【お知らせ】南アジア民俗写真データベースを公開しました!
大学共同利用機関法人人間文化研究機構 地域研究推進事業(南アジア地域研究) 東京外国語大学拠点南アジア研究センター(FINDAS)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所付属情報資源利用研究センター (IRC)の共催
「小西正捷・南アジア民俗写真データベース」の公開
https://southasianfolklore.aa-ken.jp/
本プロジェクトは、立教大学名誉教授・小西正捷(こにしまさとし)氏が撮影してこられた約6000点の南アジアの考古学、文化人類学などに関わる写真資料を精査・編集し、広く研究・教育、社会貢献に資する画像資料の情報資源データベースとして、公開しようとするものであります。
東京外国語大学拠点南アジア研究センター(FINDAS)では、2013年度より、小西正捷氏の写真資料、約6000点を受け入れて保存する一方、人間文化研究機構「南アジア地域研究」プロジェクト経費の一部も活用することで、フィルム写真資料の長期保存と研究・活用に資するため、そのデジタル化と資料の年代や位置情報などの関連情報の調査や整理を進めてまいりました。IRC言語文化資料資源化プロジェクトとして公開される本データベースは、FINDASとの連携のもとで、写真アーカイブ資料に関わる関連情報の調査を進め、画像資料の精査と編集を行うことで、南アジア民俗写真データベースとして公開し、その幅広い社会的活用を促進しようとするものであります。
◆お問い合わせ◆
東京外国語大学拠点南アジア研究センター事務局 findas_office[at]tufs.ac.jp
2016年度 第一回FINDAS研究会 「貞しき女性・浄なる女性――歴史学的アプローチから」の報告
4月23日に開催いたしました、第一回FINDAS研究会の報告です。
横地報告では、生理があるために女性を「不浄な存在」とみなす前近代南アジアにおける女性観にたいして、古典文献から問題提起を行い、浄化機能として生理が解釈されていたことを指摘した。こうした考え方が、文献が記された同時代の一般的な認識とみなしうるかは検討の余地があることも明らかにした。質疑では生理の捉え方をめぐって、他地域との比較や、文献/実践レベルの観点から議論が深められた。
太田報告では、1700年頃に南インド・マイスール王国の宮廷につかえる侍女が著したカンナダ語文献『ハディバデヤ・ダルマ(貞女の法)』を取り上げて、妻が遵守すべき規範について論じた他の同時代文献との比較を行い、同書の特徴を浮き彫りにした。男女関係をとらえる視点・枠組みは、多様であったことを指摘し、その背景を歴史的文脈に位置付けて検討した。植民地以前に生じていた文化、価値観の変容に着目する必要を強調した。
質疑では、テキストに使われる用語の統一性、および当時の政治権力の影響などから議論が深められた。
参加者27名。
2015年度 第四回FINDAS研究会(インド文学史研究会共催)「時代を映す南アジア文学――情動の水面をゆらす人々と伝説の魚」の報告
10月10日に開催いたしました、第四回FINDAS研究会(インド文学史研究会共催)の報告です。
水野報告では、マハーバーラタなどのヒンドゥー教聖典のみならず、パーリ律、『法華経』といった仏教文献にも触れつつ、多くの文献調査にもとづき、マカラが伝説のワニであることを定義づけるとともに、彫刻、絵画といった作品と伝統的文学作品の間に「語り」が介在していたことを指摘した。また、日本に伝わったワニであったクンビーラが間テクスト性を持つモチーフであったことをテクストの文法レベルから文献レベルまでの幅広い分析とともに示した。
続く萩田報告では、ウルドゥー語の歴史小説家の執筆した作品が文学性を欠いているという指摘がなされていることに関し、アブル・ライース・スィッディーキーの評価、ムムターズ・シーリーンによるクリシャン・チャンダルの「ペシャーワル急行」の批評を取り上げて「社会改革としての文学」としての側面も持つことを指摘した。また、レコンキスタの悲劇の重要性を作品に描いたナスィーム・ヒジャーズィー、『アムリットサルが燃えていたとき』を執筆したハージャー・イフティハールの例も挙げ、参加者に質問を投げかけることで、様々な専門分野の研究者たちをも巻き込んだ議論が展開された。
参加者32名。
2015年度 第二回若手研究者セミナー「時代を映す南アジア文学―近代女性作家の作品から現代の読書傾向まで」の報告
7月4日に開催いたしました、第二回若手研究者セミナーの報告です。
「初期ウルドゥー語小説と「理想」の女性像」と題する村上報告では、ナズィール・アフマドのウルドゥー語小説「花嫁の鏡」を中心に、「理想の女性像」について、同時代の社会的および歴史的文脈に位置づけて分析を行った。「花嫁の鏡」に影響を受けたラシードゥン・ニサーが執筆した「女性の矯正」との比較分析も試み、啓蒙書としての役割と、その限界について論じるとともに、当時の女性たちが規範と根強い慣習にとらわれ、悪習であると理解しながらも、女性たちのジェンダーロールの枠組みから抜け出せないという状況にあったことを指摘した。
続く松木園報告では、「デリーにおける最近の読書傾向について」の題目で、2014年と2015年に報告者がデリー実施したアンケート調査の成果を分析した。アンケートの内容は読者、本のジャンル、入手方法、好きな作家を質問項目に含めており、最近のインドにおける英語作家の読書体験と一般読者の読者体験を比較した。結論として、英語作品が多く読まれる傾向にある点を指摘し、インターネットで本を購入する傾向も明らかにされた。
参加者たちは文学というテーマにとどまらず、様々な視点から質問を行い、活発な議論が行われた。
参加者:21名
2015年度 第三回FINDAS研究会「少子化と家族の変容――中国とインドの比較」の報告
「少子化と家族の変化――インドの場合」と題する押川報告では、1981年以降進行しつつあるインドの少子化現象を取り上げ、その背景と特徴を概観した。さらに、家族計画に関する政策の流れと同時代の開発言説について重なり合う論点を指摘を指摘した後、インドの家族観やジェンダー規範の変化とその背景にある社会経済的要因を論じた。
続く小浜報告は「『一人っ子政策』以前と以後の中国家族」の題目のもと、中国の家族の変遷について、歴史的に概観したうえで、中国の「一人っ子政策」は、1950年代後半から断続的に推進されていたことを強調した。その後、報告者のフィールド調査の概要と少子化の現状を紹介し、家族の変化にかかわる家族規模、生育観、育児や老人ケアのネットワークを検討した。両氏の報告を受けて、沈氏と粟屋氏から家族機能の外部化、年金制度、識字教育の観点からコメントが提起され、報告者および参加者と活発な議論が行われた。
参加者:22名