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2011年4月10日 第1回FINDAS研究会 「社会的弱者の子どもに対する教育の試み:プネー市からの報告」報告

掲載日 | 2011年04月14日

2011年度の第1回目の研究会を下記の日程で行いました。今回は研究協力者でもありますプラシャント・パルデシさんより、最近実施されました調査に関するご報告をいただきました。

日時:4月10日(日) 15:00~
場所:本郷サテライト7階会議室

発表者:プラシャント・パルデシ(国立国語研究所)
発表タイトル:「社会的弱者の子どもに対する教育の試み:プネー市からの報告」

教育機会を得ることが困難な社会的弱者の子どもに対する教育について、プネーでのインタビュー調査に基づき、その現状と課題が報告された。
具体的な対象とされたのは、荷物運び(ハマールと総称される)や移動集団、「売春婦」などである。このような人びとは、経済的状況や居住スタイルなどを要因として、従来教育機会から疎外されてきた。報告者は、Samata Shikshan Sanstha、Hamal Panchayatという二つの組織を訪問し、代表者や校長などのインタビューを行っており、それらをもとに発表がなされた(施設やインタビューを撮影したビデオも一部紹介された)。
Samata Shikshan Sanstha(「平等教育協会」)は、1972年12月に設立された組織である。この組織はアンベートカルの思想を汲んでおり、理念として、ダリットが社会で就職できるよう、教育を与えることを掲げている。
この組織が運営する小学校、Anand Ashramの特徴を以下に挙げる。第一に、対象者を主にDNT(Denotified and Nomadic Tribes: 旧犯罪部族及び遊動部族)としている点、第二に、全寮制である点、第三に、衣食住、文房具のすべてが無料で提供される点、そして第四に、太陽光発電機、風力発電機、コンピューターを完備している点である。交渉によってマハーラーシュトラ政府から資金を得ているほか、民間からの寄付も少なくない。
Hamal Panchyatは、本来マーケットなどで荷物運びに従事するハマールの組合として始まったが、2001年から、5年生から10年生を対象にした学校を運営しており、47台のコンピューターなどをはじめ、充実した環境が整えられている。教員は、全員修士号を持っており、NGOなどの経験者などを経てきていたりするなど、教育へのコミットメントが強いのも特徴である。ハマール・パンチャーヤットの目的は、ハマールの子どもに教育を与えることであるが、ハマールの子供以外にも、近隣のスラムの子供も学ぶことができる。マハーラーシュトラ政府から教員への給与などが出されるが、その他ハマールからの供出金で学校は維持されている。プネーでは近年、海外からの物資や情報の支援も増加しており、その結果としてこれらの学校では、かなり質の高い教育が提供されている。
これらの取り組みが現在抱える問題については、以下のような点が指摘された。
第一に、ハマール・パンチャーヤットの学校は、5年生から10年生を対象にしているため、1年生から4年生までの教育と、10学年以上の教育のためには別の学校に行かなければならない。
第二に、教育を受けてこなかった親たちは子どもの学習状況を把握しておらず、子どもの学習指導を行うことができない。それゆえ、子どもたちに必要な様々な情報が不足してしまうだけでなく、親が子どもの職業選択などの相談に乗ったり助言したりすることが極めて困難である。
第三に、この学校が名称に「ハマール」という特定の集団名を冠していることも影響している可能性があるが、ハマール以外の集団に属する人々の親は、金銭的な余裕がある場合は、より充実した教育環境を持つ名声の高い学校へと子供たちを通わせる傾向がある。
報告後の議論のなかでは、報告のような取組は、他のモデルとなるのか否かという問題が論じられた。報告者は、インドでは今回取り上げたような個々の取り組みが全土に当てはまることはないだろうし、一つのモデルがあるわけではないだろうとする。とはいえ、地域レベルでの多様な取り組みは、長期的には全国レベルにも影響を及ぼし得る。報告で取り上げられた事例のように、教育機会に恵まれない子供たちを地域レベルで教育に参加させることは、全国レベルでの教育の前段階として位置付けることができ、意義があるとも指摘された。その延長線上で、インド全国を視野に入れて考える必要があるが、全国レベルでは英語を教育の中心に据えざるをえないという言語上の問題が生じること、また学問分野の違い(化学と歴史など)によって、地域ごとに教育環境に濃淡もあるであろうという点も示された。
公共教育の質を向上させることは急務であるが、それは、教育の均質化を意味するという問題を生むという側面もあり、今後さらなる検討が必要であろうという意見もだされた。とはいえ、まずは、教育へのアクセスが阻害された諸集団に教育機会を与えること、そのためには、様々なアプローチがこれからも試みられていくであろうし、そうであるべきだという意見が提示され、本研究会は終了した。

発表者のプラシャント先生              会場の様子。23名のご参加をいただきました。

当日配られたパワーポイント資料は、以下のリンクよりダウンロードができます。

第一回研究会パワーポイント資料