2012年12月23日 第4回FINDAS若手研究者セミナー「ディアスポラ文学と<オーセンティシティ>への挑戦―現代英国インド系作家を読む―」の報告

掲載日 | 2013年01月15日

12月23日に行われました2012年度第4回FINDAS若手研究者セミナーの報告です。

テーマ「ディアスポラ文学と<オーセンティシティ>への挑戦―現代英国インド系作家を読む―」

報告者1: 松木園久子 Hisako MATSUKIZONO(大阪大学)

報告者2: 小松久恵 Hisae KOMATSU(北海道大学スラブ研究センター)

コメンテータ: 井上暁子 Satoko INOUE (北海道大学スラブ研究センター、移民文学研究)

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報告者1: 松木園久子 Hisako MATSUKIZONO(大阪大学)

「Salman RushdieまたはJoseph Anton ―オーセンティシティを問いかける名前」

本報告では、Salman Rushdieの小説”The Satanic Verses”と自伝”Joseph Anton”に登場する「名前」に注目し、インド系イギリス移民がオーセンティシティを求めたり、問われる場面を考察した。たとえば、我が子にインド系ルーツをうかがわせつつ印英融合のメッセージを込めた名前をつけたり(Rushdieが次男Milanに対して)、イギリス志向が強いインド人が名前を変えたり(Salahuddin ChamchawalaがSaladin Chamchaに)、さらには英語風のあだ名に変化する(SaladinをSalad、ChamchaをSpoonoに)などの例を考察した。これらの例を通じて、「名前」にはオーセンティシティが意識されるだけでなく、英語に転写したり翻訳することにより新たな意味が発生する可能性を指摘した。

松木園氏配布資料

報告者2: 小松久恵 Hisae KOMATSU(北海道大学スラブ研究センター)

「Too Asian, not Asian enough ―『ディアスポラ文学』を考える」

本報告では、今日のイギリスで商品化される南アジア系(British Asian)若手作家の作品を複数とりあげ、彼らの創作活動を取り巻く環境や、作品のみならず作家にも「オーセンティシティ」が求められる現状など、主に受容の観点からブリティッシュ・エイジアン文学を考察した。さらに「ブリティッシュ・ムスリム文学」という宗教アイデンティティーを根拠にする新たなブランドが台頭しつつある今日、移民を出自に持つ人々の文学はどこへ向かうのか、その変容の可能性を検討した。

小松氏配布資料 小松氏参考文献

Hisako Matsukizono

Hisae Komatsu

Satoko Inoue

2012年11月17日 第3回FINDAS研究会「インド、『食』をめぐる断章」の報告

掲載日 | 2012年11月29日

11月17日に行われました2012年度第3回FINDAS研究会「インド、『食』をめぐる断章」の報告です。

テーマ「インド、『食』をめぐる断章」

報告者1: 小磯千尋 Chihiro KOISO(大阪大学)

報告者2: 井坂理穂 Riho ISAKA(東京大学)

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報告者1: 小磯千尋 Chihiro KOISO(大阪大学)
「マラーティー語料理本に見るヒンドゥー儀礼食と『マハーラーシュトラ料理』」

本報告は、マハーラーシュトラ州とりわけプネーの高カーストのヒンドゥー教徒にとっての、断食の意味とその内容について考察を行うことを課題とした。報告ではまず、1990年代以降に数多く出版された、マラーティー語のレシピ本を紹介するとともに、その中に必ず断食用の食事の章があることを指摘した。そうした食事内容について、報告者のフィールドから実際の儀礼食を紹介するとともに、その意味するところを事例を交えながら具体的に考察した。

小磯氏配布資料

報告者2: 井坂理穂 Riho ISAKA(東京大学)
「植民地期インドのミドル・クラス家庭における『食』」

本報告では、植民地インドのミドル・クラスにおける「食」をめぐる観念・慣習、さらには「西洋」に対する認識がどのように変化したのか、またその変化の過程において、地域・宗教・カースト等の「コミュニティ」をめぐる議論や運動とどう絡み合っていったのかということを、インド西部の知識人の記述に焦点を当て考察した。植民地期のミドル・クラスの社会的地位やアイデンティティといった自己認識、それと食の関連とその変化、それを取り巻く政治的・社会的文脈、これらについて総合的な検討を行った。

井坂氏配布資料

報告に引き続き、フロアからはインド各地の事例の紹介を伴う、情報内容の豊かな討論が積極的に行われた。また、植民地期からの連続性や変化について、さらには食文化の歴史研究の方法論的な可能性についてまで広範な議論が行われ、今後のインドの食文化研究の展開に資すると期待される様々な論点が提出された。

2013年10月27日 第3回若手研究者セミナー「コロニアル状況と知の力学」の報告

掲載日 | 

三瀬氏レジュメ10月27日に行われました2012年度第3回FINDAS若手研究者セミナー「コロニアル状況と知の力学」の報告です。

テーマ「コロニアル状況と知の力学」

報告者1: 足立享祐(東京外国語大学)

報告者2: 宮本隆史(東京大学)

報告者3: 三瀬利之(清泉女子大学)

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報告者1:足立享祐(東京外国語大学)
「近代インドの言語問題における「ヴァナキュラー」――植民地形成期のマラーティー語論を事例として」

近代インドを特徴付ける一つの命題は、統治者の言語として圧倒的な卓越を示すこととなった英語と、「ヴァナキュラー」として位置づけられたインド諸語との関係性がもたらす言語問題である。インド諸語が果たしてきた歴史的な役割については、言語別州再編に代表されるようなアイデンティティの形成、或いはより近年では公共圏や印刷文化という近代的な場の構築と云った観点から論じられてきたが、本報告ではそれらの原点とも云うべき、植民地形成期におけるインド諸語の地位、規範そして学習といった言語計画の観点から、「ヴァナキュラー」であることが持つ意味を改めて問い直すものである。具体的な事例として、東インド会社資料並びにインキュナブラを用いつつ、英領インドボンベイ管区が実質的にインド西部を統治していく過程の中、知印派東インド会社職員と現地知識人の間で繰り広げられた「マラーティー語」論の歴史的な展開を論じた。

報告者2: 宮本隆史(東京大学)
「英領インドの刑罰制度史における規律と抵抗の再考察―監獄の比較制度史に向けて」

本報告は、英領インドの海峡植民地と北西州における監獄制度が、特定の経路を通じて変化したことの要因の説明を課題とした。特に、1860年代までの海峡植民地の流刑監獄と、1860年以降の北西州において特徴的に見られた、囚人を段階的に処遇する方式と、囚人の中の行いの良い者を看守として登用する方式の組み合わせについて、その導入の要因を検討した。人口過少地域であった19世紀半ばまでの海峡植民地においては流刑囚には安価な労働力を提供することが期待された一方で、北西州においては既存の臨時雇用の看守と比較した際に長期受刑者のほうがより大きな信頼性が期待されたという要因があった。一見したところ囚人の性向の「矯正」という論理と整合的であるようにも見える段階的処遇方式も、「規律訓練」の植民地への導入といった反証できない図式に当てはめて解釈するのではなく、ローカルな誘因の構造に注目することでより正確にその制度変化の要因を考察することができることを論じた。

報告者3: 三瀬利之(清泉女子大学)
「<インド>を数量化する――帝国主義期の英領インド国勢調査プロジェクト」

インド社会の科学的な数量化を試みた英領インドの国勢調査の実態解明は、現代インドのコミュナリズムを論じる際に不可欠な作業であるだけでなく、学術研究に携わる者が、帝国主義という人類の負の歴史から反省的に学ぶためにも、重要な作業になると考えられる。本発表では、とくに帝国主義期の「カースト・部族・人種」統計を事例として取りあげ、おもに内務省内部の「稟議」段階の資料に基づきながら、国勢調査やそれに付随したカースト研究の特徴を分析した。その結果浮かびあがったのは、これまでの先行研究では光が当てられてこなかった特質、即ち、カースト統計や民族誌調査の推進派の、体制内少数派としての性格や、彼らの知的活動がもっていた対抗言説的な運動の側面である。知や情報の生産過程に影響を与えていたのは、思想的・政治的なファクターというより、末端のインド人調査員の性格や科学界の動向、官僚制組織の構造に由来する多角的な要素であり、これらが総合的に、国勢調査の<知>の性格を形作っていたことを論じた。

三瀬氏レジュメ(pdf)

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2012年10月13日 第2回FINDAS研究会「草の根の女性運動からみる現代インド」の報告

掲載日 | 

10月13日に行われました2012年度第2回FINDAS研究会「草の根の女性運動からみる現代インド」の報告です。

テーマ「草の根の女性運動からみる現代インド」

報告者1: 菅野美佐子 KANNO Misako(日本学術振興会)

報告者2: 喜多村百合 KITAMURA Yuri(筑紫女学園大学)

報告者3: A. Dhanalakshmi(Acharya Bangalore B School, Bangalore)

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報告者1: 菅野美佐子 KANNO Misako(日本学術振興会)
“Politics of Intimacy :Women’s Network and Rural Democracy in Uttar Pradesh”

北インド農村では村落自治制度における女性の議席留保制定以降、女性議員の数は飛躍的に増加したが、その一方で村落政治における支配構造やジェンダーをめぐる社会規範などにより、議会への参画を十分に果たせているとは言い難い状況がある。こうした状況のなかで女性たちはいかにして権力や支配の構造と対峙しているのか。本報告では、ウッタル・プラデーシュ州の事例をもとに、農村女性たちが自治機構に自らの権利要求を進めていく過程から、彼女たちの政治的エイジェンシーの可能性を検討した。

菅野氏 配布資料(PDF)

報告者2: 喜多村百合 KITAMURA Yuri(筑紫女学園大学)
“Beyond ‘the Politics of Presence’: Women’s Participation in Panchayat Governance in Kerala”

本報告では、経済的には低成長にもかかわらず、高い社会指標を示しているインド南部のケーララ州における、女性の経済的・政治的参加とジェンダー関係の変化の過程を概観し、その後S Gram Panchayatなどのローカル・ガヴァナンスの活動を通して地方組織、ジェンダーさらにはそれらの共同作用の可能性を探った。討論では、このケーララの事例が、インドにおいて1つのモデルといえるのかあるいは例外であるのか、といった論点が提出された。

喜多村氏 配布資料(PDF)

報告者3: A. Dhanalakshmi(Acharya Bangalore B School, Bangalore)
“Micro Financial Initiatives of Centre for Rural Health and Social Education (NGO) among Women Self Help Groups in Tamil Nadu”

インドの経済政策の影響で経済構造に多大な変化が生じている中で、政府の小規模融資イニシアティブをきっかけとして、NGOを中心に自助グループのエンパワーメントの動きが広まっている。本報告では、1978年以来タミルナードゥ州で活動を行っているNGO農村医療・社会教育センター(CRHSE)の事例に注目し、その成果と課題を明らかにした。援助の対象であった女性たちは、小規模融資を通じて確かに大きくエンパワーされたが、同時に男性が援助対象から外されたことに由来する摩擦や、社会的に女性に期待される役割が変わっていないなどの問題も存在することを指摘した。

2012年7月7日 第2回若手研究者セミナー「<サバルタニティ>の射程」の報告

掲載日 | 2012年08月22日

7月7日に行われました2012年度第2回若手研究者セミナー「サバルタニティの射程」の報告です。

テーマ:

「<サバルタニティ>の射程―インド社会における被抑圧世界の断片から」

報告者1.杉本浄(東海大学)

報告者2.鈴木真弥(中央大学)

報告者3.小西公大(東京外国語大学)

報告者4.木村真希子(明治学院大学)

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報告者1.杉本浄(東海大学)

タイトル「サバルタニティの空間:オリッサ州鉱山開発の過程と被開発者」

要旨:

本報告では近年急速な開発の進むオリッサ州丘陵部の鉱山とそれによって大きく翻弄されてきた被開発者に焦点をあてることで、サバルタニティの空間がいかなる状況のもとで歴史上形成されてきたのかを明らかにした。

報告のはじめでは、オリッサ州鉱山開発の現状と問題を概観した。1990年代以降、インドの高い経済成長に伴う旺盛な需要の下で、特にボーキサイト、クロマイト、石炭、鉄鋼石、石灰石、マンガンのオリッサ州からの採掘量が急速に伸張した。1994年から2008年までの間に、各種天然資源の総採掘量で4倍強の伸びを示した。こうした背景には州政府の積極的な外資導入による鉱山開発が進められた結果でもある。

その一方で鉱山の拡張や新たな一体開発によって生じる、立ち退き、耕作地減少、環境破壊、水質汚染といった問題が浮上し、森林破壊によるトライブの生活圏喪失に反対する運動などが現われた。例えば、アルミナの原料であるボーキサイトが埋蔵する南部のラヤガド県やカラハンディー県では近年国際資本による積極的な開発投資が行われたが、NGOなどの協力の下で根強い反対運動を展開することで、開発が困難になるケースが目立っている。

次に、こうした鉱山開発の起源と経過を知るために、特にオヌグル県にあるタルチェル炭鉱に注目しつつ、オリッサの鉱山開発史を概観した。まず、1911年から採掘がはじまったタルチェル炭鉱とその問題化の軌跡を独立以前から以後にわたって跡づけた。1990年以降は周辺の発電所だけでなく、アーンドラやタミルナードゥ州に石炭を供給するために規模が拡大化され、2006年には年5000万トンの産出量を達成している。15年前は1800万トンであったため、実に2.8倍近くになった。

むろんここでも大規模化によって、立ち退きの補償問題や耕作地および森林の減少、水質汚染、露天堀りによる粉塵拡散(大気汚染)、土壌汚染といった問題が生じている。1990年代以前よりは、被開発者の声が聞こえるようにはなったが、資源開発による利益を経済成長の要とすることに、沿岸地域の世論は支持する傾向にある。

以上、本報告では被開発者に不利益をもたらす鉱山開発自体をサバルタニティの空間形成として紹介したが、状況説明のみで、具体的な被開発者の声が拾われていないなど、方法論上の問題点を指摘されたため、今後の課題としたい。

報告者2.鈴木真弥(中央大学)

タイトル「『ポスト』ガンディー/アンベードカルの『不可触民』:『ハリジャン』と『ダリット』の交錯」

要旨:

本報告では、現代インドにおけるカーストや不可触民問題をテーマに、従来のダリット(運動)研究の視点では捉えにくい不可触民の事例としてデリーのバールミーキ(清掃カースト)の動向が検討された。報告者は、デリーで実施してきた調査(2005-11年)に依拠して、バールミーキの社会組織の歴史展開を20世紀の不可触民解放運動の思想的支柱であったM.K.ガンディーとB.R.アンベードカルの潮流に位置づけ直すことで、両指導者の影響下で揺れ動いてきたバールミーキの「サバルタン的状況」を論じた。

コメンテーターの押川氏からは、両指導者の思想の捉え方について、国民や国家概念も視野に入れることで不可触民解放思想の解釈を再吟味する必要があること、今日の「ガンディー主義者」、「アンベードカル主義者」との思想の連続性と断絶性にも注視すべきであるなどの指摘がなされた。粟屋氏からは、本報告が関係性のなかでサバルタニティを捉えようとしながらも、実際には対象集団を「サバルタン」として固定化する傾向がみられるなど建設的な意見や質問が多く提出された。

報告者3.小西公大(東京外国語大学)

タイトル「欲望は歌にのせて:タール砂漠ムスリム芸能集団にみる『語り』の可能性」

要旨:

本報告は、インド北西部に広がるタール沙漠エリアに存在するムスリム芸能集団マーンガニヤール社会を事例とし、その社会的変革に伴う芸能コンテンツの変化を「語りの可能性」という視座から分析することを目指した。マーンガニヤールに留まらず、タール沙漠エリアにもいわゆる「グローバル化」の波が訪れており、人びとの社会関係からライフスタイルまで大きな変貌を遂げている。同地の芸能集団は、旧来のパトロン―クライアント関係を基盤とした社会構造の崩壊とともに、また同地における急激な観光化現象により、儀礼的意味が捨象された「パフォーマンス」による生計手段をとり始めている。こうした状況下において、彼らの芸能の様式やコンテンツ、レパートリーにまつわる解釈や、彼らの考える「伝統性」が大きく揺らいでいる。
本報告では、この状況を明確にするために、一つの歌の形態と歌詞の変遷を詳細に明示した。この歌は、そもそも女性たちの儀礼歌だったものが、同集団の男性によって「編曲」され、さらに大ヒットしたヒンディー映画の挿入歌として全国的に知られるようになった。また、マーンガニヤール芸能の「ワールドミュージック」という名における世界的な受容は、この歌を「Rajasthan Folk Music」の最も有名な楽曲の一つとならしめた。それぞれの段階における歌詞やスタイル、歌に対する解釈は大きく異なり、様々なアクターがその記号性をめぐって競合してきた状況をみいだすことができる。
果たしてこの歌は誰のものか。その歌に込められた主題はなにか。解釈をめぐる権力関係が、その歌を歌い継いできた人びとの「語りの可能性」をいかに抑圧してきたか。本発表では、文化的コンテンツをめぐるアリーナ間のポリティクスを明らかにするとともに、そこで「声」を消されていく人びとの「サバルタニティ」にも焦点を当てた。

報告者4.木村真希子(明治学院大学)

タイトル「環境のガーディアンか、森林の破壊者か:アッサムの森林地帯における先住民族『不法居住者』を事例に」

要旨:

本報告では、アッサム州の森林(保留林)における先住民族(トライブ)の「不法居住者」を事例に、先住民族の土地権、自治権運動とエスニック紛争、そして森林減少の関係を捉えることを試みた。同時に、ボドランド運動によりボド領域自治県を獲得したボド民族内部におけるエリートと、領域自治外で政治的代表性から排除される人々のあいだの関係も考察した。

1990年代前半から半ばにかけ、ボドの民族組織が武装活動を展開した保留林地域において、多くのボドの土地なし農民が環境森林局の許可なく居住を始めた。これらの人々は、紛争終了後、特にボド領域自治県外では「不法居住者」とみなされ、森林現象の主な原因と批判されて取り締まりの対象となっている。本報告では、大規模な森林伐採には政治家や官僚、木材業者などの広範なネットワークが関与していることが多く、従って「不法居住者」のみに原因は帰せられないこと、また「不法居住者」は故郷の西部アッサムで土地がなく他県や他州で日雇い労働者、農業労働者となっていたものであり、彼/彼女らに代替地を提供しない限り、追い出しは困難であることを指摘した。

同時に、ボドランド運動は先住民族の間の土地問題が大きな原因となって始まったものであり、「不法居住者」の人々の問題を解決することも運動の大きな目的の一つであったはずだが、実際に領域自治県が発足すると自治県外の人は投票権を持たず、そのため彼/彼女らのニーズが反映されない状態である。このように、森林の「不法居住者」のボドの人たちは、政治的代表性がなく、そうした人達に「森林伐採者」としてのレッテルが貼られ、取り締まりの対象者となるという二重の意味で声が代表されていない。ボドランド領域自治県の発足とともに、先住民族の政治家や官僚など、エリートにとっては活躍の場が増える一方、土地なし層などの下層民の問題が見えにくくなっている。

各報告は、全体として権力の構図を歴史的に述べながらサバルタニティを最大限に解釈しているようなものであった。また今回の報告では、ある集団内の重層性-つまり固定性と流動性とが同時に立ち現れてくるということ-も垣間見ることができた。報告で取り上げた対象はいずれも80年代後半~90年代に変化の契機をむかえるが、これはグローバル化の浸透が、あるいはグローバルな言説がサバルタニティの空間に入り込んできたためであると思われる。多様な場所における様々な運動が個別化している傾向が見られるが、それらが個別化した先に、相互にどのようになつながり方があるのかということが見えてきづらい、という意見も出された。

Kiyoshi Sugimoto

Maya Suzuki

Kodai Konishi

Makiko Kimura