2つの講演が行われた.本発表ではそのうち松村一登氏の「エストニア語の否定極性表現とコーパス」という発表について詳しく紹介した.その他の研究発表は,マリ語のアスペクト補助動詞に関するものなどで,これらについても簡単に触れた.
7月7日
「シベ語の動詞o-について」
児倉 徳和(東京大学大学院言語学研究室博士課程)
本発表では,シベ語において「なる」をあらわす動詞o-の補助動詞としての機能を検討した.
o-は補助動詞として,近接未来を表す,「〜すぎる」を表す場合に副詞的要素daweleと共起する,許可を表すなど多様な用法を持つが,本発表ではこれを「事態の成立に関わる話し手の判断」というムード的な側面から統一的に説明でき,さらにo-の使用による話し手の判断の明示は,聞き手への配慮から話し手自身の判断を相対化する,という語用論的動機に基づくと考えた.
6月30日
「日本言語学会 第140回大会報告」
風間 伸次郎(総合国際学研究院教授/ツングース諸語・言語)
筑波大学で6月19・20日に行われた140回大会について報告した.公開シンポジウム「数の言語学」(司会 砂川有里子)や,「オロエ語の所有構造と動詞構造における名詞(代名詞)の現れ方」(辻笑子氏),「琉球語のエヴィデンシャリティーシステム」(新垣友子氏),「奄美大島湯湾方言の deictic motion verbs ik-「行く」と k-「来る」」(新永悠人氏),「宮古大神方言の副動詞と非従属化」(トマ ペラール氏)などの研究発表に関して,報告者が概略を紹介した.
6月23日
「日本ロマンス語学会 第48回大会報告」
近藤 野里(大学院博士後期課程)
寺崎英樹氏の「スペイン語と日本語の推量モダリティ表現」と古賀健太郎氏の「フランス語名詞+名詞構造の非主要部に関する一考察」の両発表を取上げてレビューを行った.寺崎氏のレビューでは,「おそらく」という意味を持つスペイン語の副詞7語と時制の共起関係から,副詞の持つ蓋然性の度合いについて述べた.古賀氏のレビューでは,名詞+名詞構造の複合語がテンプレート化し安定性を持つことで,類推によって新しい複合語が生産されるという点に触れた.
6月16日
「日本語学会 2010年度春季大会報告」
川村 大(総合国際学研究院准教授/日本語学)
日本女子大学において5月29日・30日の両日行われた日本語学会2010年度春季大会について報告した.概況を報告した後,1日目のシンポジウム(3会場で実施)からB会場「外から/外への近世語研究」(金澤裕之・岡部嘉幸・福島直恭・佐藤貴裕,司会:矢島正浩)を取り上げ,やや詳しく紹介した.
6月9日
「韓国語の複数標識 -tul について」
蔡 熙鏡(大学院博士前期課程)
韓国語における複数標識 -tul は,前接要素の複数を表す機能の他に文のいろいろな要素に付いてその文の主語,または目的語が複数であることを表す機能を持っていることが指摘されている.本発表では,使役動詞による使役文と ‘-key hata (するようにする)’ 使役文に現れた -tul に見られる統語現象から -tul は,述語動詞が表す行為の直接行為者が複数であることを表す機能を持つということについて論じた.
5月26日
「日本語の「持つ」と韓国語のgajidaについて −連体修飾の機能を果たす場合−」
韓 必南(大学院博士後期課程)
本発表では日本語の所有動詞「持つ」と韓国語の所有動詞gajidaを対象に,連体修飾の際の特徴について考察した.「持つ」とgajidaは両方とも [所有物V所有者] で現れた場合に比べ,[所有者V所有物] の場合に所有物Nの種類がより制限される.実現された連体形に注目すると,「持つ」の過去形は被修飾名詞が「所有物」であるかまたは「所有者」であるかによってその表す意味に明確な違いが見られるが,韓国語のgajidaの過去形にはそういった区別はほとんど見られない.
5月19日
「宮古多良間方言の母音変化」
青井 隼人(大学院博士前期課程)
琉球諸方言の母音変化について中本 (1975, 1976) は以下の2点を主張している:(1) 母音変化の影響によって子音にも変化が生じた;(2) 奥母音の変化は前母音の変化に先立って起きた.本研究は,以上の中本 (1975, 1976) の指摘が妥当であるかどうか,宮古多良間方言を対象とした音韻変化プロセスの再建を通じて検討する.結論として,中本 (1975, 1976) の指摘 (1)・(2) に対して以下の2点を主張する:(3) 奥母音の変化の影響による子音変化はない;(4) 奥母音の変化は前母音の変化より後れて起きた.
5月12日
「共起語から見たポルトガル語の直説法未来・過去未来と他の直説法時制」
鳥越 慎太郎(大学院博士後期課程)
本発表ではポルトガル語の直説法未来と過去未来が動詞の補語となる従属節中に現れる場合 (V + que + vfut./fut.pret) と, 直説法現在・完了過去・未完了過去が従属節中に現れる場合 (V + que + vpres./pret.perf./imp.) の2つのパターンにおける主節動詞語彙 (V) の分布を, Hunston & Francis (2000) のPattern Grammarのアプローチに基き, 大規模コーパス (Cetenfolha/Cetempúblico, in Sketch Engine) を用いて比較, 分析した.両者は共通の語彙と共起する傾向が認められたが, 上位100語中どちらかと極端に共起しやすい語彙が各20語ほど見られるという結果が得られた. また発表者はそれらの語彙の意味的な下位分類を試みた.
2月3日
「The World Congress of African Linguistics (WOCAL6) 手話学セッション報告 (2009.8 於 独ケルン)」
箕浦 信勝(総合国際学研究院准教授/一般言語学・手話言語学)
2009年8月18日,ドイツ・ケルン大学に於ける,世界アフリカ言語学会大会の手話学セッションに出席.マリで,(新しい)フランス語圏アフリカ手話ではなく,土着のマリ手話に関するコーパスの構築が始まっていること,エチオピアのアディス・アベバ大学で手話学コースが新設されたこと,南アフリカの手話話者のネイティブ比率は低く,手話話者のネイティブ度は様々であること,モーリシャス手話では2項を取る動詞が少なく1項を取る動詞の動詞(句)連続が多く見られること,エリトリア手話はフィンランド手話・スウェーデン手話の影響を受けていることなどの諸発表を紹介した.
1月13日
「少数言語である手話の研究倫理をめぐる動向 : 日本手話学会第35 回大会報告」
亀井 伸孝(アジア・アフリカ言語文化研究所研究員/文化人類学)
視覚的な自然言語である手話をめぐっては,近年,言語学を中心に学術的な関心が高まっている.一方,手話を話す当該のろう者の研究者たちが学術界に参加する機会は,いまだ十分に守られているとはいえず,「学術の使用言語としての」手話の地位も低いままにとどまっている.
手話言語に関わる研究者たちの学術団体である日本手話学会は,規約で,日本語と日本手話の二言語を学会の公式言語と定めている.その学会でも,両言語の対等な共存という理念が実現できているのかをめぐって,研究倫理の面でのさまざまな議論がなされるようになった.
今回の発表では,2009年10月31日〜11月1日に,東京大学駒場キャンパスで開催された日本手話学会第35回大会のうち,シンポジウム「手話研究のあり方を考える」に焦点を当て,そこでなされた手話研究の倫理をめぐる議論の動向を紹介した.あわせて,学会誌『手話学研究』で初めて企画された,「特集・手話研究の倫理」についても触れた.これらを通し,学術界が少数言語とその話者たちと良好な関わりを考えるための一事例として,日本手話学会の取り組みを参照することを提言した.
2009(平成21)年
12月2日
「日本言語学会 第139回大会報告」
風間 伸次郎(総合国際学研究院教授/ツングース諸語・言語学)
神戸大学で11月28・29日に行われた139回大会について報告した.「南琉球宮古伊良部島方言における「複合名詞」の品詞分類」(下地理則氏)や,「ティディム・チン語における否定標識」(大塚行誠氏)「コリマ・ユカギール語の名詞句外所有構文について」(長崎郁氏),「アラビア語チュニス方言(チュニジア)の否定と文構造」(熊切拓氏),ワークショップ「知覚の言語学に向けて:行為と知覚の関係はどう言語化されるか」(うち特に長谷川明香氏の発表)などの研究発表等に関して,報告者が概略を紹介した.
11月25日
「日本語学会 2009年度秋季大会報告」
川村 大(総合国際学研究院准教授/日本語学)
島根大学において10月31日・11月1日の両日行われた日本語学会2009年度秋季大会について報告した.概況を報告した後,2日目の口頭発表から藪崎淳子氏「『極限』のマデ」,川瀬卓氏「モダリティ副詞『なにも』の成立」の2件を取り上げ,やや詳しく紹介した.
11月11日
「日本語文法学会 第10回大会報告(於:学習院女子大学)」
佐藤 雄亮(大学院博士後期課程)
学習院女子大学にて2009年10月24日,25日に開催された大会内容を報告した.第10回記念フォーラムより,柴谷方良氏「日本語準体法再考 ―体言化と連体修飾―」を,次に二日目の発表より「名詞述語に繋辞動詞は必要か」(白岩広行氏・平塚雄亮氏)「逆使役分析の五つのメリット」(佐々木冠氏)について,その概略を紹介した.
11月4日
「琉球語宮古多良間方言の中舌母音」
青井 隼人(大学院博士前期課程)
琉球語宮古諸方言に広く観察される中舌母音の音声的特徴として,従来の研究では,以下の3点が報告されている;(1) 中舌狭母音 [i]のような音色を持つ,(2) 舌尖調音を持つ,(3) 摩擦噪音を伴う.しかし,従来の観察は,研究者の聴覚印象に基づくものがほとんどであり,客観的手法によって中舌母音の音声的実態の把握を試みた研究はほとんどない.本発表では,上記3つの特徴のうち,特に,従来の研究で十分な観察がなされてこなかった (3) 摩擦噪音を伴う点に着目し,中舌母音がどのような環境で,また,どのような音声的メカニズムを持って摩擦噪音を伴うのかを考察した.
10月28日
「朝鮮学会 第60回大会報告」
金 民(大学院博士後期課程)
2009年10月3日から4日まで,天理で開催された学会の語学分野の発表は,韓国語教育を基礎に据えた研究が多く,コーパスに基づいた実証的研究が主流となっていた.
音声学分野では,日本語母語話者の韓国語発話に見られるピッチパターンや文末のイントネーションに関する発表があった.文法分野では,文末のムード形式,語彙の対照研究などがあった.教育分野では,言語中心の文化統合教育を目指した教材開発に関する発表などがあった.
10月14日
「認知言語学の最新の動向 ―日本認知言語学会 第10回全国大会報告」
三宅 登之(総合国際学研究院教授/中国語学)
2009年9月26日(土)・27日(日)の2日間にわたり京都大学で開催された,日本認知言語学会第10回全国大会について報告した.まず全体のプログラムを紹介し,日本認知言語学会の全体的な動向について紹介した.次に個別の研究発表の中で,報告者が興味を持った日本語学の分野での2つの発表につき,それらを聴いての報告者の意見とともに詳しく解説し,会場と質疑応答を行った.最後に,学会の会長の交代等の報告と絡め,近年の認知言語学の動向を紹介した.
7月22日
「パキスタンのカティ語の紹介:簡易調査報告」
吉岡 乾(大学院博士後期課程)
パキスタン北西辺境州チトラール県ルンブール谷シャハナンデ村で話されている,インド・ヨーロッパ語族カーフィル諸語のカティ語に関して,2008年10月28・30・31日に行った最初の簡易現地調査をまとめた.基礎語彙500語と僅かな例文を基に,周辺言語と対照しての音韻的な特徴,場所表現に見られる接頭辞〜後置詞(イラン系〜インド系)という境界性,能格性,20進法の数詞体系などを指摘した.
7月15日
「モンゴル語の動詞語尾-нэ, -в, -лээ, -жээが織りなす構造について(その2)」
飯田 純(本学博士後期課程修了)
前回の発表(2009年1月14日)で充分にふれられなかった4語尾の織りなす構造について,-нэは「(前景)説明」,-вは「(背景)語り」,-лээは「意中確認」,-жээは「意外確認」の語尾であると定義した.さらに,これらの定義に基づいて,「なぜ-вは口頭言語で使われないのか」「なぜ4語尾には否定が(少)ないのか」等について理由を説明した.
7月1日
「日本言語学会 第138回大会報告」
風間 伸次郎(総合国際学研究院教授/ツングース諸語・言語学)
神田外語大学で6月20・21日に行われた138回大会について報告した.会長就任講演「言語の構造制約と叙述機能」(影山太郎氏)や,「コリマ・ユカギール語の関係節における3種の分詞の用法」(長崎郁氏),「タイ語の機能語hây」の意味変化の方向性(高橋清子氏),公開シンポジウム「文の周縁部の構造と日本語」(Luigi RIZZI氏・井上和子氏・遠藤喜雄氏・長谷川信子氏)などの研究発表等に関して,報告者が概略を紹介した.
6月24日
「『のではないか』における〔質問〕と〔疑い〕の差異」
佐藤 雄亮(大学院博士後期課程)
本発表では日本語の「のではないか」における〔質問〕と〔疑い〕二つの意味について,『現代日本語書き言葉コーパス』から得られた用例を基に考察した.
考察の結果,本質的には語用論的効果としての意味対立だと考えられる〔質問〕と〔疑い〕は,実際には多くの例で形態論的,あるいは統語論的環境によってそれぞれ明示されていることが明らかになった.これら何らかの手段で意味を明示する用例は,〔疑い〕のものに圧倒的に偏る.一方で,そのような標示が無く,語用論的意味として解釈される場合には,〔疑い〕よりは少ないものの,〔質問〕の用例数の割合が大きくなることも指摘した.
6月17日
「ツングース系諸民族における口承文芸について」
風間 伸次郎(総合国際学研究院教授/ツングース諸語・言語学)
本発表では,まずツングース諸民族の一般的性格について述べ,次に他の民族,特にアイヌと日本の口承文芸との類似についていくつかの事例を取り上げて解説した.他にそのジャンルについて,英雄説話と神話,伝説を取り上げた.英雄説話に関しては,主人公である英雄(ムルグン),女主人公(プジン)の性格について述べた.神話・伝説については,創世神話,射日神話,姉弟始祖神話,トラに関する伝説,巨人伝説,諸由来譚などについて述べた.
6月10日
「ポルトガル語及びスペイン語の直説法未来と過去未来における非直説法性について」
鳥越 慎太郎(大学院博士後期課程)
本発表ではスペイン語学,ポルトガル語学における直説法未来と過去未来の法性的解釈に関する先行研究をレビューし,両形式を意味論的観点から分析してその非直説法性(Irreality)を指摘した.これを踏まえ,出口(1980, 1986)が両形式の非直説法性に着目して提唱した推定法(Presumptive Mood)の紹介と批評をした.
6月3日
「フィンランド語のA不定詞変格形の意味機能について」
坂田 晴奈(大学院博士後期課程)
本発表では,フィンランド語のA不定詞変格形の意味機能について,コーパスからの用例を基に考察した.先行研究では,A不定詞変格形の主な意味機能は<目的>・<程度>・<陳述>の3つであるとされている.しかし,これら3つに分類しにくい例がデータ中に1割近くあり,そのような例は<到達>として分類した.調査の結果,この<到達>こそがA不定詞変格形の基本的な意味機能で,先行研究が示す3つの意味機能は<到達>から派生したものであるという解釈を示した.
5月20日
「モンゴル語の補助動詞《ab-》の意味について」
スチンガルラ(大学院博士後期課程)
本研究は,モンゴル語の補助動詞《ab-》の意味とその意味が実現する条件を明らかにした.補助動詞《ab-》には,「自分へという方向性」,「元の状態に戻る」,「単純完全遂行」の3つの意味があり,それぞれの意味の実現は,本動詞の性質,本動詞に後続する副動詞接尾辞,《ab-》に後続する肯定・否定表現,接尾辞,補語などの各要素と深く関わっていることが分かった.
5月13日
「北パキスタン諸言語での名詞反響」
吉岡 乾(大学院博士後期課程)
ブルシャスキー語・ドマーキー語・シナー語・コワール語・カラーシャ語の名詞反響を対象に,以下の点を明らかにした.反響音には地域普遍的なものがあるが,東と西とで,完全重複をする言語としない言語とにタイプが分かれる.後者はさらに,同一性回避のみをするものと,類似性回避をもする言語に分類できる.
1月28日
「マダガスカル手話の語順について」
箕浦 信勝(外国語学部准教授/言語学)
マダガスカル手話では,S,O,Vの語順に関して,順列的に可能な6つの組み合わせすべてが見られるが,その内,音声・書記マダガスカル語に見られる語順,そしてフィッシャーの法則(動詞の前に少なくとも1つの名詞句が必要)の両方に合致するSVO,OVSの例が特に多かった.また,能格標示があることが報告された.また3項動詞の間接目的語は,2項動詞の有生目的語と同様な振る舞いはしないことが報告された.
1月21日
「報告【linguapax Asia 2008年シンポジウム】」
山本 真司(外国語学部准教授/イタリア語学)
linguapaxは,長年にわたって活動を続けている,ユネスコの研究プロジェクトの1つで,その本部は,バルセローナにある.linguapax Asiaはそのアジア支部で,日本在住の研究者の参加が多いが,日本人の参加者はむしろ少ないようである.今回のシンポジウムは,「言語とプロパガンダ」というテーマで行なわれ,この分野ではもはや古典的とも言えるナチス・ドイツの宣伝政策から,現代日本における政府の対外国人政策まで,さまざまな問題が取り上げられた.発表者は,フリウリの非ロマンス系言語話者に対する同化政策に関して報告を行なった.
1月14日
「モンゴル語の動詞語尾-нэ, -в, -лээ, -жээが織りなす構造について」
飯田 純(博士後期課程単位取得退学)
作家ツェデブの短編小説42作品(3989文)を言語資料として,-нэ, -в, -лээ, -жээを含む文の頻度と用法を,「地の文」「私の語りの文」「登場人物のせりふ等」に分けて考察し,4語尾の相互関係を図式化して示した.
2008(平成20)年
12月17日
「日本語学会 2008年度秋季大会報告」
川村 大(外国語学部准教授/日本語学)
岩手大学において11月2・3日の両日行われた日本語学会2008年度秋季大会について報告した.概況を報告した後,2日目の口頭発表から朴秀娟氏「否定とも肯定とも共起する副詞『とても』について」,深津周太氏「指示詞『コレ』の感動詞化」の2件を取り上げ,やや詳しく紹介した.
12月10日
「日本言語学会 第137回大会報告」
風間 伸次郎(外国語学部教授/ツングース諸語・言語学)
金沢大学で11月29・30日に行われた137回大会について報告した.1日目の「保安語積石山方言における存在の助動詞vi/vuについて」(佐藤暢治氏)や「シベ語の語りにおける補助動詞biの機能と視点」(児倉徳和氏)の研究発表および2日目の公開講演「朝鮮漢字音アクセントの歴史的発展と類推変化」(伊藤智ゆき氏),「フィリピン言語学の現在」(北野浩章氏)に関して,報告者が概略を紹介した.
12月3日
「現代ビルマ語の指示体系について」
岡野 賢二(外国語学部准教授/ビルマ語学)
現代ビルマ語の指示語の語類は指示機能のみを持つ名詞限定要素の指示詞,モノ名詞の代替表現であるモノ指示名詞,位置名詞の代替表現の位置指示名詞に分類される.また基本形に近称dìと遠称hòがあり,これに間投詞に語源を持つ接頭辞hÓ-と'É-が付加されて《視界内》,《前方照応》と意味が限定されること,'É-hÓが前方照応ながら,指示対象に対する話し手の距離的心理的な隔絶感を伴うことを主張した.
11月26日
「モンゴル語の補助動詞構造《-CVB ög-》について」
スチンガルラ(博士後期課程)
本発表では,電子コーパスから実例を収集し,《V-CVB ög-》構造が,授受的意味を表す場合とアスペクト的意味を表す場合の条件を明らかにした.結果としては,《V-CVB ög-》構造が授受的意味を表すかアスペクト的意味を表すかは,本動詞の意志性,本動詞に後続する副動詞接尾辞,及び《ög-》に後続する肯定・否定表現,接尾辞などの各要素と深く関わっていることを主張した.
11月12日
「モンゴル語の動詞語尾-laaと-jeeについて ― コーパスに基づく分析」
ジンガン(博士後期課程)
本発表では,モンゴル語のいわゆる過去テンスを示す動詞語尾-laa,-jee,-san,-vのうち,-laaと-jeeの意味・機能を再検討した.電子コーパス(総語数1,005,821語)を用いて実例を収集し,分析した結果,動詞語尾-laaと-jeeの選択は,語彙・統語論レベルを超え,話し手(=書き手)が出来事の現実性に重点を置いて語るか,出来事の結果に重点を置いて語るかという意図による語用論的選択であることを,実例を示しながら主張した.
11月5日
「日本語文法学会 第9回大会報告(於:甲南大学)」
佐藤 雄亮(博士後期課程)
甲南大学にて10月18日,19日に開催された大会内容を報告した.まず初日のシンポジウム「ダイクシス」の中から田窪行則氏,日高水穂氏の発表内容を,次に二日目のパネルセッション「『聞き手の知識』再考―日本語の文末形式の機能をめぐって―」におけるワンプラディット・アパサラ・キク氏,中田一志氏,江口正氏の各発表について,その概略を紹介した.
10月29日
「第22回社会言語科学会研究大会報告」
スリ・ブディ・レスタリ(博士後期課程)
豊橋市の愛知大学で行われた22回の大会について報告した.口頭発表とポスター発表で計52の発表から1日目と2日目の口頭発表を1つずつ紹介した.なお,「フィールド言語学から日本の社会言語学研究を考えよう」と「言語政策研究の重要性について ―日本語教育の観点から―」のワークショップのうち,前者の内容についても詳しく報告した.
10月22日
「日本語の「Vしていく」形式について ― いわゆる「アスペクト」用法の再検討」
中山 健一(博士後期課程)
シナリオを含む書かれた言語資料16点より,「Vしていく」の実例を1006例収集し,分析を行った.その結果,「Vしていく」の意味を次のように分類した.1. 漸次的進行+何らかの累加性,1-1. 主体の変化の漸次的進行,および,その累加性,1-2. 主体動作・客体変化の漸次的進行,および,その累加性,1-3. 多回的な動作の漸次的進行,および,その累加性,2. 複数の手順で成立する動作過程,3. 人生における状態の維持.
10月15日
「認知言語学の最新の動向 ― 日本認知言語学会 第9回全国大会報告」
三宅 登之(外国語学部教授/中国語学)
2008年9月13日(土)・14日(日)の2日間にわたり名古屋大学で開催された,日本認知言語学会第9回全国大会について報告した.個別の研究発表の中でいくつか注目すべきものを,それらを聴いての発表者の意見とともに紹介した.また,2日目のシンポジウムにおける,生成文法の立場からの認知言語学のパラダイムに対する意見ついても紹介を行った.併せて,多くの研究発表で言及のあった文献を中心に,近年の認知言語学の動向を紹介した.
7月9日
「ティディム・チン語の疑問助詞」
大塚 行誠(日本学術振興会特別研究員/東京大学大学院 人文社会研究科 言語動態学研究室博士課程)
ティディム・チン語はミャンマーで話されるチベット・ビルマ語派チン語支の一言語である.東・東南アジアの諸言語には疑問を示す標識を文末に用いて疑問文を形成する言語が多い.ティディム・チン語は,真偽疑問であるか疑問詞疑問であるかによって異なる形式を用いるタイプに属する.ティディム・チン語は,さらに人称助詞の現れ方にも違いが現れるという点で,他のチベット・ビルマ系諸言語と異なっている.
7月2日
「スロヴェニア言語・文化シンポジウムの報告」
山本 真司(外国語学部准教授/イタリア語学)
カルニオーラの宗教改革者プリモシュ・トゥルーバルは,スロヴェニア語で最初の書籍を執筆・出版したことで知られ,スロヴェニア語文学の祖とされている.2008年は彼の生誕500周年であり,また,スロヴェニア共和国がEUの議長国を勤める年にも当たる.この両方の出来事を記念して,日本にいる日本人・スロヴェニア人のスロヴェニア文化研究者が集まってシンポジウムを行なった.
6月25日
「日本言語学会 第136回大会報告」
風間 伸次郎(外国語学部教授/ツングース諸語・言語学)
学習院大学で6月21・22日に行われた136回大会について報告した.1日目の「サハ語(ヤクート語)の二重格構文」(江畑冬生氏)の研究発表およびワークショップ 「言語の構造的多様性のなかでの品詞分類 」や,2日目のシンポジウム「形態論と隣接分野」に関して,報告者が概略を紹介した.
6月18日
「スライアモン・セイリッシュ語の品詞分類について」
渡辺 己(アジア・アフリカ言語文化研究所准教授/セイリッシュ諸語(北米インディアン))
スライアモン・セイリッシュ語では,複数や使役など,ほとんどの形態法がほとんど全ての語根に適用される.こうした状況から,この言語ならびに同語族の他の言語,および近隣の言語では,「動詞と名詞の区別がない」と言われてきた.しかし所有やアスペクトの形態法では共起する語根と共起しない語根に分かれることから,名詞と動詞の区別を認めるべきであることを論じた.
6月11日
「日本ロマンス語学会 第46回大会報告」
山本 真司(外国語学部准教授/イタリア語学)
2008年5月17日(土)〜18日(日) ,会場は 東京大学 (本郷キャンパス) ,「ロマンス諸語における言語接触統一テーマ: ロマンス諸語における言語接触」を統一テーマとして行なわれた.ポルトガル=スペイン国境地域のミランダ語,バルカン言語同盟との関連でよく引用される南イタリアにおける「不定詞の消失」の現象,イタリア北東部国境地域におけるロマンス語=スロヴェニア語の言語接触,ドイツ語との接触がしばしば問題となるスイス・ロマンシュ語のケース、ルーマニア語に対するスラヴ語の影響,などが取り上げられた.
6月4日
「日本語学会 2008年度春季大会報告」
川村 大(外国語学部准教授/日本語学)
日本大学文理学部において5月17・18日の両日行われた日本語学会2008年度春季大会について報告した.概況を報告した後,1日目のシンポジウム(3会場)から「日本語の条件表現 ―体系と多様性をめぐって―」(パネリスト:坂原茂・有田節子・小林賢次・三井はるみ,司会:前田直子)を,また2日目の口頭発表から福嶋健伸氏「中世末期日本語の〜ウ・〜ウズ(ル)の分布について」をそれぞれ取り上げて,やや詳しく報告した.そのほか,いくつかの口頭発表・デモンストレーションについて,そのあらましを紹介した.
5月21日
「CHULA-JAPAN LINGUISTICS SYMPOSIUM (MAY 1-2, 2008 Chulalongkorn University, Bangkok)の報告」
スリ・ブディ・レスタリ(博士後期課程)
2008年5月1・2にタイのバンコクにあるチュラロンコーン大学で日本とタイの言語学研究者による発表大会が開かれた.この発表では,概況の説明の他,口頭発表3件(千葉大学の田口善久氏“Reduplication in Biau-min”とタイ語の動詞連続についての発表2つ)とポスター発表1件(明海大学の内海敦子氏“The Deictic System of The Bantik Language”)をまとめて報告した.
5月14日
「チベット語アムド方言の言語調査」
海老原 志穂(清泉女子大学/チベット語)
チベット語アムド方言はチベット語の三大方言の一つで,青海省を中心に話されている.他の方言と比べると,音韻面では声調がなく,他方子音連続が多いことが特徴である.今回は調査報告として,馬やヤクなどの家畜の呼び名について報告した.雌雄,年齢,体や頭の色,ヤクでは特に角の有無や形状,などによって,さまざまな呼びワケがなされている.
4月30日
「モンゴル語ナイマン方言の文法的特徴について」
ウ・ムングンゲレル(東京電機大学研究員/本学博士学位取得者)
ナイマン方言は中国内モンゴル自治区の東南部に位置し,バーリン方言やホルチン方言の下位方言とされてきた.ここでは,人称代名詞,複数語尾などについて隣接諸方言との差異を指摘した.さらに隣接諸方言には見られない,「即時の連用表現」,「譲歩の連用表現」,「独自の後置詞的表現」,などを紹介した.
4月23日
「手話言語学に於ける間言語的研究と国際協力ワークショップ(平成20年2月9-10日,於:中央ランカシャー大学)報告」
箕浦 信勝(外国語学部准教授/言語学)
2008年2月9日,10日,英国プレストンの中央ランカシャー大学における「手話言語学における通言語的研究と国際協力」国際会議に出席.国規模で使われる手話言語ではなく,ろう者人口がなんらかの理由で多い「村」で自然発生する「村手話」や,多数派手話言語に圧迫され絶滅の危機にさらされる少数派手話言語に焦点が当てられた.
2007(平成19)年
12月12日
「チベット語の存在動詞とその助動詞化」
星 泉(アジア・アフリカ言語文化研究所准教授/チベット語)
本発表ではチベット語の文末に現れるコピュラ動詞,存在動詞やその文法化した形式に注目し,それらの動詞選択のあり方を見ながら,それぞれの意味を考察した.さらにコピュラ動詞と存在動詞のチベット語諸方言での実態を見ながら,歴史的観点からの考察を行った.
12月5日
「日本言語学会第135回大会報告」
風間 伸次郎(外国語学部言語・情報講座准教授/ツングース諸語・言語学)
信州大学で11月24・25日に行われた135回大会について報告した.1日目の「シダーマ語の格システム」(河内一博氏),「琉球語のクリティック−伊良部島方言の記述から−」(下地理則氏),「カドリ語における重複的構造」(稲垣和也氏),などの研究発表および2日目の公開講演「方言文法研究の動向と展望」(渋谷勝己氏)に関して,報告者が概略を紹介した.
11月28日
「日本語学会2007年度秋季大会報告」
川村 大(外国語学部言語・情報講座准教授/国語学)
沖縄国際大学において11月17・18日の両日行われた日本語学会2007年度秋季大会について報告した.概況を報告した後,2日目の口頭発表から安本真弓氏「中古における感情形容詞と感情動詞の対応とその要因」・川瀬卓氏「副詞『そろそろ』の史的変遷」を取り上げてやや詳しく紹介した.そのほか,ポスター発表・デモンストレーションのうちのいくつかについて,そのあらましを紹介した.
11月14日
「日本イスパニヤ学会第53回大会報告」
川上 茂信(外国語学部言語・情報講座准教授/スペイン語学)
清泉女子大学で10月27・28日に行われた53回大会について報告した.「動詞迂言句 llegar a を前件とする反事実的条件文について」(和佐敦子氏)に関して,報告者が概略を紹介した.これは動詞迂言句 llegar aがなぜ直説法現在で使用されるかについて,その談話文脈などから説明を試みたものである.
11月7日
「日本語文法学会第8回大会報告」
佐藤 雄亮(博士後期課程)
筑波大学にて10月27日,28日に開催された大会内容を報告した.初日に行われたシンポジウム「とりたて研究の可能性」の内容を報告し,二日目の研究発表から 「連体修飾節と主節の時間的関係について 」(大島資生), 「理由節における因果関係の偶然性−分裂文となりにくい「PからQ」を中心に− 」(有田可奈子), 「日本語授受表現の史的展開 」(森勇太)について,その概略を紹介した.
10月31日
「ブルシャスキー語の反響語」
吉岡 乾(博士後期課程)
ブルシャスキー語には,chil mil「水か何か」<chil「水」などといった,音形の一部に変化を加えつつ重複させる形態操作がある.これは通言語的に反響語と呼ばれるものである.本発表ではブルシャスキー語の反響語が,名詞の多数化・曖昧化や,形容詞・副詞の意味強化といった機能を果たすことを指摘した.また,反響語に多く用いられる要素が唇音であることを示し,幼児の発話を連想させる点にその動機がある可能性を述べた.
10月24日
「クマム語(西ナイル語)のリズムについて」
稗田 乃(アジア・アフリカ言語文化研究所教授/アフリカ言語学)
クマム語は西ナイル語の南ルォ下位方言に属する言語である.この言語の長母音はいかなる環境でも常に長く発音される.他方,短母音はリズムによる制約の条件下で音声的に長く発音される.音韻的な長母音は,クマム語では形態音韻的な過程を経て派生されるものである.
10月17日
「認知言語学の最新の動向 −日本認知言語学会第8回全国大会報告」
三宅 登之(外国語学部言語・情報講座准教授/中国語学)
2007年9月22日(土)〜23日(日)に成蹊大学で開催された,日本認知言語学会第8回全国大会の報告を行った.報告においては,概念構造や主観性の問題など,個別の認知言語学のトピックについての研究発表をいくつか紹介することを通じて,認知言語学の最新の動向について述べた.
10月10日
「アリュートル語の所有形」
永山 ゆかり(アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員/記述言語学,アリュートル語 (ロシア極東))
チュクチ・カムチャッカ語族の所有形については譲渡可能性の点から論じられていた.例えばチュクチ語では,譲渡可能ならば-kin,譲渡不可能ならば-inを使うとされる.アリュートル語の名詞の所有形には-in, -nin, -tγin, -kinがあるが,これらの使い分けは所有者をあらわす名詞語幹の性質(普通名詞か,人名か,場所を表わす名詞か)によって決まることを示した.
7月18日
「ウラル学会第34回研究大会報告」 ポスターPDF
坂田 晴奈(博士後期課程)
東京大学で7月7日に行われた34回大会について報告した.「北欧の二言語教育−ノルウェー・カウトケイノにおけるサーミ語教育の状況と将来−」(山川亜古), 「エストニア語疑問/関係代名詞「kes(誰)」の指示対象について 」(中田有美),「90年前のエストニア語の言語資料の電子化」(松村一登)などの発表に関して,報告者が概略を紹介した.
7月11日
「第2回日韓中国語学国際学術研討会報告」 ポスターPDF
張 盛開(博士後期課程)
6月23・24日に青山大学で行われた第2回大会について報告した.「言語特徴と通訳戦略−韓中・韓日言語間EVS分析を中心に」(金恵林)「朝鮮末文字学著作<説文解字翼徴>について」(柳東春)「崔溥<漂海録>と明初方言語彙」(梁世旭・李垠貞)などの発表に関して,報告者が概略を紹介した.
7月4日
「シベリア・ユピック語の受動」 ポスターPDF
永井 佳代(アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員/記述言語学,ユピック語(シベリア))
本発表では,次の三点を明らかにした.すなわち,(1)シベリア・ユピック語は能格型言語であるが,受動構文を持つこと,(2)受動は単文ではほとんど用いられないが,従属法動詞を用いた複文において生産的に用いられること,(3)この単文と複文における受動構文の使われ方の違いは統語的能格性と従属法動詞の性質からくる統語上の要請によること,である.
6月27日
「日本ロマンス語学会第45回大会報告」 ポスターPDF
富盛 伸夫(外国語学部言語・情報講座教授/言語学)
山本 真司(外国語学部言語・情報講座准教授/イタリア語学)
5月26・27日に長崎県立大学において開催された第45回大会は,第一日目に統一テーマとして「ロマンス諸語における色彩表現」をめぐるシンポジウム形式の研究発表とパネルディスカッション形式の総合討議が行われた.なかでも「形態論的に見たスペイン語の色彩表現」(寺崎英樹氏)と「『黒を一杯』−フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州における体験より−」(山本真司氏)を詳しく紹介した.なお開催校の荻原寛氏による「南蛮人が長崎にもたらしたもの−キリシタンの文化活動」と題する中世日本とロマンス語文化との最初の接触と土着化について興味深い特別報告があったことを付記する.
6月20日
「日本言語学会第134回大会報告」 ポスターPDF
風間 伸次郎(外国語学部言語・情報講座准教授/ツングース諸語・言語学)
麗澤大学で6月16・17日に行われた134回大会について報告した.1日目の「チン語支テディム方言における相互・受動文の接頭辞KI-」(大塚行誠氏)の研究発表およびワークショップ 「活格性とは何か?:フィールドから見えてくる言語の多様性 Part2 」や2日目のシンポジウム「大規模コーパス研究の方法」に関して,報告者が概略を紹介した.
6月13日
「On the classification of the Mongolic languages」 ポスターPDF
ユハ・ヤンフネン(ヘルシンキ大学教授/言語学)
本発表では,音対応,および隣接地域間における相互影響を考慮しつつ,モンゴル語諸方言の分類について論じた.分類においては,特に中国国内の諸方言に関して,Shirongolicという一群をたてていた.これはさらに三つの下位グループからなり,シラ・ユグル語,バオアン語,モングォル語を含むものである.
6月6日
「日本語学会2007年度春季大会報告」 ポスターPDF
川村 大(外国語学部言語・情報講座准教授/国語学)
関西大学において5月26・27日の両日行なわれた日本語学会2007年度春季大会について報告した.概況を報告した後,1日目のシンポジウム「日本語の20世紀」(パネリスト:清水康行・屋名池誠・石井正彦・秋永一枝・小林隆,司会:石井正彦)の内容について詳しく報告した.そのほか,2日目の口頭発表のうちのいくつかについて,そのあらましを紹介した.
5月30日
「日本方言研究会第84回研究発表会報告」 ポスターPDF
幡 早夏(博士後期課程)
2007年5月25日(金)に,日本方言研究会第84回研究発表会が関西大学で行われた.本発表会では,8組の発表があったが,今回は濱中誠・竹林暁氏の「言語地図の簡単で新しい作成方法−ウェブアプリケーションbunpu.jp / hougen.jp−」,日高水穂氏の「方言差を生じる言語変化の促進力と抑制力−方言差再生産のメカニズム−」を取り上げ,紹介した.
5月23日
「モンゴル語の終助詞mönの機能」 ポスターPDF
ジンガン(博士後期課程)
先行研究において,モンゴル語の終助詞mönは断定を表わす標識,またはコピュラとされたきた.しかし肯定文はほとんどが断定という意味も含意する.さらにモンゴル語にはコピュラがないとする説も考慮する必要がある.本研究では,コーパスから実例を収集し,他の終助詞yum, siü, deとの相違点もふまえた上で,終助詞mönの意味・機能を明らかにした.
5月9日
「現代日本語における『のではないか』の機能」 ポスターPDF
佐藤 雄亮(博士後期課程)
現代日本語で用いられる文末形式〈のではないか〉の機能が,「事情推測機能」と「帰結推測機能」の二種類に大きく分けられることを論じた.各機能はその働きの他,「〜からではないか」への置き換えの可否という点で異なり,さらには「事情推測機能」の〈のではないか〉を用いて述べられる内容は,既実現の事態に偏る.これらの点を実例を確認しながら示した.
5月2日
「紹介:3つの文法書 ― チャガタイ語(Bodrogligeti 2001),古代チュルク語(Erdal 2004),トルコ語(Göksel and Kerslake 2005)」 ポスターPDF
菅原 睦(外国語学部言語・情報講座准教授/言語学・中期チュルク諸語)
近年出版された以下の3つの文法書について,報告者が内容を紹介し,いくつかの文法的な問題について考察,検討を加えた.A. J. E. Bodrogligeti (2001) A Grammar of Chagatay. Lincom Europa, M. Erdal (2004) A Grammar of Old Turkic. Brill, A. Göksel and C. Kerslake (2005) A Comprehensive Grammar. Routledge.
4月25日
「漢語平江方言の3人称」 ポスターPDF
張 盛開(博士後期課程)
本発表は漢語平江方言における2つの3人称について,口語コーパスを用いて考察し,その結果を報告した.2つの3人称の使い分けは先行研究では現場にいるかどうかという条件であると言われている.しかし発表者の考察結果では,会話に参与するかどうか,あるいは話題の中心になっているかどうかという条件で使い分けることが判明した.
2月7日
「漢語方言の1人称の類型とその分布」 ポスターPDF
張 盛開(博士後期課程)
漢語方言地図における1人称の類型およびその分布を観察し,次のような傾向を指摘した.
・1人称単数の形式の頭子音の分布をみると,喉音のものが多く,母音はo系のものが多い.
・1人称複数排除形の頭子音も,喉音のものが広くみられ,2音節目はp系が多い.
・包括形がある地点とない地点の比率は5:1で,形式は歯音系が最も多く,次いで喉音系が多い.
2006(平成18)年
12月6日
「日本語学会2006年度秋季大会報告」 ポスターPDF
川村 大(外国語学部助教授/日本課程)
岡山大学において11月11・12日の両日行われた日本語学会2006年度秋季大会について報告した.概況を報告した後,2日目の口頭発表から須田真紀「上代日本語『存在文』から見た文法形式ナリ」を取り上げてやや詳しく紹介した.そのほか,講演(1日目に開催.2本)と口頭発表・ポスター発表のうちのいくつかについて,そのあらましを紹介した.
11月29日
「日本言語学会第133回大会報告」 ポスターPDF
風間 伸次郎(外国語学部助教授/日本課程)
札幌学院大学で11月18・19日に行われた132回大会について報告した.特別講演「環太平洋言語圏の輪郭−人称代名詞からの検証−」(松本克己氏)や,「日本語の動詞由来複合語におけるアクセントと連濁について」(高野京子氏),「言語類型論的観点から見たアイヌ語の充当」(ブガエワ・アンナ氏),「ハムニガン・モンゴル語とハムニガン・エヴェンキ語の所有構造に見られる言語接触の影響」(山越康裕氏)などの研究発表に関して,報告者が概略を紹介した.
11月15日
「ツングース諸語に関する最近の研究動向」 ポスターPDF
風間 伸次郎(外国語学部助教授/日本課程)
ツングース諸語の現況,日本における最近の研究成果,現地への還元などについてまず報告した。さらに,音韻,類型的特徴、文法の諸問題(可譲渡/不可譲渡所有,指定格,使役,否定構造,複文における再帰人称の機能)などについて,ナーナイ語を中心にツングース諸語の概説を行った.
11月8日
「グルジア語の条件文における節の連接」 ポスターPDF
児島 康宏(日本学術振興会特別研究員)
グルジア語の条件文のいくつかの形式について,節の連接の観点からそれぞれのあいだに違いがあることを指摘し,その理由を考察した.2つの節の命題が命題のレベルで関係づけられる場合と,そうでない場合が区別される.
11月1日
「日本語文法学会第7回大会報告」 ポスターPDF
佐藤 雄亮(博士後期課程)
日本語文法学会第7回大会は,2006年10月28日,29日の両日にわたり,神戸大学にて開催された.初日には一件のシンポジウム,二日目には二件のパネルセッションと合計十六件の研究発表があった。これらの中から,初日に開催されたシンポジウム「名詞句の文法」,および二日めのパネルセッションの一つ,「日本語史における主語表示−その変遷と背景にあるもの」について,報告者が報告した.
10月11日
「日本認知言語学会第7回全国大会報告」 ポスターPDF
三宅 登之(外国語学部助教授/中国語)
本発表では,2006年9月23日(土)〜24日(日)に京都教育大学で開催された日本認知言語学会第7回全国大会について報告した.発表では,まず日本認知言語学会の活動について概略的に説明を行った.次に今回の全国大会の2日目の研究発表の中から,モデルケースとして4つの研究発表を取り上げて詳しく紹介し,それらの研究発表で扱われたメタファーやメトニミーといったトピックの用いられ方について重点的かつ批判的に検討した.
7月19日
「日本ロマンス語学会第44回大会報告」
富盛 伸夫(外国語学部教授/人文系列)
5月13・14日に青山学院大学にて行われた同大会の,主に自由テーマにおける以下の研究発表につき,その概略を紹介した.
・ 「サルデーニャ語および西ロマンス諸語における無声閉鎖重子音の通時的変化について」(金澤雄介氏)
・ 「ポルトガル語における無強勢母音の弱化について」(牧野真也氏)
・ 「Mod. PT. porの概念と意味拡張のメカニズム」(福森雅史氏)
・ 「Wh要素のScope Positionに関する凍結事象」(石岡精三氏)
・ 「古フランス語におけるCVS語順の平叙文の名詞主語と人称代名詞主語−13世紀散文作品La Mort le roi Artuを資料体として−」(今田良信氏)
・ 「形容詞の前置・後置と名詞句の音響的特徴−スペイン語・フランス語の場合−」(木越 勉氏・中田俊介氏)
7月12日
「第33回ウラル学会研究大会報告」
坂田 晴奈(博士後期課程)
本発表では,2006年7月8日(土)に大阪外国語大学で行われた,第33回ウラル学会研究大会について報告した.言語学に関する発表,以下のものがあり,これらの内容について紹介をした.
・大西耕二(新潟大学)「ウラル語族とオーストロネシア語族の語頭子音対応法則とウラル語族の起源」
・倉橋 農(京都大学大学院)「ハンガリー語主節と分詞節の語順:特に否定辞と動詞接頭辞を含む場合」
・松村一登(東京大学)「新しいバルト・フィン語《メアンキエリ語》について」
6月21日
「日本言語学会第132回大会報告」
風間 伸次郎(外国語学部助教授/日本課程)
東京大学駒場キャンパスで6月17・18日に行われた132回大会について報告した.会長就任講演「日本語アクセントの再建」(上野善道氏)や,「タガログ語の自他交替」(長屋尚典氏),「韓国語と日本語東北方言の「回想」の表現について」(高田祥司氏),「サハ語(ヤクート語)の主格目的語/対格目的語の違い」(江畑冬生氏)などの研究発表に関して,報告者が概略を紹介した.
6月14日
「日本方言研究会第82回研究発表会報告」
幡 早夏(博士前期課程)
2006年5月12日(金)に,日本方言研究会第82回研究発表会が東京学芸大学で行われた.本発表会では,7人の発表があったが,今回は澤村美幸氏の「東西対立形成の社会的背景―「シャテー(舎弟)」を例として―」,水谷美保・齊藤美穂氏の「とりたて詞「ナンカ」の用法の拡張−奄美における標準語と方言の接触−」を取り上げ,紹介した.
6月7日
「フィンランド語の不定詞における主語標示について」
坂田 晴奈(博士後期課程)
フィンランド語の不定詞は第1不定詞から第5不定詞までの5種があり,格・人称・数を受けて活用する.不定詞の主語は,Dependent-Marking,Head-Marking,Double-Marking,No-Markingの4つの構造によって標示される.本研究は不定詞の主語標示の構造について,その傾向を明らかにすることを目的とした.文語コーパスから得た用例を分析した結果,次のような傾向が指摘できる.A)第1不定詞と第5不定詞はHead-Markingでほぼ固定されているが,それ以外の不定詞はNo-Markingの頻度が圧倒的に高い.B)第2不定詞具格形は主節の主語と一致していない場合にDependent-Markingとなり,その場合,知覚動詞や移動動詞が第2不定詞となっていることが多い.
5月31日
「1人称複数代名詞の除外と包括の対立−漢語諸方言を中心に−」
張 盛開(博士後期課程)
本発表では漢語諸方言における除外形と包括形の有無について調べた.除外形と包括形の持つものを,さらに語形別にタイプ分けし,その使い分けについて考察した.考察方法は先行研究を参照するほか,アンケート調査と実地調査を用いた.結果では,漢語の9大方言にそれぞれ除外形と包括形の対立を持つ下位方言が見つかった.さらに,諸方言における除外と包括の対立を,方言別,地域別に地図で示した.
5月24日
「日本語学会2006年度春季大会報告」
川村 大(外国語学部助教授/日本課程)
東京学芸大学において5月13・14日の両日行なわれた日本語学会2006年度春季大会について報告した.1日目のシンポジウム2本のうち,分科会B「文法研究と文法教育」(パネリスト:山室和也・砂川有里子・森山卓郎・鈴木泰,司会:仁田義雄)の内容について詳しく報告した.そのほか,2日目の口頭発表から梁井久江「〜テシマウにおける意味・機能の変化」を紹介した.
2月1日
「コリマ・ユカギールの使役動詞について」
長崎 郁(アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員/記述言語学,ユカギール語)
本発表では,コリマ・ユカギール語において他動詞からの使役動詞の被使役者項が,1)目的語なる場合と与格をとる場合があること,2)文法的な焦点化の可能性から排除されることを確認し,テキスト資料の用例から,焦点化の代替として与格が用いられる可能性のあることを指摘した.
1月25日
「品詞分類は普遍か―ヌートカ語(ワカシュ語族)からの提言」
中山 俊秀(アジア・アフリカ言語文化研究所助教授/ワカシュ諸言語(北米北西海岸),言語類型論,言語人類学)
本発表では従来の品詞分類が当てはめにくい言語としてしばしば引き合いに出されるヌートカ語での語類を精査しつつ,品詞分類を通言語的に根拠づけ,性格付けすることの難しさについて考察し,品詞研究の取るべき方向性を探った.ヌートカ語では,しばしば品詞分類の規準として用いられる屈折語尾や統語的制約の分布などによる語の差別化が難しい.しかし,統語・談話上の機能へのアクセスしやすさや意味的組み合わせ制限などに関して比べると,ヌートカ語での語は一様ではなく,異なった語類を認めるべきである,そこで本発表では,通言語的には品詞分類の文法化の度合い(どれだけ文法形式上の裏付けがあるか)に大きな差があることを指摘した.
1月18日
「ベンデ語(バントゥ,タンザニア)の場所クラスの用法」
阿部 優子(博士後期課程)
ベンデ語のいわゆる「名詞クラス」のパラダイムの一つである「場所クラス」には,限定(16クラス),非限定(17クラス),内部(18クラス)の3種類があり,それそれが場所の名詞句的に使われる.一方「〜で/に/へ/から」といった静的場所か,起点・終点などの経路か,などの情報は動詞が担うことを示した.また場所の指示詞(3種類の場所クラス×3称:近・中・遠称=9形態ある)の使い分けを紹介した.
2005(平成17)年
12月14日
「ニヴフ語サハリン方言の地域差」
丹菊 逸治(アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員/ニヴフ語・ニヴフ口承文学)
ニヴフ語内部のサハリン方言とアムール方言の差異について,いくつかの規則的な音対応や,親族名称・身体名称における語彙の違い,否定表現や未来表現における文法要素の違いなどを具体的に説明した.さらにサハリン方言の内部にもさらにその下位方言があることを具体的な例によって指摘した.
12月7日
「日本語学会2005年度秋季大会報告」
川村 大(言語・情報講座日本課程(日本語)助教授)
東北大学において11月12・13日の両日行われた日本語学会2005年度秋季大会について報告した.概況を報告した後,2日目口頭発表から林青樺「現代日本語における実現可能文の位置付け」を取り上げてやや詳しく紹介した.
11月30日
「日本言語学会第131回大会報告」
風間 伸次郎(言語・情報講座日本課程(日本語)助教授)
言語学会第131回大会は広島大学で行われた.公開シンポジウム「脳からことばの謎に迫る」やワークショップ「東アジア諸語の文法化および文法カテゴリーに関する対照研究 −ヴォイスと空間表現を中心に」,ならびに「アイヌ語の充当接頭辞(相互態 ・共同態の派生を中心に)」(Anna Bugaeva氏),「フィンランド語の動名詞の統語論的・語用論的機能」(千葉庄寿氏),などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
11月16日
「日本方言研究会第81回研究発表会報告」
酒井 幸(博士前期課程)
日本方言研究会の第81回研究発表会は2005年11月11日に東北大学(仙台市戦災復興記念館)で行われた.今回の発表会は開催地が東北と言うこともあり,「東北方言のテンス ・アスペクト形式における変容」(竹田晃子氏)をはじめ,6つの発表のうち5つは東北の方言に関する発表であった.さらにそのうち3つが青森の津軽方言に関するものであった.6つの発表について報告者が概略を紹介した.
11月9日
「ブルシャスキー語における外来語の複数接尾辞について」
吉岡 乾(博士前期課程)
ブルシャスキー語の複数接尾辞は種類が数十を数え,また,どの名詞にどの接尾辞が用いられるのか,一意に決定するルールが存在しない.本発表ではブルシャスキー語の外来語における複数接尾辞選択の法則を,現地調査で得られたデータから考察し,次のような条件を導き出した.大まかに2つの分類の組み合わせで接尾辞は決まる:1) クラスと品詞に基づいた4つのグループに付くものに分かれる,2) その異形態の現われは,語幹末音をその条件とする.更に,語幹のモーラ数と複数接尾辞の異形態の傾向を検討し,「より長い接尾辞がより頻繁にモーラ減少を伴う」という可能性を示した.
11月2日
「日本認知言語学会第6回全国大会報告」
三宅 登之(言語・情報講座東アジア課程(中国語)助教授)
本発表では,2005年9月17日(土)〜18日(日)にお茶の水女子大学で行われた日本認知言語学会第6回全国大会について報告した.発表では,メトニミーやメタファーといった研究発表で取り扱われたいくつかのトピックに基づいて,それらに関連する認知言語学の最新の動向にも言及しながら,いくつかの重要な研究発表を紹介した.
7月20日
「沖縄県宮古郡伊良部佐和田長浜方言の基礎語彙調査報告」
下地 理則(博士後期課程)
本発表の目的は,発表者が2005年5月末から6月はじめにかけて行った,伊良部方言(南琉球諸語)の基礎語彙調査の報告を行うことである.本発表では,東京外国語大学アジアアフリカ研究所が作成した基礎語彙調査票にもとづく語彙500語の音声表記を示すとともに,それにもとづく基礎的な音韻解釈の試論も示す.
7月6日
「日本方言研究会第80回研究発表会報告
幡 早夏(博士前期課程)
2005年5月27日,日本方言研究会第80回研究発表会が甲南大学で行われた.80回記念の企画として,「知られざる地域差を探る」というテーマでシンポジウムも開かれた.そこで,口頭発表からは「島原方言における二字漢語の音調について」(松浦年雄氏)を,シンポジウムからは「敬語表現選択行動の地域差」(尾崎喜光氏),「談話の地域差」(沖裕子氏)の概略を報告者が紹介した.
6月29日
「フィンランド語の非定型動詞における主語標示について」
坂田 晴奈(博士前期課程)
フィンランド語の非定形動詞の主語標示には,Dependent-Marking、Head-Marking、Double-Markingの3つの構造が考えられる.本発表ではコーパスから例を取り,時相構文と分詞構文の従属節中の非定形動詞における主語標示の構造について調査した.その結果,いずれの構文においても主節の動詞が受動態である場合は従属節の行為者が原則通りに現れない例が多いことがわかった.
6月22日
「現代日本語における『のではないか』の下位分類」
佐藤 雄亮(博士前期課程)
現代日本語において用いられる文末形式〈のではないか〉の機能には,〈のだ〉との関わりがあるものと関わりがないものがあると先行研究で指摘されてきた.発表者が収集した用例を分析した結果,「事情推測」「スコープの〈のではないか〉」の各機能を果たす〈のではないか〉は〈のだ〉の機能を保っていると考えられるが,「帰結推測」機能をはたす〈のではないか〉は,用例の一部にしか〈のだ〉の機能が認められなかったことが指摘できた.
6月15日
「日本言語学会2005年春季大会(第130回大会)報告」
風間 伸次郎(言語・情報講座日本課程(日本語)助教授)
言語学会第130回大会は国際基督教大学で行われた.ワークショップ「抱合と複統合性 −フィールドからみえてくる言語の多様性」や,「現代モンゴル語 “副動詞+bayi-”形のアスペクト」(松岡雄太氏),「チノ語の疑問助詞について」(林範彦氏),「ツツバ語の舌唇音」(内藤真帆氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
6月8日
「日本語学会2005年度春季大会報告」
川村 大(言語・情報講座日本課程(日本語)助教授)
甲南大学において5月28・29日の両日行われた日本語学会2005年度春季大会について報告した.特に,今回の新機軸である1日目のシンポジウム3本のうち,分科会B「モダリティをどう考えるか」(パネリスト:大鹿薫久・工藤浩・益岡隆志,司会:仁田義雄)の内容について詳しく報告した.そのほか,2日目の口頭発表からハイコ・ナロック「現代日本語のモダリティの階層性」,近藤泰弘「平安時代の副詞節の節連鎖構造について」を紹介した.
6月1日
「パラオ語における完了動詞と非完了動詞の対立 −他動性の観点から−」
下地 理則(博士後期課程)
本発表の目的は,パラオ語(オーストロネシア語族西部マラヨポリネシア語群)の【完了動詞】(Perfective verbs)と【非完了動詞】(Imperfective verbs)という,同一語根から派生されうる動詞形式のペアについて,それらが他動性(transitivity)の対立にもとづいた動詞形式のペアであるという記述を提案することである.
5月25日
「類型から見たモンゴル語の連体節」
向井 晋一(博士後期課程)
本発表では,ほとんど記述されていなかったモンゴル語の連体節について,新たに記述された言語事実を紹介するとともに,通言語的な類型の視点から見た場合にどのような扱いができるか,また,類型論に対してモンゴル語の立場からどのような発言ができるかを述べた.
5月11日
「語頭の有声破裂音におけるVOTの地域差と世代差 −東北〜関東について」
高田 三枝子(博士後期課程)
日本語の有声破裂音は,語頭においてはVoice Onset Time(VOT)値のばらつきが大きく,マイナス(−)の値をとらないこともしばしばある.本研究では日本語の語頭における有声破裂音に注目し,そのVOTを分析した.その結果,栃木・茨城を中間地帯として間に挟み,東北と関東で大きな違いがあることを示した.またここに見られた地域的境界が従来音韻現象に関して示されてきた東北的音声 ・音韻の境界と一致し,すなわち語頭の有声破裂音における音声現象が語中の破裂音の音声現象となんらかの関係を持つ可能性を指摘した.
2月9日
「第79回日本方言研究会研究発表会の報告」
酒井 幸(博士前期課程)
日本方言研究会の第79回研究発表会は2004年11月12日に熊本大学(熊本市民会館)で行われた.発表は全部で8つで,「京都人にとっての大阪方言,大阪人にとっての京都方言 −近隣方言の相互認知研究の一例として−」(出野晃子氏・岡田祥平氏・郡史郎氏)をはじめ,全体的に社会言語学的な発表が多かった.「福島市方言における無声子音の有声化」(幡早夏氏)や「WWWによる方言語形の全国分布調査」(荻野綱男氏)など8つの発表について報告者が概略を紹介した.
2004(平成16)年
12月15日
「日本手話学会第30回大会及び手話言語研究における理論的諸問題研究会第8回大会(TISLR@バルセロナ)報告 −アスペクト・FSPを中心に−」
箕浦 信勝(言語・情報講座)
日本手話学会からは,市田泰弘の超文節音の文法化に関する発表,箕浦信勝のwh疑問文の類型論に関する発表,佐伯敦也の語彙的アスペクチュアリティーに関する発表を取り上げた.TISLRからは,Gladys Tangの香港手話のアスペクトに関する発表と,Els van der Kooij他の「焦点」のプロソディーに関する発表と,Adam Schembriの類別詞に関する発表を取り上げた.
12月8日
「日本語学会2004年度秋季大会報告」
川村 大(言語・情報講座)
日本語学会の秋季大会は熊本大学で行われた.「日本語史と方言」(迫野虔徳氏)の講演,「連体修飾の分類について」(丹羽哲也氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
12月1日
「日本言語学会第129回大会報告」
風間 伸次郎(言語・情報講座)
言語学会第129回大会は富山大学で行われた.「アイヌ語十勝方言の継続相を表す形式koranについて」(高橋靖似氏),「アリュートル語の所有・存在を表す2つの形式について」(永山ゆかり氏),「クスコ・ケチュア語における抱合的な構造」(蛯名大助氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
11月17日
「2つの受身 −日本語固有の受身と非固有の受身−」
志波 彩子(博士後期課程)
通言語的に受身文と呼ばれる構文に2種類の主要なタイプがあることを提案し,その意味・能及び構文的特徴の違いを述べ,それぞれが日本語の固有の受身と非固有の受身にほぼ対応することを主張した.
<被動者主役化>タイプ:有情主語で動作主あり受身:固有の受身の中心的タイプ
<脱他動化>タイプ:非情主語で動作主なし受身:非固有の受身
10月20日
「アムド・チベット語共和方言の音韻論 −農区方言と牧区方言の比較研究−」
海老原 志穂(博士前期課程)
中国西北部で話されているチベット語(アムド語)には、農民の話す農区方言と牧民の話す牧区方言という2つの社会方言がある.本発表では,アムド語のうちの1つの地域方言である共和語について,農区方言と牧区方言の音韻比較を行った.その結果,牧区方言がより古い体系を維持していることを述べた.
10月13日
「日本認知言語学会設立5周年記念全国大会報告」
三宅 登之(言語・情報講座)
日本認知言語学会設立5周年記念全国大会は関西大学で行われた.研究会で取り扱われた次のようなトピック,すなわち(1) Subject Construal(主観的事態把握),(2) フレーム意味論,(3) 参照点(reference point),(4) 因果連鎖(causal chain),について報告者がその概略を紹介した.
7月14日
「第31回ウラル学会研究大会報告」
坂田 晴奈(博士前期課程)
本発表は,2004年7月3日(土)に東京大学で行われた第31回ウラル学会研究大会の報告である.このウラル学会では様々な分野からの発表があったが,本報告では言語学に関連した発表のみ取り上げた.今回扱った発表は,「ハンガリー語の所有接辞を含む後置詞について」,「ハンガリー語の動詞修飾要素とは」,「東ハンティ語スルグート方言の位置格の用法について」などである.
7月7日
「日本方言研究会第78回研究発表会報告」
幡 早夏(博士前期課程)
2004年5月21日に実践女子大学で日本方言研究会第78回研究発表会が行われた.本発表は,この研究会の報告を行ったものである.今回は8名の発表のうち,4名の発表を取り上げて報告した.4名の発表はそれぞれ「ハワイ日系人の日本語 −可能表現を中心に−」「鳥取方言の「終止形+ダ・デス」の用法について」「岩手県地域言語における『イズレ』の使用実態と言語意識」「アクセントの型,音調の型」である.
6月30日
「パラオ語の主題化について:いわゆる『仮想形』の出現の有無を中心に」
下地 理則(博士前期課程)
本発表は,パラオ語の主題化構文について,主語の主題化と非主語の主題化の場合の相違点に着目して考察を行った。主語の主題化構文と非主語の主題化の相違点は,後者の場合に,主語の人称一致接辞(「仮想形」)が動詞に前接するという点である。本発表では,「仮想形」が従属節のみに現れる事を指摘した上で,それが主語の主題化構文で現れないのは,この構文が複文構造から単文構造に移行しているからであるという主張を行った。
6月23日
「日本言語学会2004年春季大会(第128回大会)報告」
風間 伸次郎(言語・情報講座)
言語学会第128回大会は東京学芸大学で行われた.公開シンポジウム「辞書と言語学」や,「サハ語(ヤクート語)の共格」(江畑冬生氏),「カザフ語指示詞の機能と体系」(西岡いずみ氏),「セディック語の不定詞の省略された主語」(月田尚美氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
6月16日
「近世・明治期資料における『ではないか』文」
佐藤 雄亮(博士前期課程)
本発表は,近世・明治期の資料における「ではないか」文の内,特に用言と共に「のではないか」という形で用いられる「第2類の『ではないか』文」の使用実態を調査したものである.対象とした資料において,「第2類の『ではないか』文」が現在もしくは過去の事態を表す「既実現の事態」と共に用いられる例に比べ,未来を表す「未実現の事態」と共に用いられた例がごく少ないことを示し,「のだ」文と同様,事態が「規定性」を持つ場合でなければ「第2類の『ではないか』文」が用いられにくかったためであると主張した.
6月9日
「マレーシア語の主語に関する一考察」
鵜沢 洋志(博士後期課程)
マレーシア語の主語について,動詞の主体との関係から,また情報構造における主題との関係から,整理し直して,定義し直すことを試みた.詳細は『言語・地域文化研究』第10号掲載の同名の論文を参照されたい.
6月2日
「日本語学会2004年度春季大会報告」
川村 大(言語・情報講座)
日本語学会春季大会は実践女子大学で行われた.国際シンポジウム『世界の日本語研究の新たな発展を求めて』について報告者が概略を紹介した.シンポジウムでは「日仏対照言語学の諸問題について」(丹波イレーヌ氏),「韓国における日本語研究」(安平鎬氏)などの講演があった.
5月26日
「パラオ語の動詞接辞meN-の機能」
下地 理則(博士前期課程)
本発表は,パラオ語のいわゆる非完了動詞を形成する動詞接辞meN-について,その統語的な機能の考察を行ったものである.非完了動詞はこれまで,その多くが意味上の目的語を取るという事実をもとにして,他動詞と記述されてきたが,本発表では,意味上の目的語は統語的には目的語ではなく,非完了動詞は自動詞であることを指摘した.したがって本発表では,meN-が自動詞形成の接辞であることを主張した.
5月19日
「日本ロマンス語学会第42回大会報告」
富盛 伸夫(言語・情報講座)
「フリウリ語の強勢音節における長母音化」(山本真司氏),「スペイン語における語彙強勢とアクセントの不一致」(木村琢也氏),「韻律特徴によるフランス語文のあいまい性解消について」(中田俊介氏),「ロマンス言語学の論点 −ある調査報告より[2]−」(菅田茂昭氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
4月28日
「東京外国語大学留学生日本語教育センター開放講座『日本語教師のための初級教授法のヒント(全4回)』の報告」
菊池 富美子(博士前期課程)
上記講座の内容について報告者が概略を紹介した.第1回「絵が苦手な方でも大丈夫 〜線画による文型導入〜」(小林幸江氏),第2回「連想法による目からウロコの漢字学習」(酒井順子氏),第3回「大蔵式楽しい日本語学習法」(大蔵守久氏),第4回「ここから始まる初級文法」(姫野昌子氏).
2月4日
「ハワイ日系人の日本語 −可能表現を中心に−」
酒井 幸(博士前期課程)
ハワイで話されている日本語の可能表現について,文字化したデータをもとに次のような特徴を指摘した.すなわち(1)可能動詞を用いるより助動詞レルを用いるほうが多いこと,(2)可能形の他動詞の対象がとる格はゼロ形式が一番多く,「ヲ」をとっているものはないこと,(3)動詞にデキルを伴って可能を表現するのではなく,デキルのみで可能を表している例が観察されること,の3点である.
1月28日
「日本イスパニヤ学会第49回大会報告」
宮下 和大(博士前期課程)
「平叙文におけるes queの意味機能」(和佐敦子氏),「現代スペイン語における関係形容詞cuyoとその代替表現について」(西村君代氏),「HLH*トーンアクセントの境界画定機能」(木村琢也氏),「スペイン語創出文法における三つの話法と指定要素」(原誠氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
1月21日
「第1回チベット・ビルマ言語研究会(於 京都)報告」
海老原 志穂(博士前期課程)
「第36回シナ=チベット言語学会議にみえる最近のチベット=ビルマ語研究動向」(林範彦氏),「ダバ語(川西走廊諸語)における2種類の未完了動詞について」(白井聡子氏),「ミャゼディ碑文における古ビルマ語再考」(藪司郎氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した。
2003(平成15)年
12月17日
「日本手話学会第29回大会報告,及び国際ろう歴史学会第5回大会(於 パリ)報告」
箕浦 信勝(本学教官)
日本手話学会第29回大会における,ろうの親をもつ聞こえる子供に関する「聞こえない親の思い・聞こえる子の思い」(Paul Preston氏)などについて,またパリで開かれた国際ろう歴史学会第5回大会に関して,指文字の歴史が一般に知られている中世スペインの修道院に始まるのではなく,イエメンの‘aqd al-anaamilと呼ばれた指文字がそれに先んじ,スペインはその影響を受けたという,イランのろう者,Rouzbeh Ghahreman氏による発表と,オスマン・トルコの宮廷内には,皇帝が音声言語の使用を厭う空間があり,当時の領土内のハンガリーからろうの双子の兄弟を招聘し手話の教師とし,Ixaretteと呼ばれる手話を用いていたという,米国のろう者Patricia Raswant氏による発表を主として報告した.
12月10日
「国語学会2003年度秋季大会報告」
川村 大(本学教官)
「上代における『−ソ−連体形文 −事実性と証拠性−』」(勝又隆氏),「サニ構文の歴史的展開 −成立と意味構造の拡張−」(竹内史郎氏),「『まだ〜ない』と『まだ〜ていない』について −動詞の意味構造の観点から−」(山川太氏),「モヨウ文の機能」(佐藤琢三氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
12月3日
「日本言語学会第127回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
「現代グルジア語の補文標識tu」(児島康宏氏),「逆説の音韻論と句構造」(時崎久夫氏),「岩手県遠野方言の非動的述語・否定の時間表現」(高田祥司氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
7月9日
「日本フランス語学会シンポジウムの報告「語りのストラテジー」」
富盛 伸夫(本学教官)
長山 博之(博士前期課程)
日本フランス語学会シンポジウム「語りのストラテジー」において,「語り手のポジション」(赤羽研三氏),「語りのトリック:人称と時制」(西村牧夫氏),「物語における重層的話法 −研究の端緒として」(青柳悦子氏)の諸発表があり,これらについて報告者二人が概略を紹介した.
7月2日
「西夏語と西夏文字」
荒川 慎太郎(AA研/西夏語学,西夏語文献学)
まずチベット・ビルマ語としての西夏語について,接頭辞や人称接尾辞からなる複雑な動詞構造や,歴史・仏教研究において重要な位置を占める西夏語の性格について紹介した.次に西夏文字について,造字に見られる西夏人の思考・文化,「音」を表す要素による派生,などの問題について触れた.
6月25日
「日本言語学会第126回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
「キルギス語の受動文に見られる複数の動作主マーカーについて」(大崎紀子氏),「現代モンゴル語の「二重直接目的語」構文」(梅谷博之氏),「韓国語済州島方言における形容詞のアスペクトの対立について」(金光珠氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
6月11日
「2003年日本独文学会春季研究発表会報告」
成田 節(本学教官)
「品詞間の互換性について −名詞派生の形容詞と名詞の2格の場合」(吉村淳一氏),「接頭辞be-の機能について」(野上さなみ氏),「動詞接頭辞の意味機能に関する一考察 −接頭辞erの場合−」(阿部一哉氏),「コーパス分析と規範文法 −folgenにおける完了助動詞の使い分けを例に」(吉羽里恵氏),「完了の助動詞からみた状態変化構文の認知文法的考察」(坂本真樹氏),「状態受動に関する一考察」(鈴村直樹氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
6月4日
「日本ロマンス語学会第41回大会報告」
富盛 伸夫(本学教官)
「指示形容詞の日本語・イタリア語比較対照研究 −「この」・「その」・「あの」と「questo」・「quello」」(古浦敏生氏),「ロマンス語のコソアド」(下宮忠雄氏),「ロマンス言語学の論点 −ある調査報告より−」(菅田茂昭氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
5月28日
「国語学会2003年度春季大会報告」
川村 大(本学教官)
シンポジウム「日本語史研究の将来 −理論と実証の接点−」(金水敏氏・渋谷勝己氏・前田広幸氏・高山善行氏・安部清哉氏・高山倫明氏),「所有物主語の受身文における視点違反の判断と出現様相について」(裴銀貞氏),「存否の題目語について」(丹羽哲也氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
2002(平成14)年
12月4日
「テクスト解析の分析と綜合」
五十嵐 孔一(本学教官)
テクスト解析における分析と綜合を議論し,その実際として山田文法と松下文法について,[[山田文法―テクスト―松下文法]―解説者]という図式に基づいて文法論と形態論に関する相違点を検討した.
11月27日
「著書紹介 Ch. Schroeder,The Turkish Nominal Phrase in Spoken Discourse (Wiesbaden 1999)」
菅原 睦(本学教官)
トルコ語の‘unplanned spoken discourse’を対象にした研究書の紹介.
いくつかの現象に対して「談話的」な観点から新しい分析が試みられていることを指摘した.また話し言葉においては,基本語順とされている「SOV語順」ではなく,情報構造に依存した語順がしばしば用いられるという著者の主張に注意を促した.
11月13日
「国語学会平成14年度秋季大会報告」
川村 大(本学教官)
「日本語の多様性へのまなざし―空間表現・時間表現・待遇性」(工藤真由美氏公演)及び,「逆転接続詞の転換用法について」(伊藤享介氏),「仙台市方言における格助詞相当形式「ドゴ」の用法」(玉懸元氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
11月6日
「日本言語学会第125回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
「韓国語済州島方言の形容詞のアスペクト現象について」(金光珠氏),「補助動詞文「〜てくる・いく」,「〜a/e oda・gada」,「〜来・去」の日朝中対照」(白海燕氏),「韓国語と日本語の指示詞ku系とソ系の現場指示における中距離指示用法について」(金善美氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
10月30日
「日本イスパニヤ学会第48回大会報告」
松井 健吾(博士前期課程)
単純過去と現在完了の文法的意味の守備範囲が,半島スペイン語とメキシコスペイン語で異なってきているとの発表の報告を行った.
10月23日
「AA研言語学セミナー特別企画『諸言語での品詞分類』 ワークショップ(10/18)中間報告」
箕浦 信勝(本学教官)
古典文法以来の,品詞分類を再吟味し,もっと少数の語類を立てることの可能であることや,名詞と動詞の区別が典型的印欧語ほどには明確でない諸言語があることを理解することが必要だとの議論を報告した.
10月16日
「宮岡伯人著『語とはなにか』を読む」
峰岸 真琴(AA研教官)
同書の第2章「「分節」vs.「結節」」,第3章・第4章「外からみた日本語:エスキモー語との対照(その1・2)」を主にとりあげ,スロット型と非スロット型,接尾辞と後倚辞,用言複合体,などの概念を考察,検討した.
7月24日
「日本手話学会第28回大会報告 −同定・存在・所有について,および名詞類別述語について−」
箕浦 信勝(本学教官)
同定文「AはBだ」,存在文「Aが(どこどこに)存在する」,所有文「AがBを持っている」などが,それぞれの言語において連なっているものであり,小さいが多次元的な類型論をなすという議論と,手話諸言語における名詞類別(CL)述語にかんする発表の報告を行った.
7月17日
「日本ロマンス語学会第40回大会報告」
山本 真司(本学教官)
ロマンス諸語の否定に関して,否定語(NON),否定補助詞,否定の意味を持つ数量詞や副詞,重否定,否定の代文(profrase)などの諸現象をまとめて報告した.
7月10日
「AA研シンポジウム:峰岸真琴氏報告『誰のための言語科学か −普遍文法という幻想』をめぐって」
富盛 伸夫(本学教官)
チョムスキーの普遍文法が,結局は英語や他の近代ヨーロッパ諸言語のローカルな特性の集大成であり,統語論よりも語の意味が文構造の解明にとって重要なアジアの諸言語や,能格・絶対格言語など,「普遍文法」がうまく当てはまらない諸言語が多くあり,「普遍文法」とは幻想であるという議論の報告を行った.
7月3日
「日本言語学会第124回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
「ベトナム語における動詞のヴォイス範疇の存否について」(Le Hoang氏),「台湾語の「動詞―補語構造」に現れるtiohの意味」(多田恵氏),「サハ語(ヤクート語)のPaired Words」(江畑冬生氏)などの発表があったが,これらについて報告者が概略を紹介した.
6月19日
「日本フランス語フランス文学会春季大会報告 −シンポジウム:フランス語とジェンダーをめぐって−」
富盛 伸夫(本学教官)
職業名などの性差を無くそうとする昨今の英語圏での動きとは異なり,名詞の文法性を必ず明示しなければならないフランス語では,もともと男性形しかない職業名などに,女性でも男性形で対応し続けるべきだとする守旧的意見と,新たな女性形を作っていくべきだとする進歩的意見との対立が見られ,混乱が見られるとの議論の報告を行った.
6月12日
「アラビア語方言の動詞語幹母音比較 −古典・エジプト方言・シリア方言・マルタ語−」
長渡 陽一(博士後期課程)
古典アラビア語,エジプト方言,シリア方言,マルタ語の動詞語幹母音を比較することから,エジプトとシリアにおいて,自動詞であるか他動詞であるかによって,動詞語幹母音の再整理が起ったという観察を報告し,諸方言の祖語として,古典アラビア語そのものではなく方言祖語をたてる必要もあるのではないかとの問題提起を行った.
2001(平成13)年
7月11日
「日本言語学会第122回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
一橋大学で開催された,日本言語学会第122回大会に関する報告.
報告者が聞いた発表の中から,特に「イテリメン語の使役について」,「琉球方言動詞の「終止形」をめぐる問題点」の2つについて内容の紹介を行った.
6月13日
「国語学会平成13年度春季大会報告 −井上優氏発表の紹介を中心に−」
川村 大(本学教官)
神戸松蔭女子学院大学で開催された,国語学会平成13年度春季大会に関する報告.
発表会全体の内容紹介に続き,特に「いわゆるパーフェクトの「シタ」について」と題する発表について詳しい検討を行った.
2000(平成12)年
7月19日
「モンゴル語の「受身」について」
斉藤 光介(博士前期課程)
接尾辞-uul-によって表される受身には主体に利益もしくは被害が及ぶが,他方-gd-にはこれがなく,その点での使い分けがあることを主張した.また-gd-による受身について,これを,動作主の対象への「働きかけ」や動作に対する「意図性」が中和される形式と考え,事態の偶発性を強調したり,事態をより客観的に叙述する形式であると考えた.
7月12日
「問題提起:いわゆる格標識「が」が標示するものを問い直す」
吉田 一彦(博士後期課程)
「が」に関して,先行研究の記述の方法論的な問題点を指摘し,さらに先行研究が見過ごしてきた「が」に関した言語現象を指摘した.
7月5日
「現代サハ語の分格について」
江畑 冬生(東京大学大学院修士課程)
常に命令法とともに用いられるとされてきたサハ語の分格について,要求や必要を示す文でもこれが用いられることを指摘し,分格自体にこうしたモダリティが存在するという仮説を提出した.また先行研究で指摘されている「全体/部分」,「定/不定」が分格とどのように関わっているかを考察し,前者については分格の使用範囲に関与しているのか疑問であることを指摘した.
6月28日
「日本方言研究会第70回研究発表会・国語学会平成12年度春季大会報告」
川村 大(本学教官)
方言研究会からは,日高水穂氏発表「文法化の過程と地理的分布 −対象格助詞コト・トコ類の分布と変遷−」,国語学会からは福嶋健伸「中世末期日本語の基本形について −終止形で現在の状態を表している場合を中心に−」について,報告者が概略を紹介した.
6月21日
「日本言語学会第120回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
現代キルギス語の使役文,上ソルブ語の双数形,グルジア語の所有動詞の助動詞的用法,現代スウェーデン語の再帰代名詞などに関する発表があったが,これらについて,報告者が概略を紹介した.
2月2日
「新刊紹介 J. Kornfilt, Turkish (Descriptive Grammars) 1997, London.」
菅原 睦(本学教官)
ネイティヴにより,新しい枠組みによって書かれたトルコ語記述文法を紹介した.B. Comrieらによって提示された類型論的な枠組みではあるが,これがために本書は統語論から始まり,同じ要素が違う箇所に何度も出てくるなどある面で読みにくく,また記述の取り扱いにアンバランスな面がある.今後の記述文法のあり方について考える上での一つの参考となるであろう.指摘されている事実の中には,動詞の接続においての異主語に対する制限が,埋めこみ文の中では解除されることや,一部の動詞の引用節等の中では,所有者上昇が起こり,対格となることなど,ネイティブならではの興味深い指摘もみられることが報告された.
1月26日
「モンゴル語の名詞と形容詞について −両品詞の分類に関しての再確認のために」
山越 康裕(本学大学院)
形態的な面からは両者の間に明確な線を引くことが難しいモンゴル語の名詞と形容詞について,統語的な面から両者の異同を考察した.まず名詞は他の名詞への限定や,形容詞的な叙述を担う点で機能的にも形容詞と区別し難い.しかし名詞は,強意の副詞の前置や,強意のreduplicationを行うことができない,他方形容詞は単独では主語になることができない,などの統語的な違いがある.これらの問題について,さらにFSP(旧情報と新情報)の観点などからもさらに考察を加えた.
1999(平成11)年
12月15日
「ツングース諸語における「使役」を示す形式について」
風間 伸次郎(本学教官)
自身が言語学会第119回大会にて行った発表を報告した.内容の概略はおよそ以下のようである.
ツングース諸語のウイルタ語の接尾辞-boon-は使役も受身も意味しうる,とされてきた.しかしさらにどちらとも言えない例が見出される.各々「非意図的で再帰的な用法(1)」及び「主語不転換の用法(2)」とみる.ナーナイ語でも同様の例がある((3),(4)).
(1) ŋaalabi kitaanj˘i goči lukp-auč-čini. (私の手に 針が また 刺さった)
(2) j˘eewi pəlim-bөө-či-mi ərkəu lleeni. (相棒が 急いでいるのに 彼はゆっくりする)
(3) moowa tami nasalčiji toiko-waaŋ-kimbi, (薪を 扱っていて 目へ 当たったのよ,)
(4) pondaj˘ooji tui um-buwəən-dəə xamasi mocogoraa pərgəxəňi. (末の妹に そう 言われて 後ろへ 戻って 試してみた)
ゆえに問題の接辞は,ある事態と主語でとりあげた名詞とを単に結びつける機能しか持たず,使役や受身などの意味は文脈や名詞と動詞の諸関係で決定されると考える.
12月8日
「日本言語学会第119回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
バンティック語(インドネシア・スラウェシ)の動詞のアスペクト特性によるテンスの差異,ネワール語(ネパール)のテンスと否定との関係,アラビア語エジプト方言にみられる譲渡可能性,などに関する発表があったが,これらについて,報告者が概略を紹介した.
7月14日
「日本言語学会第118回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
チベット語の可能表現の分類,スンバワ語(インドネシア)の関係節の形成条件,アラビア語チュニス方言の否定極性語などに関する発表があったが,これらについて,報告者が概略を紹介した.
2月17日
「モンゴル語の使役」
梅谷 博之(東京大学大学院)
モンゴル語の使役接尾辞-uulが一つ使われる使役文に対して,二つ使われる使役文があることを指摘し,その意味の違いについて分析した考察を解説した.
2月10日
「モンゴル語の動詞bay-の「助動詞」及び「コピュラ」としての再検討」
吉原 麻由(学部)
モンゴル語の動詞bay-のコピュラとしての機能を確定することにより,形動詞述語文を名詞・形容詞述語文と統一的に扱えることを提案した.
1998(平成10)年
11月11日
「国際アルタイ学会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
自身のアルタイ諸言語における所有/存在を示す一形式に関する発表と,モンゴル語の二重母音や,アルタイ諸言語及び朝鮮語での前舌高母音化などの発表を報告した.
11月4日
「日本言語学会第117回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
喜界島方言の条件文・順接文・逆接文,博多方言におけるバイ・タイ・クサ,フィンランド語の派生動詞による使役構文などについての発表を紹介した.
10月21日
「モンゴル語名詞末の-nについて」
山越 康裕(大学院)
モンゴル語において歴史的に不安定になってきたものとみなされてきた一部の名詞の語末の-nについて,統語構造を示す機能を獲得し,それが広がっていることを検証した.
10月14日
「日本手話学会第24回大会報告」
箕浦 信勝(本学教官)
自身の日本手話品詞論試論,及び日本手話実詞の順向・反転についての解説があり,他にも手話詩や手話のコードスイッチングなどについての発表が紹介された.
7月8日
「ユカギール語における名詞句と複合動詞 −構成要素間への子音/n, d/の挿入に見られる特徴−」
長崎 郁(千葉大学大学院)
まずシベリアにおける少数民族言語の一つであるユカギール語の概説を行った後,定不定や固定的な統語構造と関連する子音/n, d/の挿入による複合名詞の形成が解説された.
7月1日
「チュクチ語の主な特徴」
呉人 徳司(AA研)
シベリア北東端に位置するチュクチ語について,非総称的母音調和,接周辞,重複法による単数形,抱合,能格性など,その興味深い特徴を概説した.
6月24日
「日本言語学会第116回大会報告」
風間 伸次郎(本学教官)
アバール語の相互代名詞,バスク語の助動詞のとる動詞,水海道方言の経験者格の主語特性,などに関する発表があったことを紹介した.
6月17日
「マリ語概説」
田中 孝史(大学院)
テープの音声やスライドをまじえ,ロシアにおけるウラル諸語の一つであるマリ語を概説した.マリ語の言語状況とともに,格や過去形が複雑なマリ語の特徴にも触れた.
6月10日
「グルジア語の与位格構文について」
児島 康弘(東京大学大学院)
グルジア語の感情格構文(この場合与格による)において,目的語を主格でなく属格で示す動詞が9つあるが,これは目的語の有生性及びspecificityで説明できることを示した.
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