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2011年2月11日 第5回FINDAS若手研究者セミナー 「南アジア系ムスリム移民・国家・ジェンダー」報告

掲載日 | 2011年02月18日

第5回FINDAS若手研究者セミナー 報告

FINDAS外大拠点では去る2月11日に今年度最後の若手研究者セミナーを開催しました。第5回目にあたる今回は斎藤紋子さんと工藤正子さんを招いて、南アジア系ムスリム移民について、それぞれミャンマーと日本をフフィールドにご発表いただきました。年度末の忙しい時期でしたが、多数のご参加を賜りました。来年度もFINDASをよろしくお願いいたします。以下、ご本人がおまとめになられた発表報告を掲載します。

テーマ:「南アジア系ムスリム移民・国家・ジェンダー」
期日:2011年2月11日(金)
時間:13:00~17:00
場所:東京外国語大学本郷サテライト7階会議室

コメンテーター:萩田 博(東京外国語大学)/粟屋利江(東京外国語大学)

発表者:
斎藤紋子(東京外国語大学)
発表タイトル:「ミャンマーにおけるイスラーム教徒の位置づけ:法律・制度の運用実態から」
報告まとめ:

ミャンマーにおいて、英植民地時代の移民の子孫を中心とするインド系ムスリムは、その多くがミャンマー国籍を取得し、制度上国民国家に統合されているとはいえ、実際にはさまざまな困難に直面している。本報告では、このインド系ムスリムがミャンマー国民の周縁に留め置かれる要因を検討した。
本報告で扱ったインド系ムスリムは、多くが英領植民地時代の移民の子孫である。ミャンマーは1852年の下ビルマ英領化によって英領インドの一州として位置づけられたため、入国規制がほとんどないインドから、貿易や雇用の機会の増加によって多数の移民が流入した。独立以降は出国、帰国、国籍取得などで外国人人口は減少した。現在ミャンマーに暮らすムスリムの中ではインド系ムスリムがおそらく最多である。彼らは上述のように植民地時代の移民の子孫が多いが、それ以前の王朝時代に戦争捕虜や商人などとして移住してきた者の子孫もいる。
ミャンマー政府は独立後、1948年ビルマ連邦国籍法および1948年ビルマ連邦国籍(選択)法を中心に、一定の条件付きでの外国人も含めた国民統合を模索していた。その後、1982年ビルマ国籍法の制定過程をみると、当時の大統領ネーウィンはしばしば外国系住民や混血の人々に対しての不信感を表明しているのだが、この不信感は結果的に国籍法の条文にはあらわれなかった。
ところが、この不信感は法律や制度の運用面で表面化している。そしてそこには、国民の要件として言及されることのなかった宗教も大きく関わっている。特に、身分証明書発行と公務員雇用や昇進において、さまざまな問題が明らかになっている。国籍法制定過程で表面化した外国系住民に対する不満は、土着民族とそれ以外という「民族」の問題であったが、法律や制度の運用で問題とされているのは宗教である。こうした状況から、インド系ムスリムはミャンマー国民であるにもかかわらず、周縁化された存在となっている。

発表者:
工藤正子(京都女子大学)
発表タイトル:「ムスリム移民の家族形成とジェンダー:パキスタン人男性と日本人女性との国際結婚の事例から」
報告まとめ:

ムスリム移民の家族形成とジェンダーの関係性について、1980年代以降来日したパキスタン人男性と日本人女性の国際結婚から形成される家族の事例から考察した。
発表では、まず、問題背景として、1980年代後期にピークを迎えたパキスタンから日本への労働移動を概観したあと、夫婦の生活世界がどのように形成されてきたのかについて、①結婚による夫の滞日合法化、②妻のイスラームへの改宗、③夫の起業、④在日パキスタン人によるネットワーク形成とイスラーム的な場の設立、⑤妻たちのネットワーク形成という側面から述べた。
つぎに、子が就学期を迎える段階以降、これら家族のあいだで、日本人の母と子がパキスタンや第三国に移住し、夫たちは日本を拠点としてトランスナショナルなビジネスを展開するという国境を越えた家族の出現していることを指摘し、その背景要因を検討した。こうしたトランスナショナルな家族が形成される背景には、子のイスラーム教育、とくに、非イスラーム圏で娘を育てるうえでの課題のほか、英語や夫の母語の習得なども関与した複雑な教育戦略がある。
こうした国境を越えた(再)移動が生じる過程においては、夫婦それぞれの資源が文脈に応じて動員されており、そこには移住者としての可能性をみることができると同時に、入国管理規制や差別など、関与する複数の国家や社会にさまざまに制約をうけていることを明らかにした。また、いったん海外に移住したあとに日本に生活拠点を戻すなど、流動的に再編されるケースが少なくない点にも注意が必要であろう。家族の内部でも、それぞれのジェンダーや国籍その他の差異によって、こうした移動の意味や経験は異なっており、これら家族内の差異や力関係の動態を視野に入れて、トランスナショナルな家族の形成プロセスを理解する必要があることを指摘した。

←発表者の工藤さん(左)と斎藤さん(右)

←多数のご参加ありがとうございました!