TUFS Cinemaについて

2016年10月開催シリア難民映画上映会におけるトーク

・・・世界諸地域の社会・歴史・文化などの理解を深める / Deepening Understanding of Foreign Society, History, and Culture

東京外国語大学では、世界の諸言語による映画等の上映会・トークセッションを行う「TUFS Cinema」を不定期に開催しています。

上映会・トークセッションを通して、世界諸地域の社会・歴史・文化などの理解を深めることが「TUFS Cinema」プロジェクトの目的です。中には、字幕翻訳から本学で手がける作品もあり、そのような作品は字幕付きでは日本で初公開となります。その他にも、過去に上映されたことはあっても、なかなか観る機会の少ない作品も上映しています。

Here at TUFS, film screenings and talk sessions on films from all over the world are held every so often through the ‘TUFS Cinema’ Project.

The goal of the TUFS Cinema Project is to deepen understandings of society, history, and culture of other countries through film screenings and talk sessions. Many of the films are translated at TUFS, and their screenings are the first with Japanese subtitles to be shown in Japan. Aside from this, there are also screenings of older films which are usually hard to find in Japan.

2017年4月開催チベット映画特集におけるトークセッションの様子

・・・専門家などによるトークセッション、作品の背景も知る / Sessions from Industry Professionals, Learn the Background of the Film

TUFS Cinemaでは、映画上映に加え、本学教員や専門家などによるトークセッションも行っています。映像だけでは捉えきることのできなかった当該地域の歴史・文化・社会・宗教などの背景についても理解を深めることができるのが、本企画の魅力です。

世界には多様な言語・文化・民族・宗教・社会があり、さまざまな「暮らし」があります。そして、多くの社会問題も存在します。それらを共有し、理解を深め、ともに考えていく機会になればと思います。

The TUFS Cinema Project not only screens films, but also holds talk sessions run by TUFS professors and industry professionals. Through these sessions, the audience can further understand aspects of a country’s history, culture, society, and religion that could not be grasped from the film alone, which is a rare and precious opportunity indeed.

There are a great number of diverse languages, cultures, religions, societies, and people in the world, thus there are many different life circumstances. On top of that, many social issues exist throughout these societies. We hope that these talk sessions become a chance to share and understand these issues and circumstances.

対談企画:TUFS Cinemaで世界の文化・社会の理解を深める

左:真島 一郎 教授 (文化人類学、西アフリカ民族誌)、右:萬宮 健策 准教授(言語学、ウルドゥー語学)

TUFS Cinemaの魅力とは?東京外大で企画することの意義とは?これまでTUFS Cinemaで上映会を企画したことのある2人の教員に伺いました。

真島 一郎 教授(大学院総合国際学研究院)

文化人類学(西アフリカ)を専門とし、TUFS Cinemaでは、アフリカ映画特集:ふたつのアフリカンドリーム(2017年)などを担当。今年度は、4月1日のアフリカ映画特集『アフリカ・ユナイテッド』、10月12日のアフリカ映画特集『私は、幸福(フェリシテ)』を担当。

萬宮 健策 准教授(大学院総合国際学研究院)
ウルドゥー語の言語学を専門とし、TUFS Cinemaでは、毎年南アジア映画特集を担当。今年度は、6月9日の南アジア映画特集『あるがままに』を担当。今回で8作目となる。

○TUFS Cinemaのはじまり

真島教授(以下、真島) 萬宮先生は、TUFS Cinemaという名前になる前から、映画を東京外国語大学(以下、東京外大)で上映されていたのですよね。何かきっかけがあったのですか。

萬宮准教授(以下、萬宮) 異文化理解にうってつけの映画はたくさんあるものの、それらは商業的に公開されず、日本で観ることはなかなか難しいことが多いです。国立民族学博物館(以下、みんぱく)では以前より、世界の映画を公開することがありました。その話が東京外大にも来ました。巡り巡って自分が担当することになり、2014年に4本をほぼ4週連続のような形で上映しました。

真島 最初はどのような感じでしたか。

萬宮 当初は主に南アジアを専攻する学生に向けて、手探りで上映会の準備を進めていきました。蓋を開けてみると、学生だけではなく地域の方など一般の方も多く訪れて、宣伝も少ない中200人くらい来場したと思います。

真島 それは驚きですね。

萬宮 非常に驚きました。その後も日本でなかなか公開されることのない映画を、東京外大で上映したいと思い、毎年続けています。みんぱくから上映権を借りて東京外大で上映することもあります。

○TUFS Cinemaができるまで

真島 毎年上映していく中で、作品の選び方など、何か基準はありますか。

萬宮 日本では商業的になかなか上映できないけど、観てもらいたい映画を念頭に、娯楽ではなく、メッセージ性があるもの、考えさせられるものを選んでいます。

真島 観客の方にどれだけメッセージが届くかが重要ですよね。日本語字幕がない作品については、上映に至るまでどのような準備をされていますか。

萬宮 まず、映画上映権を持っている現地の方に連絡し、上映の許可をもらいます。次に、映画を観ながら、日本語の字幕を作成します。この字幕が正しいか専門家とも確認します。その後、上映用ディスクを作成し、細かな調整を行います。上映会に向けては、講演者とのスケジュール調整、上映場所の確保、後援・協力依頼、投影機材の確認、広報など様々な手続き・確認を行って、上映に至ります。最低半年ほど時間がかかってしまいますね。

真島 それは大変ですね。日本語字幕の作成に携わった経験はまだないのですが、上映権の所有者との交渉は私も苦労します。映像の権利と日本語字幕の権利を持っているところが別の場合もありますね。このような準備を経てTUFS Cinemaが成功すると大変嬉しいですよね。

萬宮 そうですね。多くの方に、目で見て感じて、解説で理解を深めてもらえるというのが嬉しいですよね。

○TUFS Cinemaの魅力について

2017年6月開催キューバ映画上映会におけるトークセッションの様子

真島 一般向けの企画として東京外大は公開講座(TUFSオープンアカデミーなど)を行っていますが、TUFS Cinemaも一般の方に大変好評です。

萬宮 やはり、映像は心に残りやすいですよね。観るという面では、外語祭(東京外大の文化祭)でも外国語で演じる語劇が名物となっています。映像は学ぶのにうってつけの教材です。

真島 観客からの感想で、印象的なものはありますか。

萬宮 初めての上映会で、「衝撃が走りました。一般的に言われているイメージと違う一面を見ることができました。」という感想がありました。こういった感想がTUFS Cinemaの原動力になっています。

真島 アフリカの映画も、アフリカに行ったことのない方が驚きをもって観てくださっています。

萬宮 行ったことがない国に対しては、どうしても偏見や固定概念を持ちがちですが、そのような概念を覆すような体験をTUFS Cinemaではできるのだと思います。

真島 伝えるのは難しいけれども、一番大切なことは、人々の日々の暮らしだと思います。現場の生活に密着した文化人類学の調査でも、人々のちょっとした表情や息づかいまで描きだすことは容易ではありません。そんな人々の暮らしを拾い上げる映画を上映して、多くの方に観てもらいたい。萬宮先生の上映会を知り、私も携わりたいと思いました。

萬宮 東京外大は、世界の言語・文化・社会の教育と研究を行う大学です。TUFS Cinemaは東京外大だからこそできた企画なのかもしれませんね。私も南アジア地域以外のTUFS Cinemaもよく観に行っています。真島先生はいかがですか。

真島 私もアフリカ地域以外のTUFS Cinemaをよく観に行っています。特にポーランド映画祭(2016年、全4回)、キューバ映画上映会 『低開発の記憶-メモリアス-』(2017年)が印象に残りました。行ったことのない土地に、冒頭からいきなり自分が持っていかれるような感覚になります。人々の姿や、それを大きく取り巻く風景の描写が、ひときわ鮮烈に感じられるからでしょう。

萬宮 私はウルドゥー語の言語学を専門にしていますが、TUFS Cinemaは専門以外の地域のことを知るよい機会になっています。日本語字幕が付いているのがいいですよね。

真島 そうですね。アフリカ映画には、かつての植民地宗主国の言語ではなく、現地の言語がたくさん登場します。日本語字幕があると、理解も深まりますよね。また、敷居が高くない開かれた上映会になります。それにTUFS Cinemaには、上映後に必ずその地域の専門家による解説やトークがあるので、理解が更に深まります。

萬宮 上映後の解説は大きな特徴ですよね。私の上映会のときは、必ず社会や文化の背景を話すようにしています。質疑応答も盛んに行われ、30分の予定が60分になったこともありました。

○TUFS Cinemaから得られたこと

2017年4月開催チベット映画特集におけるトークセッションの様子

真島 質疑応答で印象に残った質問はありますか。

萬宮 日本語字幕がつかない小さなセリフに注目し、この場面ではどのようなことを話していたのですか?という質問がありました。目のつけどころに感心した記憶があります。ある程度、質問内容は想定して臨んでいますが、想定を超える質問があると、そのような見方があるのだと、面白く感じます。

真島 学生にもTUFS Cinemaを観に来るよう勧めていますが、学生よりも熱心な一般の方も多いですよね。

萬宮 そうですね。そのような様子を見るたびに、TUFS Cinemaが定着してきたのかな、と感じます。

真島 一方で学生もTUFS Cinemaを企画するようになってきました。

萬宮 上映にあたり、長年やっていても権利関係はすごく大変で、様々な人のつてを通じて、公開にこぎつけています。私たちも助言はしますが、学生が自分で交渉したり、準備したりする経験を通じて成長していきますね。

真島 学生も、制作サイドや配給元、非営利の上映団体などから多くの学びを得ているようですね。

萬宮 まだこれは実現していないのですが、映画を指定して持ち込む学生が多くなってきました。監督と知り合って、上映の許可をもらった、と私のところに相談しに来ます。配給会社の許可も得て、今後実現できたら嬉しいですね。

真島 企画する側が学ぶことも多いですよね。東京外大では入学後、最初に専門地域の言語・文化・社会を授業で学びますが、実際に現地を見ないと分からないことが多いです。それが簡単にできるのが、映画だと感じます。それは私たち教員も同じで、映画を通じて気づくことがたくさんあり、毎回新鮮な気持ちになります。

○TUFS Cinemaファンの増加について

2016年10月開催シリア難民映画上映会におけるトークセッションの様子

萬宮 TUFS Cinemaは、日本語字幕付きの上映会に解説がついていることもあり、多くの方がお越しになっています。

真島 年々TUFS Cinemaが定着してきたのか、ファンの方が増えてきたように感じますね。

萬宮 上映会のアンケートを見ると、10代から70代以上の方に至るまで幅広い年代の方がいらしています。中には、京都からお越しになった方もいるそうです。リピーターも多く、中には4回以上いらした方も多くいらっしゃいます。最近では、新聞に取り上げられることも増え、そこでTUFS Cinemaを知ったという方もいらっしゃいます。

真島 この調子でどんどんTUFS Cinemaが広まっていけばいいですよね。

○無料で上映することの難しさ

萬宮 TUFS Cinemaは異文化理解を促す意味で価値があるイベントで、1年に1本でもよいから続けていきたいと思っています。

真島 映画を観る機会は増えてきましたが、無料で、しかも解説がついている上映会は珍しいですからね。

萬宮 しかも、日本でなかなか観ることができない映画ですから、貴重です。一方で、日本語字幕の作成費用や上映権料など、費用面が厳しいのも事実です。

真島 全国的に大学の予算が逼迫している中、東京外大も例外ではありません。南アジア映画特集については、日本語字幕を作成するので、その費用はどうされているのですか。

萬宮 南アジア映画特集に協力してくださっている方が、ほとんど志に近いような金額で翻訳してくださっています。一般的な翻訳料と比べるとかなり安価になっているので、心苦しいです。ただ、それでさえ厳しいので、困っています。

○今後について

真島 予算のことを度外視してでも、今後、やりたいことはありますか。

萬宮 今、南アジア映画特集は年に1本というペースで上映会を行っていますが、様々な文化や社会を多角的に伝えるには、本当は年に2~3本上映できたらと思っています。字幕がない映画に日本語字幕をつけて、日本で初上映したいです。南アジアには映画大国インドをはじめ、多くの佳作がありますので、みなさんにお届けしたいと思っています。

真島 はっきりと成果が出はじめたTUFS Cinemaを、これからもぜひ発展させていきたいですね。来場者の方へもたらす効果は大きいのではないのでしょうか。

萬宮 日本で公開される海外の映画は商業的なものばかりで、TUFS Cinemaのような映画が公開されることがあまりありません。TUFS Cinemaを通じて自分の目で観て、感じて、考えることで、異文化理解へ踏み出すきっかけとなることを心から願っています。

真島 そうですね、TUFS Cinemaではあらゆる地域の映画を上映しているので、たくさんの方に何回でも観てもらいたいです。

萬宮 今回、このような対談が実現できたので、協力して今後もTUFS Cinemaの発展につなげたいですね。

真島 そうですね、ぜひこれからもよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

萬宮 ありがとうございました。

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