欧文文献の検索方法

 

このページは、ゼミの学生を対象に、自分が書評論文で取り上げる本をどのようにして探すかのガイドですが、ラテンアメリカに関する欧文文献の検索する上でも参考になると思います。

 

どのような文献をどのようにして探すか

自分の関心あるテーマについての本をどのようにして探せばいいのか、という話に入る前に、どのような本を探せばいいのか、という問題に簡単に触れておきましょう。というのも、あるテーマに関する本は数多くあるわけで、その中から当面取り組むべき「この一冊」を選びだす基準をはっきりさせておく必要があるからです。

小生の考えでは、次のどちらかの本にすべきでしょう。

(1) テーマに関するもっとも基本的あるいは古典的な文献

(2) 最新の文献

(1) はそのテーマに関して論じる場合、必ず言及される基本文献です。メキシコ革命を論じるならまずこの本、アルゼンチンへの移民についてならこの本、といった具合に、それぞれのテーマについてはたいがい、誰もが一度は言及する基本文献というものがあります。こうした本を選ぶ、というのが第一の選択肢です。

それぞれのテーマについてどのような文献があり、その中で基本文献は何かを調べるのには次の本が一番いいでしょう。

Leslie Bethell ed., The Cambridge History of Latin America, vol. XI, Bibliographical Essays, New York: Cambridge University Press, 1995.

この本の目次を見ると次のようになっています。

T.征服直前の先住民

U.植民地時代のスペイン領アメリカ

V.植民地時代のブラジル

W.ラテンアメリカの独立

X.ラテンアメリカ ─ 経済、社会、政治(1820年−1870年)

Y.ラテンアメリカ ─ 経済、社会、政治(1870年−1930年)

Z.ラテンアメリカ ─ 経済、社会、政治(1930年−1990年)

[.独立以降のラテンアメリカ思想

\.独立以降のラテンアメリカ文化

].独立以降のラテンアメリカの国際関係

それぞれの章は国やテーマごとにより細かく分けられているので、該当個所は簡単に見つかるでしょう。この本は外大図書館にあります。

第二の選択肢はそのテーマに関するもっとも新しい研究書を選ぶことです。すぐれた研究書でしたらそのテーマに関する従来の研究や議論を必ず踏まえているので、そのテーマについてこれまでどのような議論が行われてきたのか、何がどこまで明らかにされているのかが分かります。これまでのゼミ参加者はほとんどがこの第二の選択肢を選んでいます。

それではどのようにしてこうした文献を探せばよいのか。

一番のお奨めは、研究動向をサーベイした論文を読むことです。もっとも有用なのは次の雑誌に毎号掲載されている Review Essays です。

Latin American Research Review 1966年〜1996年までの記事検索はこちら)

この雑誌はラテンアメリカ研究最大の学会である Latin American Studies Association の機関誌で、年3回発行されてます。この雑誌の前半には研究論文が掲載されていますが、後半は Review Essays のタイトルの下に、「最近のニカラグア研究」とか「ラテンアメリカの環境問題」などといった論文が並んでいます。これを読むのです。毎号、さまざまなテーマについて数本掲載されますから、この雑誌のバックナンバーを新しい号から古い号へと遡る形で見ていきます。自分の関心あるテーマについての論文が見つかったら必ずコピーしておいて下さい。また、一つ見つかったからといって安心せず、他にも関連あるテーマのものがないか少なくとも過去10年ほどの号はすべて調べること。

さて、それぞれの論文の冒頭には十数冊の書名が並んでいるはずです。いずれも、タイトルに掲げられたテーマに関して最近出版された本で、これらの本がその論文の中で検討され批評されているのです。つまり、複数の本に関する書評論文だとも言えるわけです。

いずれ皆さんが自分で書評論文を書こうとするときに気が付くでしょうが、ある本を批評しようとすると、必ず、その本がこれまでの研究の流れの中でどのような独自の意義をもっているのかを問題にしなければなりません。研究史の中での位置づけが問題になるわけです。というのも、その本で扱っているテーマが過去にどのように論じられてきたのかを問題にして初めて、それではこの本はどのような独自の新しい議論を展開しているのか、どのような新しい発見を提示しているのかを評価することができるからです。いいかえれば、これらの review essay は新しい研究書を取り上げて論じる中で、そのテーマに関する過去の議論の流れも概観してくれているわけです。その上で、取り上げられている本のなかでどの本が優れているのかを評価しています。

つまり、これらの review essay を読むことでこれまでの研究の流れを知ると同時に、最新の研究の到達地点、そしてどのような本が最新の議論を展開しているのかをも知ることができます。といっても、次の点も忘れずに。それは、その論文で提示されている研究史の流れのまとめ、それぞれの本の評価も決して絶対的なものではなく、あくまでもその論文の著者の見解であるということです。だから、今度は実際に自分が本を読んで自分なりに評価していかなければならない。でも、十分参考にはなります。

なお、これまでのゼミ参加者が取り上げたテーマに関連する Review Essays (こちら) を紹介しておきましょう。

 

ところで、自分のテーマを取り上げた review essay が見つからない場合もあるでしょう。そうした時には、以下の雑誌に掲載されている書評が参考になります。いずれも本学図書館に入っています。

Journal of Latin American Studies

Hispanic American Historical Review

これらの雑誌には Latin American Research Review のようなあるテーマの下に複数の本を書評した review essay はありません。その代わりに、1冊の本に関する1ページ程度の書評が数多く(実に雑誌のページ数の半分ほどが書評です)掲載されています。やはり新しい号から、取り上げられている本のタイトルを見ながら、自分に感心あるテーマについてのものをピックアップしていきます。

もう一つの方法は、以下のオンライン・データベースの利用です。

Handbook of Latin American Studies

これはラテンアメリカ関係の論文、書籍をほぼすべて網羅している文献案内です。もともとは書物の形で1936年に発刊され、毎年1巻(社会科学と人文科学とが交互に)刊行されてきましたが、数年前からオンライン化されました(書物の形の発行は現在でも続いており、本学の図書館にも入っています)。

以前は、1巻ごとに各巻の最後に付けられた索引を引いて検索しなければならなかったのですが、現在ではインターネットでこのサイトに接続し、著者名やタイトル、あるいはキーワードを入力してやれば、たちどころに検索結果を一覧表示してくれます。その中の一つをクリックしてやれば、その本(論文)に関する詳しい書誌情報を見ることができます。また簡単なコメントがついている場合も多く、評価もはっきりしているので(「すばらしい研究だ」とか「凡庸な出来だ」とか)、参考になるでしょう。しかし、一度やってみれば分かりますが、検索結果があまりにも多くでてきて、その中からどれを選んだらよいのか分からないこともしばしばでしょう。でも、あるテーマについてのほぼ完全な文献リストを自分で作ろうとする場合にはきわめて有益な武器となります。

 

めざす文献をどのようにして入手するか

さて、こうしてめざす文献が特定できたら、次はその入手方法です。

一番簡単なのは次のサイトにアクセスすることです。

NACSIS Webcat (総合目録データベースWWW検索サービス)

これは文部省の国立情報学研究所 (2000年3月までは学術情報センターという名称でした)のサイトです。著者名、タイトルはすでに分かっているわけですからこれを入力してやれば、日本のどこの図書館に入っているかがすぐに検索できます。あとは外大の図書館を通じて図書館間の相互貸し出しの制度を利用して駆り出すことができます。

また雑誌についても検索可能です。すなわち、自分が探している論文の雑誌名さえ分かれば、その雑誌名を入力すると、どこの図書館に何年から何年まで、何号から何号まで所蔵されているのかが一覧表示されます。欲しい論文が掲載されている号を持っている図書館がどれかをチェックした上で、これも本学図書館で申し込めばコピーを入手することができます。

入手が容易な新刊書の場合には、コピーではなくやはり現物を購入することを進めます。その場合には、オンライン書店が早くて安く便利です。郵送方法も国際宅急便から船便まで自由に選べます。もっとも有名なのが以下のサイトです。

Amazon Books