2020年度第1回研究会「南アジア研究における情動の諸相」の報告

掲載日 | 2020年07月08日

2020年度第1回研究会「南アジア研究における情動の諸相」

日時: 2020 年 5 月 24 日(日)13:00-16:30

会場: ZOOM会議  ※非公開

参加人数:26人 

 

報告1

粟屋利江(東京外国語大学)

「南アジア研究における情動:導入」

“Emotions in South Asian Studies: Preliminary introduction”

 

本報告では、まず学問的関心が高まってからしばらく経つ「情動」に関する研究の概要とその動向が整理され、次いで南アジア地域を対象とした情動研究の動向が、歴史研究分野、社会・政治運動(ナクサライト、レズビアン運動、フェミニズム運動、テランガーナー運動、母語をめぐる運動など)、政治領域(コミュナル、ダリト、検閲の問題など)、その他の個別テーマ(LOVE、男女関係、猥褻など)といったカテゴリーから紹介された。その上で、今後の課題(欧米での研究からの距離、文学やエゴ・ドキュメント、手引書、辞書(語彙研究)、児童書といった資料の新たな読みの必要性と可能性、専門かつ言語を横断した研究者同士の連携の必要性、これまでの文学研究との差異化、情動研究とは感情の歴史なのか、歴史分析において勧業・情動のモメントを重視するのかという問い等)が提示された。

 

報告2

田口陽子(県立広島大学)

「情動のやりとりと社会身体の形成:人類学的な概念化と南アジアの変動」

“The transaction of affect and the formation of the “body social”: Anthropological conceptions and South Asian movements”

 

本報告では、まず人類学における社会空間と情動に関する研究が紹介された。その上で、情動概念は身体的な存在としての人間が周囲と相互作用することで生成される実践に注目するものであり、そうすることで社会構造や法、政治理念などの枠組みからはみ出し、ずれていく実践に光をあてることができる、情動を通してこれまでとは違った角度から社会空間を捉えることが可能になる、との見解が示された。後半では、この見解をもとに、箭内匡が『イメージの人類学』の中で提唱した「社会身体(個人性を超えた身体の在り方)」論と、南アジアを対象とする人類学的研究の中で論じられてきた人格論(個人を超えた人間像、「サブスタンス=コード」)を接続させる試みがなされた。さらに、現代南アジアの社会変動を情動のやりとりという観点から検討するための例として、Kalindi Voraの著書Life Support: Biocapital and the New History of Outsourced LaborからMahaswet Deviの”Standayini”の例が提示された。