2014年11月8日 第2回FINDAS国際ワークショップ ”Rethinking Indian Cinema” の報告

掲載日 | 2014年11月09日

11月8日に開催いたしました、2014年度第2回FINDAS国際ワークショップの報告です。

全体テーマ:”Rethinking Indian Cinema”

アニール・ザンカル(フリーランス、ヴィッディヤ・コミュニケーションズ)
“The Innovative Parallel”

本報告は、メインストリームにあるヒンディー語以外のインド諸語の映画について、具体例を紹介しつつその歴史を描きだすものであった。ベンガル語映画のショトジト・ロイをパイオニアと位置づけ、その後につづく映画監督たちの作品について、それらを変革の歴史と評価した。ただし、その変革の流れは、1980年代半ばまでには収束してしまい、各言語における映画作品のテーマや形式は画一的なものが繰り返されるようになった。しかし、近年新進の映画制作者たちにより、地域映画は新たな展開を見せていることを示した。

押川文子(京都大学)
“Hindi Films in Multiplex Age: Citizenship and ‘Others’”

本報告では、近年ますます台頭しつつあるインドの中間層が、映画というメディアを通して社会をいかに表象あるいは認識しているかが論じられた。この作業を通じて、中間層というものそれ自体について再考することが試みられた。特に、複数のスクリーンを持つ、いわゆるマルチプレックスと呼ばれる複合映画館に焦点を当てた。これらは、地域や視聴者の属性によって差異はあるものの、教育を受けた中間層の若者を中心に、その多様な価値観が表出される場となっていることが論じられた。

ザンカル氏と押川氏の報告の後、コメンテーターの山下博司氏による議論の整理の後、多言語の映画の展開の特徴、中間層による映画の消費・活用のあり方などについて、フロアの参加者を含めて活発な議論が行われた。

2014年10月13日 第3回FINDAS研究会「Lindsey Harlanさん講演会」の報告

掲載日 | 2014年10月14日

10月13日(月)に開催いたしました、2014年度第3回FINDAS研究会の報告です。

講演:Lindsey Harlan(Professor of Religious Studies, Connecticut College)
“A Battle of Wits: The Jain Goddess Gevar Bai and the Great King Raj Singh”

本報告は、ラージャスターンにおけるジャイナ教女神信仰を中心として、当該地域における宗教世界の歴史の一端を明らかにしようとする試みであった。ジャイナ教女神信仰は、ラージプート王権とのあいだにとり結ばれた複雑な関係を背景に持ちながら、人々のあいだに連綿と生き続けてきた。報告では、人々のあいだに伝承されてきた、17 世紀以降の様々な伝説のヴァリアントが読み解かれた。さらに参加者から、ラージプート王権の与えた影響、口頭伝承におけるジェンダー性の立ち現れ方などについて問題提起がなされ、具体的な事例の紹介が行われた。

2014年7月5日 第2回FINDAS研究会「南アジア・市民活動のアクチュアリティ」の報告

掲載日 | 2014年07月06日

7月5日(土)に開催いたしました、2014年度第2回FINDAS研究会の報告です。

全体テーマ:「南アジア・市民活動のアクチュアリティ」

田口陽子(日本学術振興会特別研究員(PD)京都大学)
「「市民社会」と「政治社会」の相互関係――ムンバイの市民運動を事例に」

本発表では、ムンバイの市民運動を事例に、インド都市部における近年の市民運動についての議論が展開された。理論的枠組みとしてはパルタ・チャタジーのモデルを下敷きとし、「市民社会」と「政治社会」の領域を区別したうえで、その関係を事例の観察を通じて考察した。1990年代以降の新しい「市民社会」を体現するとされる「(新)中間層」の運動家たちは、「政治社会」の領域の「非・市民」と自らを対比することによって、「市民」としてのアイデンティティを獲得すると論じた。しかし、「市民社会」と「政治社会」の錯綜した関係の中で、事例における運動は必ずしもうまくいかず、運動家たちは社会に対する結果よりも市民的モラルの探求に向かったことを指摘した。

 

大橋正明(聖心女子大学)
「インドNGOの光と影」

本発表では、実務家として南アジアのNGO活動に関与してきた大橋氏が、NGOに関する俯瞰的な整理と各国間の比較を行った。特に、インドの西ベンガル州とバングラデシュにおける、マイクロクレジット関連の事業に従事するNGOについて重点的に比較を行った。バングラデシュでは開発NGOがマイクロクレジットの担い手となった結果それらの組織が金融機関化している一方で、インドでは開発NGOとマイクロクレジットを担う主体が分かれているため金融機関化はしていない。開発NGOが金融機関化したバングラデシュでは、マイクロクレジットに事業の重点が移り、本来の開発事業が疎かになっている危険性を指摘した。

2014年6月3日 第1回FINDAS研究会「Dalit Studies Today」の報告

掲載日 | 2014年06月04日

2014年6月3日に、科研「近現代インドにおける食文化とアイデンティティに関する複合的研究」(基盤(B)代表:井坂理穂)との共催による、FINDAS研究会「Dalit Studies Today」を開催しました。

発表者1: Ramnarayan RAWAT (University of Delaware)
“Parallel Public and Dalit Genealogies of Indian Democracy”

本発表では、20世紀初頭のダリットの運動組織と思想家の実践に注目しながら、ダリット組織が重要な民主主義的実践の形式を形成するのに重要な役割を果たしたことが示された。様々なダリット運動は、国民会議派のアジェンダに抵抗しつつ、自らの独自のアジェンダを提示した。中でも、アディ・ヒンドゥー・マハーサバーは、権力に対する政治的な批判を、出版物を通じて展開した。こうした運動を、国民会議派を中心としたインドの主流な民主主義と並行して存在した、ダリットの公共的実践として捉え直した。

発表者2: Shahana BHATTACHARYA (Kirori Mal College, University of Delhi)
“Labour as Caste or Caste as Labour?: Tannery workers’ organisations Madras and Calcutta c. 1930-1970”

本発表は、20世紀初頭から1960年代前半にかけての皮なめし産業にみられた政治関係を観察することによって、労働者およびカーストのアイデンティティの錯綜した関連を考察した。具体的には、マドラスとカルカッタという、当時の皮産業の2大中心地における、皮なめし業の労働組合に注目した。これらふたつの地域において、カーストと階級のアイデンティティ、そして労働の過程が相互に影響を与えあった結果、初期の労働組合が形成されたことを論じた。

2014年2月11日 第3回FINDAS若手研究者セミナー「南アジアにおける女性参加の可能性」の報告

掲載日 | 2014年02月12日

2014年2月11日に行われました第3回FINDAS若手研究者セミナー「南アジアにおける女性参加の可能性」の報告です。

テーマ:「南アジアにおける女性参加の可能性――主体化・ガバナンス・エンパワーメント」

発表者1:
中村雪子(お茶の水女子大学)
タイトル「インドにおける開発プログラムとしての女性酪農協同組合の再検討:ガバナンスとエンパワメントの視点から」

発表者2
Momotaj Begum (Hiroshima University)
Title: “Creative Subject and Collective Agency among the Female Tablighi Activists in Bangladesh”

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発表者1:
中村雪子(お茶の水女子大学)
タイトル「インドにおける開発プログラムとしての女性酪農協同組合の再検討:ガバナンスとエンパワメントの視点から」

本報告は、ラージャスターン州において1992年から展開してきた村落/集落レベルにおける女性酪農協同組合(女性のみで構成・運営)設立によって農村女性のエンパワメントを目的とする開発プログラムを、酪農協同組合上部組織のガバナンスへの女性の参加の側面から再考するものであった。まず、近年、組合組織における法改正や酪農政策の変化によって酪農協同組合に参加する女性のために開かれた政治空間が生じていることを示した。同州でのフィールド調査から、県・州レベルの酪農協同組合組織意思決定機関である理事会に選出された女性理事の選出過程や理事としての実践は、ジェンダー、社会関係、政党政治などの諸要素によって複雑に構成されていることが明らかになった。

 

発表者2

Momotaj Begum (Hiroshima University)
Title: “Creative Subject and Collective Agency among the Female Tablighi Activists in Bangladesh”

近年イスラームの諸運動への女性の参加が進んでいる。本報告は、これらの運動への彼女たちの参加が、新しい政治空間・関係を生成する可能性について論じたものである。特に、インドから始まった、女性のタブリーギー組織であるマスーラテ・ジャマーアトをとりあげた。報告では、タブリーギー運動における女性の主体形成の過程に注目した。男性のイスラーム学者たちが形成してきた言説では、運動において女性の参加は受動的なものにすぎない。しかし、実際の女性たちは、タブリーギー運動において、積極的に主体形成を行ない、自らの言説や行為に意味を与えていることが論じられた。