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更新日: 2008/04/13 

 

スペイン語U

 

■授業の目的

新聞・雑誌記事レベルのスペイン語運用能力(読む、書く、聞く、話す)を身につけることに置きます。

■使用するテキスト

基本的に、インターネット上で配信されているビデオを使用します。その理由は、上に掲げた「授業の目的」を実現する上で非常に有益だと思うからです。

まず聞く力を訓練することができます。その際には、映像があることで、理解がよりたやすくなるでしょう。また音と映像があることで、学ぶ上でのモティベーションも大いに高まるはずです。

これらのビデオで使われているスペイン語の表現は、スペイン語を母語とする人々が毎日使用しているいわば「普通の」表現です。そうした表現を身につけることができるわけです。その際、下で説明するような学び方を通じて、読む、書く、聞く、話すの4技能を総合的に身につけることができます。

■授業の進め方 その1 予習

この授業では予習が非常に重要です。その理由は次の通りです。

第一に、授業の数日前に、ビデオファイルをアップロードします。学生諸君はそれぞれファイルをダウンロードして、自分のパソコンに保存して下さい。そしてそのファイルを何度も再生しながら、スペイン語を書き取ってください。ただ最初からすべてを聞き取るのは無理でしょうから、最初の頃は、初めて出会うだろう単語・表現や聞き取りにくい個所についてはこちらで文字化したテキストを用意しておきます(聞き取って欲しい個所だけを空白にしておきます)。しかし授業が進むに従って、教師の方で文字化する個所はしだいに減らしていきます。そして頃合いを見計らって、ある時期からはすべて聞き取ってもらうようにしようと思います。

さて、空白部分を埋めることができたら、今度はそのテキストを音読して下さい。声を出しながら、何度も何度も繰り返して読んで下さい。できれば、ファイルを再生しながら、少し遅れてテキストを音読してみてください。こうして、まずテキストのリズムを身につけます。どこまでを一気に読むのか、どこで切るのか、これらをまず音として掴んでおくことはとても重要です。

と同時に、こうした作業は、テキストを理解する上でも効果的です。ナレーターが息継ぎをするところまでが意味の上でひとかたまりになっているわけですから、そうしたかたまりごとに解読していくことができれば、文全体を理解することがより簡単になります。

さて、こうして何度も読んでいるうちに、テキストは、最初に見たときとは異なった風に見えてくるはずです。最初はどれもが同じ黒色でのっぺり見えていたテキストが、白い所、薄い灰色の所、濃い灰色の所、そして真っ黒な所と、まだら模様で見えてくるはずです。つまり、ここははっきりと理解できる、ここは何となく分かる、ここはよく分からない、といった形で、濃淡が見えてくるはずです。

言い換えれば、どの単語をまず最初に辞書で調べるかがはっきりしてきます。「この単語の意味さえ分かればこの文あるいは節は理解できるのに」といったカギとなる単語がどれかも見えてくるはずです。スペイン語のテキストを読む際に、分からない単語が出てくる度に辞書を引く、という習慣はやめてください。辞書を引く場合には、テキストを理解する上でカギとなる単語を優先することが重要です。

分からない単語が出てくる度に辞書を引いて、それらしい日本語の意味を書き込む。そしてざっと一通り辞書を引き終わった後で、今度は書き込んだ日本語の単語をつなぎ合わせながら訳文を作る。こんなことをやってはいませんか。多くの場合、その結果は、何が言いたいか分からない奇妙な日本語の文章です。

昨年度の地域基礎のレポートにはこうした文章が予想以上にたくさんありました。例えば次のような文章はおそらくこうして作られたものです。これを「直訳」と呼ぶ(それに対して、原文の構文には無頓着に、おおざっぱな印象だけで日本語にすることを「意訳」と呼ぶ)学生もいますが、これらはそもそも「訳」にはなっていません。「訳せますけど意味は分かりません」という弁明を時々聞きますが、実のところは「訳」などではまったくなく、原文の外国語の単語をそのまま日本語の単語に置き換えているだけです。

「彼らは、永遠の理想郷を南方に捜し求めてアメリカの都市から逃げ出すことで、メキシコの中に現代性と都市生活のイメージを見出した。彼らは1920年代には一般的だった同時代の生活の流入についての言及を除き、個人を素朴な農業の世界の代表者と変えることで小作農たちを理想化した。」

因みに、原文と試訳を掲げておきましょう。

"Fleeing the cities of the United States in search of a timeless utopia south of the border, most artists found images of modernity and urban life in Mexico of little aesthetic interest. Rather, their work idealized the peasants, eliminating references to the incursions of contemporary life altready common by the 1920s, and tranforming individuals into representatives of an idyllic agriculural world."

「時代を超えた理想郷を国境の南に探し求めてアメリカの都市から逃げ出したものの、大多数の画家たちがメキシコにおいて見出したのは、美的関心を呼び起こすことのない現代性と都市生活のイメージだった。ところが彼らの作品はといえば農民を理想化したものだったのである。1920年代にはもはや現代的生活があたりまえのものとなっており農村にも現代的諸要素が入り込んでいたのだが、彼らの作品はこれに触れることはなかったし、また個性を持った人間を牧歌的な農村世界の代表者へと作り替えてしまったのである。」

また上で述べたようなやり方でテキストを読んでいくと、辞書にたくさんの意味が載っていても、その文脈の中でもっとも適切な意味がどれかを判断することができます。辞書に載っている語義をすべて引き写したり、あるいはあてずっぽうにどれか一つを選んだりすることもなくなるでしょう。

さらにふだんからこうした読み方をしていると読解力もついてきます。文の中でカギとなる単語がどれなのかを掴む力がつきますし、また単語の意味が分からなくても文脈からそれを推測する力もついていきます。この地道な作業をどれほどやったかどうかが、後になって一種のボディーブローのように効いてくるのです。

ということで、まずは辞書を引くのはできるだけ我慢して何度も何度も文章を読んでみてください。

では何度ぐらい読めば辞書を引いてもいいのか。一概には言えませんが、とりあえずは、全体としてどのようなことを言っているのかをおぼろげながら掴むことができ、またカギとなる単語がどれかが見えてくるまで、と言っておきましょう。

さていったん辞書を引いた際には、今度は徹底的に辞書を「読んで」ください。すなわち、引いた単語について、その説明全体に目を通すのです。それはその単語がいったいどのような意味の広がりを持っているのかを掴むためです。

なお、単語についてはもちろん辞書を使いますが、複数の単語の結びつき方については詳しい文法書をぜひ一冊用意し、その索引を利用して辞書のように使うようにしてください。辞書については、西西辞典をぜひ一冊用意して利用して欲しいと思います。

お奨めの辞書と文法書は以下の通りです。

■授業の進め方 その2 授業

いちばんやりたくない授業の光景はたとえば次のようなものです。

まず誰か学生の一人を指名して訳させ、間違いがあったときには教師がその都度訂正し、最後に模範(?)訳を教師が口述して、学生たちが一所懸命それを筆記する、というあのよくある形態です。

そこで学生が主体的に取り組めるようにと、次のような形で授業を進めることにします。

授業は90分の授業時間を前後二つに区切ります。前半は、4人ごとのグループに分かれ、グループごとにテキストを検討します。そしてテキストの確定と解釈についてグループとしての統一見解を作成してもらいます。また複数の見解が対立したままの場合には、異なる見解を並記しておきます。また解決できない疑問点を列挙しておいてください。

そして授業の後半では、テキストを最終的に確定し、同時に、グループで未解決のまま残された疑問点を全体での議論を通じて解決していきます。

この方法のメリットはいろいろあります。前半部でのグループ討議では全員が議論に加わります。少人数ですから疑問も出しやすいし、それに対する自分のアイディアも出しやすい。

ともかくこの前半部で、たいていの疑問はあらかた解決してしまいます。理解度の進んだ学生がいわば教師役を務めてくれるからです。それゆえに、後半部では、誰もが突き当たる困難な論点を集中的に検討することができます。

この後半部でも、主役は学生です。前半でのグループの議論で解決がつかなった問題を学生が提起し、それを全体で議論していきます。

なお、グループについては、昨年度の成績や性別をもとにバランスのとれたグループを編成するようにします。

授業で用いる言語は基本的にスペイン語とします。

■授業の進め方 その3 注意

さて、上に述べたような形態での授業が成功するか否かは、学生がどれだけ予習をしてきたかによって決まります。

もしも学生が何の準備もせずに授業に臨めば、前半部のグループでの議論がきわめて貧弱なものになることは明らかでしょう。あらかじめテキストを自分の目で読み自分の頭で理解する努力と準備を学生がしてこなかった場合には、そのグループは単なる烏合の衆に過ぎず、「文殊の知恵」などまったく期待できません。

そして前半の討論が貧弱であれば、当然、それは後半の討論にそのまま反映されることになります。


■授業の後で

授業ですべて疑問点を明らかにしたあとは、やったところを丸暗記しましょう。これがいちばん手っ取り早い外国語上達法です。単語や熟語をひとつひとつバラバラに覚えるのではなく、丸ごと文章で覚えてしまう。この方が本当はずっと簡単ですし、応用もきくのです。

丸暗記というと、学生諸君からはいつも「ええーっ?」という声が返ってきます。でも、予習の段階でテキストをあれこれ突っついて分析し、授業でだめ押しした後では、かなりの程度、すでに頭の中にテキストの文章がインプットされています。あとは、それを完全な形に整形してしっかりと残してやればいいのです。やってみると思った以上にずっと簡単なことが分かるはずです。それに予習の段階で何度もビデオを視聴し、音から入っていますから暗記もずっと簡単なはずです。

ただし、丸暗記には条件があります。最初に述べたように、「すべて疑問点を明らかにしたあと」という条件です。この条件がなければ、丸暗記しても応用がまったくききません。

以上のプロセスをしっかりとこなしていけば、皆さんのスペイン語力は確実につくはずです。その場合、身に付くのは単に「読解力」だけではありません。自分の中にスペイン語の表現が定着することによって、表現する力、すなわち「書く力」、「話す力」も身に付けることができるはずです。

■評価方法

毎回の授業のミニテストと学期末試験の成績を総合して評価します。

毎回の授業では最初の5分でミニテストを行います。前回の授業でやった文章の中から一文を選んでスペイン語の原文を書いてもらいます。

■学期末試験のやり方

90分の試験時間を第1部と第2部に分けます。第1部では、授業で読んだテキストを踏まえた西訳(「借文」)、第2部では初見の長文読解とする。

■メーリングリスト

メーリングリストを作成して、随時、質問などを受け付けます。また連絡事項などもメーリングリストを通じて流します。メーリングリスト作成のためにアカウントを知りたいのでmtakahas@tufs.ac.jp に送信してください。

■その他

何らかの事情で授業に出席できない場合には、個人的に相談を受け付けるので、メールで予約をとること。